東京メトロ東西線「竹橋」駅から徒歩3分、「神保町」駅から徒歩4分の場所に建つ「弦本ビル」。飲食店舗やコワーキングスペース、オフィス、そしてシェアハウスと、食住職の揃う複合ビルだ。
現在、4階のシェアハウスにてDIYリノベーションを実施している。
きっかけは新型コロナウイルスだった。オーナーの弦本卓也氏は「2月、3月という新年度からの生活を準備するタイミングでコロナ禍が拡大してしまったことで、新規の入居者を募集するタイミングを逸してしまいました」と話す。3密回避の対策も考え、4階の個室化に向け動き出した。
今回のDIYで主導的な役割を果たしている人物が3名いる。現場リーダーの眞見友輔氏、内装デザインの森田啓介氏、そして撮影などを担当したカメラマンの梶直輝氏の3名だ。各氏の経歴はユニークだ。
眞見氏は「パーリー建築」を日本全国で展開する人物。この「パーリー建築」とは「改修する物件に住み込んで、施主や地域の人たちを巻き込みながら一緒に物件をリノベーションする活動」だ。
森田氏は建築図面を視覚的にわかりやすりように3DCGで再現することに長けている。特に図面はプロでないと、その図面からどのような物件ができあがるのか想像しづらい。そのような建築側と施主の意思疎通をテクノロジーで解決する。
梶氏は元銀行員で、その後に日本一周。現在はカメラマンとして全国を飛び回りゲストハウスなどの撮影を行っている。この3名とオーナーである弦本氏や入居者が一緒になって、リノベーションDIYを実施。電気工事など資格がいる工程を除いて、自分たちの手で個室シェアハウスへと変えた。
弦本氏や入居者は建築に関しては素人。それでも彼らが一緒になって進めていくことに「パーリー建築」の醍醐味があるようだ。
「オーナーや入居者と一緒に進めていくことによって、自分たちが利用しやすいようにつくっていくことも可能ですし、何より場所により愛着を持てるようになる。工程ごとに教えながら進めていくため、参加者のスキルアップにつなげられます。工費も大きく抑えることが可能です」
リノベーションDIYを進めていく上でイメージを具現化するのに寄与したのが、森田氏が手掛けた3DCGによる建築図面の具体化。誰もがわかりやすく視覚化することで、よりオーナーや住人の思いを反映することができた。
一方で眞見氏や森田氏のような建築のプロと、プロではない人とではコミュニケーションが難しかったりもする。梶氏はDIYリノベーションの過程の撮影をしながら、DIYにも参加し、そしてそれぞれのコミュニケーションの懸け橋にもなった。オーナーや住人の思いを汲み込むためにヒアリングしていくことも重要。既存の工事業者の施工とは異なる点といえる。
新型コロナウイルスの影響で行ったDIY。オーナーである弦本氏や入居者にとって、より思いのある物件へと進化していきそうだ。