「競売でマイホームを安く購入したい!」
「競売には格安の儲かる物件が眠っている!」
「競売でお宝物件を落札したい!」
競売物件の購入を検討した人であれば、誰もがこのように思うことでしょう。
ひと昔前までは「怖い」「怪しい人が住んでいる」「よくわからない」など、非常にネガティブでマイナスのイメージを持つ方が多かったのですが、現在は法改正などが行われたため、不動産業者などのプロのみならず一般の個人投資家などの参加も増えています。
そうとはいえ、一般的にはまだまだ閉鎖的なマーケットであり、具体的な情報やリスクを知ることが難しい状況でもあります。
そこで今回は、競売物件の概要、手続きや流れ、スケジュール、メリット・デメリット、リスク、トラブル事例、向いている人・いない人など、競売物件について知っておくべき情報をすべて解説します。
この記事を読めば、あなたが競売に参加する時の判断基準となることでしょう。
目次
まずは、競売物件となる過程や概要について説明します。
なんとなく持っていた競売に対するあなたのイメージを、くっきりと明確にしましょう。
なぜ競売物件が生まれるのでしょうか。
まずは、そこから説明しましょう。
住宅ローンを利用してマイホームを購入した人が、リストラや病気などの事情で住宅ローンを支払っていくことができなくなった場合、債権者である金融機関は債権回収を行うために、裁判所へ競売の申立てを行います。
この段階で任意売却について債権者と合意が得られなければ、競売の申請手続きが進み、6ヶ月~1年程度の時間をかけて競売での落札へと至ります。
[su_box title=”関連記事” style=”bubbles” box_color=”#0075c2″ title_color=”#ffffff”]・任意売却とは?競売との違い・相談先・デメリット・売却の流れを解説![/su_box]また、ローン滞納ばかりでなく税金の滞納による差押えの結果、競売となる場合もあります。
<競売物件と一般流通物件の一覧表>
競売物件は一般流通物件と違い、すべて自己責任での対応となります。
まず、一般流通物件の場合、仲介を担当する不動産業者が物件の説明や現地案内を詳細にしてくれますが、競売の場合はすべて自分自身で対応しなければなりません。
また、物件の内部を確認する内覧も競売物件の場合は基本的にできず、外から確認するだけとなります。
さらに、一番大きな違いは競売物件は売主がいない、という点です。
競売はあくまでも債権回収が目的であり、一般の不動産売買取引ではないために売主は存在せず、一般流通物件であれば法律によって発生する売主の義務や責任を追及できないこととなります。
例として、物件の引渡し義務や瑕疵担保責任などがありますが、詳細については後で説明します。
このように、一般流通物件の不動産売買取引における買主保護がないため、リスクやトラブルはすべて自己責任となってしまうのです。
昔は、裁判所へ出向いて閲覧室で資料を確認するしか方法がなかったのですが、今はインターネットでも確認できるようになり、大変便利になりました。
インターネットで探す場合は、最高裁判所が運営する競売情報検索サイトである「BIT不動産競売物件情報サイト」が便利です。
全国の競売情報をまとめて検索でき、物件の概要や3点セット(後ほど詳しく説明)などの資料もダウンロードすることができます。
また、地方裁判所や各自治体のホームページ、新聞や住宅情報誌でも情報を確認することができます。
不動産の競売に参加する条件は、特にありません。
基本的に競売不動産を購入したい人であれば、誰でも参加することができます。
ただし、その競売不動産の債務者は競売に参加することはできません。
以前は、外国人の参加が制限されていたこともありましたが、現在は外国人登録書などの資格証明書を提出することで参加が可能となっています。
また、競売不動産が農地であれば、買受適格証明書の提出が必要な場合もあるため、この証明書が取れる農業従事者でなければ参加することができません。
競売の3点セットとは、裁判所の閲覧室や「BIT 不動産競売物件情報サイト」などで公開されている「物件明細書」「現況調査報告書」「評価書」の3つの書類をいいます。
<3点セット>
物件明細書は、競売の対象となる物件の物件所在地、物件の面積、売却基準価格、権利関係に関する情報、売却条件などが記載された書類です。
現況調査報告書は、裁判所の執行官が現地調査を行ったうえで、物件の現状についてまとめた書類です。
書類には土地や建物に関するデータ、占有者の氏名および占有状況、関係人の陳述、執行官の意見、間取図、現地写真などが詳細に記載されています。
なお、BIT不動産競売物件情報サイトによる資料ダウンローでは個人名などは黒塗り処理となっていますが、裁判所の閲覧室ではすべて公開されています。
あくまで執行官が調査した時点での情報となりますので、現状については自分で確認することが一番です。
ただし、物件内部の内覧はプライバシーの問題もあり、基本的にできないものと考えましょう。
評価書は、裁判所から委託を受けた不動産鑑定士が作成した書類です。
物件の周辺環境、法的な規制、物件の詳細な内容などが記載され、適正価格の算出根拠も示されています。
また、物件周辺の地図や公図、建物図面、地積測量図などの法務局資料も添付されています。
ただし、いずれの書類も裁判所がその内容を保証するものではなく、すべて自己責任となるため注意しましょう。
次に、競売の手続きや流れ、スケジュールについて説明します。
<競売手続きの流れ>
まずは、競売においての予算を決めます。
自己資金のみならず、ローンを利用する場合は事前に金融機関などに打診して融資可能額を確認するなど、準備をしておく必要があります。
BIT競売情報検索サイトなどを利用して競売物件の物件情報を確認し、どの物件に入札するのかリストアップしましょう。
次に、リストアップした対象物件の3点セットを確認します。
裁判所に出向けば、3点セットの原本を確認できます。
また、入札前には必ず現地調査を行いましょう。
現況調査報告書は入札開始の数ヶ月前に作成されており、記載されている情報はその時点でのものです。
その間に状況が変わっている可能性がありますので、リスクを減らすためにも現地調査は欠かせません。
入札期間(入札開始日~最終日)は、BIT不動産競売物件情報サイトで確認できます。
入札する物件が決まりましたら、入札手続きを行います。
裁判所で取得できる入札書などの関係書類、印鑑(認印可)、住民票、保証金を用意して入札します。
ここで気を付けたいのは、入札するにあたって保証金(入札希望物件の売却基準価額20%)を用意しなければならないことです。
入札を希望する物件の売却基準価額が1,000万円であれば、200万円を納付する必要があります。
万一、落札できなかった場合は返還され、落札できた場合はもちろん代金の一部に充当されます。
開札期日もBIT不動産競売物件情報サイトで確認できます。
開札結果は裁判所で発表されますが、BIT不動産競売物件情報サイトでも結果を確認することができます。
そして最高価格の買受申出人(入札者)に対して、裁判所から売却許可決定が下ります。
売却許可決定が下りてから、1週間内に執行抗告の申立てがなければ,売却許可決定が確定します。
売却許可の確定後、物件内に現所有者や第三者の賃借人などの占有者が居住していれば、明け渡しについての交渉をします。
一般的には「引越し費用を負担するので期日までに明け渡してほしい」といった含みを持たせる交渉となります。
ただし、引渡し命令は残代金の納付後となりますので、ここではあくまでも明渡し期日や条件の交渉となります。
売却許可の確定後1ヶ月半程度で、裁判所から「代金納付期限通知書」が送付されてきますので、その内容に従って必要書類を提出し、代金の納付を行います。
代金の納付後、引渡し命令の手続きを行えるようになります。
前の所有者や第三者が占有している場合は、この時点から立ち退いてもらうよう交渉ができます。
万一、交渉が難航した場合は、必要に応じて引渡し命令の手続きを申し立てましょう。
そうすれば、最悪の場合強制執行の申立てが可能となります。
代金の納付後1週間程度で、裁判所が嘱託登記手続きによって所有権移転登記を行います。
その後、登記識別情報通知書が送られてきますので、大切に保管しておきましょう。
物件の引渡しは、買受人の責任と負担において行わなければなりません。
万一、物件内に前所有者の残置物などがあった場合は、勝手に処分することなく、法律に則って処理をする必要があります。
次に、競売物件のメリット・デメリットについてそれぞれ解説します。
前述の競売物件と一般流通物件との違いを参照しながら、確認しましょう。
まず、何といっても一般流通物件より価格が安いことがメリットです。
通常、競売物件の売却基準価額は相場価格より20~30%程度減額されています。
売却基準価額とは、不動産鑑定士の評価による価格をもとに、裁判所が競売不動産の価値を判断した金額です。
競売物件は一般流通物件と違い法律による買主保護がなく、あらゆるリスクやトラブルに対してすべて自己責任で対応しなければならないため、落札者が背負うリスク分を減価しています。
ここで注意したいのが、買受可能価額です。
買受可能価額は売却基準価格の80%で設定されており、入札は買受可能価額以上の金額で行わなければなりません。
つまり、入札の際に基準となるのは買受可能価額ですので注意してください。
入札時に支払う保証金は、売却基準価額の20%となっています。
<実際の競売物件の売却基準価額・買受可能価額・保証金の額の例>
競売物件は居住用不動産だけではなく、オフィスビルや賃貸アパート・賃貸マンションなどの収益物件、駐車場や更地などの土地物件、店舗や事務所などの事業用物件など、物件の種類が非常にバラエティーに富んでいます。
時には、一般流通物件では見られないような特殊な物件を探すことも可能です。
このように、通常では売却されないような物件が見つかることも競売物件のメリットといえます。
競売物件を購入する場合は、原則自分一人ですべての手続きを行わなければなりません。
一般流通物件の場合は、仲介を担当する不動産業者が取引をすべてサポートしてくれることと比較すると大きな違いです。
手続きのミスなどで不利益なことが生じても、裁判所はノータッチであり、すべて自己責任で対応しなければなりません。
また一般流通物件の場合、不動産業者が物件の現況や概要、権利関係、法令上の制限、その他特に注意するべきことなどについて、重要事項説明書という書面を発行して説明してくれるため、買主は物件の詳細事項やリスクなどについて把握することができます。
万一、対象物件の重要事項について相違があれば不動産業者に責任を追及することもできます。
しかし、競売物件の場合は自分自身で3点セットをもとに物件の現況や権利関係、法令上の制限、起こり得るリスクなどについて自己責任で調査する必要があります。
また、競売物件の特性上、現所有者の協力が得られない可能性や裁判所の予算上必要最低限の現況調査しか行われていない可能性があるため、自殺・殺人・孤独死などの事故物件がその事実が隠されたまま競売に出ていることもあり、知らずに購入してしまうケースがありますので注意が必要です。
現地調査や物件調査など手間や時間をかけ準備し、入札に臨んでも必ず落札できる保証はありません。
それまでの準備や努力が水の泡となることがあることを、あらかじめ理解しておきましょう。
法改正による一般参加者の増加により競争が激しくなっている傾向にあり、他の入札者による落札だけでなく競売の取下げや取消により入札自体が中止となることもあります。
競売物件の代金の支払いは、期限までの現金一括納付となります。
落札から2~3日程度で売却許可決定が下り、そこから1ヶ月半程度で代金納付となるため、非常にタイトなスケジュールで資金を用意しなければなりません。
そのため事前の予算策定が非常に大切であり、自己資金以外の資金調達を検討している場合は、融資実行のスケジュール調整について注意が必要です。
また、入札時には保証金を用意しなければなりません。
保証金は売却基準価格の20%となるため、売却基準価額にもよりますが数百万円程度の現金の用意が必要です。
ただし、落札できなかった場合には保証金は全額返還されますので、損失が出ることはありません。
続いて、競売物件に潜むリスクについて確認していきましょう。
競売物件は、基本的に物件内部の内覧ができないため、現況調査報告書の間取図と写真をみて判断するしかありません
一応、内覧の制度はあるのですが、所有者や占有者の同意を取ることが難しいため実現の可能性が低いのが現状です。
そのため、内部の状況や状態を事前に確認することができず、明け渡しの時になって初めて把握することとなります。
前所有者や占有者によっては内部の使用状態が極めて悪いケースや、設備が想定以上に劣化しているケースなど、予定外の工事費が発生するリスクがあります。
一般流通物件の売買取引においては、売主には「瑕疵担保責任」があります。
[su_box title=”関連記事” style=”bubbles” box_color=”#0075c2″ title_color=”#ffffff”]・瑕疵担保責任とは?期間・時効・免責について詳しく解説![/su_box]「瑕疵」とは欠陥や故障、不具合を意味しており、売主は一定期間(2~3ヶ月が多い)内の瑕疵に対して修繕などの対応をする義務を負うことが多いのです。
しかし競売物件の場合は、売主がいないため瑕疵担保責任を負ってくれる人がいません。
万一、落札した物件に雨漏りやシロアリ被害などの瑕疵があった場合は、落札者が修繕費を全額負担することとなります。
前項の通り、入札者は明渡しまで内部を確認することができないため、瑕疵を発見することが難しい点もリスクです。
一般流通物件の場合、売主は代金の受領をし、所有権移転とともに物件を引渡す義務を負います。
物件の引渡しとは、売主が物件のカギや設備類の取扱説明書などを買主に引渡し、残置物などを残すことなく買主が物件をすぐに利用できる状態にしておくことです。
競売物件の場合、所有権移転登記は裁判所が嘱託登記手続きによって行ってくれますが、売主がいないため物件の引渡し義務は発生しません。
もちろん、前所有者や第三者の占有者がいる場合は、立ち退きも落札者自身で対応しなければなりません。
ちなみにカギの引渡しが受けられないため、占有者や残置物が存在しない場合には、裁判所からの売却許可決定通知書や登記簿謄本、身分証明書などを提示して鍵専門業者や管理会社など立会いのもと開錠します。
競売した物件が区分所有マンションなどの場合、前所有者が滞納している管理費、修繕積立金、駐車場代金などがあれば、落札者が負担しなければなりません。
そのため、入札の際はこういった滞納金などの考慮のうえ、入札価格を決める必要があります。
ここでは、実際に生じた競売物件のトラブル事例を紹介します。
Sさんは競売で希望物件を無事落札しましたが、前所有者が明け渡しに応じてくれずに、いつまでも居座っていました。
それどころか、明け渡し交渉に行ったSさんに威圧的な言葉で恫喝する始末です。
Sさんは引越し費用の負担を前提に交渉していましたが、前所有者は法外な立ち退き料を請求しており、交渉は平行線のままでした。
Sさんは覚悟を決めて裁判所に引渡し命令の申し立てをし、強制執行まで法的に粛々と進めることにしました。
その結果、裁判所から委託を受けた執行官の手を借りながら、明け渡しを終えることができたのです。
ちなみに、Sさんの明け渡し交渉に前所有者が応じなかったため、引越し費用も負担することはありませんでした。
【このトラブルの解決ポイント】
このように、時と場合によっては法的に明け渡し手続きを進める覚悟が必要です。
Mさんが落札した物件の内部を確認したところ、占有者はいなかったのですが残置物(=ほとんどゴミ)が大量にありました。
いわゆるゴミ屋敷状態です。
内覧ができず、3点セットの写真でも確認できなかったのです。
この場合、残置物がたとえゴミに見えても、前所有者の了解なしに勝手に処分することは不法行為となるためできません。
そこで、Mさんは内容証明郵便で前所有者に残置物の引取りを依頼し、同時に不要物の場合は買い取る旨も提示しておきましたが、協力は得られませんでした。
そのため、Mさんは強制執行の申立てを行い、法的手続きにより残置物の処分を行いました。
【このトラブルの解決ポイント】
3点セットの現況調査報告書の建物内部写真で、動産などの残置物やゴミが多くあることが確認できた場合は、残置物の処分などのトラブルや費用を想定して、入札価格の調整や場合によっては撤退することも大切です。
Wさんは代金納付後、落札した物件にひどい雨漏りがあることを発見しました。
事前に内覧が行えていれば、天井の雨漏りの痕跡を確認できたのですが、3点セットには記載がありませんでした。
競売物件は瑕疵担保責任を追及することができないため、修繕費の費用負担や損害賠償請求はできません。
ただし、Wさんは一定の瑕疵に対する費用を考慮したうえで入札価格を決めていたため、その分の予算から雨漏りを修繕できたのです。
【このトラブルの解決ポイント】
3点セットをよく確認し、記載されている注意点や瑕疵の説明について把握しておきましょう。
そのうえで、確認されない瑕疵があることも想定し、必要に応じてそのリスク分の費用を考慮して入札価格を決めましょう。
ここまでで競売物件の特性や注意点、手続きの流れ、メリットやリスクなどに関してご理解いただけたかと思います。
最後に、どんな人に競売はオススメなのか、という点について説明します。
競売がオススメな人は、ズバリ!「自己責任ですべてをやりたい」という人です。
3点セットを詳細に確認し、現地調査や近隣調査などを行い、その際には近隣の不動産業者へのヒアリングも欠かせません。
また、当初策定した予算に想定工事費やリスクなどを数値化して盛り込み、収益性や投資回収率を検証し、最終的な入札価格を決定します。
そして、入札に臨むのですが落札できなければここまでの努力や時間、手間、コストなどが全て無駄になります。
無事に落札できた場合は、占有者の明け渡し対応や代金納付準備、必要に応じて強制退去の申立てなどを行い、初めて自分の物件となります。
そして、必要な修繕工事やリフォーム工事などを行い、転売したり賃貸したりすることでひとつのゴールを迎えるのです。
競売とは、ここまでの道のりをすべて自己責任で行わなければならないのです。
安直に競売で金儲けがしたい、と考えているだけでは必ず失敗します。
能動的に自分自身で考えて動き、リスクを最小化し、自己の責任と負担によって競売に向き合える人であればオススメといえるでしょう。
反対に、向いていない人はどのような人でしょうか。
もうおわかりでしょうが、「何をしても人任せな人」や「何かというと人のせいにする人」は競売に向いていないといえます。
一般流通物件の場合は不動産業者がすべてサポートしてくれますが、競売物件はすべて自己責任ですので、こうした人は競売に参加することを止めた方がよいでしょう。
「自己責任で競売に挑戦してみたいが、初めてなのでイマイチわからない・・・」という人は、競売専門不動産業者の競売代行サービスを利用するとよいでしょう。
経験豊富なプロのサービスを利用しながら競売に慣れてくれば、自分自身で対応できるようになることでしょう。
競売物件の中には、思いのほか良い物件や求めていた物件があるかもしれません。
しかし、競売にギャンブル的なリスキーさがあることは間違いありません。
その点をよく理解しておかないと痛い目に遭う可能性があります。
あらかじめ、競売のリスクやデメリットをよく理解したうえで、事前の調査も可能な限り綿密に行い、決して安易な気持ちで競売に参加することのないように心掛けましょう。