2020年は、新型コロナウイルス感染症の世界的な流行や、米中貿易戦争、アメリカ大統領選挙などといった経済や政治の面でも、世界的なイベントが多数ある年です。
世界の市場にどのような影響があるかが予想できない、リスクの高い相場では、投資の観点では、特定のポートフォリオに偏らずに、分散投資をすることがおすすめです。
今回は、世界的に有名な投資家であるレイ・ダリオ氏の全天候型ポートフォリオを参考に、さらに地政学的なリスクを排除したポートフォリオについて研究したいと思います。
目次
レイ・ダリオ氏は「2022年に勝つ銘柄はわからない」ものの「2022年に勝つポートフォリオはわかる」といった名言を残しているとおり、どのような相場になっても最小限のリスクで最大限のリターンをもたらすポートフォリオを提唱しています。
具体的には、以下のような割合で資産を分散するという方法です。
詳しくは、書籍『世界のエリート投資家は何を考えているのか』をお読みいただくか、下記の読書ノートをご覧ください。
なお、レイ・ダリオ氏のようなヘッジファンドのマネージャーは、たくさんの投資商品にアクセスすることができますが、初心者などの一般的な投資家にとっては、手数料の安いETF(上場投資信託)を用いて、同様のポートフォリオをつくることをおすすめしています。
株式や債券、商品などの市場では、個別の銘柄をいくつか集めた商品として、ETF(上場投資信託)を扱っています。
ETF(上場投資信託)は、商品の種類を増やすことや、商品が対象としている期間や期限の種類を増やすことで、個別の銘柄や個別の時期に発生するリスクを減らしてくれています。また、銘柄の選定を自動的におこなってもらうことで、日々の値動きや銘柄の選定、入れ替えなどに時間をかけないで済むというメリットがあります。さらには、売買単価が低いことで、個別に商品をよりも低額で売り買いがしやすく、流動性が高いという特徴があります。
ただし、ETF(上場投資信託)を購入する際には、①手数料や管理料が高くないか、②構成要素となっている銘柄がなにか(ロジックはどのようになっているか)、③売買の取引量が多いか(流動性が低い場合は売りづらくなるため)を確認しましょう。
ETF(上場投資信託)は、世界の主要な指標とも連動しているため、今回のような全世界型、全天候型のポートフォリオをつくる場合にも取り入れやすいです。
全世界全天候型ポートフォリオでは、地政学的なリスクを避けるために、地域を分散させることをおすすめしています。地域を分散する割合に関しては、世界のGDPのデータをもとに作成します。
今回は、TRADING ECONOMICSに集計されている2019年のデータをもとに割合を計算しました。最新の数字として、毎年IMFが発表しているデータを使用することもできます。
各国のGDPをすべて足し合わせて世界のGDPの合計を計算して、各国の数字で割ることで、各国の世界に占めるGDPの割合を計算します。参考までに、上位10位までの国は以下のようになります。
順位 | 国名 | GDP[億ドル] | 世界に占める割合 |
---|---|---|---|
1 | 米国 | 21,200 | 24.1% |
2 | 中国 | 14,200 | 16.1% |
3 | 日本 | 5,110 | 5.8% |
4 | ドイツ | 4,040 | 4.6% |
5 | イギリス | 2,910 | 3.3% |
6 | フランス | 2,890 | 3.3% |
7 | インド | 2,800 | 3.2% |
8 | イタリア | 2,030 | 2.3% |
9 | ブラジル | 2,020 | 2.3% |
10 | ロシア | 1,750 | 2.0% |
上位10位 | 合計 | 58,950 | 67.0% |
このとき、ポートフォリオの比率については、あまり厳密になりすぎないことがおすすめです。世界の市場は常に変化しつづけますし、おおよそのバランスをとることが重要です。
おおよそ、世界のGDPの比率でみると、先進国は60%、新興国は40%となります。この割合で、レイ・ダリオ氏が提唱している全天候型ポートフォリオを、さらに先進国と新興国に按分します。
レイ・ダリオ氏の提唱するポートフォリオに対して、さらに先進国と新興国の割合で分散させたポートフォリオが全世界全天候型ポートフォリオです。
レイ・ダリオ氏が提唱している全天候型ポートフォリオでは、半年~1年に1度のリバランス(配分調整)をしますが、全世界全天候型ポートフォリオでは、上記表の割合にのっとって、同様に資産をリバランスします。たとえば、先進国の株価が上がってきたらその分を売り、新興国の国債を買い増すなどといった具合いです。
なお、現金については国債に加えています。
前提として、日本に居住して日本で仕事をしている人は、日本に対して偏りがある状態で、日本のリスクに対して影響を受けやすい状態にあるといえます。
全世界全天候型ポートフォリオでは、日本国内で発生するリスクに備えて、あらかじめ日本に対して持っている資産を割り引いてポートフォリオを構築することをおすすめします。
決して日本が危ない国であるといっているわけでも、日本が成長しないといっているわけではありません。世界全体にリスクを分散する場合に、日本のリスクを割り引いて考える必要があるということです。
全世界全天候型ポートフォリオを作る際には、手元で数字を入力しながらリアルタイムで計算ができるように、以下のような計算表を作成するとわかりやすいです。
日本でもっている資産として、年金や不動産、手持ちの現金などがあげられると思います。まずはこれらの資産が、ポートフォリオのどの部分にあるのかを計算します。年金は、年に一度誕生日の月に送られてくる「ねんきん定期便」か、アカウントを発行することで「ねんきんネット」からみることができます。
年金は、JPIPの運用方針によると、2020年4月から5年間の運用は、変動幅があるものの基本的には国内債券25%、外国債券25%、国内株式25%、外国株式25%となっています。
たとえば、公的年金(国民年金+厚生年金)が400万円、確定拠出年金はすべて外国株式インデックスを選択して100万円、現金が500万円となっている場合には、以下のように計算されます。
このとき、商品と新興国の割合が低いため、現金の500万円を以下のように配分します。
フォーマットや計算式は以下をご参考ください。
https://docs.google.com/spreadsheets/d/1Cwq-ow1ZqAKAWipbVH-vG8oWZdZjvTVSglDP5Chi_Q4/
このようにすることで、全天候型であり、かつ全世界型でもあるポートフォリオ、すなわち全世界全天候型ポートフォリオをつくることができます。
この先も、現金が増えるごとに、そのときのバランスをみながらリバランスをして配分していくのがおすすめです。
具体的な商品ETFの探し方や、先進国や新興国の国債のETFの探し方は、以下も参考にしてみてください。