不動産の売買は、高額なものが多く仲介手数料もその分多くなりがちです。そのため、仲介手数料の相場を知って少しでも安く抑えたいと思う人は多くいます。
結論からいいますと仲介手数料に「相場」はなく、売買価格によって法律で「上限」が決まっています。基本的に上限まで請求する不動産会社が多くなりますが、値引くことができたり無料と宣伝していたりする不動産会社もあります。
今回の記事では、仲介手数料の上限の一覧表や計算方法、仲介手数料を値引くコツや売買で納める税金に関してもわかりやすく解説します。
目次
仲介手数料の上限がすぐにわかる一覧表と計算方法をご紹介します。一般的に仲介手数料は、一覧表のような上限まで請求されることが多くなります。
売買価格 | 仲介手数料(10%税込み) |
---|---|
200万円 | 110,000円 |
400万円 | 198,000円 |
600万円 | 264,000円 |
800万円 | 330,000円 |
1,000万円 | 396,000円 |
1200万円 | 462,000円 |
1,500万円 | 561,000円 |
2,000万円 | 726,000円 |
2,500万円 | 891,000円 |
3,000万円 | 1,056,000円 |
3,500万円 | 1,221,000円 |
4,000万円 | 1,386,000円 |
4,500万円 | 1,551,000円 |
5,000万円 | 1,716,000円 |
5,500万円 | 1,881,000円 |
6,000万円 | 2,046,000円 |
6,500万円 | 2,211,000円 |
7,000万円 | 2,376,000円 |
7,500万円 | 2,541,000円 |
8,000万円 | 2,706,000円 |
仲介手数料の計算方法には、1度で計算できる「速算式」と「3つの区分にわけて計算する方法」があります。計算の仕方は違いますが算出される金額は同じになります。
【速算式での計算方法】
(売買価格×3%+6万円)+消費税
例:4,000万円の物件の場合での仲介手数料の上限
(4,000万円×3%+6万円)+消費税=138.6万円
【3つの区分にわける計算方法】
4,000万円の物件の場合(税別)
売買価格 | 4,000万円の物件の場合 | 仲介手数料 |
---|---|---|
200万以下の部分 | 200万円×5% | 10万円 |
200万超え400万円以下の部分 | 200万円×4% | 8万円 |
400万を超える部分 | 3,600万円×3% | 108万円 |
合計 | 126万円 |
(10%税込み)
126万円×1.1=138.6万円
上記のようにどちらで計算しても、4,000万円の仲介手数料の上限は、138.6万円になります。
仲介手数料とは売買契約が成立した際に支払う成功報酬になります。仲介業務した不動産会社に買主と売主それぞれが支払う正当なお金になります。そのため、売買契約を成立しなければ物件の案内を受けていたとしても支払う義務はありません。
仲介手数料に含まれる業務を説明します。
・物件の案内業務
・売却するための広告費用や活動費
・売却するためのチラシ作成や不動産情報サイトへの掲載業務
・物件引き渡しまでの事務手続き
・売買契約書や重要事項説明書作成
上記の内容は仲介手数料に含まれる業務になります。そのため、これらの内容で仲介手数料以外に別途費用を請求されることはありません。しかし、個別に広告費用を多くかけて売却活動してほしいなど注文した場合は、その分の費用が請求されます。
仲介手数料の受け取れる上限は決まっていますが、売主買主のうち片方から受け取る「片手」と両方から受け取る「両手」があります。売主買主両方から受け取れる「両手」のほうが受け取れる仲介手数料が多くなるので、仲介会社は両手を狙いにいきます。1つの不動産に対して、売主側と買主側で仲介会社が違う場合には片手になります。
【4,000万円の売買の場合の仲介手数料】
片手:売主から138.6万円
両手:売主から138.6万円+買主から138.6万円=277.2万円
上記のように単純に貰える仲介手数料に2倍の差があります。
仲介手数料支払いのタイミングを知って現金を事前に準備しておきましょう。また、違約金なしでキャンセルできる時期もご紹介します。
仲介手数料の支払いの義務が発生するのは、売買契約後になりますが支払うタイミングは2通りあります。
・売買契約成立後に50%、引き渡し時に50%
・売買契約成立後は0、引き渡し時に100%
上記のように仲介手数料をわけて支払う方法と引き渡し時に全額支払う方法があります。一般的には売買契約時に50%、引き渡し時に50%の支払いを請求することが多くなります。
売買する不動産の金額や条件などは関係なく、仲介する不動産会社によって異なります。振込対応の会社もありますが、基本的に現金で支払うお金になります。
仲介手数料は売買契約が成立していないと発生しません。そのため売買契約前に物件の案内を受けていたり、不動産の売却活動をしていたりしても支払いは発生しません。しかし、仲介手数料の支払いはなくても違約金が発生する場合があります。
違約金が発生する可能性があるのは、媒介契約書が「一般媒介契約」ではなく「専任媒介・専属専任媒介契約」のときです。
「専任媒介・専属専任媒介契約」には、契約期間が定められており一般的に「3カ月間」が多くなります。その契約期間の途中でキャンセルした場合、違約金が発生する場合があります。違約金を発生させないためには、契約期間中にキャンセルせずに、期間終了後に契約を更新しないことです。
上記で説明した通り、仲介手数料の支払い発生は売買契約成立後になります。ですが、売買契約後になんらかの理由で引き渡しまでいかずに終了してしまった場合、仲介手数料の支払いが発生するのか疑問に思う人も多くいるのではないでしょうか。
結論からいいますと、売買契約をキャンセルした理由によって仲介手数料の支払いが決まります。また、媒介契約書に記載されている内容によっても全額支払いか半額支払いかなども異なりますので、媒介契約前に確認が必要になります。
仲介手数料の支払いが発生しない場合は、キャンセルした理由が自分の責任ではないことです。
【仲介手数料が発生しないでキャンセルする具体例】
・住宅ローンが通らない
・住宅の引き渡し前に自然災害などで住むことが困難になった
・住むことができないほどの瑕疵が見つかった
・売買契約書に記載されている特約条件を満たすことができなかった
上記のように、キャンセルする理由が自己都合ではない場合には仲介手数料が発生しません。売主買主ともに合意したうえで「白紙解約」になります。白紙解約とは、最初から売買契約がなかったとするという意味です。
ただし、住宅ローンの申請をする際に虚偽の内容で申請して通らなかった場合には、悪質とみなされて白紙解約できない場合がありますので注意してください。虚偽の内容の具体的な例は、借金をしていること伝えない、キャッシングによるローンを何回も延滞している経験があることを伝えないなどです。
最初に伝えるのと後からわかってしまうのでは、金融機関からの印象も変わります。もし、過去に不安な点があれば最初に必ず営業担当に伝えましょう。
不動産の引き渡しまで完了していないのに、仲介手数料が発生する場合があります。それは、上記の内容と反対に自分に責任があるときです。
【仲介手数料が発生するキャンセルする具体例】
・親に反対された
・転勤になって、購入場所に住めなくなった
・契約内容の違約事項を満たした
・暴力団関係者との繋がりが見つかった
親の反対や転勤になった場合は自分が悪いように感じませんが、自己都合による一方的な解除になります。そのため白紙解約にはならずキャンセルするためには、売主側に手付金の放棄をすることになります。また、仲介手数料の支払いも発生します。
仲介手数料はどの物件でも値引いたり無料にしたりすることは可能です。値引くためのコツや方法をご紹介します。
どの物件でも値引くことは可能と伝えましたが、物件自体が安いものや人気の物件に関しては値引き交渉しても通らない場合があります。物件自体が安いと仲介手数料も安くなるため、値引きしてしまうと仲介会社の利益がほぼなくなるからです。
また、人気の物件に関しては値引きをしなくても購入希望者が集まるので、値引き交渉が通りにくくなります。
それでも値引き交渉することで少しでも値下げできる可能性がありますので、値引きのコツを参考にして頂ければと思います。
・最初から値引きありきで話さない
・他社と比較検討していることを伝える
・媒介契約する一歩手前で交渉する
・不動産会社の決算期を狙う
最初から値引きありきで話すと営業担当者から相手にされなくなる可能性があります。他社と比較検討していること伝え、値引きに応じれば契約することを伝えるといいでしょう。
また、契約する不動産会社の決算期を狙うのもポイントです。決算期はできるだけ多く契約をして仲介手数料を回収したいと考えます。過度な値引きでなければ交渉が通りやすくなります。
インターネットで「仲介手数料 無料」などと検索すると、仲介手数料を無料にしている不動産会社が出てきます。もともと無料にしているため値引き交渉も必要ないので気持ち的にも楽に契約に進むことができます。無料にしている仲介会社は、売主や買主どちらか一方から仲介手数料を貰うことを前提にしています。1度の契約で貰える仲介手数料は減りますが、無料と宣伝することで顧客を増やして契約数を増やす狙いがあります。
売買契約する際に、仲介会社を通さずに売買できれば仲介手数料はかかりません。家を購入する際に施工主から直接購入することもできます。物件を紹介している会社はほとんどが仲介の不動産会社になります。そちらに連絡せずに、家を建てた施工主を検索して直接購入できないか確認してみましょう。
上記のように売主が法人で買主が自分の場合は問題ありませんが、売主が自分で買主が個人の場合には注意が必要です。売買契約書などの法律に関わってくる文章を自分で作成することになるからです。金額が大きい分記載漏れなどによって後々大きな損害になる可能性もあります。もし、自分で買主を見つけたとしても専門的な書類作成業務などは専門業者に依頼したほうがいいでしょう。
不動産の売買では仲介手数料以外にも多くの税金がかかります。税金の計算の仕方や意味など難しく感じられるかもしれません。しかしすべてを理解しなくても、全体的にわかっているだけで不動産の売買契約中や売買後に慌てることなく税金の支払いをすることができます。
売買契約書や住宅ローンの契約書(金銭消費貸借契約書)に収入印紙を貼って納税します。売買契約書の原本に貼る必要があり、売主・買主・仲介会社の3者が原本を所有する場合は収入印紙も3倍かかります。しかし、一般的には仲介会社はコピーを所有し、売主も必要なければ買主だけ所有することになります。その場合、買主のみが1通分の印紙税を支払うことになります。
また、印紙税の金額は売買金額と書類によって異なります。
【売買契約書での印紙税】
2022年3月31日まで軽減措置を受けられます。
売買金額 | 基本の税率 | 軽減税率 |
---|---|---|
100万円を超え 500万円以下 | 2,000円 | 1,000円 |
500万円を超え1,000万円以下 | 1万円 | 5,000円 |
1,000万円を超え5,000万円以下 | 2万円 | 1万円 |
5,000を超え1億円以下 | 6万円 | 3万円 |
住宅ローンを借りる際に金融機関と結ぶ金銭消費貸借契約書には、軽減措置が適用されないので基本の税率を納税する必要があります。
【売却の場合】
住宅ローンがあるときに抵当権抹消手続きでかかる税金になります。物件価格に関わらず土地と建物それぞれ1,000円ずつかかります。
【購入の場合】
登記の種類 | 基本の税率 | 軽減措置 | 軽減措置の期限 |
---|---|---|---|
所有権移転登記(土地) | 固定資産税評価額×2% | 1.5% | 令和5年3月31日まで |
所有権保存登記 | 固定資産税評価額×0.4% | 0.15% | 令和4年3月31日まで |
所有権移転登記(中古) | 固定資産税評価額×2% | 0.3% | 令和4年3月31日まで |
住宅ローンの抵当権設定登記 | 住宅ローンでの借入額×0.4% | 0.1% | 令和4年3月31日まで |
軽減税率は建物の床面積が50㎡以上であることや自己居住用の住宅であること、取得から1年以内に登記されたものであることなどによって受けられるかどうかが変わってきます。また、長期優良住宅の特例を受けることができる場合もあります。
不動産を取得したときに1度だけ支払う税金になります。計算方法は「固定資産税評価額×4%」です。ですが、令和6年3月31日までは特例により税率が3%になっています。
固定資産税評価額は、一般的に時価より低く設定されています。土地の場合だと7割程度、建物の場合だと5~6割程度になっています。居住用の土地や建物、建物の床面積など一定の条件をクリアすれば軽減措置を受けられます。ですが、軽減措置は自動的にされず申告する必要がありますので、忘れずにおこなう必要があります。
不動産を売却した際に、利益が発生すれば譲渡所得税を納める必要があります。譲渡所得税はあくまで売却益のみにかかる税金なので、譲渡費用と取得費をひいて計算します。
【譲渡費用とは】
売却するときに支払った費用のことです。(仲介手数料、契約書の印紙代、登記費用など)
【取得費とは】
売却した不動産を過去に購入した際に支払った費用のことです。(購入代金や購入時の仲介手数料、リフォーム代金など)
【譲渡所得にかける税率】
税率は売却した不動産の所有していた年数によって異なります。
所有していた期間 | 区分 | 税率 |
---|---|---|
5年以下 | 短期譲渡所得 | 39.63%(所得税 30% 、住民税 9% 復興所得税 0.63%) |
5年を超える | 長期譲渡所得 | 20.315%(所得税 15% 、住民税 5% 復興所得税 0.315% ) |
【譲渡所得税の計算方法】
不動産の売却価格 – (取得費 +譲渡費用)=譲渡所得
譲渡所得×税率=譲渡所得税
上記のように計算して申請します。売却益をそのまま譲渡所得として計算してしまうと大きな損になりますので注意しましょう。
仲介手数料の相場はありませんが、上限を確認し不当に多く請求されないように事前に確認しておきましょう。また、仲介手数料がどのタイミングで発生し、どの条件であれば違約金などが発生しないでキャンセルできるのかを確認することで余計な出費をなくすことができます。今回の記事を参考に不動産売買を円滑におこなって頂ければと思います。