ローンなどの肩代わりとして抵当を預かる者を「抵当権者」、抵当を提供する者を「権利権設定者」と呼ぶ
・抵当に関わる関係図の例
・抵当権の特徴
占有の移転 | ・抵当権設定者は目的物をそのまま占有できる(所有権、地上権など) ※ただし、抵当権設定者が抵当権を設定した土地や建物の価値を下げようとした場合には、抵当権設定者は妨害排除請求をおこなうことができる |
諾成契約 | ・抵当権は口頭の合意のみで成立する(書面は不要) ※ただし、第三者に対抗するには登記が必要 ※保証契約では書面または電磁的記録が必要だが、抵当権の設定では書面は不要 |
順位の変更 | ・抵当権の順位は登記の順番で判定する ・しかし、抵当権の順位は各抵当権者の合意と利害関係人の承諾があれば変更できる(抵当権設定者の合意は不要) ※登記に反映しない場合には効力は生じない |
優先弁済権 | ・後順位抵当権者がいる場合には、利息は最後の2年分に制限される ・後順位抵当権者がいない場合には、利息の年数に制限はない |
※賃借権は抵当には設定できない
・抵当権の実行時に影響の及ぶ範囲(付加一体物、従物、従たる権利)
※建物に抵当権がついた場合に、家具やテレビなどまでは抵当権は及ばない
・抵当権の特徴
付従性 | ・債権がなければ抵当権は成立せず、債権が消滅すれば抵当権も消滅する ※ただし、将来発生する債権にも抵当権を設定できる(付従性の緩和) |
随伴性 | ・債権が移転すると抵当権も移転する |
不可分性 | ・債権全額の弁済を受けるまで、目的物全部に効力が存続する |
物上代位性 | ・目的物が滅失しても、抵当権設定者の受け取る金銭を受取り前に差押さえれば効力を及ぼす ・物上代位の対象は、売買代金、賃料(転貸賃料債権は不可)、損害賠償請求権、保険金請求権など |
※Aは火災保険の支払金をBの受取り前に差押さえることで、代わりに回収できる
※ただし、土地のみの抵当権しか設定していない場合には、建物の火災保険までは物上代位できない
※Aは賃貸先のGからは回収できるが、さらに転借された転貸先のDからは回収できない
・抵当権の実行の流れ
・抵当権消滅請求
代価弁済 | ・抵当権者からの求めで、第三取得者が目的物の代金の全部または一部を抵当権者に支払うこと |
抵当権消滅請求 | ・第三取得者からの求めで、抵当権者全員の承諾を得て弁済することで、抵当権が消滅すること ・抵当権のついた土地を買う場合、事後に抵当権を実行されて土地を競売の落札者に引き渡す必要性が発生してしまうため、第三取得者は抵当権消滅請求をすることができる ・第三取得者は各抵当権者に弁済する金額を記載した書面を送付するが、抵当権者は2ヵ月以内に抵当権を実行し競売をおこなわなければ、承諾したとみなされる ・第三取得者は抵当権設定者の債務を肩代わりし、その後に抵当権設定者に償還を請求できる ※第三取得者ではない主債務者や保証人は、抵当権消滅請求はできない |
・賃貸借の保護
抵当権設定登記前の賃借権 | ・賃借権を有する者が対抗要件を備えている場合は、抵当権者や競落人に対抗できる(賃貸借の登記または引渡しが先の場合には賃借人の勝ち) |
抵当権設定登記後の賃借権 | ・賃借人は抵当権者等に対抗できない(賃貸借契約が後の場合には賃借人の負け) ※ただし、競売の買受人が買い受けたときから6ヵ月は建物の明渡しを猶予される |
※Cが賃貸で借りている場合
・法定地上権
法定地上権は借地権の一種。法定地上権は建物保有者を保護するための権利
・法定地上権
以下の①②が起こった場合には、法定地上権(その土地を利用できる権利)が当然に成立する
①1番抵当権の設定当時、土地の上に建物が存在し、同一の所有者であること(登記簿上ではなく実体で判断) ②抵当権の実行(競売)によって、土地と建物が別々の所有者になったこと(対象は建物の場合と土地の場合の2通りがある) |
※土地に1番抵当をつけた後に建物が建ち、土地と建物に2番抵当をつけたあとで2番抵当の実行がされたとしても、当初から①ではなかったことから、法定地上権は成立しない
・一括競売
・土地に抵当権を設定した当時は更地で、その後に建物が建てられた場合、抵当権者は土地と建物を一括して競売にかけることができる ・ただし、優先弁済を受けられるのは抵当権を設定している土地の代金からのみ |