多くの人にとって、人生においてマンションを売ることは1度か2度でしょう。
そのため慣れている人はいないはずで、適切なポイントを押さえた準備をすることがマンション売却の成功のカギと言えます。
そのために、今回はマンション売却に失敗した10の事例を紹介しながら、学ぶべきポイントについて解説します。
「自分ならどうするだろう」ということを思い浮かべつつ、失敗事例から失敗の原因やその対策を学んでいただき、あなたの高く早いマンション売却を実現させてください。
目次
Sさんは自宅マンションを売却するために、駅前の不動産業者Aへ相談に行きました。
A社はこのエリアで30年営業を続けており、たくさんの地主さんからアパートなどの管理を委託されている老舗の不動産業者です。
SさんはA社が人柄のよい老舗業者であることから、信頼して売却を任せることにしました。
A社が提案した査定価格は2,480万円であり、Sさんも「地元の老舗業者Aが言うのだから大丈夫だろう」と考え、売却活動を開始しました。
すると、1週間ほどして買い手が現れて、すぐに売買契約を締結したのです。
Sさんは早く売却が決まり安心したのですが、妻から「もっと高く売れたのでは?」と言われたので、地元の他の業者とテレビコマーシャルで有名な大手不動産業者に電話でそれとなく査定価格を聞いてみました。
すると、他の地元業者は2,700万円、大手不動産業者は2,900万円程度で売れる可能性がある、との回答だったのです。
しかし、売買契約を締結していることから、Sさんはトラブルを恐れてそのまま2,480万円で売却しました。
Sさんは、損をしてしまったような気持になり、後悔の残る不動産売却となってしまいました。
Sさんは「地元で老舗の不動産業者だから」という理由だけで不動産業者Aに売却を任せてしまったことが失敗の原因です。
もちろんA社に過失や責任はありません。
A社は老舗業者ではありますが、アパートの管理や賃貸仲介が得意分野であり、売買仲介は地主さんの相続が発生した時ぐらいしか取引していなかったのです。
「マンションの売買仲介くらい簡単にできる」と考えていたかもしれませんが、高く売却するためには不動産業者のノウハウや担当営業マンのスキルが絶対に必要な業務です。
SさんがA社1社にしか査定を依頼せずに、査定価格の妥当性や不動産業者の得意分野などを検証しなかったことが失敗の原因です。
このケースの対策は2つあります。
まず1つ目は、不動産を売却する場合は複数の不動産業者から査定を受けることです。
最近は「不動産一括査定サイト」というインターネットサービスがありますので、それを利用すれば複数の不動産業者から査定価格の提示を受けることができます。
複数の査定価格を比較・検討することで適正な査定価格が見えてくるのです。
また、同時に売却プランや価格戦略、広告活動についてもしっかりと比較・検討しましょう。
2つ目は、不動産業者の得意分野を知ることです。
宅地建物取引業はひとつの免許で、売買仲介・賃貸仲介・分譲開発・不動産投資・買取転売・賃貸管理などさまざまな業務を行うことができます。
しかし、通常、不動産業者はエンドユーザー向けの売買仲介に特化している、賃貸管理と賃貸仲介をメインとしている、など得意分野を持って営業しています。
賃貸管理が得意な不動産業者でもマンションの売買仲介を受託することは可能ですが、マンションを高く売却するノウハウは持っていないでしょう。
自分が売却する不動産の種別や特性に応じて、適切な実力や実績を持った不動産業者を見極めなければなりません。
不動産業者の得意分野の見極め方は、やはりホームページを見ることです。
マンションや戸建ての売買仲介や投資用物件が得意な不動産業者は、ホームページを見ればよくわかります。
いまどきホームページのない不動産業者やあったとしても見にくかったり、更新されていなかったりする不動産業者は避けましょう。
Kさんは自宅マンションを売却するために、4社の不動産業者に査定を依頼しました。
そのうち、3社はほぼ横並びの3,200万円程度を査定してきましたが、不動産業者Bだけは3,650万円という査定価格を提示してきました。
Kさんは迷うことなく査定価格が一番高いB社と媒介契約を締結し、売却を依頼することにしました。
しかし、売却を開始して3ヶ月経っても内覧が1件も入りません。
B社からは何度も「値下げしましょう」という提案のみが繰り返されます。
結局2回値下げをし、6ヶ月後に3,050万円で売却することとなりました。
マンションを売却する時は、売主としては1円でも高く売りたいのが本音です。
そうした売主心理を逆手に取り、売れる根拠もない高い査定価格を提示して媒介契約の締結を狙う不動産業者もいます。
媒介契約さえ締結してしまえば、あとは値下げして売却すればよい、という考えなのです。
Kさんの失敗の原因は、査定価格だけで不動産業者を決めてしまったことです。
高い査定価格を提示されれば「この業者ならこの価格で売れるのだな」「この業者に任せよう」という心理になるかもしれません。
しかし、どの不動産業者もレインズの成約価格という同じデータを見て査定していますので、1社だけが飛びぬけて高い査定価格を出すことはよほどの根拠がなければできません。
[su_box title=”関連記事” style=”bubbles” box_color=”#0075c2″ title_color=”#ffffff”]・レインズ(REINS)とは?用途やログイン・閲覧方法を解説![/su_box]そのため、こういったケースでは査定価格の根拠を詳しく確認しましょう。
また、各不動産業者は売却活動にも工夫を凝らしますので、どういった売却戦略に基づいて活動するのかについて詳しく確認します。
きちんとした査定根拠や売却戦略があれば、具体的にわかりやすく提案してくれるはずです。
具体的に答えられなかったり、不明瞭だったりと少しでも不安が残る場合は、その不動産業者との媒介契約締結は見送る方が賢明です。
また、媒介契約を締結してしまった場合でも、媒介契約は最長3ヶ月経過して更新の意思を示さなければ終了となりますので、そのタイミングで解約することが可能です。
なお、3ヶ月経過していなくても双方の合意があれば解約は可能ですので、不動産業者と話し合ってみましょう。
Aさんは自宅マンションを売却するにあたり、「ネームバリューがあり会社の規模も大きい大手不動産業者が良いに決まっている」と考え、特に他の不動産業者を調べることもなく大手不動産業者Cと専任媒介契約を締結しました。
しかし、C社は媒介契約を締結してしまうと、急にレスポンスが悪くなり売却活動の進捗報告もこちらから確認しないと連絡がない・・・といった状態でした。
3ヶ月経っても制約が見込めそうな反響はなかったため、Aさんは媒介契約の更新をすることを止めました。
驚いたことに、C社からは特に慰留や新しい提案はありませんでした。
C社にとって、Aさんのマンションはもともとあまり熱心に取り組みたい物件ではなかったのかもしれません。
Aさんは、地元密着型の小規模な不動産業者に売却を依頼し、2ヶ月後に査定通りの2,480万円で売却することができました。
Aさんは「大手不動産業者が良いに決まっている」と決めつけてしまい、数では圧倒的に多い中小不動産業者の査定を受けることなく媒介契約を締結してしまいました。
たしかに、大手不動産業者は資金力があるため駅前の一等地などに店舗を構え、テレビコマーシャルをはじめとした豊富な広告活動を行っています。
しかし、だからと言って大手不動産業者が適切かつ効果的な売却活動が行えるとは限りません。
売却活動の質は、会社(店舗)の実力や担当者のスキルによって変わってしまうため、大手不動産業者だけに限らず幅広く不動産業者の査定を受ける必要があったのです。
また、大手不動産業者はたくさんの顧客と媒介契約を締結しており、高額な店舗賃料や多額の広告宣伝費を回収するために、媒介価格が高く売れ筋の物件を優先する傾向があります。
そうした物件特性に応じた不動産業者選びができなかったことも、失敗の原因のひとつでしょう。
不動産業者を選ぶ時に「有名な大手」がよいのか、「地場密着型の中小」がよいのかはよく悩むポイントですが、どちらが良いとは一概に言えません。
大手不動産業者には大手なりの特性やメリットが、地場密着型の中小不動産業者には中小なりの特性やメリットがあるからです。
大手不動産業者は資金力や豊富な広告による集客力があり、地場密着型の中小不動産業者は地域でのパイプの強さや物件の規模や価格にかかわらず熱心に営業してくれる傾向があります。
例としては、売れ筋の築浅マンションなどは大手不動産業者が高く売ってくれることもありますし、築年数が古く競争力が弱い物件であれば、地元の中小不動産業者の方が確実に売ってくれるでしょう。
こうした物件特性に応じた不動産業者選びや担当者のスキルを見極めることが必要です。
そのためには「大手がよい」と決めつけずに、さまざまな不動産業者の意見を聞き、大手・中小それぞれのメリットを使い分けることが大切です。
Jさんは地方の実家に帰るため、自宅マンションを売却することにしました。
このマンションを購入した時の信頼できる不動産業者Dに相談したところ、「売出し価格3,380万円→査定価格3,080万円→最低売却価格2,880万円という価格戦略で3ヶ月以内に売却する」という提案を受けました。
もともとこの物件を2,600万円で購入していることもあり、Jさんはその提案を受け入れました。
しかし、Jさんは退職に伴う会社の業務引継ぎや実家とのやり取り、引っ越し準備などがあり、売却活動になかなか着手できず、売却活動を始めることができたのは4月に入った頃でした。
D社からは「当初相談を受けた1月から売却を開始していれば、提案した価格戦略で行けたかもしれないが、4月中旬からの売却開始では少し時間がかかる可能性がある」との申し出がありました。
実際に、4月中旬から売却を開始し、3,080万円で売れたのは半年後の10月でした。
失敗の原因は、一番マンションが売れる1~3月の時期を逃してしまったことです。
<首都圏中古マンションの成約件数等の推移>
参考:公益財団法人 東日本不動産流通機構
季報 Market Watch サマリーレポート 2018 年 4~6 月期 (http://www.reins.or.jp/pdf/trend/sf/sf_201804-06.pdf)
実家への引っ越し準備や会社の業務引継ぎなど多忙を極めていたJさんは、D社の提案通りの売却活動ができずにマンションを高く売却するチャンスを逃してしまったといえるでしょう。
1~3月は異動や就職、入学など住宅の需要が増える時期であることは誰もが知っていることでしょう。
そうしたマンションが売れやすく需要の多い時期に売りに出すと、希望売却価格で早く売れる可能性が高くなります。
D社もそうした市場環境を見越した提案をしていました。
売主にもいろいろな事情がありますが、マンションを高く早く売却したいのであれば、できるだけ売れやすい時期を狙って売却を開始することが大切です。
Tさんは自宅マンションを売却するにあたり、ポストに入っていた大手不動産業者Eのチラシが気になっていました。
そのチラシには「大手IT企業にお勤めの当社お客様が、このマンション限定で物件を探しています!ご予算は4,000万円、70平方メートル以上3LDKを3ヶ月以内に購入希望しています」と書かれていました。
Tさんは非常に具体的に書かれたそのチラシを信用し、早速チラシを投函したE社に連絡し、媒介契約を締結しました。
しかし、これが失敗の原因となりました。
売却開始後、進むはずの大手IT企業勤務の買い手との商談は一向に進まず、いつまでたっても申し込みが入りません。
言い訳ばかりを繰り返すE社に不信感を募らせたTさんは、媒介契約の解約を検討しましたが、簡単にはE社の合意が取れません。
結局売れはしたものの、E社から値下げを要求されチラシの予算額4,000万円を大幅に下回る3,480万円で売却することとなりました。
あなたも「このマンションを買いたいお客様がいます!」といった内容のチラシが、ポストに投函されているのを見たことがあるかもしれません。
不動産業界ではこのチラシを「求むチラシ」といい、チラシを配布している不動産業者は大手不動産業者の場合が多く、内容も非常に具体的なため信用して連絡をしてしまった・・・という話をよく聞きます。
すべてがウソとは言いませんが、たいていは昔の顧客リストに基づいた情報であり、信憑性はほとんどありません。
Tさんが「求むチラシ」を信用し、売却を任せてしまったことが失敗の原因と言えるでしょう。
「求むチラシ」は、いわゆる「おとり広告」の類と言えますので、騙されないようにしなければなりません。
不動産業者は媒介契約を締結することに必死なケースが多く、こうしたチラシは無視した方がよいでしょう。
うっかり連絡などすると「この人は売る気があるのだな・・・」と情報を与えてしまい、しつこい営業を受けることもありますので、注意してください。
Nさんは二人の子供も大きくなり、手狭になった自宅マンションを買い替えることにしました。
そこで不動産一括査定サイトを利用して、信頼できる不動産業者Fと媒介契約を締結しました。
Nさんのマンションは最寄りのJRの駅から徒歩5分と立地が良く、F社によるとこの価格帯であればすぐに買い手は見つかるとのことでした。
すると売却を開始して1週間後に、週末の内覧申込みが入ったのです。
F社からは「週末までに室内を片付けておいてくださいね」というアドバイスがあったのですが、Nさん夫婦は共働きで仕事に追われ掃除や整理整頓が十分にできないまま、週末を迎えてしまいました。
内覧日当日、買い手が内覧に来たのですが、Nさんが寝室で寝ていたためその部屋は見学できず、掃除や整理整頓が不十分なため、玄関・リビング・キッチン・廊下・洗面所などは物であふれて雑然としており、浴室やトイレも清潔感は感じられませんでした。
二人の子供ももう一方の部屋で遊んでいたため、その部屋もゆっくりとは見学できず、ペットの犬も吠えており、とても落ち着いて室内を確認する状態とはいえませんでした。
買い手は早々に退散してしまい、この商談は成約しませんでした。
買い手が内覧に来るというということは、その物件にかなりの興味を抱いていると言えます。
売主は、絶対にこのチャンスを逃してはいけません。
しかし、Nさんは完全に対応を間違ってしまい、チャンスを逃しました。
買い手にとって「室内を満足に見学できない」「子供やペットは騒いでいる」「ご主人が寝ている」では、その物件を新居として検討するという気持ちにはなれないでしょう。
ましてや、清潔感がなく散らかっていては新居に対するイメージ損失は計り知れません。
内覧は第一印象が非常に大切です。
第一印象で80~90%決まる、と言っても過言ではありません。
そのために、売主としてやるべき下記のような準備があります。
・ゴミを片付け掃除を丁寧にして、整理整頓された状態で迎える
・特に水回り(キッチン・トイレ・洗面所・浴室)は清潔感を第一に、重点的に掃除する。必要に応じてダスキンなどのプロの清掃業者に依頼する
・照明器具の電球を新しいものに取り換え、照明カバー類もきれいに拭く
・内覧日1週間前から換気をし、その家独特の生活臭やペット臭を除去する。場合によっては消臭剤なども利用する
・特にリビングルームと玄関には物を置かず、広く見える演出をする
・内覧日当日も窓を開けて換気をし、ご主人・子供・ペットなどは外出しておく。また、照明類はすべて点灯し明るいイメージを演出する
特別なリフォームや修繕は必要ありませんが、清潔感と明るさ、すっきり感を演出し、買い手が新居での新生活に良いイメージが持てる状態を作りましょう。
対応は奥さんひとりで行い、買い手がゆっくりと内覧できる環境作りが成功のカギです。
Eさんは都内でも人気エリアである目黒区の自宅マンションを売却するために、不動産一括査定サイトで複数の不動産業者から査定を受け、査定価格も売却戦略も納得できた不動産業者Gと媒介契約を締結しました。
当初「すぐ売れますよ」と言っていたG社でしたが、2ヶ月経っても内覧の申込みも入りません。
そこでEさんは、インターネットで自分の物件がどれくらい広告されているのかを確認しましたが、あまりにも広告展開が少ないことがわかりました。
当初G社が提案していた広告活動と全く違うため、不信感を抱いたEさんはG社との媒介契約を解約し別の不動産業者と媒介契約を締結しました。
変更した不動産業者は広告展開を強化し、マーケットの隅々にまで情報を発信してくれた結果、1ヶ月後に希望売却価格で無事売却することができました。
G社は「両手仲介」を狙っていたのです。
「両手仲介」とは、自社で買主も探すことにより、売主・買主両方からの仲介手数料を得ることができる取引です。
「両手仲介」の弊害は、自社で買主を見つけるために、他不動産業者へ物件情報をクローズにして囲い込んでしまうことです。
そのため、「両手仲介」は不動産業者に得はあっても、売り手には何の利益も得もありません。
それどころか、売却の機会損失につながります。
このケースでは、G社が両手仲介を狙って物件情報を意図的に他業者へ流さず囲い込み、他業者からの内覧申込みも「商談中です」「契約予定です」と嘘を言って断っていたのです。
[su_box title=”関連記事” style=”bubbles” box_color=”#0075c2″ title_color=”#ffffff”]・不動産の売却時に要注意!「囲い込み」の実態と対策とは?[/su_box]「両手仲介」狙いの物件の「囲い込み」は問題となっています。
そのため、レインズを運営する不動産流通機構も、売主が囲い込みをチェックできる機能をレインズに設定しました。
根本的な対策は信頼できる不動産業者を選ぶことに尽きるのですが、専任または専属専任媒介契約を締結した場合は、必ず不動産業者から物件登録証明書を受け取り、「取引状況」のステータス管理という機能を使って囲い込みを抑止しましょう。
また、こうした知識を持っていること自体も不動産業者への抑止力となりますので、業者選定の際には遠慮なく「囲い込みしませんよね?」「両手仲介にこだわりませんよね?」と確認してみましょう。
Mさんは自宅マンションを売却するために、会社の同僚から紹介を受けた不動産業者Hと媒介契約を締結しました。
H社の査定価格は3,200万円であり、価格戦略はまず3,500万円で売り出し、時期や反響を見ながら価格調整をし、ここまで下げれば売れるであろう最低売却価格を3,000万円に設定しました。
Mさんの場合、住宅ローンの残債額も1,800万円であり3,000万円で売却できれば満足だったのです。
3,500万円で売却を開始して2週間後に内覧をした買い手から、3,100万円で購入申込書が入りました。
なかなかシビアな指値ですが、最低売却価格はクリアしているため、H社はMさんに「価格戦略通り、指値を受けましょう」と打診しましたが、Mさんは「2週間で買い手が現れたのだから、このまま待っていれば3,500万円満額の買い手が現れるに違いない」と欲が出て、この商談は断ってしまいました。
しかし、Mさんの思惑とは相違して、その後の内覧はあっても購入申込みには至らず、結局5ヶ月後に2,980万円で売却することとなりました。
あらかじめ決めた価格戦略を無視して失敗してしまったケースです。
確かに、売却直後に最低売却価格に近い指値が入ったので、Mさんが迷うのも理解できますが、マンションの売却相場は水ものです。
Mさんは最低売却価格を決めたにもかかわらず、当初決めた価格戦略を変更してしまったため、指値よりも安い価格で5ヶ月も後に売却することとなったのです。
当初決めた価格戦略の通りに動いた方が成功の確率は高くなります。
引合いの強いよほど売れ筋のマンションでない限り、最初の買い手で決めることが大切です。
だんだんと価格や条件が悪くなりますし、そもそも二度と買い手が現れないリスクもあるのです。
時間をかけて売却活動をすれば、高値で買う買い手が現れるものではありませんし、逆に早めに内覧に来た買い手の方が購入のモチベーションは高いといえるでしょう。
Uさんは急に現金が必要となったために、賃貸用として運用していたマンションを売却することにしました。
特に不動産業者に知り合いはいなかったため、同じ町内会の役員であり、町内活動を通じて気心が知れている不動産業者Iに依頼することにしました。
I社は免許証番号の更新数字も(5)のため(※)、経験も豊富であると考えたのです。
※宅建業の免許証番号とは?
宅建業の免許証番号とは、不動産業者が宅地建物取引業の免許を受けたときの番号です。
複数の都道府県に事務所がある場合は国土交通大臣免許、1つの都道府県内にある場合は都道府県知事免許となります。
カッコ内の数字が免許の更新回数であり、更新は1996年以降は5年に1度(それ以前は3年に1度)行われます。
<宅地建物取引業者免許証の例>
しかし、3ヶ月経っても何の反響もありません。
痺れを切らしたUさんはI社に売却活動や価格の妥当性などについて相談しましたが、どうも要領を得ません。
現金化しなければならないタイミングが迫ってきたため、Uさんは不動産一括査定サイトを利用して投資用マンションの売却に強い不動産業者に査定を依頼しました。
すると、その不動産業者は収益還元法による価格査定やそれを裏付ける賃貸データ、このエリアでの期待利回りの動向、投資用マンションの売却方法など、さまざまなデータをもとに丁寧に説明してくれたため、不動産業者を変更して無事に現金化に成功しました。
投資用マンションを売却するためには、そのためのノウハウやスキルが必要です。
今回のI社は投資用物件の販売実績やスキルがなかったために、的違いの売却活動や期待利回りから算定するマーケットに合った売却価格の設定ができていませんでした。
その結果、このマンションの購入を検討する層に適切に物件情報が届いておらず、反響がなかったのです。
投資用マンションと実需用マンションとは購入層が異なります。
実需用マンションを求める購入層はマイホームを買いたいエンドユーザーであり、投資用マンションを求める購入層は投資家です。
投資家の判断基準は、期待利回りや将来的な売却を含めた投資分析であり、そういった指標を示さなければ検討に至りません。
そのため、そういった投資家を顧客に持つ不動産業者は、日々不動産投資マーケットの動向や金利情勢、金融機関の融資姿勢などを情報として取得し、投資用物件の適正価格を判断しているのです。
このように、投資用マンションを売却する際には、投資用マンションの売却の適切なノウハウやスキルを持った不動産業者に依頼することが大切です。
Hさんは10年前に4,800万円で購入した自宅マンションを売却することにしました。
住宅ローンの残債は3,400万であり、最低でも4,000万円で売却できれば引越し費用や諸経費などを捻出できるため満足できる、と考えていました。
そこで、知り合いから紹介された不動産業者Jに相談したところ、「早めに売却した方がいい」というアドバイスをもらい4,000万円で売却することになりました。
売却を開始して少しすると、J社の担当者から「社内で検討したところ、現金一括4,000万円で当社が購入してもよい。仲介手数料の分だけ浮きますよ」という提案があり、Hさんはその提案に乗って4,000万円でJ社に売却したのでした。
このケースは、Hさんの希望売却価格である4,000万円で売却できたため、失敗とは言えないかもしれません。
しかし、この提案には裏があったのです。
実は、Hさんのマンションは人気のウォーターフロントで新規供給物件が少ないエリアにあったため、新築当時から値下がりしていない部屋もあるような物件だったのです。
J社にはHさんと同タイプの部屋を4,500万円で買ってもよいという買い手がいたため、J社は4,000万円で買って4,500万円で転売したのでした。
Hさんは4,500万円で売却できるチャンスをJ社の誘導に乗って逃してしまったといえます。
このケースではHさんは自分自身でもっと相場を把握しているべきでした。
自分なりに最低売却価格を設定しておいたまではよかったのですが、相場価格についても調べるべきだったのです。
国土交通省が運営する土地総合情報システム、不動産流通機構が運営するレインズ・マーケット・インフォメーションなどの公的サイト、SUUMOやアットホームなどの不動産ポータルサイトなどで相場価格を事前に確認できます。
<土地総合情報システム http://www.land.mlit.go.jp/webland/>
<レインズ・マーケット・インフォメーション http://www.contract.reins.or.jp/search/displayAreaConditionBLogic.do>
相場観を身に付けたうえで不動産業者の査定を受ければ、高すぎる査定価格にも安すぎる査定価格にも違和感を覚えることができ、価格の妥当性や算定根拠を確認することができます。
そのうえで、売却活動や価格戦略とあわせて総合的に不動産業者を選定することが大切です。
Hさんが事前に相場観を身に付けていれば、売出し価格をもう少し高く設定して売却を開始することもできたかもしれません。
そもそも、J社から提案しなければならないことと言えますが、売主としての防御策であると言えるでしょう。
もう1点加えるとすれば、やはり査定は必ず複数の不動産業者から受けることが大切です。
マンション売却で失敗する人のパターン10選を紹介してきました。
いずれのケースも陥りやすいケースですので、ご自身のマンション売却の前には必ず再確認してください。
マンション売却に失敗しない最大のコツは、信頼できるパートナーである不動産業者を見つけることです。
マンション売却のノウハウやスキルがあり、緻密な売却戦略、売主の立場に立った熱心な営業姿勢などを兼ね備えた不動産業者は多数存在します!
ぜひ、そういったパートナーを得てあなたのマンション売却を成功に収めてください。