不動産を売却すると、高額な税金を納めなければならない場合があります。
事前に準備をしていれば慌てることはありませんが、不動産を売却してどのタイミングで、いくらくらいの税金を納めるのか、よくわからないのが実情でしょう。
税金は身近な問題であるにもかかわらず、専門知識や専門用語が多く、非常にとっつきにくい分野であり、苦手な人も多いのではないでしょうか。
税金の専門家である税理士に気軽に相談できればいいのですが、なかなか気後れがしてしまいます。
そこで今回は、
・不動産を売却する時、どのような税金が発生するのか
・その税金の金額はいくらくらいなのか
・節税するための特例とはどのようなものか
・実際の計算方法やシミュレーションを見てみたい
といった疑問や知っておくべき税金の基礎知識、事例紹介などについて詳しく解説します。
この記事を参考にして、あなたの不動産売却にぜひ活かしてください。
目次
不動産売却時にかかる税金は大きく分けて、印紙税・譲渡所得税・住民税の3種類があります。
まずは、それぞれの税金の概要や納めるタイミングについて説明します。
不動産を売却して納める税金は、印紙税・譲渡所得税・住民税の3種類ですが、このうち譲渡所得税と住民税は決済・引渡しの後から納めることとなります。
そのため、前もってどのくらいの税金を納めるのか知っておかないと、いざ納税の段階でお金がない!という事態を招きかねません。
「大金が入って散財してしまった・・・」ということがないように注意しましょう。
まずは時系列で説明します。
<不動産売却時にかかる税金>
まず、不動産の売買契約を締結する時に印紙税を納めることとなります。
その後、決済・引渡しを迎えて売却代金を受領しますが、売却の翌年の2月16日から3月15日までの間に確定申告を行い、譲渡所得があれば譲渡所得税を納税します。
気をつけないといけないのが住民税です。
確定申告による譲渡所得をもとに住民税が計算されて、売却の翌年6月に住民税決定通知書が届きますので、一括納付するか、もしくは6月、8月、10月、翌年1月のように4期に分けて納付します。
[su_box title=”関連記事” style=”bubbles” box_color=”#0075c2″ title_color=”#ffffff”]・不動産売却の確定申告で注意すべき10項目!書き方や必要書類など![/su_box]また、特別徴収により給与からの天引きで支払うことも可能です。
いずれも、支払うべきタイミングと税額を把握することで、計画的な納税ができます。
特に、自宅を買い換えた時などは、納税額などをあらかじめ計算したうえで資金計画を立てましょう。
売却代金を、新居の購入資金に全額充てたりすることのないように注意が必要です。
続いて、3種類の税金の概要について、それぞれ説明します。
印紙税は、不動産売買契約書に収入印紙を貼付することによって納付します。
契約金額により税額が定められています。
平成26年4月1日から平成32年(2020)年3月31日までに作成される不動産売買契約書に記載された契約金額が、10万円を超えるものについては、下記の表の通り軽減措置が適用されます。
契約金額 | 税額 | 軽減後の税額 |
1万円未満のもの | 非課税 | 非課税 |
1万円以上10万円以下のもの | 200円 | 200円 |
10万円を超え50万円以下のもの | 400円 | 200円 |
50万円を超え100万円以下のもの | 1,000円 | 500円 |
100万円を超え500万円以下のもの | 2,000円 | 1,000円 |
500万円を超え1,000万円以下のもの | 1万円 | 5,000円 |
1,000万円を超え5,000万円以下のもの | 2万円 | 1万円 |
5,000万円を超え1億円以下のもの | 6万円 | 3万円 |
1億円を超え5億円以下のもの | 10万円 | 6万円 |
5億円を超え10億円以下のもの | 20万円 | 16万円 |
10億円を超え50億円以下のもの | 40万円 | 32万円 |
50億円を超えるもの | 60万円 | 48万円 |
参考:国税庁HP
No.7140 印紙税額の一覧表(その1)第1号文書から第4号文書まで
(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7140.htm)
No.7108 不動産の譲渡、建設工事の請負に関する契約書に係る印紙税の軽減措置
(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/inshi/7108.htm)
一般的なマイホームなどの中古不動産を売却する場合、5,000円から3万円くらいの印紙税がかかる、と覚えておきましょう。
不動産を売却して譲渡所得(売却益)が出た場合、譲渡所得税と住民税および復興所得税が課税されます。
売却価格がその不動産の購入価格より安く、譲渡損失が出た場合はどちらも課税されず、譲渡所得(売却益)が出た場合だけ課税されることを覚えておきましょう。
[su_box title=”関連記事” style=”bubbles” box_color=”#0075c2″ title_color=”#ffffff”]・譲渡所得とは?税率・計算方法・特別控除について解説![/su_box]まずは、譲渡所得(売却益)について説明します。
譲渡所得とは売却代金のことではなく、売却代金から取得費と譲渡費用を差し引いた金額のことです。
取得費とは、売却した不動産の購入時にかかった一切の費用のことをいいます。
具体的には、購入代金や不動産業者へ支払った仲介手数料、登録免許税・不動産取得税・印紙税などの税金、測量費用、既存建物解体費用、立退き料などが含まれます。
[su_box title=”関連記事” style=”bubbles” box_color=”#0075c2″ title_color=”#ffffff”]・登録免許税とは?計算・軽減措置・相続・納付方法について解説!なお、建物の減価償却分は購入代金から差し引かなければなりませんので、注意してください。
また、購入時の売買契約書や領収書などの関係書類を紛失してしまい、取得費用が計算できない場合は、「概算法」で取得費を算定します。
【概算法の計算式】
概算法で取得費を計上すると、実際の取得費よりかなり安い費用となり、結果的に譲渡所得(売却益)が増えるために納税額が高くなってしまいます。
そのため、購入時の費用を証明する書類はなるべく保管しておきましょう。
譲渡費用とは、不動産を売却する時に発生した費用のことをいいます。
具体的には、不動産仲介業者へ支払った仲介手数料、印紙税、測量費用、既存建物解体費用、立退き料などが含まれます。
取得費から建物の減価償却分を差し引く必要があります。
減価償却とは、建物が古くなっていくにつれて価値が目減りしていくということであり、その分を購入代金から差し引いて、建物の現在の価値を取得費として計上することになります。
土地は年数を経ても価値は変わらないため、減価償却はありません。
減価償却費は、定められた償却率と計算式により計算し、築年数が古いほど減価償却費は大きくなります。
そのため、建物の減価償却費をきちんと差し引かないと、譲渡所得に大きな計算ミスが生じてしまいますので、必ず差し引きましょう。
居住用の建物の減価償却費の計算式は、下記の通りです。
構造 | 非事業用(マイホームなど) | 事業用(賃貸マンションなど) | ||
耐用年数 | 償却率 | 耐用年数 | 償却率 | |
木造 | 33年 | 0.031 | 22年 | 0.046 |
軽量鉄骨 | 40年 | 0.025 | 27年 | 0.038 |
重量鉄骨 | 51年 | 0.020 | 34年 | 0.030 |
鉄筋コンクリート | 70年 | 0.015 | 47年 | 0.022 |
マイホームなどの非事業用建物の耐用年数は、事業用(法定耐用年数)の1.5倍となります。
例えば、新築で購入した木造のマイホームの建物取得価格が3,000万円の場合、10年後に売却する時には、減価償却費=3,000万円×0.9×0.031×10=837万円、となり、取得費は3,000万円-837万円=2,163万円となります。
譲渡所得から、状況に応じて特別控除を差し引いた所得を課税譲渡所得といいます。
この課税譲渡所得に対して定められた税率を掛けることにより、譲渡所得税と住民税が課税されます。
特別控除とは、特定の条件を満たした場合に税金が軽減される措置のことをいいます。
代表的な特別控除については、後ほど詳しく説明します。
譲渡所得税と住民税は課税譲渡所得がプラスの場合に課税され、マイナスの場合は納税する必要はありません。
課税譲渡所得に対して税率を掛けると、譲渡所得税や住民税の税額が求められますが、この税率は一律ではありません。
税率は、売却した不動産の所有期間によって異なるのです。
譲渡した年の1月1日現在の所有期間が5年を超える場合は長期譲渡所得、5年以下の場合は短期譲渡所得となり、税率は以下の通りとなります。
短期譲渡所得 | 長期譲渡所得 | |
所得税 | 30.63% | 15.315% |
住民税 | 9% | 5% |
合計 | 39.63% | 20.315% |
※平成25年から平成49年までは、復興特別所得税として基準所得税額の2.1%が加算されています。
次に、長期と短期の区分について、例を使って確認しましょう。
【図のAの場合】
平成24年4月1日に購入し、平成29年5月1日に売却していますので、カレンダー上の所有期間は5年1ヶ月ですが、平成29年1月1日現在で4年9ヶ月の所有期間となるため、短期譲渡なります。
【図のBの場合】
平成24年4月1日に購入し、平成30年2月1日に売却していますので、カレンダー上の所有期間は5年10ヶ月ですが、平成30年1月1日現在で5年9ヶ月の所有期間となるため、長期譲渡なります。
不動産売却における譲渡所得税と住民税は、給与所得など他の所得と区分して課税される「分離課税」です。
課税譲渡所得がプラスの場合は、必ず確定申告を行う必要がありますので注意しましょう。
また、不動産売却における譲渡損失は、原則、給与所得など他の所得と損益通算することができませんが、一定の要件を満たす場合に、還付金や税金の軽減を受けられることがあるため、面倒でも確定申告を行うとよいでしょう。
不動産売却については、一定の要件を満たせば、さまざまな特例の適用を受けることができます。
これらの特例の適用を受けられれば、税金の節税効果が見込めるため、必ず確認しておきましょう。
知らないと損をする・・・とは、まさにこのことです。
ここでは、自宅の売却や買換えを計画している人や、空き家となった実家を相続して売却を検討している人などが、利用できる4つの特例について解説しますので、しっかりと確認してください。
マイホームなどの居住用財産を売却した場合、所有期間に関係なく譲渡所得から3,000万円を控除することができます。
つまり、譲渡所得が3,000万円までであれば、税金がゼロとなります。
ただし、この特例を受けるための主な適用要件は、
・居住用の不動産であること
・その不動産に住んでいない場合は、住まなくなった日から3年後の年の12月31日までに売却すること
・売り手や買い手が、親子や夫婦など特別な関係がある人でないこと
・確定申告を行うこと
などがありますので、国税庁のホームページや管轄する税務署などで、よく確認しましょう。
なお、住宅ローン控除との併用はできませんので、買換えの場合は注意が必要です。
居住用財産を売却した年の1月1日現在で所有期間が10年以上の場合、税率が軽減されます。
なお、その不動産に住んでいない場合は、住まなくなった日から3年後の年の12月31日までに売却しなければなりません。
税率は以下の通りとなります。
譲渡所得が6,000万円以下 | 譲渡所得が6,000万円超 | ||
6,000万円以下の部分 | 6,000万円超の部分 | ||
所得税 | 10.21% | 10.21% | 15.315% |
住民税 | 4% | 4% | 5% |
合計 | 14.21% | 14.21% | 20.315% |
この特例は、居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例と併用することができ、長期譲渡所得の税率よりもかなり軽減できますので、よく覚えておきましょう。
また、この特例の適用を受けるためには、確定申告が必要です。
マイホームなどの居住用財産を売却して、新たにマイホームを買換えた場合、売却価格より買換えた購入価格の方が高ければ、譲渡所得(売却益)に対する課税を将来に繰延べることができる、という制度です。
ただし、譲渡所得に対する課税が非課税になるわけではなく、あくまで課税の繰延べです。
売却したマイホームの譲渡所得に対する税金を、買換えによって取得したマイホームに引き継ぎ、将来的に買換えたマイホームを売却する時に、繰延べた譲渡所得を加えて課税する、ということになります。
また、この特例を受けるための主な適用要件は、
・居住用の不動産であること
・その不動産に住んでいない場合は、住まなくなった日から3年後の年の12月31日までに売却すること
・売却した不動産の売却価格が1億円以下であること
・売却した年の1月1日現在において、不動産(土地・建物)の所有期間がいずれも10年を超え、かつ売却した人の居住期間が10年以上であること
・買換える建物の床面積が50平方メートル以上、土地の面積が500平方メートル以下であること
・親子や夫婦など特別な関係がある人に売却していないこと
・確定申告を行うこと
などがあります。
また、この特例は「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」と併用することはできません。
そのため、この特例と3,000万円の特別控除の特例と、どちらを適用したほうが節税になるのかは、一概には判断が難しいので、悩んだ場合は税理士などの専門家に相談するとよいでしょう。
親から相続した空き家は、原則的には子の居住用財産ではないため、子が売却しても居住用財産の3000万円の特別控除の特例は適用できませんが、一定の要件を満たす場合に、子が3,000万円の特別控除の特例を受けることができます。
この特例は、数多く発生している空き家問題などを鑑みて平成28年の税制改正で制定され、平成28年4月1日から平成31年12月31日までの譲渡、という短期的な時限措置となっています。
また、この特例を受けるための主な適用要件は、
・相続開始直前まで、被相続人(親)の居住用建物であったこと
・相続開始直前まで、被相続人以外の居住者がいなかったこと
・旧耐震基準である昭和56年5月31日以前に建築された建物であること(区分所有建物を除く)
・相続の開始があった日から3年後の年の12月31日までに売却すること
・譲渡対価の額が1億円以下であること
・新耐震基準を満たすように改修された建物とその土地、もしくは建物を解体して更地になった土地であること
・確定申告を行うこと
などがあります。
この特例は適用要件が多く複雑ですが、適用を受けられれば大幅な節税が期待できますので、ぜひ確認してください。
前項で説明した4つの特例以外にも節税が期待できる対策があります。
ここでは、それらの4つの対策について、説明します。
マイホームなどの居住用財産を売却して譲渡損失が出た場合、一定の要件を満たせば売却した年の給与所得など他の所得と相殺して、所得税や住民税を減らすことができる損益通算を行うことが可能です。
損益通算を行っても控除しきれない損失がある場合には、売却した年の翌年以降3年間にわたって繰り越して控除できるため、売却した年を含めて最高4年間所得税や住民税を軽減できることになります。
しかも、住宅ローン控除との併用も認められています。
ただし、マイホームを売却した年の前年もしくは前々年に、「居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例」「所有期間10年以上の場合の軽減税率の特例」「特定居住用財産の買換え特例」の適用を受けていないことや、売却した年の3年前以内に、別のマイホームにおいてこの特例や次で説明する「特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」を受けていないことが条件です。
また、売却した年の1月1日現在で、所有期間が5年超のマイホーム(居住用財産)を2019年12月31日までに売却し、新しい居住用不動産に買い換える必要があります。
その他、この特例の主な適用要件は、
【売却したマイホームの要件】
・所有期間5年超
・住まなくなった日から3年後の年の12月31日までに売却すること
【買い換えたマイホームの要件】
・床面積50平方メートル以上
・買い換えたマイホームを購入した年の12月31日において、10年以上の住宅ローンがあること
・売却した年の前年の1月1日から翌年の12月31日までの3年の間に買い換えること
・購入した年の翌年の12月31日までに入居するか、入居見込みであること
などがあります。
その他、合計所得金額が3,000万円を超える場合は、その年は繰越控除を受けられないことや親子や夫婦など特別な関係の間で売買しないこと、確定申告を行うことなどの要件もあります。
詳細については、管轄する税務署や税理士などの専門家に確認しましょう。
この特例は、マイホームを買い換えなくても受けることができます。
売却した年の1月1日時点で5年を超えて所有するマイホームを売却して、売却の契約日の前日時点で、住宅ローンの期間が10年以上あることが条件となります。
この場合、一定の要件を満たせば、マイホームなどの居住用財産を売却して出た譲渡損失をその年の給与所得や他の所得と損益通算でき、損益通算を行っても控除しきれなかった損失は、翌年以降3年間にわたって繰り越して控除することができます。
ただし、損益通算と繰越控除の対象となる譲渡損失は、売却した前日の住宅ローン残高から売却価格を差し引いた額が限度額となります。
その他、「居住用財産を買換えた時の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」と同様に、合計所得金額が3,000万円を超える場合は、その年は繰越控除を受けられないことや親子や夫婦など特別な関係の間で売買しないこと、確定申告を行うことなどの要件もあります。
詳細については、管轄する税務署や税理士などの専門家に確認しましょう。
取得費には、購入代金の他に、購入時に支払ったさまざまな諸経費が加算できます。
つまり、そういった諸経費を漏れることなく計上することが節税のポイントとなるのです。
これらの諸経費を取得費に算入するためには、エビデンスとして領収書や契約書などの関係書類が必要となりますので、きちんと保管しておきましょう。
万一、関係書類を紛失してしまった場合は、銀行通帳などの入出金記録や住宅ローンの契約書など、購入価格を推察できる資料があれば、実額によって取得費として計算できる場合があります。
このような場合は、手元にあるこれらの購入時の書類を持って、管轄する税務署へ相談してみましょう。
取得費は概算法によっても計算できますが、節税どころか大幅な増税になってしまう可能性があるため、できる限り購入時の関係書類を用意しましょう。
不動産売買の場合、売主は売買契約書の原本を保有する必要はなく、写し(コピー)で差し支えありません。
その場合は、売買契約書に「本契約書1通作成し、売主・買主が記名・押印のうえ、原本を買主が、写しを売主が保有するものとする」などの文言を記載することとなります。
写しは課税文書にあたらず収入印紙を貼付する必要はありませんので、印紙税の節税が可能となります。
もちろん、契約の効力は原本と同じですので、安心してください。
場合によっては、1通分の印紙税を売主・買主双方で負担する場合もありますので、事前に買主や不動産仲介業者とよく相談しましょう。
最後に、具体的な事例をシミュレーションして、不動産を売却した場合の譲渡所得税と住民税を計算してみましょう。
不動産の種類 | 木造2階建(一戸建) |
用途 | 自己居住用(マイホーム) |
売却理由 | 実家への引越しによる売却 |
売却代金 | 4,500万円 |
購入代金 | 3,500万円(土地:2,000万円 建物:1,500万円) |
築年数 | 15年 |
15年間住んでいたマイホームを売却し、実家へ引っ越すこととなりました。
譲渡所得を計算するために、まず「売却代金」「取得費」「譲渡費用」を算定します。
【売却代金】
売却代金=4,500万円
【取得費】
建物の減価償却費=1,500万円×0.9×0.031×15=627万7,500円
購入時の仲介手数料=(3,500万円×3%+6万円)+消費税5%=116万円5,500円
印紙税=1万5,000円
取得費=(3,500万円-627万7,500円)+116万5,500円+1万5,000円=2,990万3,000円
【譲渡費用】
売却時の仲介手数料=(4,500万円×3%+6万円)+消費税8%=152万円2,800円
印紙税=1万円
譲渡費用=152万円2,800円+1万円=153万円2,800円
【譲渡所得】
4,500万円-(2,990万3,000円+153万円2,800円)=1,356万4,200円
この場合は、居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例と所有期間10年以上の場合の軽減税率の特例の2つの特例の適用が受けられます。
まず、譲渡所得から3,000万円の特別控除を差し引くと、
1,356万4,200円-3,000万円<0
となり、全額控除となります。
すなわち、この不動産売却における譲渡所得税および住民税は0円となります。
不動産の種類 | 木造2階建(一戸建) |
用途 | 自己居住用(マイホーム) |
売却理由 | 最近4年間賃貸しており現金化のため |
売却代金 | 4,500万円 |
購入代金 | 3,500万円(土地:2,000万円 建物:1,500万円) |
築年数 | 15年(最近4年は賃貸していた) |
新築から11年間住み、海外転勤になったこの4年間は、賃貸していた自宅を売却することとなりました。
その他の条件は事例1と同じです。
売却した不動産に住んでいない場合は、住まなくなった日から3年後の年の12月31日までに売却することが、居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例および所有期間10年以上の場合の軽減税率の特例の適用の条件ですので、事例2のケースではどちらの特例の適用も受けられません。
したがって、課税譲渡所得は譲渡所得のままで1,356万4,000円(千円未満切り捨て)となり、税率は長期譲渡の場合の所得税15.315%、住民税5%、合計20.315%となります。
譲渡所得税=1,356万4,000円×15.315%=207万7,300円(100円未満切り捨て)
住民税=1,356万4,000円×5%=67万8,200円(100円未満切り捨て)
合計納税額=275万5,500円
となります。
居住用財産を譲渡した場合の3,000万円の特別控除の特例および所有期間10年以上の場合の軽減税率の特例の適用が受けられなかったために、約280万円の税金を納めることとなりました。
不動産を売却した時にかかる税金の種類や概要、その計算方法、特別控除の特例やそのほかの節税対策など、税金に関しての基礎知識について説明しました。
一般の人で不動産の売却に慣れている人は恐らくいないでしょうが、あらかじめ税に対する知識やシミュレーションなどをしておくことで、スムーズな不動産売却や健全な資金計画を立てることはできます。
いざ、納税の段階で慌てることがないように、十分な準備をしておきましょう。
ただし、税制は非常に複雑なうえに、よく改正されています。
そのため、必要に応じて、税務署の相談窓口や税理士などの専門家に相談することをお勧めします。