底地(貸宅地)問題は、土地有効活用や相続を考えるうえで、土地オーナーが最も頭を悩ませる問題のひとつです。
底地を保有または相続しても、
・地代収入はそれほど見込めない
・いったい、いつ契約が終了するのかわからない
・自分で利用することもできない
など、不安要素が多く残ります。
また、底地を保有することは資産運用や相続対策として正しいのだろうか…という疑問もあるでしょう。
借地人とのトラブルが発生するリスクもあり、なかなか問題解決に着手しにくいテーマといえます。
そこで今回は、底地を保有する地主の方々や相続する予定の方々などに向け、底地に関して徹底解説します!
目次
底地とは「貸宅地」や「借地権付き土地」とも呼び、建物を建てることを目的に第三者へ土地を貸し、地代収入を得ている土地のことをいいます。
<底地と借地権の事例>
上の事例で、土地所有者Aが所有する土地上には、本来、Aが土地を所有する権利と自由に利用する権利である完全なる所有権があります。
しかし、その土地を借地権者Bに賃貸すると、借地権者Bは自分名義の建物を建てることができます。
借地権者Bが建物を建ててしまうと、土地所有者Aはその土地を利用する権利は一時的に喪失してしまい、その土地の所有権と地代をもらう徴収権だけを持つことになります。
この状態の土地を「底地」といいます。
借地権者Bは地代を支払うという義務を負うのと引き換えに、土地を利用する権利である「借地権」を得ています。
ちなみに、「底地」+「借地権」=「完全な所有権」ということになります。
このように、ひとつの土地の所有者と利用者が異なっているため、権利関係が複雑となり、たとえ土地所有者であっても自分の土地を利用できずに大きな制限を受けることになります。
そのため、土地の資産価値が非常に低い評価となってしまうのです。
土地所有者(地主)が自分の土地を自由に利用できるよう、底地を借地権者(借地人)から取り戻し、完全な所有権とすることはできるのでしょうか。
実は、底地を取り戻すことは非常に困難なことである…と言わざるを得ません。
まず、借地の歴史について振り返ってみましょう。
日本では大正10年に現行の借地借家法の前身である「借地法」「借家法」が、借地人の法的地位を安定させる趣旨で、それぞれ独立した形により施行されました。
それまでは住宅難の時代背景もあったことから、地主の権利が強く、あちこちで地主の都合による一方的な立ち退き・明け渡しや地代の値上げが横行し、借地人の立場は弱いものでした。
しかし、新しい法律が施行されたことにより、借地権が「建物の所有を目的とする地上権または賃借権」という定義がなされ、借地人が建物の引渡しを受けて居住している事実があれば、地上権の登記がなくても第三者(新しい地主)に対抗できることとなり、立場の弱かった借地人が保護されるようになりました。
また、借地権の存続期間が建物の構造により20年以上または30年以上となることや、契約の更新、建物の朽廃・滅失、建物の買取請求権、建物の増改築時や再建築時、借地権の売買時には地主の承諾を得ることなど、現在の借地借家法に通じる考え方も規定されました。
同時に、地主がこれらの定めに反する契約を締結したとしても、借地人に不利な場合には無効となると定められたのです。
昭和14年、国家総動員法に基づく物価統制として「地代家賃統制令」が定められ、地代や家賃に上限が設けられました。
これにより、地主は地代の値上げができずに収入減につながりましたが、土地を借りる際の敷金や礼金は統制されませんでした。
そこで地主は、契約の更新を拒絶していったん解約し、改めて借地契約を締結することにより、新たに権利金(礼金)を借地人に請求し地代の収入減を補填したのです。
昭和16年には借地法・借家法の改正が行われ、地主が契約の更新を拒絶したり、地主が明け渡し(立ち退き)を求めたり、解約を申し入れたりするには、正当事由(正当な理由)がなければできないとし、借主(借地人)は契約期間が満了しても土地を明け渡さなくともよいことになりました。
この当時は、まだ正当事由の定義は曖昧でしたが、借地上に建物が存在する限り借地権の更新が原則であり、地主から契約更新を拒絶することはほぼできませんでした。
そのため、地主が一度貸した土地を取り戻すことは難しくなりました。
その後、昭和41年の借地法の改正により、借地上の建物の売買・増改築・再建築の承諾を地主に代わり裁判所が行えるようにする「借地非訟手続き」が定められました。
これにより、借地人は建物の売買・増改築・再建築等について、地主の承諾が得られなくとも裁判所に申し立て、地主に代わって裁判所が認めれば許可されることとなり、借地人の権利は決定的に強いものとなったのです。
こうした歴史的経緯が「一度貸した土地は取り戻すことができない」といわれる所以なのです。
昭和60年代に入り、そのうちにいわゆるバブル景気を迎え、日本各地で不動産開発が積極的に進み、これまでの借地法・借家法による弊害が顕在化して、新たな法律の改正が行われました。
それが、平成4年の借地借家法(新法)の施行です。
新法では、期間満了により更新がなく、必ず契約が終了する「定期借地権」が創設されたほか、借地権の存続期間の変更、正当事由の明確化などが定められました。
これにより、あまりにも借地人の権利保護が強化されていた旧法が是正され、地主も土地を貸しやすくなり、再開発や土地の活性化に好影響を及ぼしました。
ただし、旧法で締結した既存の借地契約は、そのほとんどが旧法の規定が適用され、契約更新にあたっても従前の契約内容が承継されることとなります。
そのため、まだまだ多くの課題や問題が残っているといえるでしょう。
こうした歴史的背景のある底地ですが、スムーズに底地を取り戻せる機会がひとつだけあります。
それは、借地人から「借地権を買い取ってほしい」という相談があった時だけです。
借地人がそうした希望を持った時には、トラブルなく比較的安価で底地を取り戻せる唯一の機会と考え、ぜひ買い戻すことをオススメします。
逆に、地主側から「借地権を買い戻したい」と申し入れたとしても、借地人が拒否すれば買い戻すことはできす、たとえ話が進むにしても、足元を見られて高い買取価格を提示される可能性があります。
底地を取り戻すことができるケースは、「借地権の買い戻し」の他に「借地権を解約する」ケースがあります。
ただし、借地人から自主的に解約を申し入れてくるケースはほとんどなく、立ち退いてもらえるのは次のような解約条項に抵触したケースです。
借地人が地代の支払いを長期間滞納している場合、地主は借地契約の解除を求めることができます。
<実際の借地契約書の滞納に関する条項の事例>
借地人による地代の滞納があった場合は、「本書面到着後7日以内に滞納地代●●円をお支払いください。万一、同期間内にお支払いがない場合は、同期間の経過をもって本件借地契約を解除します」といった内容の通知書を送付します。
そして、定めた期間内に滞納地代の支払いがない場合には、借地契約を解除して借地人には立ち退いてもらうことができます。
しかし、書面を送付すれば滞納地代を支払う借地人がほとんどで、借地契約の解除となるケースは稀なのが実状です。
地主に無断で借地人が借地権を転貸(又貸し)している場合、借地契約を解除できる契約内容で契約を締結しているケースが多く見られます。
<実際の借地契約書の転貸に関する条項の事例>
また、借地権の転貸の具体的事例は下図の通りです。
<借地権の転貸の具体的事例>
上の事例で、地主から土地を借りて借地契約している借地人が、自分名義で建物を建てずに第三者に土地を地主に無断で転貸し、その第三者が第三者名義の建物を建てています。
通常は、借地権の転貸について、地主の承諾が必要であると規定しているケースが多く、規定を遵守しなければ契約解除となります。
ここで注意しなければならないのは、「借地上の建物の賃貸」です。
<借地上の建物の賃貸の具体的事例>
上の事例では、地主から土地を借りて借地契約している借地人が、自分名義で建物を建てて住んでいましたが、事情により親と同居することとなり建物を第三者に賃貸した場合は、あくまでも借地上の建物の賃貸となるため、借地権の転貸には該当しません。
つまり、このケースでは法的には地主の承諾は必要ありませんので注意しましょう。
借地契約の契約期間満了時に、地主に正当事由があれば更新を拒否することができ、借地契約を解除することができます。
ただし、過去の事例からもこの正当事由が認められることは難しく、非常にレアなケースといえるでしょう。
次に、底地のメリット・デメリットについて確認してみましょう。
土地を借地として貸した場合、借地人より安定的に毎月の地代収入を得ることができます。
また、地代収入の他にも、
・借地人が借地権を譲渡(売却)する場合の名義変更料
・借地契約を更新する場合の契約更新料
・借地人が建物を建て替える場合の建替(増改築)承諾料
・借地条件を変更する場合の借地条件変更承諾料
といった一時金を得ることが可能です。
こうした一時金は、地主と借地人との合意のもとに決められますが、百万円単位の収入となることもしばしば見られます。
底地も立派な相続資産のひとつであるため、相続税の課税対象となります。
ただし、第三者に賃貸しており、所有者自身が自由に利用することができない土地であるため、更地より相続税評価額が軽減されます。
具体的には、更地価格から国税庁が発表している借地権割合を差し引いた評価額になりますが、相続税評価額については後程詳しく説明します。
底地と更地を比較した場合、底地の方が固定資産税・都市計画税が軽減されます。
土地上に住宅用家屋(専用住宅や賃貸アパートなど)が建っている場合は、住宅用地の特例により固定資産税・都市計画税の課税標準額が減額され、それにより下記の表の通り、固定資産税・都市計画税が軽減されます。
<住宅用地の特例による課税標準額の減額措置>
この特例のポイントは、地主が建てた建物でなくとも、土地上に建物があればこの特例の適用を受けることができる点です。
つまり、借地人が建てた建物でも住宅用地の特例により固定資産税・都市計画税が顕現されることになります。
また、土地だけでなく建物にも固定資産税・都市計画税は課税されますが、借地上の建物は借地人が所有者であるため、借地人に課税されます。
地主は軽減された土地の固定資産税・都市計画税のみを納付すればよく、更地と比べてメリットがあるといえるでしょう。
底地の場合は土地を賃貸しているだけですので、賃貸アパート・マンションなどで発生するエアコンや給湯器などの設備のメンテナンスや交換、退去の際のリフォームなどは一切行う必要がありません。
土地の管理は借地人にすべて任せることができ、地主の管理の手間や費用がないことはメリットといえるでしょう。
現存している底地の多くが旧法による借地契約であり、契約締結当時と比較して大きく物価や土地の経済的価値が上昇しています。
それにもかかわらず、借地の契約期間が20年~30年といったように長期間であるため、地主が地代の値上げを交渉したくともなかなかできないのが実状です。
また、たとえ地代の値上げ交渉の機会を得たとしても、借地人が値上げに応じてくれず、トラブルを恐れて諦めてしまうケースも多く見られます。
底地は初期投資がない分、賃貸アパート・マンションのような高い収益を上げることができず、他の投資と比べて事業収益性が低い投資といえます。
また、固定資産税・都市計画税、相続税などの税金や土地測量費用なども発生することから、実質的な収益性はさらに低くなります。
ローリスク・ローリターンの投資と言うこともできますが、地代収入のわりには土地を取り戻すことが非常に難しいという大きなリスクを抱えています。
地主と借地人は利益相反の関係にあり、契約上のトラブル・地代の値上げ交渉・地代の滞納・建替の承諾・更新料の設定など、トラブルの原因となる要素を多く抱えており、借地人との間でトラブルが発生するリスクが高いといえるでしょう。
借地人に土地を貸しているため、当然、地主自身がその土地を利用することはできません。
いざ自分で土地を使おうと思っても、正当事由として認めてもらえることは非常に難しいのが実状です。
また、借地契約は20年~30年と長期にわたる契約であるため、一度土地を貸してしまうと取り戻す機会はほとんどないと考えたほうがよいでしょう。
底地は借地権という権利が付着した土地のため、売却したくとも購入する人が限られてしまいます。
なぜなら、購入した人が利用できない土地だからです。
そういった意味では、土地を利用することができる借地権の方が底地より評価が高いのは当然といえるでしょう。
また、購入者が限定されるということは、競争原理が働きにくいため、流動性が低く売却価格は必然的に安くなります。
売却できるまでに時間もかかることとなり、急に現金が必要な場合でもすぐに売却することは難しいため、資産運用プランを計画的に立てておく必要があります。
底地は土地上に借地権が付着しているため、担保としての評価は低いと言わざるを得ません。
特に銀行などの金融機関では、底地の担保評価はゼロであり、底地を担保に融資を受けることは難しいのが実状です。
他に共同担保を差し入れるか、個人の与信力が高い人しか融資を受けられないでしょう。
底地は相続税評価においては、「貸宅地」として評価されます。
前述の通り、更地価格から国税庁が発表している借地権割合を差し引いたものが貸宅地の評価額となりますが、評価額の割に地代収入が低いのがデメリットといえるでしょう。
下の表は、公益社団法人東京都不動産鑑定協会が平成31年2月に発表した「(仮題)第5回(平成30年度)継続地代の調査分析」における都心5区の暫定値です。
<継続地代の調査分析(都心5区)>
引用元:公益社団法人東京都不動産鑑定協会 継続地代の調査分析 より
東京都の都心5区でさえ、住宅地域の地代水準は300~600円/平方メートル程度であり、底地価格に対する年間地代収入の割合は1.3~3.5%に過ぎず、評価額の割に収入が低いことがわかります。
底地を貸している場合に、地代の他に一時金を得ることができると説明しましたが、ここではそれぞれの一時金の内容や金額の目安について解説します。
賃借権の譲渡について、民法では下記の通り定められています。
(賃借権の譲渡及び転貸の制限)
第六百十二条 賃借人は、賃貸人の承諾を得なければ、その賃借権を譲り渡し、又は賃借物を転貸することができない。
2 賃借人が前項の規定に違反して第三者に賃借物の使用又は収益をさせたときは、賃貸人は、契約の解除をすることができる。
引用元:総務省行政管理局運営 e-Gov 電子政府の総合窓口 より
このように、借地人は借地権を第三者へ譲渡(売却)する場合は、地主の承諾を得なければならず、その対価として名義変更料を支払うことが一般的です。
名義変更料には、借地権を新しく取得した借地人がトラブルを起こしたり、地代を滞納したりするという、地主にとってのリスクがある借地人である可能性もあるため、その分のリスクヘッジとして一時金を徴収する…という意味合いがあります。
なお、法的に名義変更料の支払いを必須とする規定はありませんが、これまでの判例においてもほとんどのケースで名義変更料の支払いが命じられているため、借地人は名義変更料を支払うことが通常です。
ただし、相続により借地権が譲渡された場合には、名義変更料は不要です。
・名義変更料の相場
名義変更料=借地権価格×10%
(借地権価格とは、借地権の売買価格とすることが一般的です)
旧法借地権や新法による普通借地権において、借地上に建物があれば借地契約の契約更新が可能となります。
地主が契約更新を拒絶するためには、正当事由が必要となります。
そのため、更新料は次のような意味合いから支払われることが一般的です。
・地代が安い場合の補充
・将来的な地代の前払い
・更新拒絶の権利を放棄するための対価 など
借地契約書に規定されていない限り、借地人に支払い義務はありませんが、上記のような意味合いから慣習的に支払われることが実状です。
・契約更新料の相場
契約更新料=更地価格×借地権割合×5~10%
(この他に、年間支払い地代の4~10年分程度とする考え方もあり、ケースバイケースです)
旧法借地権や新法による普通借地権において、建物が朽廃(老朽化して人が住めないような状態)すると、法律上借地権は消滅し、借地契約は終了となります。
その場合、地主は底地を取り戻せることになりますが、建物を増改築したり建て替えたりすれば、建物の朽廃による借地権消滅は期待できなくなります。
そのため、増改築や建替を認める代わりに、建替(増改築)承諾料の支払いを請求することができます。
・建替(増改築)承諾料の相場
建替承諾料=更地価格×5%
増改築承諾料=更地価格×2~3%
非堅固(木造)な建物から堅固(鉄筋コンクリート造)な建物へ建て替える場合には、下記の通り契約条件を変更することとなります。
・借地権の目的
非堅固建物所有の目的 → 堅固建物所有の目的
・借地契約期間
20年 → 30年
このように契約条件を変更する場合には、借地人は地主に対して借地条件変更承諾料を支払うことが一般的です。
非堅固な建物から堅固な建物に変更する場合は、建物の構造が強固になるため朽廃のリスクが下がり、地主にとっては底地を取り戻す可能性が低くなります。
一方、借地人の利益は上がるため、その分を地主に還元する…という意味合いがあります。
・借地条件変更承諾料の相場
借地条件変更承諾料=更地価格×10%
次に、底地の相続税評価の方法について見ていきましょう。
底地の相続税評価額は、更地としての評価額から借地権の借地権割合を差し引いて算定します。
更地としての評価額は、国税庁による路線価図(http://www.rosenka.nta.go.jp/)に定められている路線価をもとに計算され、借地権割合も路線価図に定められています。
<底地の相続税評価額の計算方法>
それでは、具体的な事例で確認してみましょう。
まずは対象となる土地の路線価図を確認します。
<対象となる土地の路線価図の事例>
土地の前面の道路(路線)に記載されている数字が路線価であり、単位は千円/平方メートルとなっています。
数字の横に記載されているアルファベットが借地権割合を表しており、地図の上の表で借地権割合を確認します。
上の事例では、対象地である青色の土地は、路線価が27万円/平方メートル・借地権割合は70%の土地であることがわかります。
続いて、この土地の底地の相続税評価額を計算してみましょう。
<底地の相続税評価額算定の事例>
上の図の通り、対象地は土地面積300平方メートルであることから、計算式に当てはめると、27万円/平方メートル×300平方メートル×(1-70%)=2,430万円となり、底地の相続税評価額は2,430万円となります。
ちなみに、この事例の借地権の相続税評価額は、更地の評価額×借地権割合=5,670万円となります。
このようにして計算される底地の相続税評価額をもとに、相続税が課税されます。
相続税は相続が発生したことを知った日の翌日から10ヶ月以内に現金で納付することが原則ですが、現金での納付が困難な場合には現物により納付する「物納」という方法が認められています。
しかし、底地を物納する場合は、
・土地賃貸借契約書を保有している
・地主にとって特段に不利な条項や特約がない
・抵当権設定や仮登記などがない
・隣地との境界がすべて確定している
・地代が周辺相場の70%以上である
・借地人などと係争中ではない
・底地上の建物が建築基準法に違反していない
・過去に底地および隣地において事件・事故などが発生していない
などの要件が厳格に定められており、ハードルが高いのが現状です。
底地の相続税評価額は、あくまでも相続税や贈与税を計算する時の価格であり、実際の売却価格とはほとんどの場合一致しません。
実際に底地を売却する場合は、借地契約の内容・土地の現状・利回りなどの収益状況等の要素が考慮され、そして何より市場でのニーズの有無により価格が決定されます。
一般的には、相続税評価額より実際に取引される売却価格の方が低くなる傾向があります。
ただし、「誰に売却するのか」「どのような売却方法で売却するのか」など、売却の状況によって価格は大きく変動する可能性があります。
続いて、底地を5つの売却方法について説明します。
借地人に底地を買い取ってもらうことは、底地を売却する場合のベストな売却方法といえるでしょう。
<借地人に売却するケース>
借地人にとっては、住み慣れた自宅が完全な所有権となる他に、毎月の地代を支払う必要ながなくなり、契約更新料や建替承諾料などの負担もなくなるため、大きなメリットがあります。
また、完全な所有権となれば金融機関の担保評価も高くなり、住宅ローンが利用しやすくなります。
地主にとっては、底地を最も高く売却できるという最大のメリットがあります。
つまり、地主にとっても借地人にとっても双方にメリットのある売却方法といえるでしょう。
地主が所有している底地の一部と借地人が所有している借地権の一部を等価交換する方法です。
等価交換の仕組みは、下図の通りです。
<等価交換するケース>
この方法は、底地を借地権の価値を借地権割合や借地契約の残存期間などを考慮して一定割合とし、その土地をその割合で分割してそれぞれが完全な所有権となる方法です。
地主にとっては、もともと所有していた底地の面積より新しく取得する土地の面積が小さくなりますが、借地権の付着のない完全な所有権の土地が残るため、自分で利用したり賃貸アパートなどを建てて有効活用したりすることができます。
また、更地として市場価格で売却することも可能です。
借地人にとっても、そのまま同じ土地に住み続けながら、完全な所有権となるメリットがあります。
ただし、底地の面積が二つに分割できるくらい広く、分割しても借地人の建物が建築基準法に違反しないことなどが重要です。
「底地」+「借地権」=「完全な所有権」となりますので、地主・借地人双方が共同で売却する場合には、買い手からすれば完全な所有権の土地・建物を購入する…ということになります。
この場合、所有権で売却することになるため、底地単独で売却する場合や借地権単独で売却する場合より売却価格が高く、市場価格で売却することが可能であり、売却までの時間も短くなるでしょう。
<借地人と共同で売却するケース>
借地契約の更新のタイミングや、借地人に相続が発生したタイミングなどで検討するケースが多くなります。
また、借地人と共同で売却した場合の売却代金の按分は、借地権割合をもとに按分することが一般的ですが、双方の協議によりケースバイケースです。
底地を単独で売りに出しても、一般客が購入することはなく、ほとんどの場合、底地買取業者などの専門業者が買い取ることとなります。
あるいは、地代収入を目的とした投資家なども候補に考えらます。
メリットは、すぐに底地を売却して現金化できる点ですが、いずれの場合も買取価格は低く、複数の買取業者や投資家の提案を比較・検討する必要があります。
厳密には売却方法ではありませんが、借地権を借地人から買い戻して、完全な所有権とする方法もあります。
買い戻した土地を売却する場合には、所有権の物件として市場価格で売却することが可能です。
借地人にとっても、地主に借地権を譲渡することが借地権を最も高く売却できる方法であるため、借地人から借地権の買い戻しの相談があったら、ぜひ買い戻しましょう。
万一、買い戻す資金がない場合には、借地人と共同で底地と借地権を売却することを検討してもよいでしょう。
底地の売却方法について説明しましたが、ここではそれぞれの方法による売却価格の目安について紹介します。
<底地の売却価格の目安>
ただし、上記はあくまでも目安であり、それぞれの状況や事情、売却経緯によって割合や価格が大きく異なる場合があります。
結論としては、底地を最も高く売却する方法は「借地人に売却する」もしくは「借地人と共同で売却する」方法といえるでしょう。
底地はメリットよりデメリットの方が多く、底地を相続した場合などはその取扱いや有効活用に困ることがあります。
底地は売却したくとも、単独では売却が難しい(もしくは圧倒的に安くなる)ため、少しでも売りやすい方法を考えなければなりません。
かといって、そのまま所有しても収益性の低い資産となってしまうケースが多いでしょう。
底地問題は借地人などが複数いて、当事者が多人数となる場合もよくあります。
それぞれの当事者の意見や希望を丁寧にヒアリングして集約し、最大公約数を割り出していく作業が必要ですので、時間も手間もかかる仕事です。
そのため、底地問題を解決するためには、底地の処理に実績のある不動産会社や、相続に強い弁護士・税理士などの専門家に相談することをオススメします。
豊富な事例や経験、ノウハウを持つ専門家であれば、課題を解決して最良の解決方法や売却方法を提案してくれることでしょう。