Categories: 弦本ビル

週刊ビル経営に掲載していただきました!(その3)

「TOKYO PRODUCERS HOUSE」で奏でる「弦本ビル」物語

ビル内コミュニティを描いた『PRODUCERS』を出版

ビル業界におけるひとつのムーヴメント「TOKYO PRODUCERS HOUSE」(通称、プロハ)の軌跡を収めた書籍『PRODUCERS』が出版された。

日本社会において近年キーワードとなっている「シェア」という考え方。ビル業界においても、これまでの一区画にひとつのテナントではなく、ワンフロアを様々な人とシェアしていく「コワーキングスペース」や「シェアオフィス」はその走りだ。ただし『PRODUCERS』の舞台となっている「弦本ビル」のビルオーナー弦本卓也氏および、そのビルの2階に入居する「プロハ」はそれらとは一味異なる。彼らは既成のシステムを用いることなく、オーナーと入居者の協力によって自力で実践しているのだ。

彼らはどのようなストーリーを描いてきたのか、その前段となる弦本氏のビル購入や「プロハ」誕生までの経緯を見ていこう。

弦本氏はこれまで戸建などの売買経験はあったものの、ビル購入は初めてだった。「不動産売買の経験はありましたが、ビルは規模が大きく、発想としてありませんでした」と語る弦本氏。付き合いのあった不動産仲介会社から「面白いビルがあるんだけど」と持ち込まれた時、「まさか」というのが正直な思いだった。

「内見に行って、4階と5階が和室になっているのを見ました。私が考えていることは『新しい住まいや暮らしの方法』を実践していくことで、このビルではそれを実践していくことができるのではないかと思いました。その観点からビル購入を決めました」(弦本氏)

購入後に弦本氏が奔走したのはテナント探しだった。弦本氏は仲介事業者を利用するのではなく、様々な人と出会い、その中のひとつが「プロハ」の構想を持っていた早野龍輝氏や梶海斗氏だった。そこからオープンまでは早かったが、次の課題は築古の内装でも若者が集まるような空間をどのように創るかだった。

出した答えはDIYで改装していくことだった。工期前や工期中にも様々な課題に直面したが、7日間で改装を終えて創り上げた。この工事で全体の統括を行っていた梶氏は自らの手でDIYを行ったことについて次のように振り返っている。

「このプロハを自分たちが作ったというその自負や愛着だったり仲間感というのがコミュニティを強くしたと感じ、本当にDIYをやって大正解だったと思いました」

同書では「プロハ」のできるまでについての経緯や、このコミュニティに関わる運営者やイベント主催者、そして拠点にして動く起業家、会員の4つのカテゴリーのそれぞれに焦点を当てたインタビューが並ぶ。そこには彼ら・彼女らが「プロハ」をどのように使い、なぜこの場所を選んだのか、そしてそれぞれが事業として行っているビジネスの構想などについてのインタビューを掲載している。

本書の編集を担当した早野龍輝氏が編集後記で記した次の文章は「プロハ」のコミュニティの真髄を示す言葉だろう。

「住み込みで管理を担当しているメンバー中心に広がる輪が、プロハを強固なつながりにしていたのだ。きっとこのつながりは単なるレンタルオフィスには生まれないだろうし、一朝一夕でつくれるものでもない。時間をかけ、金銭以外の価値を追求してこそ生まれる価値なのだ」

弦本氏はひとりのビルオーナーとして「うまくいくビルオーナーの条件について僕なりの考えを述べるならば、『どんな問題にも柔軟に対応してテナントの意見を尊重することだ』と答える。テナントとの最初の関係は大なり小なり利害関係で成り立っているかもしれない。尊重していけば、テナントもビルも一体となって同じものを目指せると思う」と語る。

今回の出版はオープンから1年の軌跡を描いたもので、物語は現在進行形だ。だからこそ『PRODUCERS』も年刊形式に設定されているという。

紡がれていく物語がどこへ進んでいくか、それは1年ごとに発行されていく『PRODUCERS』で見ることができるだろう。

弦本 卓也

1987年、埼玉県生まれ。大学卒業後、大手広告会社「リクルート」にて不動産メディア「スーモ」(SUUMO)の運営に従事。新卒で入社して、スーモのメディアづくりを7年、その後にエンジニア組織の組織づくりを4年行う。 また、リクルート社内の部活動制度にて「大家部」を立ち上げ部長を務める。不動産投資に関する情報交換や物件見学のワークショップなどを行う。 入社2年目に新築一戸建ての広告を取り扱う部署に異動したことをきっかけに、「いい企画を作るためには、まずは自分で経験したい」という想いから個人で新築一戸建てを購入。その翌年には売却分野を担当したことをきっかけに売却も経験。マンションの売買なども行い、11年間で11回の引っ越しを経験。 「新しい住まいや暮らしを自ら探究したい」という気持ちで購入した東京都千代田区の神保町の中古ビル「弦本ビル」は、コワーキングスペース、シェアオフィス、シェアハウス、飲食店が入居する複合ビルとなっており、20代を中心とした若手社会人や学生のやりたいことを実現する場所として注目を集めている。3年間で延べ1万人以上の来場者を記録し、家賃年収1,400万円を達成しながら満室経営を続けている。 お金面とビジョン面の両立を大切にしており、モットーは「一人ひとりの可能性をもっと世の中に」。会社員を続ける傍ら、学生時代に起業した会社とあわせて株式会社を3社創業。うち1社は売却し現在は2社を経営している。他にもエンジェル投資家として若手実業家の支援を手がける一面も。 日経新聞や不動産業界紙、書籍や雑誌、テレビなどでも多数の注目を集めておりセミナー講師なども行う。宅地建物取引士を保有。

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