約束を破ること。他の項目と複雑に関連するため注意
複数の契約に分かれていた場合でも、密接に関連付けられているものであれば、片方の契約の不履行を理由に他方も解除できる場合がある
・債務不履行の種類
履行遅滞 | 履行期(約束の期日)までに債権の履行をしないこと |
不完全履行 | 履行したものの不完全だった場合 |
履行不能 | 債務の履行が不可能になること |
・債務不履行時にできること
※債務不履行は、債権者に過失があれば、必ず過失相殺しなければならない。一方で不法行為の場合には、過失相殺するかは裁判所の裁量に任せられている
・無催告解除できる場合
解除をするには相当期間を定めた催告が必要だが、以下の場合は催告不要
①全部が履行不能 ②債務者の履行を拒絶する意思が明確 ③定期行為(特定の日までに履行しないと意味のない契約) |
・解除の一般原則
撤回の可否 | 一度した解除は撤回することができない |
解除不可分の原則 | 当事者が複数の場合は、解除は全員からまたは全員に対してしなければならない |
解除の効果 | ・契約は最初からなかったことになる(遡及的に無効) ・当事者は互いに原状回復義務を負い、受領後に発生した利息などを返還しなければならない ・解除前の第三者の権利を害することはできない(不動産の場合は第三者の権利は登記で判断する) |
・損害賠償の範囲
通常損害 | 債務不履行によって通常生じると考えられる損害は当然に請求できる |
特別損害 | 通常は生じない損害であっても、当事者が予見すべきであったものは請求できる |
・損害賠償の予定
損害賠償の予定とは、債務不履行があった場合の損害賠償額をあらかじめ合意(予定)することで、実際の損害額を証明することなく、あらかじめ合意した金額だけ支払えばよい制度(違約金や手付金など) ※損害賠償の予定がある場合には、原則として実際の損害額を立証してもその額を増減することはできない。ただし、債権者に過失があるときは、裁判所は職権で賠償額を減額できる(過失相殺) |
・金銭債務の特例
損害の利息分 | ・損害賠償として請求できる金額は年3%の法定利息に限られる(3年ごとに見直される) ※ただし、それよりも高い利息で合意している場合は、合意した利息が適用される |
無過失責任 | ・金銭債務の不履行については、債務者は不可抗力を理由に免れることはできない(地震で払えなかったなどの天災や、故意や過失の有無に関わらず言い訳はできない) |
履行不能はない | ・金銭債務の不履行については、履行不能はなく常に履行遅滞となる(お金自体が世の中からなくなることは考えづらいため) |
・手付解除
手付解除できる時期 | ・相手方が履行に着手するまで ※自らが履行に着手していても、相手方が着手していなければ自ら解除できる |
手付解除の方法 | ・買主は手付を放棄 ・売主は倍額を現実に提供 + 手付解除の意思表示 |
※手付解除は損害賠償の予定となるため、損害賠償などは請求できない
※買主が中間金(内金)を支払うことは、履行に着手していると呼べる
・同時履行
同時履行の場合には、相手方が債務の履行をしないときは、自らの債務の履行を拒むことができ、履行しなくても債務不履行とはならない(同時履行の抗弁権)
ただし、自らが履行しなければ履行請求権を得ることはできず、契約解除や損害賠償を請求することはできない
同時履行となるもの | ・目的物の引渡しと報酬の支払い ・弁済と受領証書の交付 ・契約の解除による原状回復義務の履行 |
同時履行とならないもの | ・報酬をともなう委任や請負の仕事完成と報酬の支払い ・家屋の明渡しと敷金の返還 ・建物の明渡しと造作買取請求権 ・弁済と抵当権の抹消 ・弁済と債権証書(借用書)の返還 |
※同時履行のものであっても、履行期を前後させる特約がある場合には特約は有効となる
・危険負担(目的物の滅失)
事例 | 契約成立後、引渡し前(所有権移転登記後であっても)に、当事者双方の責めに帰することができない事由(地震など)で履行不能になった場合 |
効果 | 買主は代金の支払いを拒絶することができる なお、履行不能を理由とする解除も可能(原状回復義務が生じるため、手付金は返還される) |
※買主への引渡し後や、買主の責めに帰することができる状況で履行遅滞になっている際に、当事者双方の責めに帰することができない事由(地震など)で滅失や損傷をした場合には、債務不履行にはならず、買主は代金の支払いを拒絶できない
※売買の契約の場合に、当事者の片方が死亡した場合には、その相続人が地位を相続し、履行をおこなう(契約は無効にならない)