売主が宅建業者で、買主が宅建業者以外の場合に適用される(✕個人間の場合、✕相手も宅建業者の場合)
相手が個人でなく、法人の場合でも適用される
1. クーリングオフ 2. 損害賠償額の予定等の制限 3. 手付額と性質の制限 4. 手付金等の保全措置 5. 自己の所有に属しない宅地または建物の売買契約締結の制限 6. 契約不適合責任の特約の制限 7. 割賦販売契約の解除等の制限 8. 所有権の留保等の制限 |
1. クーリングオフ(宅建業法37条の2)
宅建業者が自ら売主となる宅地建物の売買契約において、事務所等以外の場所(電話も含む)で、買受けの申込みまたは売買契約を締結した者は、申込みの撤回または契約の解除をおこなうことができる
クーリングオフできる場合 | ・書面で可(買主が書面を発した時点で適用 ✕売主が受け取った時点) ・無条件でのキャンセルのため、損害賠償請求・違約金請求はNG |
クーリングオフできない場合 | (1) 冷静な判断が可能な場所での申込み ※申込みと契約の場所が異なる場合は申込みの場所で判断する ①事務所(自社でない場合でも代理や媒介相手であれば他の宅建業者の事務所でもよい。ただし宅建業者の事務所であっても無関係の業者の場合はクーリングオフ可能) ②(土地に定着し、専任の宅建士の設置義務のある)案内所、展示会場、継続的に業務できる場所 ③買主申出の場合の買主の自宅・勤務場所での契約 (2) 履行の終了(代金全額を支払い、かつ引渡しを受けた場合は不可) ※引渡し前であれば、相手が履行をしていても、移転登記後や代金支払いの後であってもクーリングオフ可能 (3) 8日間の経過(書面で告げられた日を含めて8日間) ※書面で告げられていない場合もクーリングオフ可能 ※特約で8日間よりも短縮することは買主に不利になるため無効だが、延長することは有効 |
※クーリングオフの書面には、売主の宅建業法の商号または名称・住所・免許番号の記載が必要
※「解除することができる」「解除を拒むことができる」の○✕の引っ掛けに注意
・クーリングオフの5つのチェック
①自ら売主(✕売主も個人の場合は、クーリングオフは適用されない) ②相手が宅建業者ではない(個人) ③事務所等・自宅以外 ④履行が終了していない(未完) ⑤書面で告知されて8日以内 |
※土地に定着していない「テント張りの案内所」は宅建業法では事務所等を満たす案内所として扱うが、クーリングオフ制度では事務所以外の場所として扱われる
2. 損害賠償額の予定等の制限
・損害賠償額と違約金と合わせて代金額の2/10が上限 ・2/10を超える部分は無効となる |
※手付金を損害賠償額の予定として扱う場合は、手付金を受領する場合にはたとえ2/10が上限であっても別途で違約金を設定することはできない
※手付金は、たとえ保全措置を講じていても2/10以上を受領してはならない
※買主に有利になる場合でも、宅建業者が2/10超を支払う特約は無効となる
※ただし、あらかじめ定めていなかった場合には、実際の損害の請求が2/10を超えることは可能(その場合は上限はない)
・解除と手付金の扱い
契約を解除する場合 | 相手方が履行に着手するまでは、買主は手付金を放棄することで、売主は手付金の倍額を現実に提供(✕同額を現実に提供)することで解除ができる |
※買主に不利な特約は無効となる。一方で「買主は手付金の半額を払う」「売主は手付金の3倍を払う」といった特約は、買主に有利になるため有効となる
※手付金部分に加えて中間金についても受取る特約をつけることは、買主に不利なため無効となる
3. 手付額と性質の制限
証約手付 | 契約が成立したことを示すためであり、手付の最小限度の効果をもつもの |
解約手付 | 両当事者に解除権を保留し、解除権を行使した場合の損害賠償額とするもの |
違約手付 | 契約上の債務を履行しない場合に、違約として没収されるもの |
※本来は3種類の手付があるが、すべて解約手付とみなす。買主に不利な特約は無効となる
4. 手付金等の保全措置
「手付金等」とは、契約締結日後、引渡し前に支払われる代金に充当されるお金のこと。手付金や中間金などを含む
※消費者保護のため、手付金を受け取る前に宅建業者は手付金の全額の保全措置をおこなわない、買主に保険証券などの書面を交付しければならない(買主は保全措置をしない場合には手付金の支払いを断ることができ、その場合は債務不履行にはならない)
※引渡し前でも不動産登記が移転した場合には消費者保護ができたと考えられるため、保全措置なく手付金等を受け取ってもよい。クーリングオフ制度では不動産登記の移転と引渡しの両方が成立すると利用できなくなるが、手付金の保全措置は不動産登記が移転すれば引渡し前でも手付金を受け取れるようになることに注意
※同様に引渡時に支払う場合の中間金や残代金も保全措置の対象とはならない
※未完成の段階では消費者のリスクが高いため、より条件が厳しくなる。未完成物件に対して指定保管期間による保全措置はできない(おこなった場合は宅建業法に違反する)
※たとえ完成物件になったとしても、売買契約時が未完成であった場合には、保全措置の基準は10%以下ではなく5%以下が適用される
※保全措置では、友人を連帯保証人にしたなどは不十分のため認められない
※買主の許可があれば、書類は紙面でなく電子データでもよい
5. 自己の所有に属しない宅地または建物の売買契約締結の制限
原則 他人物の売買、未完成建物の売買の禁止 例外 ①他人物売買 現在の所有者と売買契約または売買の予約がされているときは可 ※ただし停止条件付の売買契約や落札前の競売入札、土地の一部にある市所有の旧道路敷の払下げ申請中などは、不確定扱いのため不可 ②未完成建物 手付金等の保全措置を講じているときは可 |
※停止条件付売買契約とは、たとえば代替地取得(同等の土地が見つかった場合には売る)などといった条件がついたもの
※仕入先と売買契約または予約をしているときに、買主に対して契約条件付きで契約することは問題ない
※現在の所有者との停止条件付売買契約は、買主が宅建業者以外の場合は宅建業法違反となるが、買主が宅建業者であれば宅建業法違反にならない
6. 契約不適合責任の特約の制限
原則 契約不適合責任について買主に不利な特約は無効 例外 引渡した日から2年以上の定めのみは有効 |
※買主に有利な条件であれば有効だが、不利な条件であれば無効となる。たとえば「引渡しから1年間のみ責任を負う」は買主に不利なため無効となり、「買主が不適合の存在を知ったときから1年」となる(✕「自動的に引渡した日から2年となる」とはならない)
※契約不適合の通知は書面でなく口頭でも成立するため、書面でないと成立しないとの特約は無効となる
7. 割賦販売契約の解除の制限
原則 30日以上の相当の期間を定めて書面で催告することで、その後に解除することができる 残代金の一括請求はできない この定めに反する特約は無効となる |
8. 所有権の留保等の制限
原則 割賦販売、提携ローン付き売買の場合に、所有権留保と譲渡担保は禁止 例外 ①受領額が3/10以下 ②担保(抵当権等)の設定がなく見込みもない ※譲渡担保は例外①のみ |
※宅建業者は、割賦金が代金全体の3/10を超えるまでに所有権の移転登記をすればよい