駐車場経営というと、あまり稼げず地味なイメージを持つ方も多いかもしれません。
たしかに駐車場経営はローリスク・ローリターン投資の代表的なものですが、実はそれだけではない魅力があり、不動産投資としても本格的に参入できる投資といえるのです。
ただし、実際に経営を成功させるためには「どのくらいのお金がかかるのだろう」「どのようなことを検討すればよいのか」「事業性はどのように検証するのだろう」といった疑問や条件を事前に理解・検討しなければなりません。
そこで今回は駐車場経営に関する、
・駐車場経営を始める際の基礎知識
・駐車場のタイプや経営方式
・駐車場経営のメリット・デメリット
・駐車場経営の収入モデルや利回り
・駐車場経営に関する税金
・駐車場経営に成功するコツ
といったポイントについて徹底的に解説します。
これらのポイントをしっかりと理解したうえで、駐車場経営を検討してください!
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目次
まずは、駐車場経営に必要な基本知識について説明します。
賃貸用アパート・マンション経営には何千万、何億単位の建築費という初期投資が必要となり、高いリスクを負うこととなります。
しかし、駐車場経営の場合は更地を駐車場に整備するだけであり、大きな初期投資は不要です。
また、維持管理の手間もそれほどなく安定収入が見込めるため、最も基本的な土地活用といえます。
ここでいう駐車場とは、更地を整地し砂利敷きもしくはアスファルト舗装を行って駐車区画に線を引く月極駐車場や、専用の駐車機器を設置するコインパーキングなどを指します。
立体駐車場やタワーパーキングのような大規模な駐車場経営を計画する場合は、かなり大きな初期投資が必要であるため、賃貸用アパート・マンション同様に高いリスクを負うこととなります。
どのタイプの駐車場経営を行うかについては、土地の広さや立地により最適なタイプを選択しなければなりませんが、最終的には初期投資を負担する土地オーナーの判断となります。
そのため、事前に稼働率や費用対効果などを十分に検討し、事業性を十分に分析・検証したうえで判断しましょう。
土地活用の方法にはさまざまなスキームがありますが、初期投資や収益性、リスクに関して比較すると下の表のようになります。
<土地活用のスキーム別比較表>
駐車場経営による土地活用は、初期投資が低く負うべきリスクも低く抑えられますが、収益性も低いため、いわゆるローリスク・ローリターンの土地活用といえます。
収益性を重視する場合は、駐車場ではなく他の土地活用方法を選択するとよいでしょう。
ただし、大切なことは土地活用の目的を明確にしておくことです。
相続発生時の納税資金として売却する目的であれば、賃貸アパート・マンションを建てたり、信託銀行や事業会社などに賃貸したりすることは避けて、駐車場として運用するとよいでしょう。
あるいは、相続対策として資産圧縮効果を期待するのであれば建物を建てるのもよいでしょう。
土地の最適な活用方法は、土地オーナーごとに事情が違うことから、人によって異なります。
また、エリアごとに土地の用途地域や条例などの法規制により、建てられる建物の種類や規模が制限されるため、そうした要素も検討したうえで活用方法が変わってきます。
最も大切なことは、自分にとっての最適な土地活用方法を選択することです。
駐車場はローリスク・ローリターンの土地活用ですが、必ず収益を確保できるとは限りません。
需要がないところに駐車場を開業しても、期待していた収益は確保できません。
たとえ駐車場といえども、事前にその土地の立地環境、競合する駐車場の状況などの周辺環境を調査し、賃料単価や需給バランスなどのマーケティング分析が必要です。
駐車場経営を行う場合に大切なことは、「何台分の駐車区画(車室)を確保できるか」ということです。
車室数によって売上(賃料収入)が自然と決まるためです。
そこで、自分の土地に何台分の車室が取れるのか、車室に必要なスペースや寸法はどのくらいなのかについて確認してみましょう。
基本的に駐車場の区画ラインを引く場合に、普通車1台あたりのスペースは幅2.5メートル×奥行5.0メートルとします。
軽自動車の場合は、幅2.3メートル×奥行3.6メートル程度になります。
なお、駐車場内の車路は幅5メートルが原則です。
<基本的な駐車スペースの取り方>
また、車路を含んだ普通車1台あたりの必要な面積の目安は、およそ7坪(約23平方メートル)といわれています。
例えば、土地面積が300平方メートルの敷地で駐車場を計画する場合、300平方メートル÷3.30578÷7坪=約13台が計画できる車室の目安となります。
ただし、土地の形状や前面道路、利便性などを考慮して駐車場のプランを最終的に決定するため、車室数が変動する可能性もあります。
次に、駐車場経営における駐車場の3つのタイプについて確認しましょう。
更地に駐車スペースごとにラインを引いた、いわゆる「平面駐車場」です。
車室1台ごとに賃貸借契約を締結し、1ヶ月単位で賃料を受領します。
アスファルト舗装(または砂利敷き)やライン引き、切下げなどの費用はかかりますが、機械設備などの費用はかからないため、比較的低い初期費用で開業することができます。
また、機械設備がなく人が常駐する必要もないため、維持管理コストも低く抑えることができます。
土地面積により車室数が決まり、賃料収入の上限が決まってしまいます。
そのため、想定している収益性を確保するためには稼働率を高くキープするしかなく、空き車室が増えると経営が厳しくなってしまいます。
少子高齢化による乗り手の減少や若者の車離れなどの外部要因なども考慮し、事前のマーケティング調査や分析をしっかりと行い、稼働率をキープできるようにしなければなりません。
<月極駐車場の事例>
時間貸し駐車場とは、いわゆる「コインパーキング」のことであり、「30分/100円」など時間単位で駐車料金を設定し、不特定多数の利用者は利用時間に応じた駐車料金を支払って退場する仕組みとなっています。
コインパーキングを経営する場合は、フラップ板やゲート、精算機などの駐車設備を設置する必要があるため、それなりの初期投資の負担をしなければなりません。
しかし、狭小地や変形地でも駐車場経営を行うことが可能であり、月極駐車場と比較して収益性が高いのが特徴です。
そのため、最近では月極駐車場の空き車室をコインパーキングに転用するケースも珍しくありません。
<コインパーキングの事例>
立体駐車場とは駐車スペースを多層化もしくは立体化した駐車場のことであり、建物の中を車が自走して駐車する「自走式立体駐車場」と、昇降設備に車を載せて駐車スペースに移動させる「機械式立体駐車場」の2種類があります。
なお、機械式立体駐車場には、駐車装置に車を入庫してエレベーターのような運搬機により昇降させ車を収容するタワー型(タワーパーキング)と、1台分の駐車スペースを多層化し、車を載せるパレットを昇降/横行して車を収容する多段型があります。
建物の階数(または段数)を増やすことにより、車の収容台数を増やすことができるため、駐車のニーズが見込める立地(駅前や商業施設の隣地など)であれば収益性や経営効率を高めることができます。
ただし、初期投資額が非常に大きく、人を常駐させる必要もあるため、事業として本格的に取り組まなければ失敗のリスクも高くなります。
<立体駐車場の事例>
ある程度の収益性を確保しつつリスクを負わない駐車場経営は、月極駐車場か時間貸し駐車場ということになりますので、個人の土地オーナーが駐車場経営を検討する場合は、月極か時間貸しで検討することをオススメします。
駐車場経営には3つの経営方式がありますが、それぞれの経営方式について説明します。
自分自身に合った経営方式を選択することが大切です。
土地オーナーが土地の整地や舗装、設備の設置から管理まで行う経営方式です。
月極駐車場とコインパーキングそれぞれの場合について見ていきましょう。
土地オーナーが駐車場プランの策定、土地の整地や舗装、利用者の募集、契約締結、賃料の入金管理、滞納賃料の督促など、すべての賃貸管理業務を行います。
賃貸アパート・マンションほど手間がかからず、クレームも少ないため車室の数や駐車場の数が少ない場合には対応可能ですが、数が多い場合にはそれなりの労力やノウハウが必要となってきますので注意しましょう。
駐車場経営の中では、最も収入が大きくなる経営方式です。
土地オーナーが駐車場プランの策定、土地の整地や舗装、フラップ板や精算機などの駐車設備の設置、事業収支計画の策定、集客、売上回収、日常巡回管理、設備の保守点検、防犯対策(警備)、クレーム対応などの多岐にわたる運営業務を行います。
自分で資金を投資していることから本格的な事業であり、経営者としての専門知識やノウハウ、スキルが求められることとなります。
月極駐車場の多くのオーナーは賃貸アパート・マンションなどと同様に、不動産管理会社に利用者の募集、契約締結、賃料の入金管理、滞納賃料の督促などの管理業務を委託し、その対価として賃料の5%程度の管理料を支払っています。
こうした経営方式を管理委託方式といい、空き車室のリスクはオーナーが負うことになるため、稼働状況によって賃料収入が変動します。
コインパーキングの場合でも、売上回収、日常巡回管理、設備の保守点検、防犯対策(警備)、クレーム対応など一部の管理業務をコインパーキング会社などに委託して管理料を支払うケースが管理委託方式となります。
管理料は売上の5~10%程度です。
土地オーナーが土地を一括で駐車場運営会社(または不動産会社)に賃貸し、毎月固定額の賃料を受け取る経営方式です。
この方式では、土地オーナーは駐車場の稼働状況によって賃料収入が変動するリスクはありませんが、自己経営方式や管理委託方式と比べると収入は少なくなります。
一括借上の場合の借上げ賃料は、一般的に相場賃料の80%程度が目安です。
駐車場運営会社が借り上げた土地をコインパーキングにより運営する場合は、駐車設備の設置などの初期投資や毎月の管理費用などのすべての費用を駐車場運営会社が負担します。
土地オーナーには、毎月固定額の賃料が支払われます。
月極駐車場と同様、駐車場の稼働状況に関わらず安定収入が期待できますが、自己経営方式や管理委託方式より収入は少なくなります。
コインパーキングの場合の一括借上では、相場賃料で借り上げるケースが一般的ですが、都心などの高稼働が見込める立地では相場賃料以上の価格で借り上げるケースもあります。
最後に3つの駐車場経営方式の特徴やメリット・デメリットなどを、月極駐車場・コインパーキング別に一覧表で確認してみましょう。
<それぞれの経営方式の比較表>
いずれの経営方式がよいのかは一概にいえませんが、空室リスクを負うことから自己経営方式や管理委託方式はハイリスク・ハイリターンの経営方式であり、高稼働が見込める場合は利益が大きくなります。
「遊休地を気軽に活用したい」「初期投資をする資金がない」「売却する予定だが当面は駐車場で活用して収入を得たい」といった場合には、初期投資を負担する必要のない一括借上方式を選択するとよいかもしれません。
本格的に駐車場経営に参入したい場合は、自己経営方式や管理委託方式を選択するとよいでしょう。
特にコインパーキングを運営する場合は、月極駐車場より初期投資が多くかかりますので、事前にマーケット調査を行って売上の予測を立てたうえで判断することが必要です。
ここでは、駐車場経営の4つのメリットについて説明します。
駐車場は賃貸アパート・マンションなどのように建物を建築する必要がないため、少ない初期投資で始めることができます。
特に、一括借上方式で経営する場合は初期投資がゼロということも可能です。
初期投資の金額は駐車場の種類や規模によって変わりますが、賃貸アパート・マンションのように金融機関からの融資を受けることなく開業できるケースも多く、リスクを軽減できることがメリットといえます。
なお、初期投資の費用については次章で詳しく解説します。
駐車場経営は短期間で開業できることもメリットのひとつです。
賃貸アパート・マンション経営の場合は、マーケティング調査から始まり、間取りプランや建物の構造などを検討し、施工業者を選定してから建築工事を行い竣工を待ちます。
そのため、建物規模にもよりますが、計画から事業開始まで1年程度の期間を要することも珍しくありません。
一方、駐車場経営の場合は、既存建物ある場合の解体工事、整地、舗装(または砂利敷き)、設備の設置まで1~2ヶ月程度で開業することができ、駐車場運営会社や管理委託会社の選定も一連の工事中期間に行うことができます。
このように、短期間で開業できることから、早いタイミングで収益を上げられることがメリットといえるでしょう。
賃貸アパート・マンション、または戸建てなどの住宅を建築するのが難しい狭小地や変形地でも、駐車場経営であれば可能であるというメリットがあります。
狭小地において住宅を建てるとしても、狭くて居住性の低い住宅しか建てられない可能性がありますし、変形地では土地面積に対して非効率な住宅しか建てられず十分な費用対効果が得られない可能性があります。
しかし、駐車場経営の場合は駐車スペースさえ確保できれば運営が可能です。
例えば10~15坪程度の土地の場合でも2~3台の駐車スペースが見込め、駅前や商店街など高い稼働率が見込める立地であればコインパーキングとして十分な収益を上げられる可能性があります。
<狭小地や変形地の事例>
駐車場経営の場合、事業途中で土地を他の用途に転用したくなった時や、相続などで売却するために事業を撤退する時に止めやすいというメリットもあります。
通常の月極駐車場の場合、利用者(賃借人)との契約は、賃貸アパート・マンションにように建物利用を目的とした契約でないため、借地借家法の適用範囲外となります。
そのため、契約書で定められた解約予告期間(通常は1~2ヶ月間)をもって賃貸人(土地オーナー)からの解約が認められます。
また、立ち退き料に関しても、特約事項などで別途定めていない限りは支払う必要はありません。
ただし立体駐車場の場合は、賃貸アパート・マンションと同様に借地借家法の適用範囲となる場合がありますので注意が必要です。
事前に、管理委託会社や弁護士などの専門家に必ず確認しましょう。
コインパーキングの場合は、コインパーキング会社との解約ができれば直ちに土地を返還してもらえます。
続いて、駐車場経営にはデメリットがありますが、どのようなデメリットであるのか確認していきましょう。
駐車場経営の第一のデメリットは、初期投資が少ない分、収益性も低い、という点です。
駐車場は駐車スペースを賃貸するだけのため、オーナーとしての工夫やサービスを付加価値として加える余地があまりなく、賃料収入が頭打ちとなりがちです。
例えば、賃貸アパート・マンションの場合は、リフォームやリノベーションにより付加価値を加えたり、ペット可・楽器可などにして利用価値を高めたりすることによって、賃料設定を高くする、稼働率をアップさせるといった事業戦略を取ることができます。
駐車場経営の場合、屋根を設置する・暗い場合には照明を設置するなどの差別化がありますが、あくまでも需要ありきです。
需要が枯れてくると経営が苦しくなる傾向があり、工夫を加える余地が少ないことがデメリットです。
土地を活用する場合、容積率により土地の利用効率を高めることが可能です。
容積率とは土地面積に対する建物の延床面積の割合であり、容積率200%に指定されている100平方メートルの土地には、延床面積200平方メートルの建物を建築することができます。
これにより、賃料収入を得られる面積が増えるため、賃貸住宅経営は土地の利用効率が高いといえます。
しかし、駐車場の場合は、立体駐車場を建築する場合を除いて土地を平面として利用するしかないため、土地の利用効率が低いといわざるを得ません。
<土地の利用効率について>
駐車場経営の最大のデメリットは、税制上の優遇が受けられないことです。
車離れが進み固定資産税等が高い都市部の住宅地では、駐車場経営では手元に残る収入が少なく相続税等の負担も大きい、という事例が散見されるので注意が必要です。
自宅や賃貸アパート・マンションが建っている土地は「住宅用地」として固定資産税の評価額が6分の1、都市計画税の評価額が3分の1に軽減されますが、駐車場は更地と同じであるためその軽減措置を受けることができません。
そのため、固定資産税・都市計画税の納税額が大幅に高くなります。
相続税評価においても自用地(更地)評価となります。
借地や賃貸アパート・マンションが建っている場合、その土地は「貸宅地」や「貸家建付地」による評価減を受けることができるため、資産圧縮効果があります。
しかし、駐車場の場合は、更地と同様にそうした評価減を受けることができないため、資産圧縮効果はありません。
ただし、「小規模宅地等の特例」については、貸付事業用宅地等に該当するため「200平方メートルまで50%」の評価減を受けることができます。
一般的な月極駐車場の場合、減価償却費がありません。
コインパーキングや立体駐車場の場合でも、建物と比較すると減価償却費は少額です。
支出を伴わない必要経費である減価償却費が少ないということは、その分だけ所得税の負担が大きくなります。
このように、駐車場経営では収益性が低いにもかかわらず固定資産税・都市計画税の負担が大きく、減価償却もできないため手元に残る現金が少なくなります。
それにもかかわらず、相続時には相続税の負担が大きくなるため、注意が必要です。
立体駐車場での駐車場経営を検討する場合には、自走式・機械式いずれも「建築物」に該当するため建築基準法の適用を受けます。
そのため、用途地域の制限などにより建築が認められないリスクがあります。
また、駐車場経営は簡単に転用や撤退ができることがメリットですが、初期投資が大きい立体駐車場の場合は、転用時に建築資金を回収できていなかったり、多額の解体費用が発生して収支が赤字になる場合がありますので、十分な注意が必要です。
駐車場経営を始める時にかかる初期費用について、どのくらいが予算の目安であるのか確認していきましょう。
駐車場を開業するためには、初期費用として「解体費用(既存建物がある場合)」「整地費用」「アスファルト舗装費用」「歩道の切下げ費用」「車室工事費用(ライン引き・タイヤ止めなど)」が必要となり、コインパーキングで運営する場合にはさらに「各種看板費用」「各種設備設置費用(監視カメラ・場内照明・フラップ板・精算機など)」が必要となります。
主な各工事の費用の目安は下の表のとおりです。
<初期投資の主な工事費の目安>
月極駐車場の初期費用は上の表の「解体費用(既存建物がある場合)」「整地費用」「舗装費用」「歩道切り下げ費用(必要な場合)」「ライン引き」「車止めブロック」などです。
月極駐車場は特別な駐車設備などは必要なく、利用者が快適に車の入出庫および保管ができるように整備しておけばOKですので、整地・舗装・ライン引き・車止めブロックを行っておけば開業できます。
この他に、「屋根の設置」や「照明の設置」を行うことで賃料アップや競合との差別化ができる場合がありますが、その分費用が発生します。
土地面積や材料などのグレードにもよりますが、100平方メートルの月極駐車場の初期費用は約50万〜100万円程度をイメージしておくとよいでしょう。
ただし、施工業者によって変動があるため、検討する際は複数の施工業者から見積りを取りましょう。
コインパーキングの場合は、月極駐車場の初期費用に加えて「各種看板設置費用」「各種設備設置費用」が」発生します。
仮に10台規模のコインパーキングの場合、300万円〜400万円程度の費用をイメージしておきましょう。
なお、これらの費用は駐車台数が多ければ多いほどほど大きくなりますので注意が必要です。
やはり、事前に複数のコインパーキング会社から見積りを取ることが大切です。
駐車場経営を始めるために最も大切なことは、「自分の土地が駐車場経営に向いている土地かどうか」ということです。
需要のない土地で駐車場を開業しても稼働率が上がりませんし、競合が多いエリアでは価格競争に巻き込まれてしまうリスクもあります。
ここでは、駐車場経営に適している土地かどうかの判断基準について、周辺環境と敷地条件に分けて具体的に解説していきます。
駐車場経営を始める際は、事前にマーケティング調査や周辺環境調査を行ったうえで、駐車場経営の可否を判断する必要がありますが、具体的には以下のポイントについてチェックすることが大切です。
(ア)駅に近い
(イ)近隣に駐車場が少ない
(ウ)近隣に商業施設や商店街など人の賑わいがある
(エ)近隣にオフィス街がある
(オ)近隣に病院や学校がある
(カ)近隣に付帯駐車場のないマンションやアパートなどの住宅がある
これらの条件のいずれかを満たす土地であれば、駐車場経営に適している土地の可能性があります。
いずれも満たさない土地の場合は、他の用途を検討することを含めて、慎重に判断する必要があります。
周辺環境以外にも敷地条件をチェックする必要があります。
(ア)接道している道路の幅員は十分にあるか
(イ)敷地内の高低差はないか
例えば、下の図のような駐車場Aと駐車場Bがあると仮定します。
駐車場Aは接道している道路の幅員が2メートル、駐車場Bは4メートルなっています。
幅員2メートルの道路でも車の通行はできますが、利用者が好むのは駐車場へ入場するために通行しやすい道路の駐車場ですので、駐車場Bの方が需要は強いといえるでしょう。
駐車場の需要に対して供給が追い付いていないエリアであれば駐車場Aでも満車となる可能性がありますが、需要が弱い場合は駐車場Bより賃料を下げるなどの対応が必要となってくるかもしれません。
次に、下の図を参照してください。
駐車場Cと駐車場Dは接道している道路の幅員はいずれも4メートルで同じですが、道路に接する敷地の間口(入口の幅)が異なっています。
駐車場Cは駐車場Dに比べて、間口が極端に狭くなっており、駐車場へ入場しにくい形状であるため利用者から敬遠される傾向がありますので注意しましょう。
駐車場の場合、間口は最低でも2メートル以上は必要であり、広ければ広いほど利用者に喜ばれます。
駐車場経営において、月極駐車場として運営するのかコインパーキングとして運営するのか、悩むところかもしれません。
どちらも同じ駐車場経営ですが、周辺環境や立地条件によっては収益に大きな差が出ることになります。
その選択基準として、前項の周辺環境条件の(ア)(ウ)(エ)(オ)に該当する場合は、コインパーキングを選択することをオススメします。
駅や商業施設、オフィス街、病院、学校などが近隣にあれば、そうした施設への来訪者による短時間の駐車ニーズが見込めるからです。
また、来訪者の数に対して駐車場の完備が不十分なケースが多いこともポイントです。
前項の周辺環境条件の(イ)(カ)に該当する場合は、月極駐車場を選択するとよいでしょう。
ただし、昨今では住宅街でも来客用としてコインパーキングが高い稼働率で稼働しているケースもありますし、月極駐車場とコインパーキングを併用しているケースも多く見られます。
<月極駐車場とコインパーキングを併用しているケース>
そのため、こうした可能性を探るために、専門の駐車場運営会社やコインパーキング会社に相談してみることもひとつの方法です。
ここでは、駐車場経営に関係する税金について、具体的な税率など交えながら説明します。
駐車場経営を行っている敷地に対して課税されます。
税率は下の表の通りです。
<固定資産税・都市計画税の税率>
前述の通り、駐車場は「住宅用地の特例」による評価減が受けらず、区分の中の「更地」に該当するため、固定資産税・都市計画税の納税額は課税標準額にそれぞれ1.4%・0.3%を乗じた金額になります。
課税標準額は、毎年郵送されてくる「固定資産税課税明細書」に明記されており、下の例では太い赤枠で示された部分が課税標準額となります。
<固定資産税課税明細書の例(横浜市の場合)>
駐車場経営により、年間20万円以上の所得がある場合には所得税が課税されますので、他の所得(給与所得や事業所得など)と合算して確定申告を行ったうえで、所得税を納税します。
なお、駐車場経営を法人で行っている場合は、決算・申告により法人税が課税されます。
駐車場経営による売上に対して、消費税(2019年4月現在8%)が課税されます。
消費税は個人・法人を問わず課税されますが、駐車場が土地整備をしていない青空駐車場の場合やその年の免税事業者(2年前の売上が1,000万円以下)の場合は非課税となります。
実際の駐車場経営の収入モデルを確認してみましょう。
同時に、収益性を判断する指標である利回りについても解説します。
ここでは、駐車台数10台の駐車場を1台あたり月額30,000円の賃料で月極駐車場として経営していると仮定します。
また、管理を委託した場合の管理料は賃料の5%、一括借上の場合は月額賃料の80%で借り上げるとします。
月極駐車場の年間収入は「駐車台数×1ヶ月あたりの賃料収入×12ヶ月」で求められますので、稼働率ごとの年間収入は下記の通りとなります。
<月極駐車場の場合の収入モデル>
ただし、1台あたりの月額賃料(30,000円)は東京都の平均賃料を採用しており、もっと都心の立地であれば1台あたり月額50,000円以上の収入が見込める可能性がありますし、郊外であれば月額10,000円程度の場合もあるでしょう。
次に、コインパーキング経営による収支モデルを確認します。
前提条件として、駐車台数10台、1台あたりの1時間の料金(売上)を600円、1日あたりの平均稼働時間を12時間とします。
管理を委託した場合の管理料は売上の10%、一括借上の場合は月極の場合の賃料で借り上げるとします。
コインパーキングの年間収入は「駐車台数×平均稼働時間×1時間あたりの駐車料金×365日」で求められますので、稼働率ごとの年間収入は下記の通りとなります。
<コインパーキングの場合の収入モデル>
上記はあくまで目安であり、土地の特性によって稼働率や稼働時間に差が出ますので注意が必要です。
駐車場経営の収益性を判断する指標として「利回り」があります。
「利回り」とは、投資した金額に対するリターン(収益)の割合のことであり、不動産投資の場合は「表面利回り」と「実質利回り」の2種類が代表的な利回りです。
<表面利回りと実質利回り>
上記の年間収入は年間の「賃料収入」や「コインパーキング売上」であり、運営費には「管理料」「電気料などの水光熱費」「固定資産税・都市計画税」「駐車設備の保守点検費用」「警備費用」などが含まれます。
駐車場経営の場合、年間収入に対して固定資産税・都市計画税の負担が大きいため、必ず運営費を差し引いた「実質利回り」を確認のうえ事業性や収益性を判断するようにしましょう。
前項の月極駐車場の収入モデルを使って利回りを確認してみましょう。
なお、管理委託方式(管理料5%)で稼働率は80%、月極駐車場に整備する工事費用が150万円、固定資産税・都市計画税が25万円と仮定すると、
実質利回り={288万円-(288万円×5%+25万円)}÷150万円×100=165%
となり、初期投資を7~8ヶ月程度で回収できる計算となります。
ただし、ここでは土地はすでに所有しているケースを想定しています。
そのため、土地の取得費用を総投資額に算入しておらず、高い利回りとなっています。
土地を購入して駐車場経営をする場合は、土地の取得費用を総投資額に加算する必要があります。
参考までに、前記の事例で土地の取得費用を8,000万円とした場合の利回りを計算すると、
実質利回り={288万円-(288万円×5%+25万円)}÷(150万円+8,000万円)×100=3%
となり、預貯金や国債などと比較しても高い利回りを確保できていますが、投資資金は融資に頼らず自己資金で調達する必要があります。
最後に、これまでの説明を踏まえて、駐車場経営を成功させるための4つのコツについて解説します。
前面道路土地の間口が広く、高低差のない駐車場向きの敷地であっても、近隣の駐車場ニーズがなければ駐車場経営は成功しません。
そのためには、競合する駐車場やコインパーキングの供給状況や見込める需要について、事前に調査をしておく必要があります。
まずは、下記の駐車場検索サイトを活用して、対象地周辺の駐車場の数を調べましょう。
<月極駐車場を調査する場合>
・駐マップ
月極駐車場検索サイトである「駐マップ」には、東京都を中心とした日本全国の駐車場情報を掲載されています。
探したいエリアの駐車場数や平均賃料などが表示されるため、需給バランスや賃料の目安を確認することができます。
・パーキングポイント
「パーキングポイント」は駐車場募集台数が4万台を超えるポータルサイトであり、全国の月極駐車場の情報を検索することができます。
また、月額賃料の表示と正確な地図位置の表示・駐車場状況空車・満車の表示を100%実現した日本で唯一の月極駐車場検索サイトです。
<コインパーキングを調査する場合>
・NAVITIME 駐車場検索/予約
全国の駐車場・コインパーキングの検索が行え、コインパーキングについては運営会社によらず検索できるメリットがあります。
コインパーキングに関しては、この他にタイムズ駐車場検索(https://times-info.net/)や三井のリパーク・時間貸し駐車場検索(https://www.repark.jp/parking_user/time/)など、コインパーキングの各運営会社のサイトも確認しましょう。
これらのサイトを確認し、近隣に一定数の駐車場がある場合は需要があると考えてよいでしょう。
反対に、駐車場がほとんどない場合は需要がない可能性があります。
また、駐車場が多すぎる場合は供給過剰の可能性がありますので、現地に出向いて最新の稼働状況を確認しましょう。
前述の駐車場検索サイトを活用すると、月極駐車場の賃料設定やコインパーキングの料金設定も確認できます。
そのため、賃料相場や料金相場、稼働状況などを確認したうえで、自身の駐車場の賃料や駐車料金を設定し、事業性や収益性を検証することが大切です。
特にコインパーキングの場合は、「最大料金の設定」「時間の長短による料金設定(20分/100円や40分300円など)」「昼間の時間帯と深夜の時間帯の料金設定」等、複雑な価格戦略があるため事前の調査や検証が非常に重要であり、価格の見せ方の工夫が必要です。
また、開業後も定期的に周辺相場を確認し、必要に応じて賃料や料金の設定を柔軟に対応しなければなりません。
駐車場経営の最も大きな成功のカギは、最良のパートナーを選ぶことです。
複数の駐車場運営会社やコインパーキング会社からの提案を十分に比較・検討し、最も有利な条件やキメの細かい提案を提示しているパートナーを選びましょう。
具体的にパートナーを選ぶ際には、
・周辺環境調査力やマーケティング分析力
・適切な賃料設定や価格戦略
・車室プランの提案力
・運営中の駐車場の管理体制
といったポイントについて比較・検討します。
事前の周辺環境調査やマーケティング分析により、適切な賃料設定や料金設定が確認できますので、十分なデータを提示してくれる会社がよいでしょう。
また、運営後の柔軟な価格戦略が駐車場経営のリスクヘッジとなりますので、運営後の価格戦略や供給が増えた場合の対応なども確認してみましょう。
車室プランにより駐車場の稼働率は変動します。
例えば、車室数を増やせば売上の最大値は増えますが、車路やスペースが狭い駐車場は使い勝手が悪いため、人気がなかったり他の駐車場に移動されてしまったりするリスクがあります。
収益性を最大にする車室数を確保しながら、利用者満足の高い車室プランを提案できるノウハウやスキルが重要です。
また、駐車場の管理体制も稼働率に影響しますので、その会社が管理している駐車場の管理状態を確認して、適切な管理体制を構築している会社かどうかを判断しましょう。
相続した実家を解体して駐車場経営を検討する人もいるかもしれませんが、その土地の最適な活用方法が駐車場とは限りません。
駐車場経営は手軽に始めることができて管理も楽なイメージがありますが、そうした安易な理由で始めると駐車場経営に失敗してしまうリスクがあります。
土地の有効活用にはさまざまな種類があり、土地ごとに最適な活用方法があります。
そのため、駐車場にこだわらずにその土地を最も適切な活用方法を検討することが重要です。
そして十分な調査や分析・検討の結果、駐車場を選択した場合には、本気で駐車場経営に取り組むというマインドが大切です。
駐車場経営に関して、駐車場のタイプ、経営方式、メリット・デメリット、初期費用、収入モデルや利回りなどについて解説してきました。
どんな事業でもそうですが、事前のマーケティングや競合他社の状況、事業性の検討・分析を行ったうえで、投資額を決めて事業を始めます。
もちろん、想定されるリスクやトラブルに対しての対応策や柔軟な価格戦略なども構築しておかなければなりません。
駐車場経営においても全く同じことがいえます。
ただし、駐車場経営においては、信頼できる駐車場運営会社やコインパーキング会社などのパートナーと一緒に事業を進めることができます。
小規模な駐車場経営であれば、何とか自分の力だけで事業を進めていくことができるかもしれません。
しかし、長期間にわたって健全な事業を継続しながら利益を出し続けていくためには、駐車場の専門家であるパートナーの力を活用することが成功のコツといえるでしょう。