木造住宅には色々な工法が混在していますが、その中のひとつにツーバイフォー住宅があります。
ここでは、北米の風土の中で誕生したツーバイフォー住宅が、どのように日本の木造住宅に影響を与えていったのか、詳しくみていきましょう。
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目次
ツーバイフォー住宅とは正しくは枠組壁工法といいますが、北米で誕生したこの工法は、古くはバルーン工法、またフレーミング工法ともいわれています。
日本に紹介されたのは1974年のことで、旧建設省(現:国土交通省)が建築基準法に基づく一般工法としてツーバイフォーを認可しています。
導入当時は急速に拡大する住宅需要への救世主的存在として扱われたツーバイフォー住宅ですが、火災保険も一般木造より割安な保険料を適用しています(住宅金融公庫の省令簡易耐火構造)。
ツーバイフォー住宅の特徴にも簡単に触れると、ツーバイフォー工法(枠組壁工法)は壁・床・天井の六面体で支える仕組みがあり、通称“モノコック構造”(箱型構造)ともいわれています。
一般的に地震などの外力を「面」で受けとめるツーバイフォー住宅は、強度の面で非常に優れており、後年在来工法もこの“モノコック構造”(箱型構造)を取り入れ、同等の強度を有します。
[su_box title=”関連記事” style=”bubbles” box_color=”#0075c2″ title_color=”#ffffff”]・在来工法とは?構造・ハウスメーカー・特徴を解説![/su_box]ツーバイフォー工法について、「ツーバイフォーとツーバイシックスの違いは何?」という質問がよく聞かれます。
この質問に答える前に、「なぜツーバイフォーと言うの?」という素朴な疑問にお答えしておきます。
ツーバイフォーとは、この工法で使われる規格材のサイズの種類からきています。
規格材のサイズはツーバイフォーなら「2インチ×4インチ」、ツーバイシックスなら「2インチ×6インチ」です。
ただ「2インチ(50.8mm)×4インチ(101.6mm)」は未乾燥・製材前の寸法で、実際には38mm×89mmが実寸法です。
ツーバイシックスはツーバイフォーでは不足する壁厚を140mm(6インチは152.4mm)とした工法で、当然ながら断熱性能はツーバイフォーよりも向上します。
要は、ツーバイシックスとはツーバイフォーより規格材の寸法(同時に壁厚)が大きくなった(広くなった)工法です。
それでは、ツーバイフォー工法を得意とする代表的なメーカーを紹介しておきます。
メーカー名は「三井ホーム」と「スウェーデンハウス」、セキスイハイムから派生したブランド「グランツーユー」です。
三井ホームは日本を代表するハウスメーカーとして知られていますが、じつは日本にツーバイフォー工法をもたらした最初のハウスメーカーでもあります。
三井ホームの歴史は日本でのツーバイフォーの歴史といっても良いでしょう。
現在三井ホーは大規模な施設物件を手がけるなど、ツーバイフォーの可能性を広げるいっぽうで、賃貸住宅の分野にも貪欲に取り組んでいます。
しかし三井ホーム本来の魅力は優美な洋館を思わせるデザイン性の高いファサードや、あたかも海外の高級住宅を想像させるインテリアにあります。
多くの建築家とのコラボレーションも、三井ホームらしい取り組みのひとつでしょう。
スウェーデンハウスの住宅が北欧の暮らしを届けるとするのなら、三井ホームの建築は良き時代のアメリカン・トラディショナルを彷彿とさせるデザインを受け継ぐものです。
両社はお互いに高級住宅を販売するハウスメーカーですが、三井ホームのレガシーに恥じない、威厳ある建築をこれからも継続してもらいたいものです。
また、ツーバイフォー工法で家づくりを考えている方は、一度はモデルハウスで三井ホームの住宅を体感してみるといいでしょう。
スウェーデンハウスは木質パネル工法(広い意味でのツーバイフォー住宅)のハウスメーカーとして、4年連続(2018年時点)で顧客満足度1位を獲得したことでも知られる注目のハウスメーカーです。
またスウェーデンハウスは徹底した北欧仕様にこだわりがあり、資材のほとんどが現地調達となっています。
サイズ感も現地規格の1200mmのようですから、まさに高純度の北欧の暮らしを体感できる仕様といえるでしょう。
スウェーデンハウスの特筆に値する点として、1999年からC値(相当隙間面積)、Q値(熱損失係数)を全棟で測定(計算)し、顧客に提出している点があげられます。
気密測定はハウスメーカーより工務店や地場ビルダーのほうが多く実施しているようですが、スウェーデンハウスのこうした姿勢は、省エネ性能がそれほど注目されていない時代から、温熱環境にもこだわってきた同社の思いの深さが伝わってきます。
またスウェーデンハウスでは改正省エネルギー法に先立ち、2013年7月からU値(熱貫流率)の数値も加えて提出しています。
ここまで徹底して実施するハウスメーカーはスウェーデンハウス以外にはないでしょう。
スウェーデンハウスははっきり言って安くはありませんが、それでも顧客が納得する訳はまさにここにあります。
ツーバイフォー住宅はハウスメーカーによって合う・合わないがハッキリするところがあるのか、多くのメーカーがしばらくは取り上げるも、結果として撤退する例が少なくありません。
たとえばあの積水ハウスやダイワハウスもツーバイフォー住宅を取り上げた時期がありますが、いずれもツーバイフォーから早々撤退しています。
同じようなことが大成建設ハウジングにもいえます。
住友林業もツーバイフォーを扱っていますが賃貸住宅限定です。
そんななか、ユニット工法のプレハブブランド「セキスイハイム」から、派生ブランドの「グランツーユー」が、2002年から手堅くツーバイフォー住宅に取り組んでいます。
[su_box title=”関連記事” style=”bubbles” box_color=”#0075c2″ title_color=”#ffffff”]・プレハブ住宅とは?扱うハウスメーカーや価格・特徴を解説![/su_box]現在ではグランツーユーはツーバイフォーより規格材の大きさが幅広のツーバイシックス工法に力を入れており、東日本大震災、熊本地震など近年の震災でも、セキスイハイムともども、全半壊の被害は一軒もなかったようです。
グランツーユーの外観はセキスイハイム独特の四角いユニットタイプの外観ではなく、勾配屋根が美しく、ハイムファン以外の方にも広く親しまれる住宅らしい外観です。
またグランツーユーはツーバイシックスに力をいれており、新ブランド「グランツーユーV」では、ツーバイシックスにすることで強度と精度がさらに進化した「アルティメイトモノコック」で大地震にも安心な(改正省エネルギー法対策にも万全な)住宅を提供しています。
ハイムブランドの新しい顔、「グランツーユーV」の家づくりにも注目です。
ではツーバイフォー住宅の特徴はどういったものになるのかまとめてみます。
ツーバイフォー住宅は、実に多くの点で“理想的な木造住宅”だということが分かります。
ツーバイフォー工法は以前から地震に強いことが広く認知されています。
阪神淡路大震災の際、被災を余儀なくされたツーバイフォー住宅ですが、そのうち96%は継続して住める状態だったようで、構造等を補修する必要はありませんでした。
大多数のツーバイフォー住宅がとくに補修もせずに済んだ理由は、ツーバイフォーの面で支える構造にあります。
震災以降、多くの在来軸組工法はツーバイフォー住宅に習い、耐力壁にツーバイフォー工法で使われる構造用合板を積極的に取り入れていきます。
現在はツーバイフォーも在来工法も耐震性に大きな違いはありませんが、木造の耐震性が強化された背景には、多少なりともツーバイフォー工法の影響があったと考えられます。
ツーバイフォーのもうひとつの特徴は、高気密化が成立しやすい工法だということです。
ツーバイフォー工法は面で支えるシンプルかつ合理的な工法ですが、こうして作られたモノコック構造(箱型構造)はツーバイフォー住宅の大きな特徴であり、同時に気密性能を確保しやすい工法です。
耐力壁の面材を取り入れた在来軸組工法も、ツーバイフォーのようなモノコック構造を形成できてはいますが、在来工法は元々隙間が生じやすく、ツーバイフォーにくらべると高気密化しにくい工法といえます。
在来工法は気密処理によって工法本来の弱点をカバーできるようになりましが、住宅を容易に高気密化するなら、ツーバイフォーやツーバイシックス工法を選んだほうがラクです。
またツーバイフォー住宅は、簡単に省令準耐火に該当するため火災保険料を安くできます。
火災保険はM構造、T構造、H構造の3タイプがあり、M、T、Hの順番で保険料が高くなります。
なお保険料がもっとも安くなるのはマンションなどのM構造で、いちばん高いのは一般木造のH構造です。
ツーバイフォーは3つの中ではT構造に該当しますが、H構造にくらべると30%〜50%も保険料が安くなるため、おなじ木造では大変お得な工法です。
なぜツーバイフォーが火災保険の保険料がT構造になるかというと、ツーバイフォー工法は昭和57年から住宅金融公庫の省令簡易耐火構造の基準に適合となっており、その後の住宅金融支援機構でも省令準耐火構造の基準に適合すると認められています。
ツーバイフォー工法は、部材に気流止めになる箇所があり、それが空気の流れを遮断して延焼の拡大を防止するファイヤーストップ構造になっています。
そのためツーバイフォー住宅は火災による死傷者を少なくし、同時に初期消火の可能性も高める構造として認められています。
在来工法の住宅もファイヤーストップ構造になっているため、省令簡易耐火構造の認定されるメーカーが出て来ましたが、その数はまだ限られています。
これに比べるとツーバイフォーは、ほぼ全ての住宅が省令簡易耐火構造になり、割安な火災保険料が該当します。
これはこの工法のメリットとなるでしょう。
むかしに比べるとそうでもなくなったとは言えますが、在来工法はやはり大工の腕の良さが現場の施工精度を左右します。
いっぽうツーバイフォー住宅は組み立て方がマニュアル化されているため、在来工法ほど施工のばらつきが出にくいといえます。
またツーバイフォーは全ての接合部位に釘を使い、釘の種類も図面に細かく記載されています。
在来木造のような仕口・継ぎ手などもないため、非常に簡単に施工できます。
そのため多少の慣れは必要ですが、在来工法しか経験がない大工でも、すぐツーバイフォーの現場で作業できます。
ツーバイフォー住宅は耐震性があり高気密化が容易で、火災保険が割安で加入できる理想的な住宅だと分かりました。
今度は逆に、ツーバイフォー住宅の欠点や注意するべき点はどんなものがあるか見ていきましょう。
ツーバイフォー住宅は施工中の雨に泣かされる工法として、むかしから言われてきました。
ツーバイフォーは壁の建て起こしにも時間がかかりますし、屋根掛けにも時間を要します。
土台割付けから1、2階の壁の建て起こしが終わり、小屋組ができるまでに1ヶ月かかる現場もあります。
職人の数が限定される場合はそれ以上かかることもあります。
床パネルなどは「ツーバイガード」等の特殊なフィルムで包んだ資材が納入されますし、構造用合板は「特級」といわれる耐水合板が使われます。
それでも屋根がかかるまでに結構な時間を費やしてしまうのはツーバイフォー住宅の欠点です。
いっぽう在来工法は土台敷き、柱立てから棟上げも、数日程度で進みます。
雨の多い日本ならではの工法です。
ただ、ツーバイフォー工法も工場で壁パネルづくりを済ませる現場もあり、そうした現場では屋根掛けまでの時間も大幅に短縮されました。
そのこともあり、シート養生したままのツーバイフォーの現場を目にする機会は、むかしにくらべて少なくなっています。
枠組壁工法は面で支える構造のため、窓などの開口部はまぐさといわれる補強材が必要です。
このためツーバイフォー住宅は、開口部は取り付けられる窓や建具の高さは自ずと制限されます。
窓高が揃って見える点は美しいのですが、意匠的に開口部を天井高まで伸ばしたい場合は工法の変更を検討しなければなりません。
開放的な間取りを計画する場合、ツーバイフォーは除外されやすい工法です。
[su_box title=”関連記事” style=”bubbles” box_color=”#0075c2″ title_color=”#ffffff”]・【新築】注文住宅の間取りはどうやって決める?ポイントや流れを解説![/su_box]最近では耐震性能を上げるために見かける機会は少なくなりましたが、建物の角に窓を設置するといった設計手法も、壁で強度を取るツーバイフォー工法ではご法度です。
建物のコーナーは工法に関係なく壁があったほうが構造的に安定しますが、耐力壁をずらすなどの方法で建物のコーナーに窓を設けることは、木造軸組やRC工法では割と普通に行われています。
ただし建物の強度を面で支えるツーバイフォー工法では隅角部には90cm以上の壁を設けなければならないため、こうした手法は使えません。
これもデザイン性の高い住宅を計画する場合に注意したいところです。
ツーバイフォー住宅は全国展開するハウスメーカーもありますが、地場資本の小さなメーカーにも多くのツーバイフォー・ビルダーが存在し、地域では高いシェアを築いています。
ツーバイフォー工法の良さは、シンプルなつくりながら高い省エネ性能と耐震性能を持ち合わせているところにあります。
ツーバイフォー住宅が若い世代の住宅取得者にもっと受け入れられると、面白い展開になりそうです。