宅地造成等規制法
がけ崩れから命を守るために、一定規模の宅地の造成(家を建てることを目的に土地を掘る工事)の前に、知事が許可する制度
①宅地造成工事規制区域、②造成宅地防災区域の指定は、いずれも都市計画区域に限らず設定できる
・宅地造成工事規制区域の許可と届出
・土地の形質変更をして宅地にする場合には許可が必要 ・土地の形質変更をしない場合や、宅地以外にする転用は許可不要 |
・宅地造成工事規制区域の許可が必要な宅地造成工事の規模
①2m超の切土 | |
②1m超の盛土 | |
③切土と盛土で2m超 | |
④土地の面積が500㎡超 |
※高さ5m以上の擁壁を設置するときには、有資格者が設計しなければならない
※地表水を排除するために排水施設を設置する際、面積1,500㎡超のときには、有資格者が設計しなければならない
・盛土の際の注意点
・盛土では、およそ30cm以下の厚さごとにローラーなどで締め固めるとよい ・地すべりしやすい土質の層がある場合には、地すべり抑止ぐいやグラウンドアンカーなどの設置または土の置換え、段切りなどをしなければならない ・崖面は、風化やその他の侵食から保護するために、石張り、芝張り、モルタルの吹付けなどをおこなうとよい ・擁壁は、原則として鉄筋コンクリート造、無筋コンクリート造、または間知石練積み造、その他練積み造のものとしなければならない ・擁壁は裏面の排水をよくするため、耐水材料を用いた水抜き穴を設け、かつ砂利等の透水層を設けなければならない |
・宅地造成工事等規制法で許可が不要な例(届出が必要)
・宅地造成工事規制区域の許可の流れ
・許可申請、完了報告は造成主(✕工事請負人)がおこなう ・都市計画法の開発許可を受けた工事は、宅地造成等規制法の許可は不要 ・知事は許可をするにあたり、条件をつけることができる |
・宅地造成工事規制区域の監督処分
処分を受ける者 | 処分の内容 | 理由 | |
許可後 | 造成主 | ・許可の取消し | ・不正な手段で許可を受けた ・許可の条件に違反 |
工事中 | 造成主 工事請負人 現場管理者 | ・工事の停止 ・擁壁等の設置 ・災害防止措置 | ・無許可で工事 ・許可の条件に違反 ・技術的基準に不適合 |
工事終了後 | 造成主 所有者 管理者 占有者 | ・宅地の使用禁止 ・擁壁等の設置 ・災害防止措置 | ・無許可で工事 ・完了検査を受けていない ・技術的基準に不適合 |
※造成主は工事の依頼主のこと。依頼後の売買や賃貸などにより、所有者や占有者と異なる場合がある
・宅地造成工事規制区域内の保全義務等
保全義務 | 所有者・管理者・占有者は、災害が生じないように宅地を常時安全な状態に維持するように努めなければならない |
保全勧告 | 知事は、災害防止のために必要があるときは、所有者・管理者・占有者・造成主・工事施行者に対して、擁壁や排水施設の設置・改造などの必要な措置をとることを勧告することができる(従わなくても罰則なし) |
改善命令 | 知事は、災害発生のおそれが大きい場合は、所有者・管理者・占有者に対して、擁壁や排水施設の工事を命じることができる。また、工事施行者に対しても改良工事を命じることができる(従わない場合は罰則あり) |
・造成宅地防災区域
区域の指定 | 知事(✕国土交通大臣)は、関係市町村長の意見を聴いて、宅地造成に伴う災害で相当数の居住者に危害を生ずるおそれの大きい区域内の場所を指定する(3,000㎡以上の土地で、盛土により地下水位が上がり盛土の内部に侵入している地域) ※宅地造成工事区域内を除く(すでに宅地となった場所が危険になった場合に対象とするため) |
災害防止措置 | ・保全義務 所有者・管理者・占有者は、災害が生じないように擁壁等の設置・改造などの必要な措置を講ずるように努めなければならない ・勧告 所有者・管理者・占有者 ・改善命令 所有者・管理者・占有者・工事施行者 |
・その他の法令上の制限
法令 | 許可者 | 許可の必要な例 |
自然公園法 (国立公園) | 環境大臣 | 特別地域内においては、国立公園にあっては環境大臣の許可を受けなければ、工作物の新築をしてはならない |
自然公園法 (国定公園) | 都道府県知事 | 特別地域内においては、国定公園にあっては都道府県知事の許可を受けなければ、工作物の新築をしてはならない |
都市公園法 | 公園管理者 | 都市公園に、公園施設以外の工作物その他の物件または施設を設けて都市公園を占用しようとするときは、公園管理者の許可を受けなければならない |
文化財保護法 | 文化庁長官 | 史跡名勝天然記念物に関しその現状を変更し、またはその保存に影響を及ぼす行為をしようとするときは、文化庁長官の許可を受けなければならない |
道路法 | 道路管理者 | 道路の区域が決定された後道路の供用が開始されるまでの間は、道路管理者の許可を受けなければ、土地の形質変更をしてはならない |
河川法 | 河川管理者 | 河川保全区域内において、土地の堀さく、盛土または切土その他土地の形状を変更するものは河川管理者の許可を受けなければならない |
海岸法 | 海岸管理者 | 海岸保全区域内において、土石(砂)を採取しようとする者は、一定の例外を除き、海岸管理者の許可を受けなければならない |
港湾法 | 港湾管理者 | 港湾区域内において、港湾の開発、利用または保全に著しく支障を与えるおそれのある行為をしようとする者は、港湾管理者の許可を受けなければならない |
森林法 | 都道府県知事 | 保安林に置いては、一定の例外を除き、都道府県知事の同意を得なければ立木を伐採してはならない |
生産緑地法 | 市町村長 | 生産緑地地区内において、建物の新築等をする場合には市町村長の許可を受けなければならない |
都市緑地法 | 都道府県知事 | 緑地保全地域内において、宅地の造成をしようとする者は、一定の区域を除き原則として都道府県知事等にその旨を届出なければならない |
土壌汚染対策法 | 都道府県知事 | 形質変更時要届出区域内において、土地の形質変更をする者は、都道府県知事にその旨を届出なければならない |
地すべり等防止法 | 都道府県知事 | 地すべり等防止区域内において、一定の行為をしようとする者は、都道府県知事の許可を受けなければならない |
景観法 | 都道府県知事または市区町村長 | 景観計画区域において、建築物の新築、増築、改築等をおこなう者は、指定する都道府県知事または市区町村長に届出なければならない |