「売買での仲介手数料を多めに請求されていないか不安」
「賃貸の仲介手数料の上限が0.5カ月分になったってニュースでみたけど本当なの?」
上記のように、賃貸でも売買でも仲介手数料の法律で定められている上限を知りたいという人は多くいます。
今回の記事では、仲介手数料の上限と計算方法、法改正と裁判での判決の内容に関してわかりやすく解説します。また、仲介手数料を値引く方法や無料にできる理由、仲介手数料以外の初期費用も一覧で記載しています。
記事の内容は賃貸や売買でわけて記載してありますので、興味のある内容に飛んで読んで頂ければと思います。
目次
仲介手数料の上限額は、賃貸でも売買でも「宅地建物取引業法」という法律で決まっています。上限以上に請求することは違法になりますが、下限は設定されていなので仲介手数料を安くすることは可能です。
仲介会社が貰う仲介手数料の合計の上限は「家賃1カ月分+消費税」です。
上記のようにどちらか一方のみから仲介手数料を貰うこともできます。合計が上限額を超えなければ法律的に問題ではありません。
売買の仲介手数料の計算方法は2通りあり「速算式」と「3つの区分にわけて計算する方法」です。計算の仕方は違いますが、計算結果は同じになります。
【速算式の場合】
売買金額が400万円を超える場合 | (売買価格×3%+6万円)+消費税 |
売買金額が200万超え400万円以下の場合 | (売買価格×4%+2万円)+消費税 |
例:4,000万円の物件
(4,000万円×3%+6万円)+消費税=138.6万円
138.6万円が仲介手数料の上限になります。
例:300万円の物件
(300万円×4%+2万円)+消費税=15.4万円
15.4万円が仲介手数料の上限になります。
【3つの金額にわけて計算する場合】
売買価格 | 計算方法 |
---|---|
200万以下の部分 | 売買価格×5%+消費税 |
200万超え400万円以下の部分 | 売買価格×4%+消費税 |
400万を超える部分 | 売買価格×3%+消費税 |
例:4,000万円の物件
(200万円×5%+消費税)+(200万円×4%+消費税)+(3,600万円×3%+消費税)=138.6万円
上記のように金額ごとにわけて算出します。速算式でも3つにわけて計算しても、4,000万円の物件の仲介手数料の上限額は、138.6万円になることがわかります。
仲介手数料とは、仲介した不動産会社に契約成立の成功報酬として支払う正当なお金になります。成功報酬なので契約が成立しなければ、物件を案内されたり、媒介契約を結んでいたりしても支払う必要はありません。
仲介手数料は課税対象になるので、仲介手数料には消費税がプラスされます。賃貸契約でよく1カ月分以上請求されることは違法ではないのかと疑問に思う人がいますが、1.1カ月という請求は消費税分が含まれているため、法律上問題はありません。
賃貸でも売買でも契約成立後に支払います。しかし、売買の場合では、支払うタイミングが2通りあり、仲介する不動産会社によって異なります。物件の引き渡し時に一括で支払う方法と契約成立後に半分、引き渡し時に半分支払う方法です。どちらも支払う金額に違いはありません。
平成30年1月1日に仲介会社が受け取れる手数料の上限額が一部改正されました。改正した部分は、400万円以下の建物の売買の場合、売主から受け取れる上限金額は「18万円+消費税」とするという内容です。買主からは400万円以下の売買でも従来通りの上限額になります。
【売買金額300万円の場合】
改正前:300万円×4%+2万円+消費税=14.4万円
改正後:300万円×4%+2万円+4万円+消費税=19.8万円
上記のように改正前より4.4万円多く受け取れるようになりました。
上限額の一部が改正されたかというと、全国に増加する空き家問題が原因になっています。平成30年におこなわれた住宅・土地統計調査の結果、全国の空き家は800万戸以上となっており、全体の13.6%が空き家という状況になっています。
この空き家問題を解決するために、「低廉な空家等の売買取引における媒介報酬額の特例」が施行されました。空き家は基本的にぼろぼろで低価格な物件が多くなります。
価格が低い空き家の売買の場合、現地調査費用や事務作業の手間と仲介手数料として受け取れる報酬が合わないということで、積極的に仲介することが難しいという状況がありました。
そのため法を一部改正し、低価格の空き家売買の仲介として受け取れる手数料を引きあげることによって、空き屋の売買を活性化させたい狙いがあります。
400万円以下の建物の売買であればすべて物件が上限額の「18万円+消費税」まで請求できるかというとそうではありません。仲介手数料の上限額の計算は400万以下でも同じです。ですが、仲介手数料の金額に現地調査費用や交通費をプラスして請求することができるということです。
つまり、現地調査などしていなければ請求することはできません。また、売主に対して事前に現地調査費をプラスして請求することを伝え承諾を受ける必要があります。
賃貸住宅の仲介手数料が原則0.5カ月分のため、1カ月分支払っていたうちの半分の返還を認める判決が2020年1月14日東京高裁で確定しました。
この裁判の内容は、賃貸住宅を借りた借主が、仲介会社である「東急リバブル」に仲介手数料を1カ月分支払ったお金の半分の返還を求めた裁判です。法律での仲介手数料の上限は、0.5カ月分だと主張し裁判所に提訴しました。
では、この裁判での結果通り今後は賃貸の仲介手数料の上限が0.5カ月分になるのかというとそうではありません。
賃貸の仲介手数料の上限は、上記でも説明しましたが借主からと貸主からの合計が「1カ月分+消費税」になります。
【仲介会社が受け取れる仲介手数料の上限】
原則:借主から0.5カ月分+消費税 貸主から0.5カ月分+消費税
例外:事前承諾があれば借主から1カ月分+消費税
上記のように原則と例外が法律で決まっており、原則は借主から0.5カ月分しか仲介手数料を受け取ってはいけないことになっています。
しかし、実際の賃貸での仲介手数料の多くが賃料の1カ月分を上限とされており、例外のほうが浸透しているのが現状です。
では、1カ月分の仲介手数料の請求は違法なのかというとそれは違います。例外とされていますが、「仲介の依頼成立」までに「事前承諾」を受けていれば問題なく1カ月分の仲介手数料を請求できます。
今回の裁判で仲介手数料は原則0.5カ月分が上限のため、借主からの事前承諾がなければ1カ月分の仲介手数料は認められないという判決が確定しました。この裁判の結果、多くの不動産会社に影響を与えました。
【裁判でポイントになった点】
賃貸物件の金額や説明の仕方などではなく、上記のようにいつ仲介の依頼が成立し、いつ仲介手数料を支払う承諾をしたのかが裁判の論争のポイントになりました。
【東急リバブル側の主張】
2013年1月15日:仲介手数料1カ月分を請求する明細書を借主に確認させ「承諾」を得る。
2013年1月20日:重要事項説明書や賃貸契約書を締結、仲介手数料1カ月分と記載されている入居申込書に記名押印した日が「仲介の依頼成立日」だと主張。
つまり、契約締結日にいきなり仲介手数料の明細書を見せたわけではなく、契約日の前に事前に仲介手数料1カ月分請求することは承諾されているので1カ月分の仲介手数料は問題なく受け取れるという主張になります。
【借主の主張】
2012年12月28日:案内を受け、仲介手数料が未記入の入居申込書を提出。
2013年1月10日:仲介会社から契約締結日は1月20日と連絡を受ける。
契約締結日の知らせを聞いた1月10日が、「仲介の依頼成立日」だと主張。この日までに仲介手数料1カ月分の承諾はしていないので半月分の返還を求める。
【裁判の結果】
契約締結前に事前承諾を東急リバブル側は受けていると主張しましたが、裁判の結果、「契約締結日を知らせた日」の1月10日が「仲介の依頼成立日」との判決になりました。
この判決結果だと、仲介の依頼成立日には、1カ月分の仲介手数料を承諾していないことから、0.5カ月分の返還が認められたことになります。
裁判の判決を受けて、事前承諾するタイミングを早めにする動きが不動産会社ででています。判決の前であれば、1カ月分の仲介手数料を請求する仲介会社は、重要事項説明書や賃貸借契約の前に仲介手数料の承諾をとる場合が多くありました。
しかし、それでは事前承諾として認められない判決がでたので、各不動産会社が早めに仲介手数料の承諾を受けるための対応をしています。
1カ月仲介手数料を請求できるはずが、0.5カ月分しか請求できないとなると不動産会社にとって大きな損失になります。そのため、問題にならないように早めに仲介手数料1カ月分請求することを承諾してもらう必要があり、説明や申込書へ仲介手数料を記入するなど各不動産会社がガイドラインを新たに作成して対応しています。
仲介手数料には法律上で上限が決まっていますが、下限は決まっていないため、どの物件でも値下げ交渉することができます。仲介手数料をできるだけ安くするための方法をご紹介します。
また、仲介手数料無料と宣伝している不動産会社の仕組み関しても解説していきます。
まず値引き交渉のタイミングは、媒介契約書や入居申込書を記入する前です。入居申込書を記入すると仲介手数料を支払うことに同意したとみなされます。
また、媒介契約書にも仲介手数料の金額が記載されており、支払うことに双方同意したうえで契約書に記名押印します。それらの後に、仲介手数料の値引き交渉はまず通りません。
次に、最初から値引きありきで相談せずに、媒介契約や申込書に記入する一歩前に交渉することです。最初から値引きの話をすると相手にされなくなる場合もあります。
しかし、もう少しで契約するという段階で、値引きに応じれば必ず契約する旨を伝えると交渉が通りやすくなります。その際に、ライバルになる不動産会社と比較検討していることをあえて伝えるのもおすすめです。
そのほか、売買であれば「一般媒介契約」ではなく、不動産会社が喜ぶ「専任・専属専任媒介契約」を結ぶことで交渉がより通りやすくなります。
仲介手数料無料の不動産会社があることに対して疑問に思う人もいるかもしれません。仲介会社は仲介手数料を収入源にして会社を経営しています。ではなぜ無料と宣伝している仲介会社があるかというと、片方からのみ仲介手数料を受け取る方法をとっているからです。
片方からの収入のみなので収入額は減りますが、その分大々的に無料と宣伝することで顧客を増やすことできます。つまり薄利多売の経営方針です。
仲介手数料が無料の不動産会社はインターネットで検索すればすぐにでてきます。仲介手数料無料だから手を抜かれる、怪しい会社というわけではないので安心してください。
仲介手数料以外にも初期費用はかかります。仲介手数料以外に請求される項目になりますが、事前に説明を受け承諾したあとに請求されることは法律上違法ではありません。
初期費用の項目 | 相場 | 内容 |
---|---|---|
敷金 | 家賃0.5カ月~1カ月分 | 退却時に部屋を修繕するための費用。修繕費がかからなければ返金される |
礼金 | 家賃0.5カ月~1カ月分 | 部屋を貸してくれたことに対するお礼のお金。返金されない |
前家賃 | 家賃1カ月分 | 翌月分の家賃のこと |
仲介手数料 | 家賃0.5カ月~1カ月分+消費税 | 賃貸借契約後に仲介会社に支払う成功報酬 |
火災保険料 | 1.5万円~2万円 | 火災保険加入は義務ではないが、加入しないと入居できないケースが多い |
引っ越し費用 | 単身3万~10万円 2人10万円~30万円 | 運ぶ荷物を減らし、閑散期に引っ越しする安く抑えられる |
保証料 | 家賃0.5カ月分 | 親族などで連帯保証人になってくれる人がいる場合は保証料がかからない |
鍵交換費用 | 1.5万円~2万円 | 借主が費用を負担することが一般的。鍵交換は必須ではないが安全面を考えて交換する必要がある |
上記の項目以外にも、家電や家具を新たに購入する場合には別途費用がかかります。また、項目にある敷金礼金は無料の物件もありますので、初期費用を抑えるためにも物件選びの際に注目して探してみてください。
【不動産売却の場合】
項目 | 費用の相場 | 内容 |
---|---|---|
印紙税 | 1万円~3万円 | 売買契約書に収入印紙を貼って納税 |
登録免許税 | 土地1,000円・建物1,000円 | 住宅ローンの抵当権抹消の際にかかる税金 |
司法書士への報酬 | 1万円~3万円 | 住宅ローンの抹消手続き費用 |
測量費 | 30万円~50万円 | 売却する前に土地の正確な面積を出すための費用 |
インスペクション費用 | 5万円~10万円 | 専門業者が目視によって住宅の雨漏りなどを検査して検査書を作成する(必須ではない) |
ハウスクリーニング代 | 2LDK 約5万円、4LDK 約6.5万円 | クリーニングする部屋が空室か入居中かによっても費用が異なる(必須ではない) |
解体費用 | 坪数×5万~8万円 | 住宅を解体して更地として売却するときにかかる費用。住宅内に粗大ごみがあれば別途費用がかかる |
【不動産購入の場合】
項目 | 費用相場 | 内容 |
---|---|---|
印紙代 | 1万~6万円 | 売買契約書と住宅ローンの契約書に収入印紙を貼って納税 |
登録免許税 | 固定資産税評価額によって変動する。軽減税率や長期優良住宅の特例を受けられる場合もある | 所有権保存登記、所有権移転登記、住宅ローンの抵当権設定登記の際にかかる税金 |
不動産取得税 | 「固定資産税評価額×4%」令和6年3月31日までは特例により税率3%が適用される | 不動産を取得したときに1度だけ支払う税金 |
司法書士への報酬 | 10万前後 | 所有権の登記や住宅ローンを組んだ際の抵当権の登記を依頼する費用 |
火災保険料・地震保険料 | 住宅の構造や築年数によって価格が異なる | 火災保険は住宅ローンを組む場合必須になる |
手付金 | 売買金額の5%~10% | 売買契約時に現金で支払うお金 |
頭金 | 100万円~500万円 | 頭金は住宅ローンで借りる金額を減らすために最初に現金で支払うお金(必須ではない) |
仲介手数料は法律で上限が決まっており、賃貸であれば「1カ月分+消費税」が上限になります。0.5カ月分とする裁判での判決は、あくまで仲介手数料1カ月分請求することの事前承諾が仲介の依頼成立までにされていないからであって、1カ月分仲介手数料が請求できないというわけではないので注意しましょう。
また、400万円以下の建物の売買で請求できる上限が一部改正されたことに関しては、売主への請求のみであって買主は関係ありません。
法律的な話は難しくなりがちですが、今回の記事を参考に正しい知識をみにつけて頂ければと思います。