投資で大きな損失を出さないために、①分散投資と②ヘッジ取引と呼ばれる投資方法があります。今回は、2つの投資方法について解説したいと思います。
目次
分散投資とヘッジ取引
ポートフォリオとは、さまざまな種類のものを1つにまとめて一覧化すること
- ポートフォリオという言葉の由来は、紙ばさみを表す英語
- さまざまな種類のものを1つにまとめて一覧にするという意味
- 美術などは、自分の作品のを一覧化してポートフォリオとよぶ
- エンジニアや求職者なども、関わったプロダクトや経歴などを一覧化してポートフォリオと呼ぶことがある
- 会社では事業のポートフォリオなどといい、複数の事業をおこなう場合にまとめて呼ぶことがある
投資のポートフォリオとは、投資している商品の一覧のこと
- 投資では、投資している商品の種類や比率のことをポートフォリオという
- 投資では、それぞれリスクとリターンが異なる商品があるため、多様化して、分散して投資することが、大きな損失を出さないために重要だと言われている
分散投資とは
- 値動きの異なる資産を複数に分散しておくことで、一度にすべての資産を失うリスクを回避する
- 「卵を1つのかごに盛るな」といわれることがある
投資が分散する切り口の例
分散の方法は、切り口によってたくさんつくることができる。また、ETF(上場投資信託)は、分散投資されたものを低い手数料で少額からまとめて売買できるため便利
①商品で分散する
株式、債券、為替、金、原油、仮想通貨など
②物理的な地域で分散する
アメリカ、ヨーロッパ、日本、中国など
③通貨を基準に地域を分散する
アメリカドル、ユーロ、円、元など
④売買する時間で分散する
定期的に積み立てて購入(ドルコスト平均法)、利益確定や損失確定を3分の1ずつしていくなど
⑤購入する期間で分散する
期間(短期、中期、長期)、現物と先物、先物期限(1月限、2月限、3月限…)など
⑥リターンを得る方法で分散する
キャピタルゲイン、インカムゲインなど
⑦事業規模で分散する
大企業と中小企業など
⑧販売元で分散する
取引所(ニューヨーク証券取引所、東京証券取引所)、ETF販売会社(バンガード、iシェアーズ、SPDR)など
分散投資の例
・株式と債券を日本と海外で分散する例
日本株式25%、海外株式25%、日本債券25%、海外債権25%
・仮想通貨を買う例
時価総額の高い順に、ビットコイン、イーサリアム、リップルを買う
・金を買う例
現物、金ETF(IAU、GDX)、株式(金採掘企業や金鉱山会社を、中国、アメリカ、オーストラリア、ロシア、カナダなどの地域で)、先物期限、購入タイミングをずらして買う(ドルコスト平均法)
・原油を買う例
原油ETF(WTI、USO)、株式(原油採掘企業を、アメリカ、サウジアラビア、ロシアなどの地域で)、先物期限、購入タイミングをずらして買う(ドルコスト平均法)
どこまで分散するのがよいか?
分散をしつづけると、最も小さな単位は販売単位(単元数)になってしまうが、分散投資のデメリットを許容できる範囲がよいのではないか
分散投資のデメリット
- 管理が煩雑になることがある
- 手数料が余計にかかることがある
ヘッジ取引とは
- ヘッジとは「回避」を意味する英語のHedge
- 企業が商品をあつかう際に、現物の商品の価格が急激に変わらないように、未来に買う権利を先物として売買している
ヘッジ取引の例
・現物価値の下がりそうなものを先物でヘッジする例(売りヘッジ)
現物株が下がりそうだが、先物を売っておくことで、その後に現物株の価値が下がっても、先物を買い戻して損失を和らげる
・現物価値の上がりそうなものを先物でヘッジする例(買いヘッジ)
現物株が上がりそうだが、先物を買っておくことで、その後に現物株の価値が上がっても、先物を売ることで損失を和らげる
・原油のETFであるUSOを買う例
原油のETFを買うものの、原油価格自体が大きく下がる可能性があるため、原油の先物でヘッジしておく
具体的には、投資資産の50%でUSOを買い、残りの50%で原油の先物を売ってヘッジする
現物結果 | 勝敗 | 倍率(イメージ) |
---|---|---|
現物上昇 | 勝 | 2倍 |
現物下落 | 負 | 1/2倍 |
現物結果 | 先物結果 | 勝敗 | 倍率(イメージ) |
---|---|---|---|
現物上昇 | 先物上昇 | 現物:勝、先物:勝 | 2倍 |
先物下落 | 現物:勝、先物:負 | 1倍 | |
現物下落 | 先物上昇 | 現物:負、先物:勝 | 1倍 |
先物下落 | 現物:負、先物:負 | 1/2倍 |
このとき、投資資産の70%でUSOを買い、残りの30%で原油の先物を売ってヘッジしておくなどで、投資する金額の割合を変えることで、リスクを抑えた投資をすることができる
・プラチナを買う例
プラチナを買うものの、金属全体の上下変動のリスクを回避するために、金属として同じ分類に含まれる金を同時に売っておく
プラチナ結果 | 金結果 | 勝敗 | 倍率(イメージ) |
---|---|---|---|
プラチナ上昇 | 金上昇 | プラチナ:勝、金:勝 | 2倍 |
金下落 | プラチナ:勝、金:負 | 1倍 | |
プラチナ下落 | 金上昇 | プラチナ:負、金:勝 | 1倍 |
金下落 | プラチナ:負、金:負 | 1/2倍 |
このとき、たとえばプラチナの価格が上昇した場合で、さらに上昇すると予想するときには、すぐにすべて精算して利益を確定するのではなく、プラチナと金を総額の3分の1分ずつを売り、のこりを保有しておく(時間の分散)、あるいは利益の出ているものを売って確定し、その分の金額で利益の出ていないものを買ってポートフォリオの資産比率を戻す(リバランスする)方法がある
このように、分散投資では大きな利益を上げることができなくなってしまう分、大きな損失を防ぐことが可能となる
なお、分散投資は投資会社が勧誘するときに、自分の取り扱う商品にも投資してもらうために用いる謳い文句でもあるため、何でも分散投資をするのではなく、高い手数料でないかなど、他のリスク面にも注意することが重要