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27歳でビルオーナーへ。型破りな
パラレルキャリアのモチベーションは
「実体験から学びたい」
働き方改革の流れを受けて、“副業解禁”の機運が高まっている。リクルート住まいカンパニーでは、新卒入社時から会社を起業している社員も珍しくない。しかしながら、2つの会社の起業をして、また都内にてビルオーナーを務める30歳の社員と聞けば、革新的な働き方を是認する会社においてすら、否が応でも目立つ存在である。
その人こそ、現在SUUMOのリフォーム領域で広告や開発のディレクションを本業にする弦本卓也さん。決して“大富豪の御曹司”というわけではない。身一つで、唯一無二のパラレルキャリアを切り拓いてきた。その原動力とは?
25歳で戸建、27歳でビル購入。すべては本業に活かされている
現在入社7年目の弦本さんは大学卒業後、新卒で入社しSUUMOのインターネット広告の企画や集客を手掛ける部署に配属。新築戸建・中古物件流通領域を経て、今はリフォーム領域のネット商品のプロデューサーとして活躍している。仕事内容は、「ネット版のSUUMOを利用するカスタマーのニーズを満たし、価値あるメディアであり続けるように改良すること」。
そして、会社員として働くかたわら、新卒時に起業しており、“社長歴”はリクルート住まいカンパニーの社歴と同じだ。また、25歳のときには、「家の購入を経験するため」に新築一戸建を購入。その後、売却し、神保町駅にほど近い5階建てのビルを一棟丸ごと手に入れた。
「決断が早すぎて、後からどうするか考えます」と笑う弦本さん。起業にしても、ビルの購入にしても、思い立ったら即行動に移してきた。
「リクルートに内定が決まってから、同期にひたすら会いに行ったんです。そしたら100人中30人くらいが起業していて、『負けた!』と思いました。それで、自分もやらねばと。起業家としての軸は『一人ひとりの可能性を活かす選択肢の提供』で主に『専門性を持つ学生や社会人若手を応援』する事業をしています。一戸建やビルの購入については、自分が携わっている住まいと暮らしの領域をより深く理解したいと思ったからです」
副業をする理由は「広く浅くいろいろなことを経験したいから」
25歳で新築一戸建を購入することになったきっかけは、先輩の一言だった。
「入社して2年目に戸建流通領域に配属になり、しばらく不動産会社への営業に同行をさせてもらっていました。家を買う人、売る人の気持ちを聞いて、企画に活かせれば、と思ったんです。でも、さっぱり分からなくて……というか、実感を伴わなかったんですよね。それで、営業同行の帰りに先輩に相談してみたら、『簡単だよ。買えば良いんだよ』と。それもそうだと思って、購入することにしました」
営業同行から2ヵ月後に3500万円の新築一戸建を購入し、友人と共に住むシェアハウスとして活用。翌年には仕事で売却に関するプロジェクトに携わり、売却時の気持ちや仲介会社とのやりとりを実体験するために自宅の売却も行った。それらの経験はしっかりと本業にも活かされたという。
「家を買うときに銀行でローンを組んだのですが、分厚い返済表があって、めくってもめくってもなかなか返済額が減らず、50歳でもまだ1000万円残ってる……と、リアルな現実を感じることができました。この実体験をもとに、戸建住宅の物件紹介ページに不動産仲介会社の口コミを載せるという企画を推進しました。
大きな買い物で不安も大きいだけに、それを任せる人の過去の接客の評価や信頼性が可視化されているといいんじゃないかと考えたんです。僕自身、購入を通して仲介する人の存在の大きさを痛感しましたから。家を探しているときに『この会社にお願いしたい』『この人と一緒に探したい』と思える会社・人に出会うことは、検討の後押しにもなります。また、口コミがのることで、業界自体も良くなっていくと考えています」
自身の売買経験は、完全にプラスに働いたと弦本さん。そのためか、この売買を仲介した不動産会社から「築36年の中古ビル」を勧められると二つ返事で「買います」と伝えたそう。
「27歳のときに、中古ビルが売りに出ていることを教えてもらいました。普通は、27歳にビルの購入は勧めませんよね(笑)。仲介会社さんからしてみると、戸建を購入したあとに活用して売却した面白い若者と思われていたのかもしれません。このビルが面白いなと思ったのは、東京のど真ん中にあるのに、一つのビルで『食』『働』『住』が完結するところ。1階が飲食店、2・3階がオフィス、4・5階が住居として活用できるので、これはユニークだなと。」
契約してから1カ月、新進気鋭のシェアオフィスを巡り、構想を膨らませたという。テナントを見つけなければ、月約60万円の赤字…という危機にも、持ち前の行動力で社内外のネットワークを活かし、なんとビル購入後1週間で全室満室を達成した。現在、2階には「コミュニティ」としての機能を持ち合わせるコワーキング兼イベントスペースが入居し、無人島活用や教育支援、空間デザインなど、さまざまなジャンルで活動をする個人や企業が集結している。
「ワクワク感」に突き動かされる限り、これからも挑戦していく
ここまでの流れから、いかにもトントン拍子にキャリアを積んできたという印象を持たれるかもしれない。しかし、じつはこれらのキャリアを軌道に乗せるまでには、苦労した時期もあったそうだ。
「一番大変だったのは社会人2年目くらいのとき。リクルート住まいカンパニーは最近、特に働きやすいですけれど、当時は終電まで働くことも珍しくなかった。遅くまでリクルートで働いて、夜遅くから自分の会社のアポが入っているような日もしばしば。朝5時半まで企画書を作り、わずかな仮眠をとって出社するという、かなり無茶なことをやっていましたね。それでも、好きでやっていることだし、楽しいから苦ではなかったです。ただし、それは立ち上げ期だからこその話で、今はもうできないと思いますけど(笑)。今は、自分の会社は信頼できるメンバーにある程度任せています」
さまざまな経験を経て視野も広がり、サポートしてくれる人も増えた。それらの武器を携え、これからもチャレンジワーカーとしての姿勢を貫いていくという。
「よく“3年後どうしたい?”と聞かれますが、あまり明確なものはないんです。というのも、その時々で自分がワクワクできていて、目の前の人や世の中のためになっていれば、ジャンルや中身にはこだわらない。リクルートでなければ実現できないこともあるだろうし、自分で実現できることもあると思います。
たとえば、自分が手掛けていることとリクルートがやっていることの『間を埋める』みたいなことができたら楽しいかなと思いますね。最近では住まいカンパニーで『部活動』という取組みが始まり、大家をしている同僚と一緒に大家部を結成しました。会社から一歩踏み出したコミュニティで集まって、個人と会社に何かしら還元していけたらと思っています」