- 経営者や起業家の話を聞いて起業をしてみたいと思ったものの、実際の起業の仕方を知りたい
- 会社の同僚が会社をつくったといっているが、そもそも会社はどのようにつくるのかが知りたい
- 副業や節税で会社設立をするとよいといわれたが、具体的にいくらぐらいの金額がかかるのかが知りたい
などといったきっかけで、起業の仕方について知りたい方が多いのではないでしょうか。
私はこれまで3社目の株式会社の起業をしてきましたが、今後の自分のための忘備録としての記録と、これまで学生さんや若手社会人を中心に起業の仕方を聞かれることが多かったことから、会社設立の手続きをまとめたいと思います。
特に、会社員と並行した副業としてのひとり株式会社の設立では、普段の仕事と並行して様々な手続きをするのは大変で、これまで何もわからずに苦労した経験があったことから、今後負荷を少なくスピーディーに手続きができるように、ノウハウをまとめます。
これから起業する方や、社員を雇いはじめる方の参考になれば幸いです。
なお、住んでいる地域や制度変更などにより、正しい情報が異なる場合がありますので、必ずインターネットや書籍で最新版を探していただくか、起業は司法書士や行政書士、雇用は社労士、税金は税理士などと、それぞれの専門家に相談いただくようにお願いします。
もし内容に誤りがある場合や、気になる点や不明点がある場合には、直接お問い合わせいただくなど、ご指摘いただけたら嬉しいです。
目次
起業に向けてやったこと
会社設立時にやったこと
会社設立では定款の作成などが必要で、個人で作成するか司法書士に依頼する方法などがありますが、今回は会社設立freeeでの起業の仕方を紹介します。
まずは会社設立のサイトにアクセスし、アカウントを作成します。
定款の作成に必要な情報の入力
定款とは、会社の存在を記録した書面のことで、会社を設立した際に作成することが会社法で定められています。定款に登録した情報は、法務局で誰でも取り寄せられるようになりますので、自宅住所を書く場合などには十分に注意しましょう。
会社名、会社の住所、連絡先、設立者の情報を入力していきます。
会社の住所は自宅でも登記することは可能ですが、賃貸で借りている物件の場合には、会社の登記を禁止している場合もありますので、大家さんや管理会社に確認をしましょう。不特定多数の出入りのないオフィス利用であれば、自宅での登記が認められる場合もあります。
連絡先は携帯電話の番号でもよいでしょう。設立者の登録では、名前と役職、出資金額を記入します。出資した金額は資本金となりますが、資本金は金額が多ければ多いほど信頼のある会社といえ、銀行などからの融資も借りやすいといえます。一方で資本金が1,000万円を超える場合には、法人税などの税金が1,000万円未満の場合よりもかかるため注意が必要です。
起業に際しては「1円起業」という言葉がかつて流行ったこともありましたが、資本金は1円からでも会社を起業できるようになりました。しかし、起業に際して必要な出費は少なくとも30万円ほどはかかりますので、起業時の出資金額は30万円以上にしておくことがおすすめです。
定款には「目的」という、事業内容を記載する欄があります。こちらはいくつ記載してもよいものですが、主力となる予定の事業は1番に書いておきましょう。
上場している会社など、一般的な起業でどのような事業内容を記載しているかを参考にするために、「会社名 定款」でインターネットで検索してみることもおすすめです。
このとき、目的として記載した内容のみしか営業できないというわけではなく、最後の1文に「前号に付帯関連する一切の事業」と記載しておくことで、ある程度の幅を持たせることができます。また、定款の目的は事業の変化にあわせて登記後に変更することも可能です。
なお、「食品衛生責任者」や「防火管理者」などの登録が必要な飲食店や、宅地建物取引業の免許の登録が必要な不動産仲介業などの場合には、定款に記載しただけで営業ができるわけではありません。これらは起業後にはじめて行政の許可などをとることで営業ができるようになります。
資本金は、出資者の出資する金額の合計の金額となります。また、1株の価値や発行可能株式総数も自由に決められます。一般的には1株の価値を10,000円、発行可能株式総数を10,000株と記載しておくと、今後株式を誰かに渡す際や売買する際にも計算がしやすいです。なお、株式は目に見える株券で用意するものではなく、概念として電子的に記載して管理するのが一般的です。
株式譲渡の承認者は株主総会とし、ひとり会社の場合には取締役会は設置せず、取締役の任期は10年としておくのがよいでしょう。取締役の任期は2年~10年で選択できますが、任期を向かえると一度退任となり、重任をする場合でも再度株主総会での決議が必要となり、また登記内容の修正も必要になるため、長く自身で経営するつもりがあるのであれば10年としておくのがおすすめです。
決算期は、登記をする月の1日から開始しますが、任意の月の月末を指定することができます。通常は12ヵ月間にしますが、決算を切りよく12月末や3月末にしたい場合などには、第1期の決算のみを短くします。
また、公告は官報に掲載するのが一般的です。
準備する書類と持ち物を確認し、登録の手続きに進みます。
つぎに、定款の認証方法を選びます。電子認証を選択すると、印紙代の4万円が不要となります。通常は印紙代がかかりますので、これだけで4万円の節約となります。
また、会計freeeを契約することで、会社設立freeeの費用が無料となりますので、もし会計をfreeeで行う予定がある場合には、この際にfreeeの契約をしてもよいでしょう。
つぎに、定款の認証手続きをする公証役場を決めます。たとえば千代田区内の場合には複数の公証役場がありますので、自宅や職場から近い公証役場を選びましょう。
これまでに入力した内容をもとに、定款が自動で作成されていますので、ダウンロードして内容を確認します。内容に問題がなければ、このまま申請に進みます。
また、定款の作成で必要書類となる、印鑑証明書と免許証を、PDFや写真でアップロードします。印鑑証明は3ヵ月以内に取得したものが必要になりますが、申請まで時間がかかるため少し余裕を持って事前に取得しておきます。
別途、freeeから来たメールに記載のアンケートフォームに必要情報を入力し、指定の銀行口座へ振り込みをすることで、freeeが指定した行政書士さんに資料作成の手続きをお願いできます。
アンケートフォームでは、現物出資があるか、発起人に未成年や海外在住の外国人・日本人がいるか、実質支配者がだれかを記入します。
実質支配者とは50%を超える出資者がいる場合はその方、そうでない場合には25%を超えて出資している複数名、それでもない場合には代表取締役が該当します。実質支配者が暴力団員等でないこともあわせて記載します。
また、行政書士さんとの直接のメールでは、弦本は公証役場への訪問時間を調整してもらい、担当者の名前をお伝えいただきました。
実際に、書類の手配ができると、つぎはいよいよ公証役場と法務局に手続きに向かいます。
公証役場での定款認証の手続き
持ち物は、
- 定款(行政書士さんからアップロードしてもらった電子署名付きのもの)
- 定款認証手数料として現金52,000円
- 顔写真付きの身分証明書(免許証、パスポートなど)
- 発起人の実印
- 印鑑登録証明書(発行後3ヵ月以内のもの)
- 委任状
でした。
定款と委任状はホッチキスまたは製本テープにて綴じて、各ページのつなぎ目のすべてに捺印をしておく必要があります。
なお、弦本のケースでは新品のCD-Rは公証役場で用意いただけるとのことで、持参は不要でした。
公証役場では、渡した書類を確認してもらい、システムで反社会的勢力ではないかの確認をされ、面談で少し話をした後、定款の謄本として公証人の認証文付きの定款を受け取ります。手続き自体は20分ほどで終わります。
ここでは定款が認証されたのみで、まだ会社は設立できていません。このあと認証された定款を法務局に持っていくことで、会社登記の手続きを経て会社が設立されるのです。
法務局での会社登記
公証役場で定款が認証されたら、つぎは法務局に向かいます。公証役場に行ったその足で法務局に向かうことも可能ですので、事前に出資金の振り込みをしておき、法務局向けの資料も揃えておくとよいでしょう。
出資金は、資本金として記載した金額を入金した証拠として出す必要があります。個人の銀行口座への入金でも可能です。
一度、資本金の金額を自分の銀行口座に入金し、その入金履歴の記録のコピーをとります。通帳の場合には貴重をしその該当の振り込みが分かるように印刷をします。ネットバンクの場合には、サイトにログインし、該当の振り込みが分かるような画面を印刷します。
また、あわせて銀行名、支店名、口座番号、口座名義がわかるように、表紙のページも印刷しておきます。
法務局への提出が必要な書類も会社設立freeeから事前に印刷しておくことができます。
- 登記申請書
- 登録免許税納付用台紙
- 就任承諾書
- 発起人決議書
- 振り込みを称する書類
- OCR用紙
- 印鑑届書
法務局には、公証役場で受け取った定款の謄本と、資本金の入金の分かる銀行通帳のコピー、現金15万円と会社印、発起人の実印を持っていきます。
法務局では、登記の完了までに1週間~2週間ほどの時間がかかります。また、登記が問題なくできた場合には、とくに完了の通知などはされません。おおよその完了の目安を教えてもらえることもありますので、念のため確認しておきましょう。
また、登記が完了すると国税庁の法人番号公表サイトに会社名が掲載されますので、国税庁のサイトから確認するとよいでしょう。
登記が完了すると、晴れて起業は成功です!社長!会社設立おめでとうございます!
会社が設立すると、いよいよ履歴事項全部証明書の発行や、印鑑登録、印鑑登録証明書の発行などの手続きができるようになります。
会社の履歴事項全部証明書や印鑑登録証明書は、税務署での開業届や銀行の口座開設、その他の業務などでも必要となりますので、後日あらためて法務局に出向きます。
会社設立後の履歴事項全部証明書と印鑑登録証明書の取得
登記が無事に完了したら、会社の設立は完了です。つぎに、登記事項証明書の交付申請書で履歴事項全部証明書の発行と、法人の印鑑を登録し印鑑カードの交付を受け、印鑑証明書の発行をおこないます。
法務局では、それぞれ申請書を提出します。
- 登記事項証明書交付申請書
- 印鑑カード交付申請書
- 印鑑証明書交付申請書
の資料に記載をしますが、用紙は法務局にもありますので、そちらで記入しても問題ありません。
なお、法人の登記事項証明書と印鑑証明書は、個人の住民票や印鑑証明書の発行などと同様に、手数料がかかります。また、登録は窓口でおこないますが、発行は窓口以外でも、郵送やインターネットでも申請をすることができますので、今後は直接窓口に出向かなくてもよくなります。
http://www.moj.go.jp/MINJI/minji71.html
履歴事項全部証明書と印鑑証明書を発行したら、その足で税務署や都税事務所、銀行などに手続きに向かうことができます。
管轄の税務署、都道府県税事務所への開業届提出
法人を開業したら、法人税や地方法人税の支払いのために、税務署に開業届を提出します。開業後すぐに書類を提出しない場合には、青色申告による税制優遇などが受けられないどころか、脱税などの問題にも発展する可能性がありますので、速やかに提出するようにしましょう。
税務署では、法人設立届出書、青色申告の承認申請書を提出します。あわせて定款のコピーが必要になる場合がありますので、あらかじめ用意しておきます。
また、役員への報酬や従業員への給与を支払う予定がある場合には、給与支払事務所等の開設届と、源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書も提出しましょう。
それぞれの申請書類は税務署の窓口でも入手することができます。
なお、青色申告の承認申請書は、法人の設立から3ヵ月以内に届け出が出せない場合は1期目は適用外となってしまいます。1期目が赤字になる可能性がある場合には、控除が使えずに税金を安くおさえることができない可能性がありますので、注意しましょう。
地方税の支払いのためには、都道府県税事務所へと向かいます。税務署とどちらから先にいっても問題はありません。
都道府県税事務所では、法人設立届出書を提出します。このとき、定款のコピーと履歴事項全部証明書のコピーもあわせて提出します。
弦本の場合は、千代田都税事務所の窓口で法人設立届出書をもらい記入をしたところ、複写式になっており、神田税務署に提出する用の法人設立届出書も同時に作成することができました。
また、厚生年金保険に加入する場合には、年金事務所での手続きも必要です。
必要書類としては、健康保険・厚生年金保険新規適用届を提出します。あわせて履歴事項全部証明書の原本を持参します。
なお、弦本のケースでは私自身の役員への報酬をなしとしていたことと、創業当時は従業員がいなかったことから、厚生年金保険には加入しないこととなりました。
会社を設立したにもかかわらず年金事務所に申請がない場合には、日本年金機構の事務センターからアンケートが郵送されてきます。その回答が厚生年金保険の対象にならないと判断された場合には、申立書の作成依頼が後日郵送されてきます。
弦本のケースでは、「厚生年金の加入対象者がいないことを確認できる資料の提出を求められましたが、役員報酬は無報酬であり、従業員もいません。源泉所得税の納税もなく、決算一期目を迎えておらず、提出できるものがないことをここに申立てます。」との旨を記載し、日本年金機構の東京広域事務センターに返送をしました。
その他の開業に向けた手続き
他にも、開業後には様々な準備や手続きが必要になります。
新たに従業員の雇用を開始する場合には、こちらも参考にしていただければと思います。
法人が許可業種の場合には、警察や保健所などに届出をする必要があります。また、銀行での法人口座の開設や、ネット銀行への口座開設などです。他も様々、仕事に集中できるように業務の準備が必要になってきます。
また、1期目の決算に向けて、設立時に株主名簿、会社設立時貸借対照表をつくっておくとよいでしょう。
引き続き、従業員を雇用した場合の手続きや、合法的に節税できる方法の紹介、今後の日々の業務のナレッジなどについても発信していこうと思いますので、引き続きよろしくお願いします!