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アフリカ開拓記

目次

ケニア・タンザニアで学んだこと

※この記事は、2016年8月に発表した講義を書き起こしたものです。

自己紹介

こんにちは。弦本卓也(つるもとたくや)です。

現在29歳になる私は、リクルートのSUUMOでにて、入社6年目を迎えます。また、日本全国高専生の進路や学習の選択肢を広げたり、受託開発アルバイトや企業訪問イベントを行なったりしています。

趣味はビル経営で、現在「弦本ビル」を購入して2年になり、ビル経営ライフを楽しんでおります。

アフリカへ行くきっかけとは?

そんな僕が、アフリカに2週間行くことになったわけですがきっかけになったのは、私と同世代の横山くんでした。

彼は、以前ケニアで少年海外協力隊として活動をしていた経験もあり、現在アフリカに関するメディアを運営しています。

そんな横山くんが、慶應大学の大学院のExecutive MBAという、経営者向けのアフリカスタディツアーをアテンドするという話を聞きました。

これは僕も参加させてもらわなければ!ということで、彼にあわせて個人旅行を計画することにしたのです。

「アフリカ旅行って…なんだか楽しそう。これを機会にアフリカの現状を知って、なにか筋のいい事業を考えることができるかもしれない」そう考えたのです。

アフリカへ行く前のイメージは?

アフリカ旅行を決心したのですが、じつはアフリカについて詳しく知っていたわけではありませんでした。

アフリカへ行く前に、アフリカについて勝手に抱いていたイメージは、テレビで見る情報で、「砂漠が多そう、野生動物たちがたくさん生息してそう、飢えに苦しむ子供達がいる」といったことぐらいでした。

お恥ずかしいのですが、当時の僕のアフリカのイメージは、そのようなものでした。

しかし一方で、アフリカに関する本も発売されていました。『歩き続ければ大丈夫』という佐藤芳之さんの本と、『世界で働く』という金城拓真さんの本です。

このおふたかたは、アフリカで起業して成功している方たちです。その本を読んで、アフリカに興味を持ちはじめました。

ちょうど同じ時期にタイミングよく、DMM社の「DMM Africa」の事業がはじまり、日本の企業もアフリカに注目していることを知りました。

「アフリカって経済面でも面白い国なのかもしれない…」そう思いはじめたのです。

アフリカの下調べ

「面白そう!」と思ったところで、早速アフリカの下調べをしました。そうすると、どんどんと、行く気を阻害されそうな事実が続出しました。

例えば、犯罪強盗が入るだとか、黄熱病、マラリアなどの病気があるだとか、外出して歩き回らないでとか恐ろしいことばかり。

しかも「歩き回らないで」という注意書きが「地球の歩き方」に載せられているのではないですか!「これはただごとではない」と直感します。

でもせっかくアフリカに行くんだったら、アフリカの地を歩きたい!そんな下調べの挙句、僕が選んだ道とはそう「人生の引き継ぎ」をするということ。

「LINEに遺書のようなもの」を家族に当てて送り、万が一のときに備えて人生の引き継ぎのマニュアルを作成して、それからアフリカへ飛ぶことにしたのです。それほど、命がけだったんです。

アフリカに行った実際のイメージ

こうしてアフリカに旅立った僕ですが、実際にアフリカについたときには、少し拍子抜けしました。

意外と都会だったんです。ケニアの首都ナイロビなんかは、高層ビルが立ち並び、車もビュンビュンと走っています。夜は赤々とライトアップされているんです。

あれほど、心配して覚悟していた病気や犯罪に巻き込まれることも、僕の場合は一切ありませんでした。

「あれ?アフリカって意外と都会だったの?」というのが僕の率直な感想です。

アフリカで実際に行った場所

僕がアフリカで行った国は、ケニアとタンザニアです。

ケニアでは、ナイロビ(首都)、ナイバシャ、マチャコスという中都市、マクエニという小都市をまわりました。

タンザニアでは、ダルエスサラーム(タンザニア最大の都市)とムクランガという小都市を回まわました。

そして、僕がアフリカで実際にやったことは、左脳的なアプローチと右脳的なアプローチの2つのアプローチです。どんなアプローチだったのかそれぞれご紹介します。

左脳的アプローチでは、有識者との議論を楽しみました。

例えば、日本から来られているMBAをとっている有識者のみなさんと、今現在アフリカで活躍されている日本人、アフリカの現地人などとの会話を楽しみ、刺激を受けました。

一方で右脳的アプローチでは、現地の生活を体験してみました。

例えば、実際に街を歩いてみました。行った場所はショッピングモールのような近代的な場所から、地元との市場など様々です。

アフリカの都市から地方まで歩いてまわり、現地のお宅にもお邪魔しました。

アフリカの現地を見て学んだ3つのこと

そうやって右脳と左脳を使ってアフリカの現地を色々と見てまわった後、僕が学んだことが3つありました。

ひとつめは、「現地を知る」ことの大切さです。

自分の頭の中で勝手にイメージしたことと、現実は大きく異なっています。実際に僕のアフリカへ行く前といた後ではイメージが大きく異なっていました。

実際に現地の人たちと知り合いになり、その方々の意見を聞き、現地の人々や会社の現状について直接意見を聞くことが大切だと感じました。

それと同時に、実際に現地に飛び込み、自分でアフリカの状況を肌で感じないかぎり、海外で起業するのは難しいんだろうなと感じました。机の上で考えるだけではだめなんだろうなと思いました。

ふたつめは「常識を疑う」ということでした。

当然のことですが、日本とアフリカでは常識や文化が違います。日本では当たり前と思っていた常識が、アフリカではまったく通じないということの方が多いのです。

日本は日本人が中心の民族だと思います。そのため、考え方や感じ方など価値観がある程度一致しているので「常識」も共通しやすいという傾向にあると思います。

一方で、アフリカでは多くの民族が共存していることも珍しくありませんでした。「自分の常識が、相手の常識」とはかぎらず、これは、「約束を守る、守らない」「労働者の働く態度が違う」「労働時の法令の守り方が適当」などにも現れているように感じました。

実際に日本と同じような感覚で起業すると、現地の人と誤解が生じて、大変なことになりそうです。

みっつめに学んだことは、「やりきることの大切さ」です。

アフリカ現地には、現地の人や海外起業家も多く、たくさんのアイデアが飛び交っていました。そしてみんなやる気が溢れていました。

まだまだ開発途中というのは感じますし、日本の常識を大きく壊してチャレンジしなければいけないので、苦労が多いのも事実でしょう。しかし、その分可能性が多く秘めているということを感じました。

そのため、長い目でみながら自分で「やりきる」気持ちがあるかが大事だと認識しました。

アフリカで感じたギャップ

実際にアフリカで起業するとどうなのかということをイメージしながら現地の状況をリサーチしていると、3つのギャップを感じました。

ひとつめは、「高い物価と安い人件費」についてです。

まず、安い人件費の割に物価が高いということでした。たとえば、近代的なショッピングモールで売られている商品の物価は、日本とほぼ同じ値段だったのです。

現地の食品や商品はまだ安いのですが、海外からの輸入品となると日本と変わらない価格設定でした。たとえば、シャツが2,000円であったり、靴が3,000円、かばんが25,000円などでした。

輸入品が集まるマーケットと呼ばれる市場では、海外の中古品が数多く出回っていました。マーケットを通じて、輸入品は都心から地方へと流通していきます。

その際、地方へ輸送するときには輸送費がかかるため、地方に行くほどに価格が高くなるということが起こっていました。

一方で、現地の人は洋服や美容にお金をかけています。今はインターネット社会なので、外からの情報が入り、欲求を掻き立てられて、自分たちも憧れの生活に近づきたいという気持ちが強くなっているのかもしれません。

ただ、彼らの人件費はというと、現地スタッフの月給でみても、日本円で2万円〜3万円ほどというのが現実でした。物価と給料が明らかに釣り合っていないのがわかります。

ただし、役人や経営者などの富裕層の月給は、40万円以上という高い給料でした。日本の平均給与とあまり変わらないのではないでしょうか。ここからは、貧富の差が激しいことが読み取れます。

この貧富の差は交通費にも現れています。通常の人が利用するバスは30分ほど乗っても約30円~50円程度なのですが、富裕層の人が利用するタクシーは、30分で300円ほどでした。

日本人の感覚からすると300円は安いと思いますが、月給2万円の人からすると、300円は安くはないと言えそうです。

ふたつめに感じたギャップは、「ネットとそれ以外のインフラの整備」のギャップです。

いま、日本ではスマホが普及していますが、じつはアフリカでもモバイルの普及率が高く、特にスマホが大人気でした。

さらに、モバイルの送金システムの普及率が高く、地方の隅々まで店舗が存在していました。裕福でない人も、スマホにお金をかける人を多く見かけました。

余談ですが、現地にはインキュベーション施設もありました。インキュベーション施設とは起業をするために活動している人を支援する施設のことで、比較的安い値段で入居することが可能な施設のことです。

インキュベーション施設に入居している起業家に話を聞いてみたたころ、やはりネットの普及率の高さに目をつけて「IT×〇〇」を狙っているとのことでした。

この〇〇に起業家のアイデアや工夫、個性があらわれてくるのだと思います。アフリカではとくに、ファイナンスやヘルスケアが流行しているので、そちらの方からのアプローチも可能かもしれません。

このようにネットが普及している反面で目立っているのは、その他のインフラの設備の悪さです。ケニアの首都ナイロビからたった2時間しか離れていない場所でも、お湯が出ないというのは珍しくありませんでしたし、4時間離れた場所になってくると、水道の設備も完備されていませんでした。

タンザニア最大の都市、ダルエスサラームから車で2時間しか離れていない場所でも、ガスや水道、電気が完備されていないのが現状でした。

また道路の整備が車の普及に追いついていないので、ひどい交通渋滞も起こっていました。このように、現代的に見えてまだまだばらつきがあるというのがアフリカの現状だと感じました。

みっつめは、「貧富と情報の格差」というギャップでした。

スマホとネットの普及率が高いのにも関わらず、カスタマーに対して平等な情報メディアがないというのを感じました。

現地の人はネットの情報を基本的に信用していないようで、スマホは友達や家族との電話やSMS、チャットの目的で使っていました。彼らの交流の主体はリアルなつながりのようでした。

職探しや家探しも、知り合いづてで探すというのが現状だそうです。血縁による「コネ社会」がいまでも当たり前のようでした。

よっつめは、「不健全な人事制度とモチベーションの低さ」です。

コネ入社やコネ昇給が多く、不健全な人事制度も当たり前になっていることから、その結果として富裕層は働かなくても給料が高く、貧困層は働いても賃金が低いという負のスパイラルにおちいているようにみえました。

貧困層は働いてもお金がもらえないとわかっているので、働くモチベーションが低く、すぐに転職してしまうようです。

いつつめは、「仲介人問題」です。

正しい情報がないので、情報の非対称性による仲介人の搾取という問題が起こっているようでした。仲介人は、購入元や販売先などの情報を明かさずに搾取をつづけます。その結果、生産者は仲介に人に安く買いつけられ、消費者は高く売りつけられるというのが現実のようです。

教育制度が整ってきていることから、インテリ犯罪率が高まってきているという話も聞きました。教育を受けていない犯罪者は、スリや横領といった犯罪を犯すそうですが、教育を受けた犯罪者は、組織化された犯罪をおこない、会社のスキームを利用した横領などがおこなわれているそうです。

アフリカで起業するなら

アフリカで起業するなら、このようなギャップを踏まえたうえで、起業するのがよさそうです。しかし、実際に売上を出さなければ意味がありません。

そのためには、売上のアップとコストダウンに向けての2つの方向からのアプローチで考えてみます。

売上アップに向けてのアプローチとしては、まずは売上が見込める層をターゲットにする必要がありそうです。

現地で売り上げない場合は、コンサルや市場調査など海外から進出してくる起業から売り上げることができます。

一方で現地で売り上げる場合には、人口密度が高く富裕層の多い場所をターゲットにして市場にする必要があります。特にナイロビは、その条件に満たしているといえそうです。

コストダウンに向けてできることは、設備投資と人件費とのバランスです。現地の場合、設備投資をしたより、人件費でまかなった方がコストが低くなることがあります。例えば洗濯機を購入するより、洗濯を人に依頼した方がコストが下がります。

このようにバランスを考えるのが重要そうです。

また海外の既存サービスを横展開するのも1つのコストダウンの方法です。アフリカでは英語が通じるというメリットがありますので、この方法はかなりのメリットがありそうです。例えばUberは成功事例といってもいいでしょう。

このようなことを念頭において、僕が立ててみた事業アイデアはこうです。

かなり強引なところもあるのですが、アフリカで感じたことは「結局やる気があるかないか」これが一番大切なのではないかということです。

アフリカで学んだ7つのこと

最後に、僕は2週間のアフリカ旅行で7つのことを学びました。

①現地を知ること

起業するためにはまず、現地の様子や人々のことを知る必要があることを実感しました。

②常識を疑うこと

僕たち日本人が持っていた常識は世界では常識とならないことも実感しました。

③やりきること

現地にはすでにやる気のある現地の人、起業家が集まっており、アイデアもあふれています。苦労はたくさんありそうですが、まだまだこれから改善できるところが多いため、やりつづければうまくいく可能性が高そうです。そのような状況では、結局はそれをやりきれるかが一番大切だと感じました。

④捨てること

今回の旅でパッキングしている途中で、本当に必要なものだけを厳選する必要がありました。必要だと思って持っていったものでも、旅の途中で捨てるということもありました。

そうやって旅を続けていくうちに、本当に自分にとって大切なものが浮き彫りになりました。

そして、本当に大切なものは身につけることができない、目に見えないもので「家族や仲間」の絆、そして「知恵や経験」などだと実感しました。

⑤飛び込むこと

今回は飛行機での移動時間が長く、乗り換えもありました。飛行機から外を眺めていると、空、大地、海が広く繋がっていたので「世界って本当に広い」んだなと、ただただ感じました。

まだまだ世の中は知らないことが多く、世界も人類についても含めて、学ぶことがまだまだたくさんあるな」と感じました。本当に大切な知恵や経験を身につけるためにも、そんな世界に飛び込む勇気が大切だとあらためて感じました。

⑥感謝

今回、旅をして、日本人という国は本当に恵まれた国だったということも再認識しました。平和で安全に暮らせるということがどんなにありがたいことなのか。

水道があること、そして水道の蛇口をひねったら、水もお湯も出るということがどれだけありがたいことなのか、スイッチを入れたら電気がつくことがどれだけありがたいことなのか、そのありがたさが当たり前と思ってしまってました。そのことをもっと感謝しなければいけないと思いました。

そして、今回の旅には80人もの方が協力してくださいました。その人たちの助けがなかったら旅も成功しませんでした。そのことにも感謝して、この気持ちを同世代や後生に還元しなければと思いました。

⑦人類ってすごい

人類って本当にすごい、素直にそう思いました。

アフリカで学んだことを日本に持ち帰って活かしたいと感じました。

このようにたくさんのことを学んだアフリカ開拓記でした。最後に、アフリカ旅行でお世話になった方々に、この場を借りて心からの感謝とお礼をもうしあげます。どうもありがとうございました!

弦本 卓也

1987年、埼玉県生まれ。大学卒業後、大手広告会社「リクルート」にて不動産メディア「スーモ」(SUUMO)の運営に従事。新卒で入社して、スーモのメディアづくりを7年、その後にエンジニア組織の組織づくりを4年行う。 また、リクルート社内の部活動制度にて「大家部」を立ち上げ部長を務める。不動産投資に関する情報交換や物件見学のワークショップなどを行う。 入社2年目に新築一戸建ての広告を取り扱う部署に異動したことをきっかけに、「いい企画を作るためには、まずは自分で経験したい」という想いから個人で新築一戸建てを購入。その翌年には売却分野を担当したことをきっかけに売却も経験。マンションの売買なども行い、11年間で11回の引っ越しを経験。 「新しい住まいや暮らしを自ら探究したい」という気持ちで購入した東京都千代田区の神保町の中古ビル「弦本ビル」は、コワーキングスペース、シェアオフィス、シェアハウス、飲食店が入居する複合ビルとなっており、20代を中心とした若手社会人や学生のやりたいことを実現する場所として注目を集めている。3年間で延べ1万人以上の来場者を記録し、家賃年収1,400万円を達成しながら満室経営を続けている。 お金面とビジョン面の両立を大切にしており、モットーは「一人ひとりの可能性をもっと世の中に」。会社員を続ける傍ら、学生時代に起業した会社とあわせて株式会社を3社創業。うち1社は売却し現在は2社を経営している。他にもエンジェル投資家として若手実業家の支援を手がける一面も。 日経新聞や不動産業界紙、書籍や雑誌、テレビなどでも多数の注目を集めておりセミナー講師なども行う。宅地建物取引士を保有。

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