不動産を買ったり借りたりする際、不動産会社に対して仲介手数料を支払う必要があります。
しかし、不動産会社から資金計画の提示を受けたとき、思ったより高いと感じた方もいらっしゃるでしょう。
そもそも、仲介手数料の相場はどのくらいで、安くしてもらうといったことは可能なのでしょうか。
本記事では、仲介手数料の相場について、具体的な計算方法やシミュレーション、また安くするためのポイントなどご紹介していきます。
目次
本記事では仲介手数料の相場について解説していきますが、そもそも仲介手数料とはどのようなものなのでしょうか?
仲介手数料は、不動産会社に対して、仲介を成約させた報酬として支払うものです。
このため、不動産を売買しても、不動産会社を仲介しない個人間売買の場合や、不動産会社が直接不動産を買い取る場合には仲介手数料を支払う必要はありません。
また、仲介手数料は売買を成約させた報酬として支払うものであるため、不動産会社に仲介を依頼しても、結果として売買契約を結べなかった場合には報酬を支払う必要がないという特徴があります。
仲介手数料には法律(宅建業法)で上限が定められています。
具体的には、売買の場合には「売買価格×3%+6万円+消費税」、賃貸の場合は「家賃の0.5か月分」です。
ただし、賃貸の仲介手数料については家賃の1か月分の仲介手数料を請求されるのが一般的です。
これは、宅建業法の例外規定に「仲介の依頼をするときまでに承諾を得ていれば、0.5カ月を超える金額を受け取ってもいい」とされていることが理由です。
仲介手数料の上限は宅建業法に定められたことであり、この上限額以上の法律を受領すると宅建業法違反で不動産会社には罰則が課されることになります。
なお、賃貸の場合、法律に仲介手数料は家賃の0.5か月分と記載されているのにも関わらず、慣習で厳密に許可を得ることなく家賃の1か月分の仲介手数料を徴収することが多くなっていますが、2020年に裁判所がこれを違法とした判例があります。
結果、不動産会社は敗訴となり、差額分の仲介手数料と遅延損害金の支払いを命じられています。
仲介手数料の上限についてお伝えしましたが、実際の相場はどのくらいなのでしょうか?
賃貸にせよ、仲介にせよ、仲介手数料には法律で上限が定められています。
これらは、あくまでも上限額であり、上限以下であればいくらであっても構いません。
しかし、実際のところ、ほとんどのケースで仲介手数料は上限額を請求されます。
このため、仲介手数料の相場はほとんど法律で定められた法律の上限額と考えて問題ないでしょう。
賃貸における仲介手数料の上限額は、法律では0.5か月分と規定されていますが、事前に承認を得られれば0.5カ月分以上の手数料を得ることが可能で、慣習で家賃の1か月分程度を支払うのが一般的です。
例えば、家賃10万円の物件であれば消費税込みで11万円、20万円であれば22万円、25万円であれば27.5万円の仲介手数料を支払うといった具合です。
家賃 | 仲介手数料の相場 |
10万円 | 11万円 |
20万円 | 22万円 |
25万円 | 27.5万円 |
売買における仲介手数料の上限額は「売買価格×3%+6万円+消費税」です。
例えば、3,000万円の物件売買であれば105.6万円、5,000万円であれば171.6万円、1億円であれば336.6万円と計算できるでしょう。
売買価格 | 仲介手数料の相場 |
3,000万円 | 105.6万円 |
5,000万円 | 171.6万円 |
1億円 | 336.6万円 |
仲介手数料の相場は、多くの場合仲介手数料の上限額と同額であることをお伝えしました。
併せて計算例もお伝えしましたが、特に家賃や売買額が大きくなると、仲介手数料の額も馬鹿になりませんよね。
半額や無料にしてもらうなど、価格交渉することは可能なのでしょうか?
結論からいうと、基本的には仲介手数料の価格交渉は難しいです。
というのも、不動産の買主や売主、貸主や借主からすると、家賃や売買価格以外に仲介手数料を支払うので、総額が大きくなってしまいますが、不動産会社からすると、受け取れるのは仲介手数料のみです。
不動産会社は成約させるために営業担当者が物件を案内したり、物件を広告したりして費用が発生しています。
それにも関わらず、仲介手数料を値引きしてしまっては、不動産会社を経営していくことが難しくなってしまうのです。
不動産会社にとっては、仲介手数料は飯のタネであり、簡単に値引きすることはできません。
しかし、ポイントを押さえることで価格交渉を持ち掛けることは可能です。
次で、仲介手数料を安くしてもらうための価格交渉をするときのポイントについてお伝えしていきたいと思います。
仲介手数料を安くして貰うためには、以下のようなポイントを押させておきましょう。
・仲介の仕組みを理解する
・都心の不動産会社の方が価格交渉しやすい
・インターネットを活用した不動産会社の方が値引き交渉しやすい
それぞれ解説します。
まずは仲介の仕組みを理解しましょう。
不動産の仲介では、不動産会社は売り手(貸し手)と買い手(借り手)、を結びつける役割を果たします。
そして、成約させることで、それぞれから仲介手数料を受け取ることが可能です。
このとき、売り手(貸し手)側と買い手(借り手)側の不動産会社が別々の場合と同じ場合があります。
別々の不動産会社が仲介につくケースを片手仲介、同じ不動産会社が仲介につくケースを両手仲介と呼びますが、このうち、両手仲介であれば価格交渉しやすいといえるでしょう。
というのも、両手仲介であれば、不動産会社は売り手(貸し手)側と買い手(借り手)側両方から仲介手数料を受け取れるため、仮にどちらかを半額にしたり、無料にしたりしても、報酬がゼロになるということはないのです。
実は、賃貸の仲介については売買と比べると仲介手数料を安くしやすいです。
というのも、賃貸の場合、仲介の相手方は賃貸物件のオーナーだからです。
このため、入居者側の仲介手数料を無料にしたとしても、不動産会社やオーナー側から仲介手数料を受け取ることができます。
オーナーとしても、入居者が決まれば、毎月家賃を受け取ることができるため、問題ないというわけです。
次に、都心の不動産会社であれば、価格交渉しやすいといえるでしょう。
というのも、都心は不動産会社の数が多く、仲介を行うにしても競合となることが多いです。
このため、他の不動産会社より自社を選んでもらうための差別化の方法として仲介手数料半額といった施策を打ち出しているケースがあるのです。
さらにインターネットを活用している不動産会社の方が値引き交渉しやすいという点も押さえておくとよいでしょう。
仲介手数料の上限額は昔から変わっていません。
インターネットのなかった頃は、物件情報を雑誌や専門誌で広告して販売していくしかなく、その広告費は高額でした。
一方、現代ではインターネットを活用した広告が主流です。
特に自社でホームページを持っているケースでは、ホームページ上に物件を掲載するだけで広告できてしまいます。
このため、インターネットを活用することで、昔と比べて広告にかける費用を抑えることができ、少ない仲介手数料でも会社を運営していくことが可能なのです。
特に、都心かつインターネットを積極的に活用した不動産会社を探してみれば、安い仲介手数料で利用できる可能性が高いといえるでしょう。
ただし、仲介手数料を安くしてもらう際には、そのデメリットについても知っておくことが大切です。
安い仲介手数料で売買を決めるために、不動産会社は両手仲介のみで案内を進める可能性があります。
通常であれば、他の不動産会社にも情報を渡して、契約の相手方を探すことになりますが、両手仲介となれば、自社のみで契約の相手方を探さなければなりません。
契約できるまでに時間がかかってしまう可能性が高くなる点には注意する必要があるでしょう。
不動産会社は仲介の依頼を受けた後、物件に関する広告を打ち、見学希望があったときに現地で案内を行います。
これらの広告費や人件費は成約後に受け取る仲介手数料で回収するのです。
チラシや専門誌に物件情報を掲載するには、お金を払って枠を確保しなければなりません。
不動産会社は同時に複数の仲介依頼を受けており、限られた枠の中で、自社で預かった物件を広告します。
仲介手数料が安い物件は、仮に成約になったとしても受け取れる報酬が少ないわけですから、後回しにされてしまう可能性が高いといえるでしょう。
また、仲介手数料を安くすることで不動産会社の担当者が積極的に活動してくれなくなる可能性がある点も押さえておきましょう。
不動産会社の営業担当は、同時に複数の案件を担当しています。
また、多くの場合、営業担当のお給料は成果に応じて貰える額が高くなる制度が導入されています。
例えば、同じタイミングで仲介手数料の高い物件と、仲介手数料の安い物件があった場合、仲介手数料の高い物件が優先されるのは当然のことだといえるでしょう。
特に立地が悪いなど条件がよくないときには、仲介手数料を安くしてもらうことで、長期間成約できないといった事態に陥ってしまう可能性もある点に十分注意が必要です。
不動産の賃貸では、仲介手数料以外にもさまざまな初期費用がかかります。
仲介手数料の値引きが難しい場合には、仲介手数料以外の初期費用について、値引きできないか検討してみるのもよいでしょう。
ここでは、以下3つをご紹介します。
それぞれ見ていきます。
賃貸物件の入居時に敷金礼金を数か月分払わなければならないケースがあります。
一方で、物件によってはこれらの費用が全くかからないこともあります。
これらの費用を抑えることができれば、仲介手数料を1か月分払ったとしても、十分初期費用を安く抑えることができるでしょう。
不動産会社によっては、一定期間だけ敷金礼金を0円にするキャンペーンなど実施しているケースもあるため、確認しておくことをおすすめします。
賃貸物件に引っ越した後は、家具や家電の購入費用で大きなお金がかかってしまうものです。
この点、家具家電付き物件であれば、そうした費用を抑えることができるでしょう。
フリーレントとは、当初1~3か月など最初の数か月分の家賃が無料になる契約のことです。
このため、家賃の1か月分の仲介手数料を支払っても、初期費用を抑えて入居することができるでしょう。
ただし、フリーレントでは「1年以内の解約の場合、〇か月分の家賃をペナルティとして徴収する」といった形になっているのが一般的です。
短期間で退去する可能性があるという方は、事前にしっかり確認しておくことが大切です。
売買においても、仲介手数料にさまざまな初期費用がかかります。
仲介手数料の値引きは無理でも、その他の費用を安く抑えることで、トータルの初期費用を安くすることができるでしょう。
具体的には、以下のような方法が考えられます。
それぞれ解説します。
まずは物件価格の値引き交渉をしてみましょう。
売主が売り急いでいるようなケースでは、大幅な値引きに応じてくれる可能性もあります。
ただし、同時に複数の購入希望者がいるようなケースでは、値引き交渉することで購入できなくなるリスクがある点には注意が必要です。
住宅ローンによっては、条件を見直すことで初期費用を安く抑えられるケースがあります。
例えば、住宅金融支援機構のフラット35では、金融機関は窓口になるだけということもあり、借入額の1.5%~2.0%程度の事務手数料を支払わなければなりません。
例えば、借入額3,000万円であれば45万円~60万円です。
一方、民間の住宅ローンであれば事務手数料は3万円程度で済むこともあるのです。
また、住宅ローンを利用するにあたり、保証料を支払わなければならないことがあります。
保証料は、審査によって金額が決定されますが、借入額によっては100万円を超える費用が必要になることもあります。
一方、「金利に上乗せ」するタイプを選ぶことができるケースもあり、この場合毎月の返済額が少し高くなってしまいますが、初期費用を安く抑えることが可能です。
最後に、保険の見直しを検討してみましょう。
例えば、購入時に火災保険に加入する場合、「10年一括」など長期間契約にすることで総額を安くできる契約がありますが、初期費用は高くなってしまいます。
一方で、毎年払いにすれば、総額が高くなってしまいますが、初期費用を安くすることはできるでしょう。
仲介手数料を含めた、初期費用を安く抑えたいというケースでは、後者を選ぶのがおすすめです。
また、住宅ローンを組むときには、団体信用生命保険に加入しますが、住宅金融支援機構のフラット35の場合、借入額に応じて一括で保険料を支払わなければなりません。
一方、民間の住宅ローンであれば通常の団体信用生命保険の保険料は金利に含まれているのが一般的です。
こちらも、初期費用を安く抑えたいのであれば、後者を選ぶようにするとよいでしょう。
仲介手数料の相場についてお伝えしました。
仲介手数料は法律で上限が定められており、ほとんどのケースで上限額の請求となるため、仲介手数料の相場はイコール法律で定められた上限額だと考えてよいでしょう。
不動産会社にとって仲介手数料は、飯のタネであり、基本的には値引きが難しいことが多いです。
しかし、本記事でお伝えした通り、ポイントを押さえた不動産会社選びを行えば、半額や無料で利用できるケースもあります。
仲介手数料の相場を調べて、高いと感じられている方は、ぜひ本記事の内容を参考になさってください。