起業を考えるときにおすすめなのは、
ビジネスといわれています。
不動産屋のビジネスでは、仲介業では上の3つを満たすことができ、賃貸業や管理業では4つ目の条件を満たすことができる事業だといえるでしょう。
しかし、たとえ成功する確率の高い事業であったとしても、未経験ではじめるのは不安がともないます。特に一人で起業をするとなると、不動産の専門知識がなかったり、不動産業界の慣習がわからなかったりして、何からはじめたらいいのかもわからないことでしょう。
今回は、不動産屋の起業では、まずは一人から小さくはじめるのが有利であることと、そして、未経験の場合はどのように実務経験をしていくのが良いのかについて紹介をしていきます。
目次
不動産仲介業は、一般的な小売業などと比較して、大きな事務所や設備の投資や商品の仕入れなどがありません。そのため、比較的少資本ではじめられるため、一人でも起業のしやすい事業といわれています。
また、実際に物件を仲介し不動産賃貸や売買の契約を結ぶ場合には不動産の宅地建物取引士(宅建士)の免許と事務所が必要ですが、個人事業主として開業をして、専任の宅地建物取引士(宅建士)がいて宅地建物取引免許(宅建免許)を持っている不動産屋に所属することができれば、0円で開業することも可能です。
宅地建物取引業法(宅建業法)で定められた契約以外の業務であれば、未経験で資格や免許がない状態でも、接客や物件案内などの業務をおこなうことが可能です。
不動産業界での経験がない場合には、いわゆる修行をまずは実際に不動産屋ではじめてみて、実務での業務経験を積みながら宅地建物取引士(宅建士)の勉強をし、資格を取得したのちに開業をするのがスムーズでしょう。
このようにすることで、小さくはじめて大きく成功することができるでしょう。
実は、意外に思われるかもしれませんが、不動産仲介業は5人以下の少人数の会社が多いのが特徴です。
公益財団法人不動産流通推進センターが発行する「不動産業統計集」(2020年)によると、1事業所あたりの従業者数は、国内の全産業の平均が10.6人である一方で、不動産代理業・仲介業では1事業所あたりの平均が4.5人となっています。
不動産業を営むときには、宅地建物取引業法(宅建業法)の決まりで、事務所に専任の宅地建物取引士(宅建士)が1人いる場合には、最大で4人まで、宅地建物取引士(宅建士)以外の従業員を雇うことができるという決まりに起因していると思われます。
他にも、不動産屋さんは特定の地域に根ざして事業を展開することが多いことから、従業員は5人以下の方が営業の生産性が高いというのもあるのでしょう。
一人でやっている会社も少なくありません。少人数でも恥ずかしいことではなく、むしろスタンダードであるとさえいえるのです。
不動産屋を一人で起業したいと思う理由もさまざまです。
多くの場合は、すでに会社員として不動産仲介業に携わっていて、営業の経験を積んだうえで、
「将来は不動産仲介業で独立したい!」
と考えて独立に至るケースです。この場合は、会社で働いているうちから起業を前提に考えて動いているため、すぐに成功する方が多いようです。
また、不動産仲介業の場合は、未経験から起業をするケースも多くみられます。ひとつは、司法書士や行政書士を目指すうえで、宅地建物取引士(宅建士)の資格を取得したのをきっかけに開業を検討するといったケースです。
不動産は商品の単価が高いことから、たとえば売買の場合には、1件の契約ができれば数百万円単位で仲介手数料を得ることも難しくありません。そのため、たまに契約ができればいいやという考え方で、もともとは不動産仲介業にはゆかりはなかったものの、宅地建物取引士(宅建士)の資格を取得したのをきっかけに開業することがあるのです。
不動産仲介業の開業では、契約などのすべての業務を自身で行いたい場合には、宅地建物取引士(宅建士)を取得して、宅地建物取引免許(宅建免許)を取って開業をする必要があります。事務所を自宅にして開業することもできることから、初期費用を200万円ほどにおさえて起業することが可能です。詳しくは以下の記事をご覧ください。
また、本業では不動産業界以外の会社員であっても、
もあります。
このように、不動産屋を起業して不動産仲介業に参入する理由は人それぞれなのです。
不動産は、とにかく土地や建物という、高い価格の商品を取り扱います。
また、顧客がそう頻繁に取引をしないという特性があり、さらに物件が一度契約に至れば、ある意味で手離れのいい商売であるという特性があります。
そのため、以下のようなメリットがあるといわれています。
それぞれについて、具体的に解説していきます。
不動産仲介業では、賃貸の場合でも売買の場合でも、物件を仕入れることはなく、あくまで仲介をおこなうビジネスモデルとなります。そのため、仕入れの費用がかからず、在庫を抱えるリスクもありません。
毎月の事務所の家賃と水道光熱費、交通費、広告費などの必要な経費を除くと、費用の多くを占めるのは人件費になります。社員を雇う場合には定常的に給与を支払う必要がありますが、自分一人での開業には、自分への人件費をコントロールすることで、コストを調整することができるのです。
不動産仲介業は、取引する商品が高額で、少人数を相手に商売をするビジネスです。そのため、年間を通じて仕事の緩急があります。また、顧客の多くは年間を通じてたくさんの売買をするわけではありませんから、比較的単発の接客をすればよいこととなります。
そのため、自分のペースで営業をしたり、集客の状況にあわせて働くことができます。年間の半分は不動産仲介業をおこない、残りの半分は休みをとるという働き方も増えてきています。このような特性から、本業は別の会社で働いていて、副業として週末の土日などの休日を中心に不動産仲介業をおこなう例や、繁忙期である1月から3月だけを不動産屋として働く場合もあるようです。
また、事業の規模をあえて大きくしないことで、自分の好きなときに好きなだけ働くことが選択できるともいえます。ノルマは自分で決められるため、大手の不動産仲介会社のように顧客を選ばずに大量に集客をするような必要はなく、自分の好きなテーマにしぼって集客をすることも可能です。
「特定の地域にある物件のみを紹介する」のはもちろん、「リノベーションに特化した物件のみを紹介する」、「サーフィンが好きな人に特化した物件のみを紹介する」であったり、通常では敬遠されがちな「高齢者に特化した専門店」、「水商売の方に特化した専門店」、「特定の趣味の集まりのみを対象にした専門店」などといった、ニッチな事業をおこなうことも可能です。
自分のペースで仕事ができることから、副業として起業をする場合や、定年後に趣味で開業する場合もあるようです。一方で、仕事に妥協せず、とにかく売上を上げることをひたすら目指して、就労時間を気にせずに長く働き続けることも可能です。
一人で起業をする場合、上司はもちろん、部下や同僚などがいませんので、通常の職場でおこるような人間関係の悩みから開放されることもあるでしょう。
関わる人を選択することができ、自分の権限で意思決定ができることから、ある意味で勝手気ままに仕事をすることが可能です。
不動産仲介業では、これだけのメリットがある一方で、デメリットもあります。
不動産の売買や賃貸を検討する時期は、年間をとおしてばらつきがあります。おもに新生活の準備をする1月~3月が繁忙期となりますが、8月や12月は閑散期となります。
業務が忙しくなる時期は特に、一人でたくさんの顧客の接客をするには限界があります。一般的に、一人で仲介業をおこなう場合には、手数料の売上は月間で250万円、年間で3,000万円が限界の目安だと考えられます。
一人で起業した場合には、基本的には社員も一人になりますので、マンパワーが限られている分だけ業務量に上限があり、売上にも限界があるといえるでしょう。
自分のペースで働けることは一人で起業した場合の大きなメリットですが、その反面で、自分以外のだれかに任せられないことから、代えがきかないリスクがあります。たとえば風邪で寝込んでしまったり、1日の予定が重複してしまったりした場合に、代わりに頼む人がいないといえるでしょう。
自分一人しかいませんので、健康管理やモチベーションの維持など、徹底的な自己管理が必要となります。トラブルの際にもその責任のすべてを自分でとらなくてはならなりません。不動産は高額な商品であり、大きな責任をともなう仕事ですので、精神的なプレッシャーも大きいです。
不動産仲介業を一人で起業した場合には、職場の人間関係のストレスがない一方で、業務上の相談や、業務に関連して気軽な雑談などをする相手がいないともいえます。
これまで会社員として不動産仲介業をおこなっていた方には、ノルマや人間関係の悩みから開放されたという一方で、どのような重要な契約でも、どのような些細な雑用でも、自分一人しかいないことに虚無感を覚える方もいるようです。
重要事項説明の内容に関して解釈が難しい場合や、判断がしにくい場合でも、気軽に相談できる相手がおらず、不安を感じることもあるでしょう。また、相互学習の機会がないことで専門知識を深めにくく、また最新の情報なども入ってきにくくなるでしょう。
自分のできることが広がらず、キャリアとしての成長実感が見出しにくいこともあるようです。
未経験で不動産仲介業を開業をした方からは、開業後にどのように営業したのかと聞かれることが多いです。一番にやるべきことは、まず1件の実績をつくることからです。
不動産の契約では2つの会社が関わることが多いです。売買の場合には売り手と買い手、賃貸の場合には貸し手と借り手と、2者が存在し、それぞれの仲介者がいるためです。そのため、自分がそのどちらかの側にいるときには、もう一方にもう1社の不動産会社が入るといえます。
多くの場合には、未経験で開業をすると、借り手側を探すか、買い手側を探すことが多いと考えられます。通常は、貸し手側や売り手側が契約書などを準備しますので、もう1社の不動産会社と取引をしながら、学びながら経験を積んでいくことができるのです。詳しくは、以下の記事をご覧ください。
まだ、不慣れなことも多いでしょうから、いきなり第三者から営業をするのは控えたほうが無難です。まずは家族や親戚、友人や知人に開業したことを伝えるのがおすすめです。これまでの地縁や関わりを活かして集客をする方法からはじめましょう。
これまで不動産の売買の話をしていなかった場合でも「実は不動産の売買を考えていた」と相談を受けることもあるでしょう。不動産の売買は個人の資産に関わることですから、むやみやたらには相談できず、信頼できる関係者に相談したいものです。
他にも、名刺やチラシ、パンフレットや小冊子を作成して配るというのもおすすめです。また、並行して自社のホームページをつくりましょう。たとえ直接検索をされなくても、たとえば名刺交換をしたあとなどに、会社名を検索されて、信頼できる会社なのかを判断される場合もあります。開業後の集客の方法については、以下の記事も参考にしてみてください。
このように、不動産仲介業を一人で起業することには、メリットもデメリットもあります。
不動産仲介業の開業当初には、あまり費用をかけられないと思いますので、倒産のリスクを最小限にとどめるために、まずは一人から小さくはじめることは間違っていないと思います。
しかし、だれにも頼らずに一人で判断をすると、間違った方向に進んでしまったり、余計な時間がかかってしまってしまうことも多いです。いざというときには、わからないことを聞けるような状態にしておき、また業務が忙しくなったときに手伝ってもらえる環境を用意しておき、余裕をもっておくことが重要です。
人件費を払って何人かの社員を定常的に雇うよりも、困ったときに必要に応じて、専門家に相談するのをおすすめしています。
不動産業界が未経験の場合には、本来は不動産屋で最低3ヵ月間以上は働く「修行」をすることがおすすめですが、実務の研修や、ベテランの宅建士からアドバイスをもらうプラン、実際に営業に同行してもらい指導してもらうサービスなどもあります。他にも、会計士や税理士、社労士や行政書士などの専門家に相談できるサービスも揃えています。
また、業務が忙しい時期には、不動産業や会社経営に関する業務を外注し、アウトソーシングすることも可能です。
一人での起業は大変なこともありますが、まさに経営者にしか経験できない、さまざまな醍醐味があるでしょう。
不動産屋の開業をご検討の方は、ぜひお気軽にご相談ください。