目次
一人一人の可能性を活かす選択肢を!
僕が「高専」に懸けた理由。
リクルートにてメディアのプロデュースや開発のディレクション業務を行う傍ら、日本全国の高専生の進路や学習の選択肢を広げるため、東京の企業への訪問イベント等を行っている弦本さん。「高専生に懸けてみたい」という思いを抱いた背景には、どんなストーリーがあったのでしょうか?
給料がなくてもいい!
小さい頃から色々なことに好奇心を持つ性格でした。
分野を問わず様々なことに関心があり、人についても興味が強かったので、
進路の選択では、なるべく可能性が大きく残る選択肢を選ぼうという考えがありました。
そのため、高校の文理分けのタイミングでも、理系を選択して文系の勉強は自習しようという理由から理系に進学しましたし、
大学で何を学ぼうかと考えた時にも、他の分野との掛け算で選択肢が広がるIT系に進もうと思い、情報系の学部に進学しました。
漠然とですが、WEBを介することで、多くの人の役に立つことができるんじゃないかという思いもありましたね。
大学時代にはWEBレコメンドの理論や技術を学び、研究では映画の推薦システムや為替の自動売買ソフトなどを開発していたのですが、
就職活動の際にもこれまでと同じく、選択肢の幅を狭めない環境を選びたいということで、
IT系のプラットフォームを持ち、幅広く事業を行っている企業を受けて回りました。
そんな風に就職活動を行う中で、リクルートに出会いました。
そして、説明会や面接を通して出会った方一人一人に、すごく惹かれていったんです。
皆やりたい世界に向けて行動をしていて、すごくカッコよく、人として尊敬できる方ばかりだったんですよね。
気づけば、
「この会社で働くのに、給料がなくてもいい!」
とまで思うようになりました。
面接で実際に口にすることはありませんでしたが、夜にアルバイトをして生活費を稼いででもいいので、
この会社で働き、学び、成長していきたいと心から思いましたね。
そのため、ご縁があり内定をいただいた時は、とても嬉しかったです。
可能性を持つ人を応援したい
就職活動を終え、リクルートの内定者になってからは、同期となる他の内定者たちに興味を持ち、
一人一人と直接話をするために、実際に会いにいったり、大学に遊びに行ったりしました。
実際に話をしてみると、100人近くいた内定者のうち、なんと30人程が既に起業をしていたんですよね。
面白い活動をしている人たちが多く、なかには初任給よりもはるかに稼いでいる人などもいました。
彼らの話を聞くうちに、
「負けた、先を越された・・・」
と感じました。
もともと学生時代は、社会人になってからではできないことをやりたいという思いがあったので、
長期の海外一人旅と並んで、学生起業にも関心はあったんです。
そこで、「自分もやってみよう」という思いから、
起業の仕方を調べ、法務局に向かい、実際に会社を起こしました。
とはいえ、会社を創ったはいいものの、何をすればいいのか迷ったため、あらためて内定者に相談して回り、
まずは様々なイベントの企画、運営をする事業から始めることにしました。
最初は知り合いを呼んで交流会を行う程度でしたが、
社会人になってからも、人への好奇心からイベントの運営は続けることに決めました。
また、自分に年の近い学生たちと触れ合う中で、恵まれたポテンシャルを持ちながら、
夢を掴めず諦めてしまう学生が多いことに、もったいなさを感じるようになったんです。
そこで、同じイベントでも、音大生や美大生など、ポテンシャルがある人がアウトプットをする機会を提供することで、
彼ら彼女らの応援につながるようなイベントを運営するようになっていったんです。
例えば、六本木のピアノのあるレストランで音大生のコンサートをしたり、
渋谷のクラブを貸し切って学生ダンサーの発表会をしたりと、
可能性を持った人たちが飛び出すきっかけになるイベントにできればな、
という気持ちで活動をしていました。
もともと人が好きな性格だったのもあって、
イベントを通じて人を応援することが好きになっていったんですよね。
「高専」を取り巻く環境への違和感
そんな活動を並行して行いつつも、本業のリクルートも期待通りで、すごく恵まれた環境でした。
前向きで心から尊敬できる人たちに囲まれ、裁量も大きく色々な仕事を任せてもらい、
入社して日が浅い中でも、WEBの集客や開発のディレクションなどで億単位の予算を持たせてもらう経験もできました。
大学時代の研究テーマだったレコメンドについても携わることができ、本当に充実していましたね。
また、入社して1年目の年に、サマーインターンのメンターとして、
学生チームの事業立案を手伝わせていただく機会をもらいました。
僕が担当したチームはすごく優秀な学生が揃っており、インターンで優勝し、
シリコンバレーのツアーに参加する機会に恵まれたんです。
メンターの社員はそのツアーに含まれていなかったのですが、僕も一緒に行ってみたいと思い、
自腹で有給をとって同行することに決めました。
チームには大学生だけでなく、高専(高等専門学校)に通う学生もいたのですが、
僕自身、埼玉県出身で高専について全く知らなかったこともあり、
その学生にシリコンバレーからの帰りの飛行機で、高専とはどんな所か聞いてみたんです。
実際に話を聞いてみると、高専は知名度が低いことで都内での就職活動の際に苦しんでいるということで、
確かに、エントリーや面接でも不利になっていそうだと感じました。
また、企業の選び方も、キャリアセンターの掲示板に貼ってある求人票に応募したり、
あまり多くの会社を見ずに、先生の紹介で就職先を決めたりと、
まるで一昔前の大学生のような就職活動だったんですよね。
その話を聞くうちに、そういった限られた選択肢を強いられる環境をすごくもったいなく感じ、
課題に感じるようになっていきました。
実際に、その高専生はすごく優秀で、情熱もあり、エンジニアとしても非常に優れていたんです。
自分自身が情報系の大学の出身だったこともあり、彼のような優秀な学生に選択肢が少ないことに対して、
強い違和感を感じました。
想像以上の熱意と可能性
ただ、僕が知っている高専生はインターンチームの1人だけだったので、
他の高専生も同じような状況なのか、どんな学生なのかをもっと知りたいと思い、興味を持ちました。
そこで、翌月に「高専ベンチャー」という団体を立ち上げて、都内にマンスリーマンションを借りて、
高専生を対象に、春休みの2週間の開発合宿を開いてみたんです。
いきなりの告知だったのにも関わらず、全国からたくさんの応募があり
5人の高専生を選抜して開発のイベントを行ったのですが、彼らのポテンシャルには、本当に驚かされました。
とにかく熱意がすごく、寝ても覚めても開発したいといったモチベーションで、
初見で顔を合わせたメンバーとでも2週間でプロダクトを完成させることができ、すごく手応えを感じたんです。
正直、手探りな中、交通費も食費も滞在費も全て出し、彼らに懸けてみたのですが、
想像以上の熱意と可能性を感じ、応援したいという思いはますます強くなりました。
そんな成果を得て、その年の夏休みには、東京のIT系企業を訪問するツアーを企画しました。
こちらは企業にお金をいただきながらも、学生には交通費や食費、滞在費を全額支給したのですが、全国から応募がたくさん集まり
最終的には、北海道から沖縄までの15人の高専生を選抜し、都内8社の企業を回ることになりました。
最初は東京に来たことがなく、怖がっていた学生でも、
実際にオフィスを訪問してみると、その雰囲気や働き方に衝撃を受け、目を輝かせる学生ばかりだったんです。
翌春には全国の学生でチームを作り、遠隔で開発をして発表をするというコンテストを行ったのですが、
彼らの技術力は企業側からの評価も非常に高く、学生と企業のどちらからも手応えを感じました。
学生同士の交流にも満足度が高く、総じてすごく良い機会になったんですよね。
これまで1クラス40人で、5年間同じクラスという狭い世界にいた多くの高専生が、
外に出て多くの刺激に反応していく姿を目の前にして、すごくやりがいを感じましたね。
殻を破って飛び出す
それ以来、定期的に企業を訪問するツアーやインターンなどのイベントを続けています。
「高専ベンチャー」は、ベンチャー企業だと思われることもあるのですが、
高専生が「殻を破って飛び出す」ことを応援したいという思いを込めて、ベンチャーという名前を付けたんです。
訪問する企業には大企業も含まれているし、今後は海外や地元の企業も含めて、
より多くの進路の選択肢を、高専生に提供していきたいと思っています。
あとは、情報系のみならず、機械系や建築、生物系などの他の学科にもドメインを広げていきたいですね。
ありがたいことに、イベントを通じて実際に就職する学生も出てきましたし、
これまで同様の活動がなかったからか、企業や学校の先生からも、期待していただいていることを肌で感じています。
現在は、リクルートにてメディアのプロデュースや開発のディレクションを行う傍ら、
平日の夜や土日に、日本全国の高専生の進路や学習の選択肢を増やす活動を行っています。
今は自分の思いでやっているし、本業もあり100%の時間は割けていないのですが、
いずれは、ずっと回り続ける仕組みを残さなければと思っています。
何年後にどうしたいという明確な人生プランは作っていないものの、
その時その時で自分自身はワクワクしながら行動をしていて、それが目の前の人のためになり、
その結果が社会のためにもなるようなことがしたいですね。
また、先人に築いていただいた今の世の中にものすごく感謝をしているので、
死ぬまでに何か社会に貢献できる仕組みを残したいという気持ちが強いです。
そういった意味で、これまで携わってきたITと教育の分野でそれが実現できたらと思います。
多くの人の選択肢を広げるような仕組みを、これからも作っていきたいですね。