不動産を借りる人を「賃借人」、貸す人を「賃貸人」と呼ぶ
・民法と借地借家法の範囲
不動産の賃貸では民法と借地借家法の双方が適用される
・建物が関係する場合には、借地借家法が適用される ・建築物が関係する場合には、民法の賃貸借が適用される(ゴルフ場や遊園地、資材置き場や平置きの駐車場などのための土地の賃貸) ・民法と借地借家法とで矛盾がある場合には、特別法である借地借家法が優先される |
・賃貸借(民法)
期間を定める場合 | 最長で50年間、中途解約はできない ※50年を超えて定めると50年に短縮される。更新して50年を超えることは可能 |
・契約時の義務
※契約では必ず双方に何かしらの義務が生じる
・目的物の修繕義務
・賃貸人は賃借人に使用・収益させる義務があり、必要に応じて修繕をしなければならない。ただし、賃借人の責めに帰すべき自由があるときは不要 ・賃貸人がおこなう修繕行為を、賃借人は拒むことができない。また急迫の事情がある場合や(雨漏りなど)、賃貸人が相当の期間内に必要な修理をしない場合には、賃借人は自分で修繕できる ・賃貸人の修理により、賃借人が賃借をした目的を達成できなくなった場合には、契約を解除することができる |
・必要費と有益費
賃借人が修繕をおこなった場合は、賃貸人はその費用を支払わなければならない
必要費 | 有益費 | |
内容 | 通常の使用に必要な費用 | 目的物の価値を増加させる費用 |
いつ請求できるか | 支出後、全額を直ちに請求できる | 契約終了時に請求できる ※支出額と価値増加額のどちらかを賃貸人が選択して支払う |
※賃借物の一部が滅失その他の事由により使用および収益することができなくなった場合、その部分の割合に応じて当然に減額される(✕賃借人はその割合の賃料の減額を請求できる)。また、全部が滅失した場合または賃借した目的を達成することができなくなった場合には、賃貸借は当然に終了する
・賃借人の原状回復義務
元の状態に戻して返す(通常使用による損耗や経年劣化などは除く)
・賃貸人の過失で損害が発生した場合
賃貸人は損害賠償請求をおこなうことができる。ただし、賃貸人は賃借人から返還を受けたときから1年以内に請求しなければならない
・賃貸契約の対抗要件(建物)
※建物を二重契約した場合には、民法では先に登記をした方を勝ちとするが、賃貸借では登記まではおこなわないのが通例のため、借地借家法では先に引渡しを受けた(鍵を受け取った)方を勝ちとしている
・賃貸契約の対抗要件(土地)
借地権の登記 | 現実的には困難 |
借地上に建物を建てて登記する | 建物の表題登記、保存登記をすることで借地権が認められる(表題の登記でもよい) ※ただし、妻や子などの他人名義の登記の場合は認められない |
掲示による保全 | 建物登記があった建物が滅失した場合、再築するまでの間は、その土地に一定事項を記載したものを掲示すれば、滅失から2年間は第三者に対抗できる(明認方法) ※掲示は、土地に看板を立てておけば有効となる(もとの建物に登記がない場合には掲示があっても無効となる) ※2年以内に建物を建てた場合には、建物の登記をすることで第三者に対抗できる |
※一筆の土地に借地権をもつ建物が複数ある場合には、そのうちの1棟で登記があれば、土地全体の借地権を主張することができる
・売買契約と賃貸借契約の対抗要件
※物件の所有者が変わった場合には、賃貸人は所有権移転登記をしなければ賃借人に賃料を請求できない
・敷金の承継
賃貸人の変更 | 賃借人の敷金関係は、新賃貸人に引き継がれる |
賃借人の変更 | 賃借人の敷金関係は、新賃借人に引き継がれない |
※賃借人が変更になるときには敷金は引き継がない(旧賃借人に敷金を返した上で、新賃借人から新しい敷金を受け取る)
・賃借権の譲渡と転貸
・賃借権を譲渡・転貸するには事前に賃貸人の承諾が必要 ・無断で転貸を行なうと契約解除される(ただし背信的行為と認めるに足りない特別な事情がある場合は解除できない) ・たとえ無断転貸の場合でも、転借人は通常の転借人と同様の権利を有する(造作買取請求権や建物買取請求権など) |
※転借人も借主のため、借地借家法としては保護をしたいという考え方
・賃貸人と転借人の関係(通常時)
・AはCに賃料請求できる(ただしAB間とBC間の賃料の安い方が上限) ・CはAに修繕の請求ができない(CはBに請求し、BがAに請求する) ・転借人は、賃借人の対抗力ある賃借権を援用して、第三者に対抗することができる |
※AはCに対して賃料を請求することができる。CはAに直接支払いを履行する義務を負うが、Bに前払いをしていることなどで対抗することはできない。また、CはAに対して直接修繕の請求をすることはできない(Bに対してしか修繕の請求などができない)
・賃貸借契約が終了した場合の転借人の効力
※合意解除の場合には、土地の賃貸人(借地権設定者)が建物の転借地権者に賃貸借の終了を通知しなければならない。土地の賃借人(借地権者)から転借地権者に通知をした場合は終了の通知をしたことにならない
※借地上の建物の譲渡は、同時に借地権も譲渡されたものとして扱う。そのため建物の売却時には事前に借地権者の承諾が必要