・契約の取消しと無効の例
取消し3つ、無効2つ
・契約の取消しと無効の違い
取消し | 一度は有効に成立したものを、過去にさかのぼって無効とすること |
無効 | 一度も成立しておらず、はじめから何もない、もともと効果がないこと(たとえば意思無能力者の契約、殺人契約や愛人契約など公序良俗に反する契約などは最初から無効) ※無効の範囲が特約のときは、該当の特約部分のみが無効になり契約全体までは無効にはならない |
解除 | 一度は有効に成立したものを、未来に向けて解消すること |
※取消しや解除により、すでに受け取ったものを返還する義務は、同時履行の関係にある(どちらかが先にではなく同時におこなう)
1. 取消しできる意思表示(錯誤・詐欺・強迫)
・取消しと第三者との関係(AがBに売却した物件がCに転売された場合)
※詐欺では相手Bが騙していることを本人Aが知っていた場合には、追認をしたこととなり取消しはできない
※民法ではより可哀想な人を保護するため、詐欺・錯誤<善意の第三者<強迫の順番で保護される
※錯誤と詐欺は境界が分かりづらいため、同様の扱いをしている
※第三者は、意思表示によって新たに利害関係者となったものをいう。そのため、もともといた抵当権者などは第三者にはならない
・錯誤の注意点
・Aが錯誤した場合でも、Aに重大な過失(不注意)がある場合には取消せない ・A以外は取消しの主張はできない(本人以外は動機がわからないため) ・動機に錯誤があった場合は、その動機がBに明示または黙示に示されていれば取消せる(Bに悪意・善意有過失がある場合) ・ABが互いに同一の錯誤をしていたとき(共通錯誤)、またはBが錯誤について重大な過失がある場合にも取消せる |
・善意と悪意
善意無過失 | 事情を知らない、不注意もない |
善意有過失 | 事情を知らないが、事情を知らないことに不注意がある |
悪意 | 事情を知っている |
※悪意・有過失は「であることを知り、又は知ることができたときは」という書き方で表現される
・第三者の詐欺
第三者Cが詐欺・錯誤した場合、Bが悪意・善意有過失であれば取消せる 第三者Cが詐欺・錯誤した場合、Bが善意無過失であれば取消せない |
※相手の詐欺と第三者との関係と同様
・第三者の強迫
第三者Cが強迫した場合、Bは善意でも常に取り消せる |
※相手の強迫と第三者との関係と同様
2. 無効にできる意思表示(心裡留保、虚偽表示)
※心裡留保は可哀想ではないが、知っていた人に対しては保護してあげる。ただし事情を知らない第三者ほどは可哀想ではないので勝てない
3. Aからの解除と第三者との関係(解除、制限行為能力者の行為の取消し)
概要 | AB間 | 第三者Cに対して | |
解除 | Bが契約を破った (契約不履行をしたなど) | 解除できる | 解除前からいるC・解除後に現れたCともに、善意悪意は無関係 Cが先に登記をしていればAは対抗できない(Cが勝つ) |
制限行為能力者の行為の取消し | 未成年者が親の同意なく契約した | 取消しできる | Aは善意のCにも対抗できる |
※取消後や解除後にも関わらず登記をしていないのは落ち度があると考えられるため、第三者に登記された場合には勝てない