不動産投資を行う場合、なにか資格が必要かと考える方もいます。
大金が動く投資だけに、専門的な勉強の必要性を感じる人がいてもおかしくありません。
ただし、結論から言ってしまうと不動産投資を行うこと自体、特に資格は必要ありません。
一方で、不動産投資を有利に進める上で役立つ資格には、いくつか挙げられます。
そこで、不動産投資を行う上で役立つ資格とそれぞれのメリット、その必要性についてここでは取り上げていきます。
目次
不動産会社の人間と接していると、社員に宅地建物取引士の有資格者が多いことがわかるでしょう。
法律に則って不動産売買を行う事業者には、宅地建物取引士の有資格者が1/5以上いなければいけないという規定があります。
それだけに宅地建物取引士は、不動産を売買する上で専門的な知識を持っている人間であり、取得することで不動産に関する総合的な知識が身につくのです。
不動産売買を行う際には、その過程で必ず重要事項説明を行います。
重要事項説明の場では宅地建物取引士の有資格者が、買主と売主にそれぞれ説明を行うことが義務づけられています。
もちろん、自分が買主もしくは売主の立場にある場合には、宅地建物取引士の資格を取得しなければ不動産購入ができないわけではありません。
それでも資格を取得していれば、不動産会社側の話も理解しやすくなりますし、瑕疵など物件に潜む問題についても目ざとくなります。
不動産売買の場では、詐欺的行為や相手に対して不利益な行為を平気で働く人間がいます。
宅地建物取引士の取得で宅建業法に精通しますので、取引上の不正を見抜き、自分が不利益を被るような局面から逃れられるでしょう。
ただし、宅地建物取引士を取得しているからといって安い物件が買える、交渉を有利に進められるというわけではありません。
しかし、リスクを避けるという意味では、宅地建物取引士の免許は大いに役立ちます。
資格を相手に示せば「この人間は専門知識がある」と思わせられますし、不動産会社の人間にも一目置かれやすくなります。
従って、取引上での理論武装には大きく役立つ資格だと言えます。
取得までの必要な勉強時間も300時間程度と言われており、そこまでの難関資格ではありません。
不動産投資を行っていれば不動産に関する法律の知識は自然と身についてきますので、宅建業法に興味のある方であれば、それほど時間をかけずに取得できるでしょう。
不動産という名称を冠するだけあって、不動産に関する専門的な知識を身につけられる資格となっています。
宅地建物取引士と同様に国家資格ですが、取得までに必要な勉強時間は2000時間とも言われ、より専門的でかなりの難関資格です。
不動産鑑定士の主な役割は、不動産の価格を鑑定して値付けすることです。
例えば、裁判所が競売物件を売却に出す時、不動産鑑定士が物件の鑑定を行って売却の目安となる価格を算出します。
[su_box title=”関連記事” style=”bubbles” box_color=”#0075c2″ title_color=”#ffffff”]・競売物件とは?購入のメリットやトラブル・リスクを紹介![/su_box]難関資格と称されるだけあって、この資格を活かして就職できる会社も多く、不動産関係のスペシャリストとして様々な企業で活躍できます。
では、投資家の視点で観た場合、不動産鑑定士はどのような局面で役立つのでしょうか。
例えば物件の詳細を見ながら価格が妥当なものか、何か問題点がないかなどの瞬時の見極めで資格が大きな助けとなるでしょう。
場合によっては、非常に格安ながらも価値の高い物件を見抜けるようになることもあります。
また、副業として執筆活動やアドバイザーをしてお金を稼ぐこともできます。
不動産投資を行う上で非常に有用な資格のひとつといえますが、2000時間以上の勉強時間が必要です。
また、合格率が10%と低いこともあり、取得できる人はそう多くいません。
有用であることは間違いないのですが、取得までにかかる時間やコストの両面を考えた場合、決してコストパフォーマンスが良いと言えないのも事実です。
不動産の専門資格ではありませんが、資産形成やライフプランのアドバイスを行うための専門資格がファイナンシャルプランニング技能士です。
1級から3級までありますが、どれも国家資格であり、1級は実務経験が必要な難関資格のひとつとして知られています。
いわゆるファイナンシャルプランナーとして活動するために必要な資格ですが、ファイナンシャルプランナーには国家資格と民間資格があります。
このファイナンシャルプランニング技能士は国家資格ですので、泊をつけて活動するために是非とも取得しましょう。
この資格が何に役立つかと言うと、不動産投資を通じた資産形成のプランニングが可能になります。
不動産投資だけではなく、税金、保険、その他資産運用全般を行う上での知識を網羅できます。
不動産投資以外の資産形成や節税に興味のある人は、ぜひ取得してみると良いでしょう。
「不動産投資を行う時に、夫婦でどのように資産を分割すれば節税できるのか」
「どのような不動産投資を行えば、生命保険に入らなくて済むようになるのか」
「不動産投資以外にリスクを分散して投資するには、どのような投資手法が向いているのか」
などが把握でき、他人に対してもアドバイスできるようになります。
ただし、カバーする範囲が広いだけに、どうしても内容は広く浅くなりがちです。
ファイナンシャルプランニング技能士の資格を取得するだけでは、不動産投資についての専門的な知識が身につくわけではありません。
幅広い分野をカバーしつつ、さらに自分の得意分野を見つけて活動するための資格だと言えるでしょう。
「不動産投資について勉強中だが、他の知識も身につけて総合的な資産運用をしていきたい」という時に役立つ資格です。
これまでの三つの資格と違い、不動産実務検定は民間資格です。
ただし、不動産実務と名がついているだけあって、大家・投資家として不動産投資を行なう上で直接役立つ知識が体得できます。
いわば、実践的側面の強い資格です。
日本不動産コミュニティーという一般社団法人が主催している資格です。
資格の認定が始まったのは2009年。
内容は不動産投資に伴う修繕や管理、入居者募集、そして物件の購入から売却に関することなどで、基礎知識を全て学ぶことが可能になっています。
1級、2級、マスターまでの階級に分かれており、2級は基礎的かつ全般的な知識が身につきます。
1級は業者からの不動産購入だけではなく、自分で土地を購入してアパートやマンションを建てるという、より大規模な物件運営を行っていきたい専業投資家向けの内容となっています。
[su_box title=”関連記事” style=”bubbles” box_color=”#0075c2″ title_color=”#ffffff”]・アパート経営のリスクに要注意!失敗しないための10の知識[/su_box]マスター資格を取得すれば、1級や2級の資格の取得を目指す人のための講師業が務まるようになります。
国家資格の傾向として、不動産物件の運営で必ずしも役立つとは言えない知識も学ばなければいけませんが、この不動産実務検定は本当に不動産の運営に必要な知識だけを学べますので、無駄な勉強に時間を費やさずにすみます。
取得に関してはまず、テキストを購入して勉強するだけです。
2級ならば20時間程度、1級も50時間程度の学習時間で取得可能な点も嬉しいところです。
また、勉強会などを通じて大家同士のつながりを構築できる点、情報収集などに大いに役立つ点にも注目したい所です。
資格が直接の収入につながることはありませんし、就職に役立つわけではありませんが、不動産投資を行う上でとても有意義な資格と言えます。
2017年4月より中古物件の売買時には、ホームインスペクションの結果の通知が義務化されるようになりました。
日本は中古住宅の流通市場が海外に比べると小さな傾向にあり、国としても質の良い中古住宅の流通化を図ることで、資源の再利用と省エネ化を果たしていく方針を立てています。
そこで最近、注目されている資格が、ホームインスペクションを実施する住宅診断士(ホームインスペクター)です。
この資格を主催しているのは、日本ホームインスペクターズ協会というNPO法人です。
2008年開設の比較的新しい資格ですが、ホームインスペクションの需要が増えるにあたり、この資格の取得者も増加傾向にあります。
住宅診断士になると何ができるのか、どう役立つのかと言うと、物件に存在する瑕疵の有無を診断するだけの知識を身につけられます。
この資格を取得すれば、住宅診断士として活動することで報酬を得ることもできますし、自身が中古物件を購入するときに問題のある物件を見抜けるようになります。
特に築古アパートや戸建住宅などを専門に購入し、投資手法としてリフォームやリノベーションを実施して貸し出す人にとっては、物件リスクを避けるために大変役に立つ資格です。
日本は台風や地震などの自然災害が非常に多い国であり、21世紀に入って起きた二度の大震災以降、住宅の耐震性に目を光らせて物件を選ぶ人が増えています。
住宅診断士の取得があれば、自分の目で物件の耐震性を診断できますし、建物の腐食や雨漏り、断熱性や防音性の欠如などの致命的な欠陥を把握できます。
その上で、「どのように対処すれば大事に至らないのか」「どの程度リフォームに費用をかければ妥当なのか」など、明確な判断がつくようになるのです。
・木造住宅、マンションの主に構造に関すること
・住宅の給排水、衛生、空調、電気設備等の呼称や一般的な仕様に関すること
・木造住宅、マンションの施工に関すること
・木造住宅、マンションの劣化の判断に関すること
・住宅の調査・診断方法に関すること
・報告書の作成に関すること
・一般的な住宅の売買・取引の形態や契約に関すること
・業務に関するコンプライアンス、モラル、マナーに関すること
住宅診断士が行う業務や身につけられる知識は、上記の通りです。
国家資格ではないながらも、住宅診断士も不動産物件の購入に役立つ実践的な資格のひとつです。
資格はAmazonから専門の書籍を購入し、年一回実施される試験を合格すれば取得可能です。
住宅診断は外部に依頼すると、10万円程度の費用がかかります。
しかし、自分で診断できるようになれば、安心して住める住宅をしっかりとした根拠に基づいて売却できるようになります。
結果として売却時の費用を削減し、かつ、高い価格で中古住宅の売却が可能になるメリットは見逃せません。
住宅の劣化診断という狭い分野の資格ですが、「中古住宅を買いたい、売りたい」という人にとっては、大いに役立つ資格なのです。
不動産物件の運営や不動産投資全般に役立つ資格を紹介しました。
不動産投資に役立つ資格は数多くありますが、その資格を取得しているからといって、必ずしも不動産投資が成功するという保証はありません。
不動産関係の資格は、購入時の物件や契約に伴うリスクを軽減する目安として大いに役立ちますが、あくまでも資格取得は手段であり、最終的な目的ではないことを忘れないようにしましょう。
最終的に不動産投資の成否を大きく左右するのは、自分の経験から身につけたノウハウです。
少しでも多くの物件を見ること、運営することで得られた知識が、血肉として一番にあなたを支えるのです。