昨今の不動産会社が、投資初心者に対してアピールする投資手法の一つに、『ワンルームマンション投資』というものがあります。
最初に『ワンルームマンションは手堅く儲かる』『リスクが少ない』などの謳い文句で、不動産投資を始める人にワンルームマンション投資を推奨するのです。
そのような売り文句には妥当性があるのか、そしてワンルームマンションできちんと利益を出すにはどうすればいいのかお伝えします。
目次
ワンルームマンション投資は、不動産投資初心者にふさわしいと言われています。
具体的な理由としては、以下のようなものがあります。
マンションや戸建てなどの不動産は、面積と価格が比例して上昇します。
20平方メートルの物件よりも、40平方メートルの物件を買うと、値段はほぼ2倍です。
そして、ワンルームマンションの価格は、2人用、3人用の物件よりも1/2や1/3程度で収まります。
つまり、絶対的な相場が安いため、資金を用意できない不動産投資の初心者でも買いやすいのです。
不動産投資は、基本的には金融機関から融資を受けて物件を購入します。
しかし、個人投資家では融資額に限界がありますし、金融機関も収入や経験のない人にはあまり大金を貸しません。
ワンルームマンションの価格は安いことから、不動産投資初心者でも買いやすいとも言えますし、逆に資金がないため、安いワンルームマンションしか買えないとも言い換えられます。
不動産物件を運営するには、入居者の募集や契約、入居中の物件管理、退去後の契約や掃除、新規入居者のさらなる募集など、様々な作業が発生します。
不動産運営では、トラブルさえ起きなければ、不労所得に近い収入が得られます。
しかし、いざという時に、どんなに仕事に追われていようとも率先して対応に乗り出さなければ、退去沙汰に発展しかねません。
それでも、本業を持つ人が日中や深夜に動くのは非常に難しく、基本的には休日対応になるでしょう。
ただし、対応が遅くなればなるほど、入居者の不満は募っていくばかりです。
ところで、ワンルームマンション投資では、一棟マンションの中の分譲物件を購入します。
一棟マンションには基本的に管理会社が入っており、その管理会社に入居から契約、管理までの全てを任せます。
利用の際は契約などを含めた意思表示の必要がありますが、管理業務などのルーチンワークは管理費さえ支払えば、全て不動産管理会社に任せられます。
そのため、本業が忙しい人でもワンルームマンションであれば、手間をかけずに物件を運営できます。
運営や管理の面でも投資初心者に向いているのです。
不動産物件の購入価格が安ければ、家賃も比例して下がります。
4,000万円で購入した物件を毎月6万円で貸す人はまず、いないでしょう。
しかし、1,000万円で購入した物件を家賃6万円で貸せば、それなりの利益になります。
それに、家賃の安い物件は、家賃が高い物件よりも入居が決まりやすいです。
1LDKで10万円のおしゃれなマンションに住みたいという希望があっても、現実には1Kで家賃6万円のそこそこのマンションに住むという人が多いのではないでしょうか。
家賃を安く設定できれば空室リスクが減らせる上に、入居者も決まりやすくなります。
それは家賃収入を安定させることにもつながるのです。
購入価格が安ければ、売却する時の相場も安いです。
1,000万円で購入した物件を何年か所有して900万円で売れば、買主が見つかりやすく、売却までの時間もそんなにかかりません。
価格が安い物件は、それだけ流動性が高く、取引されやすいのです。
また、ワンルームマンションの売りやすさにはもう一つ、理由があります。
戸建て物件の場合、管理の程度によって状態が大きく異なることがあり、築年数で一概に物件の良し悪しを判断するのが難しいです。
しかし、管理会社が必ず入っている分譲のワンルームマンションであれば、物件の質が一定に保たれています。
また、マンションは物件の設備や機能面もある程度パッケージ化され、品質の良し悪しに大きな差はありません。
つまり、買う側にとってある程度期待して物件を購入できるのです。
ワンルームマンションは、質がある程度担保されていて売れやすいのです。
ワンルームマンションが投資初心者に向いている別の理由として、社会的な需要があります。
現在の日本では人口減少が住んでいますが、東京やその周辺の神奈川、埼玉などではまだ人口が増加しています。
つまり、地方から東京への人口流入が進んでいるのです。
さらに、晩婚化や非婚化といった社会の流れにより、都内では今後も単身者世帯が2040年頃まで増加するとみられています。
ファミリー世帯が減って単身者世帯が増えることで、ファミリー向け物件の需要は今後減少します。
しかし、単身者向け物件の需要はまだまだ尽きる事がありません。
特に高齢化社会の進行によって、高齢者が安心して生活できるワンルームマンションの需要は、今後も高まるとみられています。
ワンルームマンション自体も増加傾向にありますが、ワンルームマンションを必要とする人が多いため、投資先としてのリスクも少ないのです。
ワンルームマンションの価格や需要などの面から、投資対象として比較的リスクが少なく、初心者向けだと分かりました。
次は収益性を見てみましょう。
新築のワンルームマンション物件は、一般的に表面利回りが3%から5%程度で売り出されることが多いです。
新築で表面利回り5%のワンルーム物件は、都内であれば破格の利回りと言えるでしょう。
名古屋や大阪といった他の主要都市、また地方の主要都市であれば、もう少し利回りが高い物件も見つかります。
新築物件の表面利回りが低い理由としては、業者の儲け、いわゆる新築プレミアムが上乗せされているからです。
マンションの開発業者はマンションの建築費だけではなく、自分たちの利益を上乗せして販売します。
利益分を乗せることで価格が割高になってしまい、相対的に利回りは低くなります。
ただし、新築物件は客付けしやすく、修繕費もあまりかかりません。
結果として空室リスクの低さやランニングコスト面でのメリットを享受できるのです。
[su_box title=”関連記事” style=”bubbles” box_color=”#0075c2″ title_color=”#ffffff”]・不動産投資で損をしないための「利回り」の考え方や目安を解説![/su_box]都内の中古物件に多い表面利回りは、4%から8%です。
高いものでは10%以上というマンションも見つかります。
中古物件は、築年数5年と30年では状態が違いますので、一概に良し悪しを判断できません。
傾向としては、新築プレミアムが上乗せされていない分、利回りが新築物件よりも良い数字になります。
ただし、築古物件は管理状態や機能面、立地によって客付けの難易度が変わってきますし、積立修繕費などのランニングコストが新築物件よりもかなり高くなることがあります。
中古物件を購入する時は、物件の良し悪しを見抜く観察眼が必要になるでしょう。
ワンルームマンション投資は利回りの面だけ見ると、戸建て物件や一棟アパート物件よりも低いです。
それぞれの部屋にかかる維持費が高く、おまけに良い立地の物件が多いため、どうしても割高になってしまうのです。
ただし、ワンルームマンション投資は品質が安定しているため、金融機関からの融資の通過率や空室リスク軽減に良い影響をもたらします。
その分、買い増しが容易ですので、1部屋買った後は積極的に2部屋、3部屋と増やしていきましょう。
ワンルームマンションを1部屋所有して年間20万円しか利益が出なかったとしても、2部屋、3部屋と増やせば、利益は年間40万円、60万円です。
ワンルームマンション投資では、利回りの高い部屋だけで利益を確保するのではなく、『複数の部屋を持つことで利益を増やす』という考え方を持ちましょう。
ワンルームマンション投資はメリットだけでなく、リスクも存在しています。
では、どんなリスクが挙げられるでしょうか。
ワンルームマンション投資で部屋を1つしか持っていない場合、退去が発生して新しい入居者が決まるまでの間、収入は0円です。
収入がなければ、ローンの返済も満足にできないかもしれません。
家賃10万円の部屋を一つ持つよりも、家賃5万円の安いアパートを2つ持つ方が空室リスクは低下します。
投資対象を分散することでリスクの軽減を図りましょう。
[su_box title=”関連記事” style=”bubbles” box_color=”#0075c2″ title_color=”#ffffff”]・アパート経営のリスクに要注意!失敗しないための10の知識[/su_box]ワンルームマンション投資は、各部屋に対して管理費を支払うことになりますので、どうしても管理費や修繕費の金額が割高になってしまいます。
仮にアパート一棟であれば、建物全体が管理費の対象になりますので、一業者に支払うだけで済んでしまいます。
いわば、『スケールメリット』が生じた分、それぞれの部屋の管理費はワンルームマンションよりも安くできるのです。
また、色々な場所にワンルームマンションを持つ場合だと、それぞれのマンションの管理業者に管理を依頼することになり、作業の手間が増えます。
こういった理由により、一棟物件の運営よりも費用面や時間面で効率が悪いのです。
最近増えているトラブルが家賃保証、いわゆる『サブリース契約』です。
『入居の有無に関わらず、家賃を保証する』というPRに騙され、「投資リスクを抑えられる」と勘違いしてしまう初心者が多いのです。
しかし、サブリース物件では家賃の値下げが頻繁に起こり、また契約で定期的な修繕の義務などが設けられていることが多いです。
さらに、解約しようと思っても、違約金を支払わなければいけないこともあります。
契約内容をよく確認しておかないと、実は大家にとって不利益になる項目が多いこともあるのです。
特に新築物件でサブリース契約を結ぶのは、やめておいた方が良いでしょう。
客付けしやすい新築物件は、基本的に家賃保証の必要がなく、安定した収入が見込めます。
サブリース契約で家賃の20%を業者に支払うのは、無駄に自分の収入を減らすだけです。
家賃減額の見直し時期や修繕業者の選定の可否など、詳細をしっかり把握してから契約しましょう。
リスクを知った上で、ワンルームマンション投資で安定して収益を出していくために何が必要か考えてみましょう。
投資初心者に対し、業者が『頭金10万円でワンルームマンションを購入できる』と常套句のように謳っています。
しかし、リスクを避けるのであればできる限り融資額を減らし、ある程度は自己資金で物件購入に必要な頭金を支払っておきましょう。
ローンの融資額が増えると、毎月の返済で苦労が絶えません。
特に空室が発生した場合、例えば給料からローンを返済する羽目になります。
また、金利上昇時に借入額が増えれば、毎月の返済額が一気に増える可能性があります。
できるだけ返済期間を長くして毎月の返済額を減らし、支払いリスクを下げましょう。
できれば頭金は購入価格の2割程度、用意したいものです。
東京の自治体では、ワンルームマンションの建設に対して規制を設けています。
世田谷区や渋谷区では、一定の戸数を持つマンション物件にはワンルームだけではなく、ファミリー向けの部屋も用意するように制限を加えています。
単身者世帯は住民票を移さないまま他の自治体に転入出する、地域に溶け込もうとしないなどの理由で、自治体から敬遠される傾向にあるのです。
豊島区には30平方メートル以下の部屋を造るする場合、50万円の税金を課す条例があります。
そのため、今後ワンルームマンションの建築は、一旦下火になるとの見方があります。
しかし、ワンルームマンションは投資が容易で、依然として買い増しの対象であることに変わりません。
入居者の需要自体はありますので、今のうちに買っておくことが得策と言えます。
新築物件の表面利回りは低く、中古物件は表面利回りが高い。これは間違いではありません。
しかし、物件の利回りを見るときは表面利回りだけでなく、実質利回りにも気をつけなければいけません。
表面利回りが高いマンションであっても、実は毎月の修繕費が高額で、ほとんど利益が出ないこともあるのです。
さらに、築年数が古い物件では、建物や設備の瑕疵も懸念しなければいけません。
結局、表面利回りはあくまで目安に過ぎません。
修繕費などのランニングコストを差し引いた上で自分の手元にお金がいくら残るのか、いわゆるキャッシュフロー重視で物件を選びましょう。
また、物件購入の前にキャッシュフローがどれくらい残るのか、はっきり伝えない不動産会社は選ばない方が賢明です。
ワンルームマンション投資は、確かに不動産投資の初心者が始めるのに適した物件です。
ただし、利益を上げていくには物件を買い増しする必要がありますし、その度に融資を受ける必要も出てきます。
人によっては融資件数や金額に限界があり、特に兼業個人投資家で5部屋や6部屋も入ったワンルームマンションを所有するのは、非常に難しいでしょう。
ワンルームマンション投資を通じてある程度、不動産投資家としての経験を積んだら、その後は一棟マンションやアパートの経営に乗り出すことも考えていきましょう。
そうすれば一気に利益は拡大し、会社員を辞めて独立することも夢ではなくなります。
ワンルームマンション投資を足がかりに、物件運営の方法や金融機関等との付き合い方を学び、そしてステップアップできたら、きっと専業投資家として自由な生活が待っているでしょう。