【筆者プロフィール】
・株式会社ケイズ・マネジメント 宇羽野 和人
・総合不動産会社経営10年、 不動産投資会社経営5年、 外資系不動産投資ファンド在籍5年
・2010年よりデベロッパー・不動産投資ファンドをはじめとする不動産事業者、個人投資家、一般消費者などへ不動産に対するソリューションやコンサルティングを提供し、相続や底地や借地などの権利調整の解決にも多数の実績あり。
・その他、BtoBの営業支援や新規事業支援などの経営コンサルティングにも多数実績あり。
・宅地建物取引士/2級建築施工管理技士/ファイナンシャルプランナー/賃貸不動産経営管理士/相続診断士を保有。
皆さんは、近年、サラリーマンの副業としてコインランドリー投資が注目されているのをご存知でしょうか?
「コインランドリーで投資ってどうやるの?」「本当に儲かるの?」と感じる方が多いかもしれません。
実は、コインランドリー投資は、利回りが高く安定的な運営が可能な投資なのです。
しかし、リスクやデメリットをよく理解していないと、思わぬ失敗をしてしまう可能性があるため注意が必要です。
そこで、この記事ではコインランドリー投資のメリットやデメリット・リスク、初期費用や利回り、アパート・マンション投資との比較、開業準備などについて徹底解説していきます。
目次
コインランドリーの需要が伸び続けているという現実がありますが、その訳とは一体どのようなものなのでしょうか。
まずは、コインランドリーを取り巻く現状について紹介します。
ひと昔前、コインランドリーについてのイメージを聞くと、
「銭湯の横にあった」
「学生時代に住んでいたワンルームマンションの共用部分にあった」
「ビジネスホテルに宿泊した時に見かけた」
と答えた人が多かったかもしれません。
1980年代半ば頃までは、お風呂が付いていないアパートやマンションが多く、入居している独身男性は銭湯に行くついでにコインランドリーを利用したり、室内洗濯機置場のないワンルームマンションで共用部分にあるコインランドリーを利用したりしていたのです。
ところが、1980年代後半から、お風呂や室内洗濯機置場があるアパートやマンションが普通に供給されるようになり、学生や独身者などの一人暮らしでもテレビ・冷蔵庫・洗濯機・電子レンジなどは日常的な必需品として、持っていて当たり前の時代を迎えてきました。
そのため、こうした男性の独身者をターゲットとした前記のようなコインランドリーは、次々と姿を消していったのです。
<コインオペレーションクリーニング営業施設に関する調査(施設数)>
引用元:厚生労働省ホームページ コインオペレーションクリーニング営業施設に関する調査 より
上のグラフは、コインランドリーの施設数の推移を表しています。
ちなみに、「コインオペレーションクリーニング営業」とは、洗濯機・乾燥機等の洗濯に必要な施設を設けて公衆に利用させる営業のことをいい、コインランドリーが該当します。
ただし、共同洗濯設備として病院、寄宿舎等の施設内に設置されているものは除きます。
このグラフによると、コインランドリーの店舗数は、1996年には全国で10,228店でしたが、2013年には16,693店にまで増えています。
各世帯への洗濯機や乾燥機の普及や前記のような独身者をターゲットとしたコインランドリーの減少に伴って、コインランドリーの全体の需要は減少しているかというと、そうではないことがわかります。
その理由とは、1980年代までは奥さんが専業主婦である世帯が一般的でしたが、1990年頃からは共働き世帯が増えていったためです。
つまり、独身男性向けの銭湯の横にあるコインランドリーは閉店していきましたが、郊外をはじめとするさまざまな立地での開業が増えていったのです。
特に、2000年代に入ってからは、女性の社会進出も目覚ましく、離婚によるシングルマザーの増加も手伝って、共働き・子育て世帯の家事負担を軽減できるサービスとして、ニーズが拡大しています。
現在では、コインランドリーの利用者の多くは、主婦をはじめとした女性です。
多くの主婦は専業主婦ではなく、パートやアルバイト、あるいはフルタイムの社員など、家庭内より家庭外で労働する時間が増えています。
働く時間帯は主に平日の昼間ですから、たとえ晴れていていても洗濯する機会が減ったり、部屋干しをして乾かなかったりして、土・日などの週末にまとめて1週間分を洗濯する…という家庭が増えたのです。
しかし、家庭用の洗濯機では、溜まった洗濯物を1回で洗濯することができないため、何度も洗濯機を回す必要がありますし、週末が必ず洗濯日和になるとも限らず、そうした場合は大量の洗濯物を乾かすのも一苦労です。
一般的に家庭用洗濯機の容量は、4人家族で6kg~8kg程度ですが、コインランドリーの業務用洗濯機は9kg~30kgと大容量であり、1回の洗濯で洗える洗濯物の量が圧倒的に違います。
毛布や布団などの大きな洗濯物も洗濯することができますし、洗濯と乾燥が一緒にできる洗濯乾燥機を利用すれば、洗濯開始時と回収時の2回だけ来店すればよいため、その間の時間を有効的に利用することもできます。
また、家庭用乾燥機は熱源が電気のため乾くまでに時間がかかり、仕上がりも快適なものではありません。
一方、コインランドリーの業務用乾燥機は家庭用と違ってガスで熱源を取っているため、洗濯物を短時間で一気に乾燥することができ、仕上がりもふっくらとしていて非常に快適です。
このように、一度に洗濯できる容量と乾燥後の仕上がりの質の2点から、コインランドリーのニーズが女性に根強いと考えられています。
<コインランドリーの洗濯機と乾燥機の事例>
独身男性をターゲットとしていた昔のコインランドリーは、テナントが入らないような古い建物にあり、洗濯時や乾燥時の洗濯物の盗難のリスクも高かったため、その場で雑誌などを読みながら1時間以上待っていなければなりませんでした。
そのため、清潔性や防犯性の面から、女性の利用者には敬遠されていたのも当然です。
しかし、現在のコインランドリーのイメージは全く違います。
建物や店内は清潔感にあふれ、子供連れの主婦のために授乳室やキッズスペースを併設したり、カフェや美容室、スポーツジムなどを併設したりして付加価値を高めているコインランドリーも登場しています。
<高付加価値型コインランドリーの事例>
防犯面においても、洗濯中は洗濯機や乾燥機の扉がロックされており、防犯カメラが設置されているため、洗濯物が盗難にあうリスクも低いといえます。
特に郊外立地型のコインランドリーは、駐車場が完備されており、店内も広くて明るく、中もよく見えるため入店しやすい特徴があります。
洗濯機や乾燥機の台数も多いために順番待ちをすることもなく、いつ来店しても気軽に利用することができるため、人気店が多いことも頷けます。
<駐車場完備の郊外型コインランドリーの事例>
厚生労働省が2018年3月に発表した「クリーニング業の実態と経営改善の方策」という調査レポートによると、一般クリーニング所(事業所)と取次所を合わせたクリーニング店の店舗数は1997年より減少の一途をたどっています。
<コリーニング施設数およびコインランドリー施設数の推移の比較>
引用元:厚生労働省ホームページ 平成27年度生活衛生関係営業経営実態調査(クリーニング業) より
このような現象が生じている原因はいくつか考えられます。
まず、形態記憶のワイシャツが普及したことです。
昔のサラリーマンは、クリーニング店でアイロンをかけてあるノリの利いたワイシャツを着ることが通常でしたが、形態記憶シャツが登場したことにより家庭でもシワがないワイシャツの洗濯が可能となったのです。
クリーニング店では、ワイシャツのクリーニング代が200円前後するため、1週間で1,000円、1ヶ月で4,000円と高いコストを負担しなければなりません。
そのため、ワイシャツなど日常的に着る衣類をクリーニング店に出すことが大幅に減ったのです。
また、クリーニング店の経営者にすると、売上が減少して行くことに加えて、原価率が高く利益率の低いビジネスを続けていくモチベーションを維持することが難しい状況です。
後継者が不足していることもあり、廃業する店舗が増加するのはやむを得ないことでしょう。
また、クリーニング取次店も人件費や家賃がかかるにもかかわらず、利益率が低いためビジネスを継続していくことは容易ではありません。
もちろん企業努力によってクリーニング事業を効率化・拡大化している事業者もいますが、こうした背景から廃業するクリーニング店が増えているのが実状です。
それに反して、コインランドリーの店舗数は右肩上がりに増加しています。
これによく似た現象としては、有人のガソリンスタンドが無人のセルフガソリンスタンドに代わっていったことが挙げられます。
今後は、無人のコンビニエンスストアも登場するといわれており、機械やコンピューター・AIなどの進化に伴って、さまざまな店舗の無人化が進んでいくでしょう。
まさに、フルサービスのクリーニング店は減少し、セルフサービスのコインランドリーが増加していくことは時代の趨勢といえるでしょう。
また、コインランドリーは装置産業であり、設備を設置してしまえば人件費がかからない利益率の高いビジネスモデルです。
そのため、ロードサイドに土地を所有する土地オーナーの有効活用ばかりでなく、個人投資家や一般事業法人が参入するケースが増えています。
こうした経営の観点からも、コインランドリーの店舗数はますます増えていくと予想されています。
土地オーナーの有効活用だけでなく、現役サラリーマンなどの個人投資家が次々とコインランドリー投資に参入しています。
ここでは、コインランドリー投資のビジネスモデルや特徴などについて解説します。
コインランドリー投資のビジネスモデルは非常にシンプルです。
店舗内に洗濯機や乾燥機などを設置して利用者を集客し、その利用料金で収益を上げるという仕組みです。
ただし、同じ無人型投資であるコインパーキングやトランクルームよりは、店舗運営的な側面を持っているといえるでしょう。
<ランドリー用洗濯機設置台数の推移>
引用元:厚生労働省ホームページ 「コインオペレーションクリーニング営業施設に関する調査」より
上のグラフからコインランドリー店舗の洗濯機設置台数を見てみると、2011年から2013年にかけて10台以下の店舗が増えていることがわかります。
そのうち、1~5台以下の店舗は全体の50%を超えています。
こうしたデータは、1~5台設置の小規模な店舗が増えており、規模的に個人の資本力でも取り組みやすいため、サラリーマンを含めた個人投資家の新規参入が増えていることを裏付けています。
ここでは、コインランドリー投資について、投資家や経営者の目線で特徴を確認していきます。
コインランドリー投資の第1の特徴は、装置産業であるということです。
装置産業とは、事業開始時に一定規模の投資をして施設や設備を要するビジネスのことをいいます。
コインランドリー投資は、初期段階で設備投資を行った後は、あまり固定費が必要のないビジネスモデルのため、多くの人が不動産投資に近いイメージを持っています。
コインランドリー投資において、土地を借りた場合の地代や店舗を借りた場合の家賃といった固定費が発生する場合がありますが、従業員を雇用する必要がないため、最大の固定費である人件費はほとんどかかりません。
たとえ雇ったとしても、清掃や集金などをする1日数時間のパートタイマーくらいです。
電気・ガス・水道などの水光熱費は、売上に応じて発生する変動費であるため、あまり問題ではありません。
また、洗濯機や乾燥機などの設備類は20~30年程度の耐久性があり、故障の際にもメーカーによる保証を受けることができます。
前章でも説明した通り、今後コインランドリーの需要は拡大していくと考えられています。
人口の減少が進んでいく中でも、女性の社会進出や共働き世帯・シングルマザー世帯の増加などにより、コインランドリーのニーズが増えていくためです。
コインランドリーが人々の生活に定着している欧米では、コインランドリーの利用率は20~30%といわれていますが、日本においてはまだ6%程度です。
生活スタイルが欧米化していくにつれて、コインランドリーの普及率は右肩上がりになると考えられています。
コインランドリー投資は、景気に左右されにくいことも特徴です。
不況になれば専業主婦も外へ働きに出ることになり、家で洗濯をする時間が取りにくくなります。
そのため、溜まった洗濯物を週末にコインランドリーで短時間に洗濯する…というケースが増えるでしょう。
また、景気が後退すれば節約志向が高まるため、クリーニング店よりも安価で洗濯することができるコインランドリーのニーズが高まります。
特に、毛布や羽毛布団、カーペットなどの大きな洗濯物はクリーニング店では数千円単位の料金が発生します。
景気が良く経済が順調な時はいいのですが、景気後退により給料カットや残業代カットなどが行われれば、各家庭においてクリーニング費用などは真っ先に見直しされる費用でしょう。
また、節約志向の利用者ばかりでなくこだわり派の利用者にとっても、コインランドリーでの洗濯物の仕上がりに対する満足度が高いことから、幅広い需要に対応することができます。
こうしたことから、コインランドリー投資は景気に左右されにくいといえるのです。
コインランドリーは利用者がお金を投入しない限り、機械が動かない現金ビジネスです。
そのため、一般的なビジネスにおける代金や売掛金の未回収リスクや、アパート・マンション投資における賃料滞納リスクなどとは無縁です。
確実な現金ビジネスのため、安定的に堅実な投資を行うことができます。
コインランドリーの商圏は半径2キロメートルと言われていますが、その地域に住む方々の生活利便性を向上させることにより、地域に貢献ができることも特徴のひとつです。
美容室やカフェ、コンビニなどを併設して付加価値を高めることによって、その地域においてなくてはならない店舗となっているケースもあります。
また、シルバー世代の方や子育てが落ち着いた主婦などを雇用することによって、社会貢献につながる面もあります。
次に、コインランドリー投資のメリット・デメリットについて見ていきましょう。
<コインランドリー投資のメリット・デメリット一覧表>
まず、コインランドリー投資のメリットとして空室リスクや在庫リスクがないことが挙げられます。
アパート・マンション投資では、物件に空室が発生すると賃料が入ってこないため、その分の収入はゼロとなってしまいます。
空室が続けばキャッシュフローにも大きく影響し、特にローンを返済している場合は返済分のお金をどこかから調達してこなければなりません。
コインランドリーの場合は売上が突然ゼロになることは考えにくく、空室リスクに悩まされることはほとんどありません。
また、物販や飲食などのビジネスのように在庫を抱えたり、ロスや廃棄をしたりする必要もありません。
在庫といえば、せいぜい洗剤を1ヶ月分ストックする程度であり、在庫リスクもほとんどないといえるでしょう。
コインランドリー投資の利回りは、店舗が賃貸物件の場合で10~15%程度、自分の所有物件の場合は20%程度の利回りが見込める可能性があり、初期投資の回収も短期間で行えます。
アパート・マンション投資の場合は一般的に6%程度が利回りの目安ですので、コインランドリー投資には高利回りのメリットがあるといえるでしょう。
アパート・マンション投資には数千万円から億単位の投資資金が必要ですが、コインランドリー投資にも一定の初期費用が必要とはいえ、アパート・マンション投資と比較すれば安価といえます。
また、コインランドリーの設備類は20~30年程度の耐久性があり、地域密着型のビジネスでもあることから、軌道に乗ってしまえば売上の変動がない安定的な長期運用が可能となります。
コインランドリー投資は装置産業ですので、人が常駐する必要がありません。
オーナー自身が掃除や集金管理などの運営業務を行えば、人件費はゼロ円です。
そのため、人材の質に頼ることもなく労務管理も必要ありません。
たとえ、その地域の主婦などをアルバイトやパートタイマーとして雇用した場合でも、月に数万円程度の人件費で済みますし、その人から口コミでコインランドリーを宣伝してもらえるといった効果も考えられます。
コインランドリーの運営には、特別な専門知識や専門技術だけでなく、営業スキルさえも必要ありません。
設備類のマニュアルを読めば誰でも操作することができますし、人材育成や専門技術の習得などの必要がないのです。
運営に必要な主な業務は清掃と集金であり、誰もができる業務といえるでしょう。
コインランドリーの粗利率は70~80%と非常に高い割合です。
設備類の償却と地代・賃料を除けば、必要経費といえるものは電気・ガス・水道などの水光熱費と洗剤代くらいだからです。
他のビジネスと比較しても、非常に高い粗利率であり、利益を生みやすいビジネスモデルといえるでしょう。
その年に高い所得が発生する場合、中小企業投資促進税制などの制度を利用して、即時償却を行えることは大きなメリットといえます。
洗濯機や乾燥機は70~80%の即時償却が可能であり、節税効果が非常に高いためです。
このように、建物や設備類の減価償却のみならず設備類の即時償却による節税効果が得られることも、高所得の人にとってはコインランドリー投資の大きなメリットといえるでしょう。
コインランドリーは基本的に無人で運営できますので、副業や兼業といったサイドビジネスとしてチャレンジすることができます。
主な業務は清掃・集金・機器メンテナンス・洗剤補充程度ですので、時間を有効に利用することもできます。
サイドビジネスとしては最適といえるでしょう。
現状の利用率から考えると、コインランドリーはこれから普及していく業態であると考えられており、のびしろのある成長ビジネスといえます。
そのため、まだまだ出店の余地も多く、先行者として商圏を確保できる可能性があり、経営努力と工夫をすることによって先行者メリットを大いに享受することができます。
コインランドリーは装置産業であるため、洗濯機や乾燥機などの設備類の設置、店舗としての内装や外装、駐車場の整備などのために一定の初期費用がかかります。
アパート・マンション投資と比較すれば安価といえますが、それなりの金額のため失敗は許されません。
もちろん、開業後は家賃や水光熱費などのランニングコストも発生するため、事前の資金計画や投資計画をよく精査してシミュレーションしておく必要があります。
一般的には、初期費用の30~40%を自己資金で、残りを金融機関等による融資によって資金調達する投資家が多いです。
先行者としてのメリットを享受できる一方で、「あの店が繁盛しているから開業してみよう」と多くの同業者が新規参入して競争が激化するリスクも考えられます。
これは、コインランドリーが魅力的な投資であるにもかかわらず、参入障壁が低いために起きてしまう現象です。
事前に、近隣にライバル店が参入することを考慮したうえで、事業計画や投資計画をシミュレーションしておくことが大切です。
ライバル店が出現した場合の対応策を考えておかずに、価格競争にでも巻き込まれてしまえば、資本力の差によって結果が決まってしまいますので注意が必要です。
どんなビジネスでもそうですが、コインランドリー投資にも赤字のリスクがあります。
集客がうまくいかずに売上が軌道に乗らない場合、赤字となるばかりか融資の返済すら滞納するという最悪のケースも考えられます。
事前の商圏調査や売上げ予測、資金計画、投資計画、集客方法などを綿密に策定して、万一のリスクに備えておきましょう。
コインランドリーの場合、店舗に合わせて設備類の配置や設計を行います。
そのため、一度店舗の場所を決めてしまうと、他の場所への移転が難しいデメリットがあります。
また、店舗の広さなどを考えると、他の業態への転用も難しいため、店舗の立地選びが非常に重要であるといえます。
それほど頻度は高くありませんが、「洗濯機や乾燥機など機械の故障」「いたずらや盗難」「利用者からの理不尽なクレーム」「不審者等による迷惑行為」など、無人運営ならではのトラブルが発生するリスクがあります。
ただし、防犯カメラの効果的な設置や店舗巡回などを行うことにより、こうしたリスクを抑止することは可能です。
続いて、コインランドリー投資の初期費用の内訳と目安について説明します。
ここでは、50平方メートル(約15坪)程度の店舗で開業する場合の初期費用について、考えてみましょう。
なお、ここで明記している金額は、すべて消費税別ですので注意してください。
自分で店舗にできる物件を所有していない場合、第三者から店舗を借りて開業しなければなりません。
そのためには、店舗の賃貸借契約を締結する必要があり、契約費用が発生します。
一般的に、1階店舗の賃貸借契約をする場合、保証金(敷金)・前家賃・仲介手数料など月額賃料の3ヶ月~12ヶ月程度の賃貸借契約費用が発生します。
月額賃料が15万円で、仮に賃貸借契約費用が6ヶ月分必要な場合は、約100万円程度の費用が必要となります。
自分で物件を所有している場合は、これらの費用は発生しません。
土地だけ所有している場合は、建物を建築する建築工事費が必要です。
店舗の内外装工事として、「電気工事」「給排水設備工事」「ガス工事」「ダクト工事」「看板工事」「内装仕上工事」などの工事費が約600万~700万円程度発生します。
店舗面積50平方メートルの小型店舗の場合、店舗プランにもよりますが洗濯機3~4台、乾燥機7~8台程度を設置します。
この場合の費用の目安は、約1,200万~1,300万円程度です。
初期費用の中では最も高額な費用であり、機械のスペックを下げればコストダウンすることもできますが、利用者の期待を裏切るリスクもあるため注意が必要です。
なお、これらの設備機械類を購入せずにリース契約を締結することによって設置した場合は、初期費用を大きく抑えることができますので、事前にメーカーやフランチャイズ本部などに確認してみましょう。
前述の費用のほかに、フランチャイズに加盟する場合は加盟金、店舗物件のマーケティング費用、ポスティングチラシやオープニングセールなどの広告宣伝費用が別途発生しますので、あらかじめ注意しましょう。
「開業のための準備資金」を除いた初期費用の合計は、約1,800万~2,100万円程度となるため、小型店舗を開業する場合の初期費用のひとつの目安は2,000万円と考えておきましょう。
アパート・マンション投資を行う場合の数千万円~億単位の投資資金に比べれば安価ではありますが、個人が投資する金額としては大きな金額といえるため、事前の商圏調査や事業計画、収支計画などを綿密にシミュレーションしておく必要があります。
ここでは、コインランドリー投資の利回りの目安について、前章の事例を使って確認してみましょう。
利回りは収益性を検討するうえで、大変重要な指標ですので、しっかりと理解しておきましょう。
コインランドリーの利回りを算定する計算式は、
利回り=(売上-ランニングコスト)÷初期費用×100
となります。
前章の店舗(店舗面積50平方メートル)を借りた場合に、
売上予測:60万円/月
初期費用:2,000万円
店舗賃料:15万円/月
ランニングコスト(水光熱費・洗剤等):15万円/月(売上予測の25%)
と仮定して、利回りをシミュレーションしてみると、
利回り=(売上60万円/月-家賃15万円/月-ランニングコスト15万円/月)×12ヶ月÷初期費用2,000万円×100=18%
となります。
利回りには、ランニングコストを考慮しない表面利回りとランニングコストを考慮した実質利回りがありますが、表面利回りでは本質的な収益性の検証はできないため、ここでは実質利回りを算定しています。
また、上記の事例ではオーナー自らが店舗運営を行う場合を想定しています。
従業員を雇用したり、店舗運営を外注したりすればランニングコストが増えるため、利回りは低下します。
逆に店舗の家賃を交渉して15万円/月から12万円/月に減額できれば、ランニングコストが減るため実質利回りは約20%にアップします。
家賃交渉はそれほど労力のかからないコスト削減策ですので、必ず行うことが大切です。
また、店舗の家賃は売上予測の20%がひとつの目安ですので、覚えておきましょう。
実質利回りが18%ということは、初期費用の回収を約5年半で終わらせることができるということです。
そのため、開業後10年程度を目途に、設備類を最新のスペックにバージョンアップしてリニューアルオープンしたり、2店舗目をオープンさせたりすることを検討できる可能性があります。
一般的にコインランドリーといわれている店舗は、行政上は「コインオペレーションクリーニング営業施設」と呼ばれています。
いわゆる「クリーニング店」と法律的にどのような違いがあって、どのような手続きが必要であるのか、確認していきましょう。
コインオペレーションクリーニング営業施設(コインランドリー)は、「クリーニング」という文言が含まれますが、通常のクリーニング店とは法律的に取り扱いが異なっています。
通常のクリーニング店の法律的な要件は、クリーニング業法により以下の通り定められています。
(定義)
第二条 この法律で「クリーニング業」とは、溶剤又は洗剤を使用して、衣類その他の繊維製品又は皮革製品を原型のまま洗たくすること(繊維製品を使用させるために貸与し、その使用済み後はこれを回収して洗たくし、さらにこれを貸与することを繰り返して行なうことを含む。)を営業とすることをいう。
2 この法律で「営業者」とはクリーニング業を営む者(洗たくをしないで洗たく物の受取及び引渡しをすることを営業とする者を含む。)をいう。
3 この法律で「クリーニング師」とは、第六条に規定する免許を受けた者をいう。
4 この法律で「クリーニング所」とは、洗たく物の処理又は受取及び引渡しのための営業者の施設をいう。
(クリーニング師の設置)
第四条 営業者は、クリーニング所(洗たく物の受取及び引渡のみを行うものを除く。)ごとに、一人以上のクリーニング師を置かなければならない。ただし、営業者がクリーニング師であって、自ら、主として一のクリーニング所においてその業務に従事するときは、当該クリーニング所については、この限りでない。
(営業者の届出)
第五条 クリーニング所を開設しようとする者は、厚生労働省令の定めるところにより、クリーニング所の位置、構造設備及び従事者数並びにクリーニング師の氏名その他必要な事項をあらかじめ都道府県知事に届け出なければならない。
(以下省略)
引用元:総務省行政管理局運営 e-Gov 電子政府の総合窓口 より
これによると、通常のクリーニング店は「クリーニング業」に該当するため、開業にあたっては都道府県知事への届出が義務付けられており、店舗ごとに「クリーニング師」という資格者を設置しなければなりません。
一方、コインオペレーションクリーニング営業施設(コインランドリー)は、利用者自らが洗濯物を持参して洗濯を行うため、クリーニング業法に定めるクリーニング業には該当せず、同法の適用を受けることはなく、資格者の設置も必要ありません。
ただし、不特定多数の人々が共同で洗濯機や乾燥機を利用する場所であることから、衛生的な管理を行うよう各自治体が指導要綱を定めています。
<東京都千代田区のコインオペレーションクリーニング営業施設の衛生指導要綱の事例>
(以下省略)
引用元:千代田区ホームページ コインランドリーの届出 より
<コインランドリー開業のポイント>
<コインランドリー開業に関わる手続きの流れ>
まずは、店舗を管轄する保健所の担当部署に「コインオペレーションクリーニング営業施設開設届」を提出します。
届出書は各自治体のホームページによりダウンロードできる場合がありますので、確認しましょう。
開設届の提出時には「コインオペレーションクリーニング営業施設概要」を添付して、図面上のチェックなどを受けます。
<東京都千代田区のコインオペレーションクリーニング営業施設開設届の事例>
引用元:千代田区ホームページ コインランドリーの届出 より(参照1)(参照2)
コインランドリーの場合、資格者は必要ではありませんが、開設届には「衛生管理責任者」と「有機溶剤管理責任者」を選定し、それぞれ氏名・住所を記載しなければなりません。
ただし、衛生管理責任者・有機溶剤管理責任者のいずれも特別な資格や要件が要求されているわけではありません。
また、開設届提出時に保健所による店舗の検査の日程を相談します。
決められた日時に、保健所による店舗の検査を受けます。
店舗の設計図面や設備類の仕様書など、関連書類を用意しておくとよいでしょう。
保健所の検査が終了して、特に問題がなければ検査済証が発行され、営業を開始することができます。
コインオペレーションクリーニング営業施設開業の手続きは、自治体によって異なる場合もありますので、事前に役所に確認しましょう。
コインランドリー投資を成功させるために、必ずチェックすべき4つのポイントがあります。
その4つのポイントをよく理解して、コインランドリー投資の成功の確率を少しでも上げることが重要です。
コインランドリー投資の成功のカギを握る最大のポイントは「立地条件」です。
コインランドリーは装置産業であるがゆえ、どんなに最新設備を整えて内装をきれいにしても、利用者に来店してもらえなければ売上が上がりません。
コインランドリーの商圏は半径2キロメートルといわれていますが、最適な立地のポイントは具体的に以下のようなものがあります。
<コインランドリーに最適な立地条件>
飲食や物販といったビジネスのように、必ずしも駅近である必要はなく、生活道路沿いの目立つ場所であれば大丈夫です。
ただし、中央分離帯などがある大きな道路沿いは、右折して来店することができず、車を気軽に止めることも難しいため避けましょう。
また、コインランドリーは先行者が有利なビジネスですので、なるべく競合店がない場所を選びましょう。
メインターゲットはファミリー世帯の主婦ですが、美容室のタオルや従業員の制服などを洗濯する事業者、いわゆるヘビーユーザーが見込めるエリアはポイントアップです。
いずれにしても、こうしたポイントを中心に利用者の目線で立地を確認しなければなりません。
候補物件が見つかった場合は、曜日や時間を変えて現地で人や車の流れを見てみるなど、十分な現地調査が大切です。
コインランドリーの利用者の多くは、まとまった量の洗濯物、布団や毛布、カーペットなどの大きな洗濯物を車で運んできます。
そのため、止めやすい専用駐車スペースの確保が重要です。
万一、敷地内に専用の駐車スペースが確保できない場合は、20~30メートル以内にコインパーキングや駐車スペースがある物件や、店舗前に一時駐車がしやすい物件を選びましょう。
コインランドリーの繁忙期は、一般的に雨の多くなる9月から洗濯物が乾きにくい冬場の2月頃までといわれています。
その他、6月~7月にかけての梅雨時期も利用が見込まれますが、春や夏場などは洗濯物が乾きやすいため、閑散期といえるでしょう。
このように、コインランドリー投資は、季節や天気によって需要が左右されるという特徴があります。
そのため、コインランドリーの開業時期が閑散期と重なってしまうと、店舗の認知度が上がらずに売上が伸びていかないリスクを抱えてしまいます。
ただでさえ、開業1年目は資金繰りが難しい面があり、早めにリピーターを確保して売上を伸ばしていきたい事情もあるため、開業時期には注意が必要です。
コインランドリーは「汚れたものを洗濯する場所」ですので、その場所や機械が清潔でなければ話になりません。
利用者に「店舗に清潔感がない」「掃除が行き届いていない」「洗濯機などが不潔だ」といった印象を持たれてしまうと、リピーターの確保どころか誰も利用してくれなくなります。
そのため、店内の清掃と洗濯機や乾燥機などの設備類の清掃を徹底し、特にクリンリネスに注意しましょう。
また、競合店がある場合は、他店との差別化を図る必要があります。
カフェや美容室、スポーツジムを併設するなどの差別化の方法を紹介しましたが、そこまで大がかりではない方法もあります。
例えば、
・店内の内装をオシャレな雰囲気にする
・無料WiFiを設置する
・大型テレビを設置する
・マンガ喫茶くらいの漫画を取り揃える
・日本語だけでなく、英語・中国語・韓国語の利用案内を用意する
・キッズスペースを設ける
・SuicaやWAONといった電子マネーが利用できる
など、あまり費用をかけずにちょっとした工夫によって、付加価値のある場所を提供することができます。
こうした工夫や努力が他店との差別化につながって、リピーターを確保することができ安定経営を実現することができるのです。
ここまでコインランドリー投資についてさまざまな角度から解説してきましたので、興味を持たれた方もいるかもしれません。
そこで最後に、どのような方がコインランドリー投資に向いているのかを紹介します。
政府による働き方改革の一環で、現役サラリーマンの副業が解禁されています。
企業によって取り組み方は異なるでしょうが、今後も促進されていくことでしょう。
こうした背景から副業を検討している現役サラリーマンの方々に、コインランドリー投資はオススメです。
専門知識や専門技術・資格などが必要なく、管理運営もそれほど煩雑ではありませんが、現役サラリーマンとしてこれまでのビジネス経験を活かしたいと考えるのであれば、アイディアを活かして事業を運営することも可能であり、事業経営の醍醐味を味わうこともできます。
また、本業を持っている現役サラリーマンであれば、政府系金融機関などの融資を利用しやすいという大きなメリットもあります。
会社を定年退職したシニア層にとっても、専門知識や専門技術・資格・経験ばかりでなく、体力も必要ないコインランドリー投資は、手軽に始めやすい投資としてオススメです。
2,000万円程度の初期費用はかかりますが、アパート・マンション投資のような大きな投資資金は必要なく、リスクの少ない投資が可能です。
預貯金や退職金の運用を考えているシニア層にとって、コインランドリー投資は有利な運用方法といえるでしょう。
すでに土地やマンション・ビルなどの不動産を所有しているオーナーにとっては、20%以上の高利回りの運用が可能となるため、コインランドリー投資はオススメです。
駐車場やアパート・マンション・ビルなどのような大きなスペースは必要ありませんので、所有している狭小地を活用したり、敷地内の空いているスペースや空室を上手に活用したりしてコインランドリー投資を行うことができます。
余分な土地の有効活用や空室対策に検討してみてはいかがでしょうか。
すでに自分で事業経営を行っているビジネスオーナーにとって、コインランドリー投資はリスクの少ない事業多角化のチャンスといえるでしょう。
さらに、現在経営している事業がコンビニエンスストア・ドラッグストア・カフェ・レストラン・美容室・エステサロン・ガソリンスタンド・雑貨店などの場合、コインランドリーとの相乗効果を図ることができ、本業にも大きなメリットをもたらすことが可能です。
また、大きな利益が見込める企業や会社にとっても、即時償却による法人税の節税といった財務戦略上のメリットがあります。
コインランドリー投資は高い利回りが見込め、安定的で堅実な運営が期待できるビジネスです。
立地条件さえ間違わなければ極端に失敗するリスクは低いと考えられますが、日々の運営が雑になりクリンリネスが守られなかったり、近隣に競合店がオープンしたにもかかわらず差別化対策を行わなかったりすれば、利用者が離れていってしまうリスクがあります。
通常の店舗運営にはオーナーや従業員のやる気や熱意が反映され、その点はコインランドリー投資も同様です。
時間や手間のかかる管理運営業務がなく、副業や兼業に最適なビジネスとはいえ、コインランドリー投資をやると決めたら本気で取り組む姿勢が大切です。