マイホームの購入を考え始め、雑誌やインターネットなどで情報を集め始めると高確率で注文住宅と比較されるのが「建売」です。
ただ正直なところ、注文住宅は何となくわかるけど建売が一体何なのかイマイチ分からないという人も多いんじゃないでしょうか?
そんな人たちに向けて本記事では建売の概要と注文住宅の違い、そして建売のメリット・デメリットを紹介させていただきます。
是非参考にしてください。
目次
建売とは土地と建物をセットで販売する形式のことです。
注文住宅の場合、まずは土地を自分で探して、その後建築士と打ち合わせをして自分の希望の間取り・外観を決定します。
しかし建売の場合は、売り主があらかじめ土地を買い上げて間取りや外観などを決定、そして建築が開始している物件、または完成物件を土地とセットで購入することになります。
ざっくり言うなら注文住宅がオーダーメイド、建売が既製品という感じですね。
注文住宅ではなく建売を選ぶメリットは何があるのかというと
という2点が挙げられます。
建売のメリットは何と言っても注文住宅と比べて建物の金額が安いという点です。
注文住宅の場合は坪単価80万~90万くらいですが、建売の場合は坪単価40万円~60万円くらいです。
建売は注文住宅のように何度も打ち合わせをしたり特殊な建築部材を使うことがないので、その分人件費や資材のコストが抑えられるのです。
注文住宅の場合は自分で土地を探さなければならないので、当然ながら公開されている物件の中から選ぶ他ありません。
しかし建売のビルダーは普段から地場の不動産仲介業者に法人営業をかけているため独自のネットワークを構築しております。
そのため複数に分筆できるような分譲住宅地向けの土地が出てきたら、市場に出回る前に土地の情報を回してもらっているケースが多いです。
当然ビルダーも早期売却が見込めるような好立地を買いたがるので、必然的に条件の良い土地を扱っている場合が多いというわけです。
[su_box title=”関連記事” style=”bubbles” box_color=”#0075c2″ title_color=”#ffffff”]・分筆とは?土地の分割・合筆や登記費用について解説![/su_box]逆に建売が注文住宅に比べて何が劣っているのかと言うと
の2点が挙げられます。
建売住宅の品質は残念ながら注文住宅には劣ります。
ここでいう品質とは、外壁や玄関タイル、クロスなど建築材料はすべてベーシックなものを使用しているという意味です。
注文住宅の場合は購入者と設計士が打ち合わせを繰り返して間取りを決定します。
しかし建売の場合は建築中、あるいは完成後の物件を購入することになるので当然のことながら間取りを選ぶことは出来ません。
[su_box title=”関連記事” style=”bubbles” box_color=”#0075c2″ title_color=”#ffffff”]・【新築】注文住宅の間取りはどうやって決める?ポイントや流れを解説![/su_box]建売はよく安かろう悪かろうと思われがちです。
確かにひと昔前までの建売は価格相応に劣悪な品質の物件もあったかもしれません。
しかし近年の、特に大手の建売物件は品質面もそれなりに高いです。
例えば建売の品質向上に一役買っている業界最大手の飯田グループホールディングスが良い例です。
飯田GHDはグループ全体で年間45,000戸という建築件数を誇り、これは注文住宅大手の積水ハウス(21,000戸)やダイワハウス(15,000戸)をはるかに上回る戸数です。
1社でこれだけの供給戸数があると建築資材を同時に大量発注をすることができ、受注する資材メーカーとしても大量の受注が確保されているので低い単価で資材を納品することが出来ます。
これは供給戸数の少ないビルダーやハウスメーカーにはできない芸当です。
つまり元々安い資材を使用しているわけではなく、それなりの品質のものを安く仕入れることが出来ているということです。
国土交通省の統計によると国内の新築分譲の着工数は平成28年でおよそ249,000戸(※1)なので、5軒に1軒が飯田GHDの物件ということになります。
言い換えれば少なくとも5軒に1軒は最低限の品質は保証されているとも言えます。
それでは飯田GHD以外のビルダーが建築する建売はどうなのか。
これに関しても、ひと昔よりははるかに品質の底上げはされています。
ビー玉を部屋の真ん中に置くと転がってしまう物件なんていうのをテレビで見たことがあるかもしれませんが、近年の新築物件ではまずそのようなことは起こりえません。
2005年に起こった某A一級建築士の耐震偽造問題を皮切りに、日本の建築基準法はかなり厳しくなりました。
具体的に言えば指定確認検査機関に対する監督権限が強化されたので、ビー玉が転がるような物件ではまず完了検査が通りません。
ビー玉は極端な例かもしれませんが、建売と言えど近年の新築物件の品質は全体的に底上げされているということはお分かりいただけるでしょう。
ここでは建売を購入する際に注意して欲しいところや気にして欲しい部分を紹介します。
同じ建売でも住宅性能評価を取得している物件とそうでない物件があります。
住宅性能評価とは住宅の設計に関する性能を10分野32項目に分けて1~3点で評価するという制度のことです。
住宅って素人がパッと見で優れているかどうかって判断しにくいものです。
とりわけ地震が多い日本においては「地震に強い家が欲しい」と考える人が多いでしょうが、耐震性は家の骨組みにかかわる部分なので外観を見ただけでは判断できません。
ところが住宅性能評価を取得している物件では耐震性が1~3段階で評価されているため、素人でも耐震性という部分を購入の判断材料にしやすくなっているというわけです。
つまり優れている物件かどうかを数値で表すことで購入者の判断材料にしましょうというのが住宅性能評価の役割です。
ちなみに住宅性能評価は単なる購入時の判断材料になるだけではなく、保険料の割引が受けられたりします。
例えば耐震等級3の物件なら地震保険の保険料が30%割り引かれます。
しかし住宅性能評価は取得が義務付けられていないため、ビルダーによって取得しているかどうかが変わってきます。
そのため、仲介業者から物件の案内を受けたら住宅性能評価を取得しているかどうかというのは毎回確認してもいいかもしれません。
建売の契約をすると物件の引き渡し前に必ず内覧会があります。
内覧会では、売り主の営業マンと仲介業者が立ち会いのもと購入者に物件の説明をしたり傷や不具合などのチェックをします。
ちなみに建売の場合は注文住宅に比べて内覧会の重要度はかなり高いです。
なぜなら、注文住宅の場合は少なくとも購入者と大工さんが顔を合わせる機会がありますが、建売は大工さんと購入者が顔を合わせる機会がないので大工さんによってはかなり雑な仕上がりになっている可能性があるからです。
そのため、クロスがはがれている個所がないか、フローリングや建具に大きな傷はついていないかなどは必ずチェックしましょう。
ちなみに物件の引き渡し後に傷や不具合を発見した場合は補修工事が有償になるケースの方が多いので注意してください。
建売は基本的に現状有姿売買です。
現状有姿売買とはつまり「見たままの状態で買ってくださいね」ということです。
場合によっては契約書や重要事項説明書にもこの文言が盛り込まれているケースがあります。
現状有姿という文言は売り主側にとっては非常に便利な言葉です。
例えば物件を引き渡したあとに傷や不具合が見つかったあとにそれを指摘しても有償になってしまうのは、まさしく現状有姿という文言が根拠になっています。
つまり、一度内覧会をやって納得した上で決済をしたんだから「見たままの状態に納得したんでしょ」ということになります。
それ以降に傷や不具合の指摘をしたとしてもそれは現状有姿を超えた要求になるわけだからオプション的な扱いになりますよ、ということになるので引き渡し後の補修工事は有償になるわけです。
新築物件を探しているとたまに建築条件付き売地というのを見かけることがあると思います。
[su_box title=”関連記事” style=”bubbles” box_color=”#0075c2″ title_color=”#ffffff”]・建築条件付き土地とは?メリット・デメリットを解説![/su_box]建築条件付き売地とは既にビルダーが土地を買い上げていて、そこに自社物件を建築することが決まっている土地ということです。
というわけで基本的にその土地を買って自分の注文住宅を建てたりすることは出来ません。
(交渉次第で建築条件を外してもらえることもありますが、条件はずしはビルダーの利益分が上乗せされるので割高になります。)
ただし建築条件付き売地はまだ建築確認が降りていない土地なので間取りや建築材料の変更が可能です。
つまり、建売と言えども建築条件付きならある程度リクエストを売主に出すことが可能なのです。
注文住宅を購入するほど資金に余裕はないが、多少自分の希望があるという人は建築条件付き売地を探してみるというのも一つの手です。
建売と注文住宅、どっちを選ぶかというのは結局のところ
という選択をすると言い換えることが出来るでしょう。
建売の場合は、建物の値段が安い分土地にお金を使うことが出来るので、同じお金を出すなら注文住宅よりも好立地を選ぶことが出来ます。
注文住宅の場合は、間取りの決定から建物完成まですべて自分が関わることが出来るので、限りなく自分の理想に近い住まいを手にすることが出来ます。
そして、不動産は資産なので遅かれ早かれ「相続」という問題が出てきます。
そして相続をすると必ず相続税がかかるので「税金を払って相続するのか」「売却してしまうのか」という二択を迫られます。
ちなみに言うと売却時には建物の価値はほとんどありません。
どれだけどれだけ大手のハウスメーカーで建てていようが、どれだけしっかりメンテナンスをしていようが関係ありません。
売却時に見られるのはほとんど土地の価値だけです。
自分たちの代だけでその家を楽しめればいいという人は売却まで想定する必要はありませんが、もし売却まで考えるのであれば建物より土地に重点を置いた方がいいです。
つまり、購入時にあまり資金の余裕がなくて、なおかつ売却のことまで考えたいということであれば好立地の建売を選択することオススメします。
※1:国土交通省「新設住宅着工戸数の推移(利用関係別)」参照