土地を売却する場合には、建物が建っている土地と建物が建っていないと土地の2通りに分けることができます。
建っている建物がそのまま利用できる状態であれば問題ありませんが、利用できない状態の場合はそのまま売却した方がよいのか、建物を取り壊して更地にして売却した方がよいのか、悩む方がほとんどではないでしょうか。
多くの方が、
「建物をそのままにして売れるのだろうか?」
「更地の方が高く売れるのでは?」
「更地にするためにはどのくらいコストがかかるのだろうか?」
「結局、どちらを選べばよいのだろうか?」
といった疑問や悩みを持つと思います。
この記事では、そうした疑問や悩みを解消するために、それぞれの方法のメリット・デメリット、注意点、費用や税金、売却の手順などについて徹底解説します。
目次
まずは「古家付き土地」と「更地」の違いについて確認しましょう。
更地とは、土地上に建物や建築物、工作物などの定着物が存在していない宅地のことをいいます。
ただし、土地上の定着物がないからといって市街化区域内にある「耕作されていない農地」や「樹木のない山林」は宅地ではないため、更地に定義されません。
ちなみに、土地上の定着物を取り壊したうえで、コンクリートや瓦などの建築廃材(一般的にガラと呼ばれます)や庭石・庭木などの一切の廃棄物を除去し、ローラー転圧作業など行った場合は「整地」といいます。
なお、不動産取引においては、物件の引渡しまでに売り手の責任と負担において建物を解体し、更地として引渡すことを「更地渡し」といいます。
<更地の売却事例>
古家付き土地とは、その名の通り古い家(建物)が存在している土地のことをいいます。
「古家」の具体的な定義は決まっていませんが、一般的には築年数が20年を超えるような古い家でリフォームしても利用が難しい場合をいいます。
木造の建物の法定耐用年数は22年ですので、22年を超えると税法上は価値がゼロとなることが古家の目安となっていますが、今どきの家は築20年くらいではまだまだ利用できる場合が多く見られます。
古家付き土地は、建物の経済的価値がゼロであり、土地の価値だけで評価されることとなります。
ただし、築20年以上の建物であっても、まだまだその建物を利用できると判断される場合やリフォーム・リノベーションをすることによって再利用できる場合は「中古住宅」として売却します。
<古家付き土地の売却事例>
通常、不動産流通マーケットにおいて、更地はもちろんのこと、建物が建っていても古家付き土地は「売地」という物件種別で販売されます。
その場合、販売図面の特記事項などに「売地(現況古家あり)」というように記載されます。
<更地の販売図面の事例>
※この事例では、現況/更地と明記されています。
<古家付き土地の販売図面の事例>
※この事例では、現況は古家がありますが、物件種別は売地となっています。
古家は昭和44年2月築のため、利用することは難しいとの判断です。
一方、築年数が古くても建物がそのまま利用できる場合や、リフォームすれば利用できる場合などは「中古住宅」という種別で販売されることもあります。
<中古住宅の販売図面の事例>
※この事例では、建物は築25年以上経過していますが、そのまま利用できるため中古住宅として販売されています。
不動産公正取引協議会連合会が定める「不動産の表示に関する公正競争規約施行規則」によると、物件の種別は下記の通り規定されています。
第3条(物件の種別)
規約第8条(必要な表示事項)に規定する物件の種別は、次に掲げる区分によるものとし、それぞれの意義は、当該各号に定めるところによる。
(1)分譲宅地
一団の土地を複数の区画に区分けして、その区画ごとに売買し又は借地権(転借地権を含む。)を設定若しくは移転する住宅用地をいう。
(2)現況有姿分譲地
主として一団の土地を一定面積以上の区画に区分けして売買する山林、原野等の土地であって、分譲宅地及び売地以外のものをいう。
(3)売 地
区分けしないで売買される住宅用地をいう。
(4)貸 地
区分けしないで借地権(転借地権を含む。)を設定又は移転する住宅用地をいう。
(5)新築分譲住宅
一団の土地を複数の区画に区分けしてその区画ごとに建築され、構造及び設備ともに独立した新築の一棟の住宅であって、売買するものをいう。
(6)新築住宅
建物の構造及び設備ともに独立した新築の一棟の住宅をいう。
(7)中古住宅
建築後1年以上経過し、又は居住の用に供されたことがある一戸建て住宅であって、売買するものをいう。
(8)マンション
鉄筋コンクリート造りその他堅固な建物であって、一棟の建物が、共用部分を除き、構造上、数個の部分(以下「住戸」という。)に区画され、各部分がそれぞれ独立して居住の用に供されるものをいう。
(以下省略)
引用元:不動産公正取引協議会連合会 不動産の表示に関する公正競争規約施行規則 より
上記の通り、物件種別において新築以外の住宅は中古住宅しかなく、「古家付き土地」という種別もありません。
そのため、古家付き土地は「中古住宅」もしくは「売地」のいずれかの物件種別となることがわかります。
物件を売却する場合に、古家付き土地(売地)として売り出すのか、中古住宅として売り出すのかについて、明確な基準や法的な制限はありません。
売却を依頼した不動産会社と相談し、買い手のニーズをよく踏まえたうえで、売り手が自由に決定することができます。
古家でも中古住宅として売れる古家と、土地としてでないと売れない古家があります。
中古住宅として売却できれば、建物の価値を売却価格に上乗せできたり、解体費用を改定負担としたりすることもあるため、高値で売却できることとなります。
一体、その差はどこにあるのでしょうか。
まずは、売れる古家の特徴について見ていきましょう。
駅から徒歩5分以内の古家や、陽当りのよい東南や南西角地の古家など、立地条件のよい古家は需要があります。
特に駅に近い立地の場合は、住宅のみならず商売や事業の用途でも利用できるため、買い手のターゲットが拡がり、より多くの需要を取り込むことができます。
また、住環境の良い角地の古家など、なかなか不動産流通マーケットに出てこない物件も需要が強いために売れやすい古家といえるでしょう。
このように、好立地の古家は、古家としてのニーズというよりは土地としてのニーズが見込めるといえます。
建築確認申請の受理日が1981年6月1日以降の建物は、新耐震基準に基づいて建てられているため、震度6の地震が発生しても倒壊のリスクが小さくなっています。
近年は阪神淡路大震災や東日本大震災など、各地で大地震が発生して被害が出ていることもあり、買い手にとって耐震性は重要な要素となっています。
そのため、耐震性の強い新耐震基準に適合している古家であれば、買い手に一定の信頼感を与えることができ、売却しやすいといえます。
使い勝手の良い間取りの古家、味がある造りの古家、雰囲気の良い古民家風の古家、建築家のテイストが感じられる古家などは、古くても売れやすい古家といえます。
こうした古家を、自分好みやライフスタイルに応じたリフォームやリノベーションをしてマイホームとしたい・・・という買い手が増えているためです。
取り壊してしまえば、同じような雰囲気やテイストの建物が建てられないこともあり、そのままの古家を利用したいというニーズが、現在の不動産流通マーケットに一定数あります。
賃貸需要が見込めるエリアにある古家も、投資家の需要が見込めるため売れやすい古家です。
投資家は、投資した資金に対する年間賃料収入の割合である「利回り」を指標に物件を選びます。
建物を更地に新築するより、古家でも建っている建物を修繕した方が投下する資金は少なくて済みます。
そのため、確実な賃貸需要がある古家であれば、利回りを考える投資家が購入する可能性があります。
一方、売れない古家の特徴にはどのようなものがあるのか、見ていきましょう。
昔は広い庭のある家が多くあったため、庭に樹齢の古い大きな庭木や庭石のある古家が存在します。
庭木などは日頃から定期的な手入れや管理が必要であり、そうしたメンテナンスをしなければ繁茂して近隣への越境や虫害など、トラブルのもととなります。
しかし、メンテナンスをしていくにはそれなりの費用が定期的にかかるため、維持していくことが面倒なこともあり、現代では需要がほとんどありません。
庭木や庭石を廃棄するにしても、重機などを使った大がかりな作業となり、大きなコスト負担や手間がかかります。
こうした理由から、大きな庭木や庭石のある古家は、買い手から敬遠される傾向があります。
あまりにも築年数が古いため老朽化が進んでしまい、リフォームやリノベーションによる再生や活用が不可能な場合、選択肢は「解体して新築」しかなくなってしまいます。
また、シロアリ被害などにより建物の強度が十分でない場合も同様です。
解体して新築するしか選択肢がないと、特に土地面積が広い場合などは、土地価格と新築建築代金の合計額が高額になるため、予算のある買い手しか購入を検討できなくなります。そのため、買い手が限定される可能性があり、売れにくいリスクが発生します。
古家が二世帯住宅として建築されている場合、売れにくいリスクがあります。
基本的に、二世帯住宅として建築されている家は、二世帯住宅を求めている買い手しか検討しないため、極めて買い手が限定されてしまいます。
それに加えて、住んでいた人の間取りの好みや使い勝手が強く反映されている場合も多く、ニーズとマッチしないケースが少なくないためです。
ただし、1階と2階の玄関が分かれていて、それぞれの世帯が完全に独立している場合は、いずれかを賃貸することもできるため、ニーズが見込める場合もあります。
法的な制限や瑕疵担保責任などの権利関係が大らかだった時代には、自分の敷地(地中)に隣家の水道管が敷設されていたり、解体した建物の基礎や瓦などのガラを地中に埋める(埋戻しといいます)ことが許容されていたりしました。
現代では、環境面を含めた法的な制限や瑕疵担保責任の所在などに関して、不動産取引をするうえで非常に厳格となっています。
そのため、こうした瑕疵のある古家は、売り手がすべて適切に対応して改善しない限り、買い手から敬遠される傾向があります。
続いて、古家付き土地として売却するメリットやデメリット、売却する場合の注意点などについて説明します。
まずは何といっても解体費を負担する必要がありません。
解体費は非常に高額ですので、そのコストを負担する必要がないことは大きなメリットといえます。
<解体工事の見積書の事例>
上の事例は、実際の木造2階建ての一戸建て住宅の解体工事見積書の事例です。
解体工事費の合計が2,019,430円とあり、解体する建物の延床面積が167.70平方メートルですので、坪当たりの工事単価は、
2,019,430円÷167.70平方メートル=12,042円/平方メートル ⇒ 339.800円/坪
と計算できます。
このように、解体工事は@3万円/坪~4万円/坪程度の費用がかかり、一般的な木造住宅を解体する場合でも、100万円以上の高額なコストが発生します。
そのうえ、塀・庭木・庭石などの有無、整地をするか否か、前面道路の幅員、残置物(エアコンや粗大ごみなど)の有無、重機利用の可否、アスベスト使用の有無などにより工事費が大きく変動しますので、注意が必要です。
一般的な解体工事費の目安は下記の表の通りです。
<解体工事費の相場>
解体する建物の構造 | 坪当たりの単価 |
---|---|
木造 | 3万円~4万円 |
鉄骨造(S造) | 3万円~5万円 |
鉄筋コンクリート造(RC造) | 5万円~8万円 |
一般のエンドユーザーの方にとって、更地の状態から建物のイメージを膨らませることは難しいといえます。
しかし、古家など実際に建物が建っていれば、建物の高さやボリューム感、敷地に対する建物の配置の様子、隣地との関係などの感覚をつかみやすく、陽当りや風通しなども体感することができます。
土地上に住宅が建っていることで、住宅用地の特例により固定資産税・都市計画税の軽減措置が適用されます。
そのため、古家付き土地で売却する場合は、この軽減措置を受けたまま買い手に引渡すことができます。
なお、住宅用地の特例の内容は下記の表の通りです。
<固定資産税・都市計画税に対する住宅用地の特例措置>
区分 | 固定資産税の課税標準額 | 都市計画税の課税標準額 | |
---|---|---|---|
小規模住宅用地 | 住宅用地で住宅1戸につき200平方メートル以下の部分 | 固定資産税評価額 ×6分の1 | 固定資産税評価額 ×3分の1 |
一般住宅用地 | 住宅用地で住宅1戸につき200平方メートルを超える部分 | 固定資産税評価額 ×3分の1 | 固定資産税評価額 ×3分の2 |
参考:東京都ホームページ 固定資産税・都市計画税(土地・家屋)より
これまで、古家を購入してリフォームをする場合、住宅ローンと別にリフォームローンを利用して資金調達をする必要がありましたが、現在は多くの金融機関がリフォーム費用もまとめて借入れできるリフォーム一体型住宅ローンを用意しています。
従来のリフォームローンは住宅ローンに比べて金利が高く、返済期間も短かったため、ローンを一本化できる一体型住宅ローンのメリットは非常に大きなものです。
「古家を購入して自分好みのリフォームやリノベーションを・・・」と希望する買い手が増えている現在、リフォーム一体型ローンが利用できることにより物件をアピールすることができます。
古家付き土地として売却する場合は、中古住宅として売買契約を締結するため、建物に対する瑕疵担保責任を負わなければならない義務が生じます。
瑕疵(かし)とは「キズ・欠陥・不具合」という意味です。
瑕疵担保責任とは、買い手が購入後に隠れた瑕疵(=通常の注意を払っても発見できない瑕疵)を発見した場合、売り手は修繕などの義務を負うことであり、ケースによっては損害賠償請求や契約解除といったトラブルに発展する可能性もあります。
民法では第566条および第570条において、買主が瑕疵を知った時から1年以内であれば瑕疵担保責任を追及できると規定されていますが、この規定は任意規定のため、個人間の売買契約においては瑕疵担保責任の期間を「引渡し後2ヶ月~3ヶ月」程度とすることが一般的です。
建っている古家があまりにも老朽化していると、見た目の第一印象が悪く、買い手が悪いイメージを持つ可能性があります。
不動産を売却する場合、物件の第一印象は非常に大切な要素であり、売却成功に関して大きなウェートを持つ、といっても過言ではありません。
見た目で良い印象が持てなければ、買い手は次の物件を探すこととなり、あなたの物件を二度と検討してくれないリスクがあるからです。
このため、古家であっても一定程度の適切な管理が必要です。
古家付き土地で売却する場合、古家を解体して建物を新築したい買い手から、売買価格を下げてほしいという価格交渉を受けやすくなります。
減額分が解体工事費相当額であれば検討の余地がありますが、それ以上の大幅な価格交渉を受ける場合もありますので注意が必要です。
古家が建っていれば、建物部分の地中埋設物について、引渡し前に調査することができません。
引渡し後に買い手が古家を解体し、建物の基礎やガラ、地中杭、埋設管、井戸、浄化槽などの地中埋設物が発見された場合、それらは隠れた瑕疵に該当するため、売り手としての瑕疵担保責任を追及されることとなります。
その場合は、撤去費用などを負担しなければならないリスクがあります。
古家付き土地で売却する場合に、建物の瑕疵担保責任の範囲を限定することができます。
<瑕疵担保責任の範囲を限定した契約条項の事例>
また、買い手が合意すれば「瑕疵担保免責(=責任を負わない)」とすることも可能ですので、売却を依頼した不動産会社を通じて買い手側とよく相談しましょう。
<瑕疵担保免責の契約条項の事例>
古家付き土地は価格交渉を受けやすいことは説明しましたが、減額分を解体工事費とすることがひとつの目安といえます。
そのため、あらかじめ解体工事費の見積りを解体業者から取得し、金額を把握しておきましょう。
買い手からの過剰な値下げ要求に対して、数字の裏付けのある合理的な交渉をすることができます。
古家が空き家である場合も多いと考えられますが、空き家の場合は空家等対策特別措置法の関係上、適切な維持管理の必要があります。
適切な維持管理が行われていない場合は、行政側より助言・指導・勧告・命令・代執行・50万円以下の罰金といった処分を受けることがありますので、注意が必要です。
建っている古家において孤独死があり発見が遅れた場合や、自殺・殺人などの事件が発生した場合など、心理的瑕疵がある古家の場合は、古家を解体し更地として売却する方がベターです。
心理的瑕疵のある建物をそのままにしておくよりも、更地とした方が買い手にとっても精神的負担が軽くなり、価格の割安感を優先する買い手が現れる可能性も高くなります。
ただし、更地にしたとしても古家を解体する前の物件内での事件・事故について、売主として告知義務がありますので必ず告知しましょう。
ここでは、更地として売却するメリットやデメリット、売却する場合の注意点などについて説明します。
更地で売却する最大のメリットは、早期に高値で売りやすいということです。
更地の場合、買い手は購入後すぐに建物を建てることができる時間的利益と、解体工事費を負担する必要のない経済的利益の両方を得ることができます。
また、更地であれば住宅の購入層だけでなく、店舗や事務所などの事業用地を探している層やマンション・オフィスなどの収益物件用地を探している層など、土地として用途の汎用性が高いため、買い手の層が広くなるメリットもあります。
こうしたメリットから、その更地の購入を希望する買い手を早期に多数集客することができ、買い手が多ければ多いほど、競争原理が働いて高値で売却できる可能性が高くなります。
<古家を解体し更地とした事例>
古家を解体して更地としてしまえば、建物に対する瑕疵担保責任を負う必要はなくなります。
古家は築年数がかなり経過しているため、多くの瑕疵が発見されるリスクがあります。
それらに対する瑕疵担保責任がないことは、経済的にも精神的にも大きなメリットといえるでしょう。
古家(特に空き家の場合)の適切な維持管理を行う必要がないため、コストや手間などの面でメリットがあります。
自分の自宅のそばに古家があれば、まだ対応することも可能でしょう。
しかし、物件が遠方にある場合などは、自分が出かけて適切な管理をすることは非常に面倒であり、管理会社などに依頼すればコストが発生します。
更地にしてしまえばこうした手間やコストは発生しません。
更地の場合、物件を引渡すまで一時使用の貸地やコインパーキングなどとして活用できる可能性があります。
更地にしてしまうと固定資産税・都市計画税が高くなりますので、少しでも収益を上げられることはメリットといえますが、物件の引渡しまでに必ず占有者(土地を利用している者)を立ち退かせなければならないため、賃貸・使用契約関係には十分に確認してください。
また、居住用財産の3,000万円の特別控除の特例などの適用を受ける場合には、貸駐車場などの用途に利用してしまうと特例の適用を受けることができなくなってしまいますので、注意が必要です。
古家を解体した場合には、地中埋設物の確認がしやすくなるメリットがあります。
更地で引渡す場合、建物の瑕疵担保責任はありませんが、土地に関する瑕疵担保責任は負わなければなりません。
そのため、解体工事中などに地中埋設物の有無を事前に確認できれば、引渡し後のトラブルを防ぐことができます。
更地で売却する場合、古家を解体しなければならないため、解体工事費用の負担があります。
しかも、物件の決済・引渡し前に工事を完了させなければならないため、工事費を現金で用意しなければならない場合があります。
解体工事費は前述の通り、100万円単位で発生しますので、事前に見積りを取得のうえ予算を立てておきましょう。
土地上に、例え古家とはいえ住宅が建っていれば、住宅用地の特例により固定資産税・都市計画税が軽減されますが、解体して更地となれば軽減措置を受けられなくなります。
軽減措置を受けられている場合、固定資産税の課税標準額は固定資産税評価額の6分の1、都市計画税の課税標準額は固定資産税評価額の3分の1となっており、軽減措置が受けられないとそれぞれ6倍・3倍の税金負担になります。
住宅ローンとは、基本的に土地と建物が一体であることが前提条件です。
新築分譲住宅や中古住宅などが良い例で、土地だけを購入する場合には、住宅ローンの融資を受けることはできません。
そのため、更地を購入して家を建てる場合には、買い手は土地を現金で購入するか、土地分の資金を金融機関から先行融資してもらわなければなりません。
土地代金を現金で用意できる買い手はほとんどいないため、金融機関に先行融資してもらうことになりますが、その審査には建築計画の実現性や具体的な建物プランなどが重要となります。
土地だけを先行購入し、後から建物をゆっくり建てる・・・といった建築計画では、買い手の住宅ローンの承認が下りない場合があり、買い手が購入できないリスクがあります。
固定資産税・都市計画税は毎年1月1日時点の所有者が支払い義務を負うため、年末に決済・引渡しをする場合には、固定資産税・都市計画税の納税額に注意が必要です。
<固定資産税・都市計画税課税のタイミングの例>
上の例は、翌年1月20日の決済・引渡しの前に解体工事を行い、更地で買い手に引渡すケースです。
年内に解体工事を行って建物滅失登記をした場合、翌年の1月1日時点では家屋がないため、住宅用地の特例による固定資産税・都市計画税の軽減措置は受けられません。
しかし、解体工事と建物滅失登記の時期を少しずれして翌年に行えば、1月1日時点で家屋が存在するため、住宅用地の特例による固定資産税・都市計画税の軽減措置が受けられることになります。
このような時期の更地渡しの売買取引では、解体工事や決済・引渡しのタイミングについて、不動産会社や買い手とよく相談しましょう。
[su_box title=”関連記事” style=”bubbles” box_color=”#0075c2″ title_color=”#ffffff”]・建物滅失登記とは?かかる費用や必要書類について解説![/su_box]マイホームなどの居住用財産や相続した不動産を譲渡(売却)して譲渡所得(売却益)を得た場合、その譲渡所得に対して所得税と住民税が課税されます。
譲渡所得は、譲渡価格から取得費と譲渡費用の合計を差し引いて計算しますが、解体工事費は譲渡費用として計上することができます。
つまり、経費として差し引けるため節税効果が見込めるのです。
ただし、経費として認められるためには、あくまでも譲渡のために必要だった経費でなければなりません。
譲渡の予定がないにもかかわらず、所有者の一方的な都合で行った解体工事費は、譲渡費用とは認められませんので注意が必要です。
解体工事費を譲渡費用として計上するためには、物件の買い手が見つかり、建物を解体して引渡すとした内容の売買契約を締結した後に、建物を解体しましょう。
都市計画の変更などにより、古家が建てられた時と現在とでは、建ぺい率や容積率が変化している場合があります。
その場合、古家と同じ高さや延床面積の建物が建てられない場合がありますので、事前に都市計画に基づく建築制限を確認しておくとよいでしょう。
古家を解体した場合は、建物滅失登記を忘れずに行いましょう。
建物滅失登記は建物の所有者に申請義務があり、不動産登記法第57条において、建物が滅失した時はその滅失の日から1ヶ月以内に当該建物の滅失登記申請をしなければならない、と規定されています。
建物を解体したにもかかわらず建物滅失登記の申請を怠った場合は10万円以下の過料に処される、と規定されていますので注意しましょう。
建物滅失登記を依頼する場合は土地家屋調査士に依頼しますが、それほど複雑な登記申請ではないため自分で対応することも可能です。
建物滅失登記には登録免許税が課税されないため、自分で建物滅失登記を行う場合、費用はほとんどかかりません。
建物を建てる敷地は、原則として、幅員4メートル以上の道路に2メートル以上接していなければならない、と建築基準法に規定されています。
この規定を接道義務といいますが、接道義務を満たしていない建物を再建築不可といいます。
再建築不可の建物を取り壊してしまうと、新しく建物を建て替えることができないため、更地にすることはやめましょう。
建物が建てられない更地はほとんど価値がありません。
個人間で不動産の売買契約を締結する場合、一般的にローン特約という特約条項を規定します。
ローン特約とは、買い手が住宅ローンなどを利用して物件を購入する時に、決められた期間内にローンの承認が下りなければ白紙解約することができる、という特約です。
売り手は受領済の手付金などを全額返還しなければならず、買い手には何の違約金も発生しませんので、売り手にとっては何のメリットもない規定です。
買い手のローン承認を待たずに古家を解体してしまうと、万一、買い手のローンが承認されなかった場合に売買契約を白紙解約となり、売り手には解体費用の負担だけが残ることになります。
また、白紙解約となるまでの期間は他の買い手と契約することはできないため、売却の機会損失となるうえに、古家付き土地として売却するチャンスもなくなってしまいます。
解体工事に着手するのは、ローン特約の期間が経過してからにすることをオススメします。
最後に、古家付き土地を売却する場合の一番オススメの売却方法について説明します。
売却戦略を組み立てるうえで、まずは解体費用の概算を知っておく必要があります。
そのため、解体業者から解体工事の見積りを取得しておきましょう。
その際、価格の妥当性を検証するために、複数の解体業者に見積もってもらうことが大切です。
インターネットにより見積りをしてくれる解体業者もありますので、確認してみましょう。
解体工事の見積りを取得したら、まずは「古家付き土地(現況渡し)」として売り出します。
古家を購入して自分好みのリフォームやリノベーションをしたい・・・という買い手が増えており、リフォーム一体型の住宅ローンを利用できることも大きな後押しとなっているためです。
古家が雰囲気の良い古民家風の場合や味のあるテイストを持つ場合は、高値で売却できる可能性もあります。
一定期間古家付き土地で売り出して買い手が付かない場合は、「古家付き土地(更地渡し可)」としてみましょう。
古家の需要を取り込むことを継続しながら、「更地渡し可」とすることで土地のみを購入したい層も取り込んでいきます。
この場合、一般的に解体工事費は売り手の負担となりますが、物件のニーズや買い手との交渉によっては買い手負担とすることも可能です。
また、売り手側で費用負担をして解体工事を行う場合も、買い手が見つかってから解体工事を行うことができるため、計画的な費用の支出をすることができ、安全かつ安心な不動産売却を実現できます。
古家が建っている状態で買い手が見つからない場合は、古家を解体して更地とすることを検討しましょう。
ボロボロの古家が建っているより、更地の方が見た目もスッキリとして良い印象を与え、買い手の幅も拡がって多くの購入検討者を集めることができ、売りやすくなるメリットがあります。
ただし、先行して解体工事を行うためには、工事費用を捻出しなければなりませんので、予算計画をしっかりと立てておくことが大切です。
古家付き土地を売却する場合の売却方法について、考えてきました。
日本人は新築が好きな国民性のため、昔から更地で売却することが最も高く売れる・・・とされてきましたが、中古不動産を欧米並みに流通させたい国の思惑や、リフォーム技術の向上・改良、リノベーションやリフォーム一体型住宅ローンの出現など、古家付きで売却できる環境も整ってきています。
このように、古家付き土地にはさまざまな需要が見込めますので、売却を依頼する不動産会社と相談のうえ、最適な売却方法を選択してください。