不動産物件を購入する時に、自分の貯蓄で購入するのか、もしくは銀行などの金融機関から融資を受けるのか、そのいずれかを選択して物件購入のための費用を用意しなければいけません。
不動産投資を行う上で、ローンによる融資を受けずに物件を購入できる人はまず、いないでしょう。
不動産投資と金融機関からの融資は、非常に密接に関係しています。
そこで、不動産投資のの返済リスクをできるだけ軽減することを目的に、どのようにローンと付き合っていけばいいのか考えていきましょう。
目次
1.融資を受けずに不動産物件を購入できる人は稀
不動産投資で融資を受ける場合、手数料と金利が発生します。
現金一括払いと比べると、余計な費用が発生するという意味では、融資を受けること自体がリスクです。
しかし、現実には物件購入価格に当たる数千万円を一度に支払えて、なおも不動産の購入を何度も繰り返せるほどの資金力を持つ人はそうはいません。
リスクの面で言ってしまえば、融資なしでの現金払いがベストなのですが、それはあくまで理想論にすぎないのです。
一括現金払いのケースがごく稀であることを考えると、できるだけ安全・確実に融資を受ける方法や返済方法を講じなければいけません。
不動産投資を行うのであれば、物件を購入することを前提に、アパートローンなどの融資を検討しましょう。
現金は不慮の事故や修繕に備えるため、ある程度手元に残しておく必要があります。
2.融資を受けるときに考えるべきリスクとは
まず、不動産投資で融資を受けるときに、どのようなリスクがあるのか知っておきましょう。
・空室による返済リスク
まず想像しやすいのが、空室の発生で毎月のローンの返済が滞る返済リスクです。
返済リスクを減らすには、空室が発生しにくくて賃貸需要のある物件を購入することが一番です。
また、毎月のローン返済額をできる限り減らしておけば、空室が発生したとしても、返済が滞ってしまうことはないでしょう。
最も空室リスクを懸念しなければいけないのは、一部屋しか投資物件を所有していない人です。
物件を一部屋しか持っていない場合、退去が発生して次の入居者が決まるまでの間、収入が0円になってしまいます。
そうすると、ローンの返済を自分の給料や他の投資から得た利益で補填するしかありません。
返済リスクを抑えていくには、複数の物件に分散投資して突然の収入の悪化に備えましょう。
また、ローンの返済期間をできるだけ長く設定すれば、毎月の返済額を抑えることができます。
その分、金利は増えますが、繰り上げ返済などを利用すれば金利分の支出を抑えられます。
投資対象と返済時期、それぞれに分散、もしくは抑制を図ってリスクを軽減しましょう。
・金利上昇リスク
次に考えるべきは金利上昇リスクです。
今、日本は日銀がマイナス金利政策を導入したことにより、かつてないほどの低金利時代に突入しています。
「今は低金利ですから、融資を受けるのに絶好のチャンスですよ」
不動産投資の相談の際、不動産投資会社からそのようなアドバイスを受けることも多いでしょう。
確かに、低金利であることは間違いありませんし、融資を受けても金利返済の負担は少ないです。
しかし、史上空前の低金利時代を生きる中これ以上の金利水準の下落はまず、考えられません。
国の財政状況を考えると、金利の急激な上昇は考えにくいのですが、0.1%金利が上昇するだけでも毎月の返済額が数千円程度違ってきます。
そして、借入金額が多ければ多いほど、大きなダメージを受けてしまいます。
もし固定金利で融資を受けていれば、金利上昇リスクを考慮しなくて済みますが、変動金利に比べると金利は高くなります。
金利上昇によるリスクは、借入額が増えるほど加熱することを念頭に、どの程度まで自分が無理なく返済できるのか把握しておきましょう。
将来的に金利が1%上昇しても問題が生じないだけの返済計画を立てるようにします。
・失業リスク
仮に空室が発生し、不動産で収入が見込めなくなった場合でも、十分な給与収入があればローンの返済を続行できますので、なんとか物件を手放さずに済みます。
それは決して良い状態とは言えませんが、物件をどうしても手放したくないのであれば、給料による返済を余儀なくされることがあるかもしれません。
つまり、本業もしくは他の投資で十分な収入を確保できていれば、ローンの返済リスクそのものを下げられます。
不動産投資を除いた自分の収入が、どれくらい安定しているのか調べてみましょう。
給与収入がある人の場合は、収入がこれから先どの程度伸びていくのか、失業や会社倒産の可能性がどれほどあるのか考慮しておくべきです。
・資産価値下落リスク
もし不動産投資ローンの返済が滞り、数ヶ月の猶予期間を経ても返済の見込みが立たない場合、物件を売却してローンの残債を返済するしかありません。
物件を売却してローンの残債を完済できるのであれば、物件を手放したという話で済みます。
しかし、問題は物件を売却してもローンを完済できない状態。
つまり、オーバーローンと言われる状態に陥ることです。
オーバーローンになってしまうと物件を売却することもできず、カードローンなどを利用してアパートローンの返済を続ける羽目に陥ります。
結果として借金がどんどん増えてしまうこともあるのです。
不動産を購入して急激に資産価値が低下しなければ、オーバーローン状態に陥ることはそうありません。
しかし、相場よりも高い価格で不動産物件を購入してしまった場合には、このリスクに巻き込まれます。
物件を購入する時は、相場よりも高くないのか、そして人口減少などで資産価値が下落する要因がないのかなど、きちんとチェックしましょう。
3.物件の種類により、許容できるリスクは変わってくる
購入する物件によって許容できるリスクの幅は変わってきます。
融資に伴うリスクを説明しましたが、リスクが低い物件とはつまり、空室が発生しにくく、同時に資産価値が下落しにくい物件です。
東京23区内では現在、新築・中古マンションを中心に、不動産物件の値上がりが続いています。
つまり、購入した後でも物件価格が下がるところか、上昇を見せて売却時に収入が得られることもあるのです。
逆にリスクが高い物件といえば、資産価値が下落している地方の物件、そして建物の劣化が激しいアパート物件になるでしょう。
もちろん、そういった物件は価格自体も安く、融資額をあまり増やさずとも購入できることがあります。
逆に都心のマンションは高騰していますので、ローンの借入額自体を増やさなければ購入できないこともあるでしょう。
結局、問題は購入後に自分の手元にいくらお金が残るかという点です。
融資額と家賃収入、そして支出である修繕費などの経費のバランスを取りながら、必ず手元に現金が残る物件で投資していきましょう。
また、家賃は経年で下落することを織り込んだ上で返済計画を立てていきます。
新築マンションの勧誘トークでは、「ローンの完済までは、多少給与からの持ち出しが発生します。
でも、定年退職までに完済できれば、老後の資産形成に役立ちます」と言ってくることがあります。
また、「給与との損益通算で節税に役立つ」と言われることもあります。
しかし、不動産投資は投資である以上、利益を出すことを念頭に置くべきです。
利益なしのローン返済では、負債にしかなりませんし、何のための投資なのかわからなくなります。
利益のない投資を続けていると、他の投資を行うときにも負担になりますし、金融機関から「投資しても成功できない人間だ」と判断され、新たに融資を受けるのも難しくなります。
不動産投資を始めるのであれば、毎月のローンの返済時に必ず、キャッシュフローが発生する物件を購入するように心がけましょう。
4.融資を受けても問題がない人とは
不動産投資で融資を受けても問題がない人とは、収入が多い人、そして不動産投資経験が豊富な人です。
収入が多ければ、いざという場合のローンの返済も他の収入でカバーできますので、十分なリスク対策が取れます。
「そんなに十分な収入があれば、不動産に投資する必要はあまりないのでは?」と、考える人もいるでしょう。
不動産投資経験が豊富な人は、
・物件を売却する手段
・物件を見抜く目
のいずれも確かなものを持っています。
まず、資産価値が低い物件、集客率が悪い物件を購入することがありません。
そして、人脈が豊富ですので物件の売却もスムーズ、すぐに現金を手にします。
入居率を高めるための対策を自分で考え、講じることもできます。
このような人間であれば、融資を受けてもそれほど問題ないと言えます。
5.初心者は自己資金を2割程度は用意したい
結局は資金が多い人、経験豊富な人であれば、融資を受けても問題ないわけです。
反対に言い換えれば、『投資初心者はリスクを許容できるラインを自分でしっかり決め、慎重に融資を受けるべき』だとも言えるでしょう。
では、具体的にどの程度自己資金を用意するべきなのでしょうか。物件価格の2割は欲しいところです。
つまり、2,000万円の物件であれば400万円の頭金を用意し、1,600万円を融資分で賄います。
さらに、不動産物件の購入には、各種の税金や仲介手数料などの諸費用が発生しますので、その分も用意しなくてはいけません。
諸費用が物件価格の5%とすると、頭金と合わせて用意するべき金額は25%程度です。
その上、購入時に物件価格の2割程度の自己資金を用意できれば、金融機関から融資を受けやすくなります。
金融機関側は、融資を受ける人間の実績を評価するため、初心者にはあまり良い条件で融資しません。
これから不動産投資を始める人間が自己資金ゼロだと、金融機関側のリスクがはね上がります。
そこで、できるだけ金利を高く、また返済期間を短く設定することで、融資した資金を早期回収しようとします。
その結果、融資金利は高くなりますし、返済期間も短かいため、毎月の返済金額も多くなってしまいます。
しかし、自己資金をある程度用意できる人間であれば、金融機関も「この人は金の管理がしっかりできる人間だ」と判断し、良い条件で融資するのです。
その目安としての自己資金は物件価格の2割。
可能であれば3割程度用意しておきたいところでしょう。
まとめ
金融機関からどのような条件で融資を受けるのかは、投資の成否に関係する大変重要なポイントです。
2018年に入ってスマートデイズ社、そしてTATERUと、二つの不動産会社で大きな問題が発生しました。
いずれの会社でも過度な投資促進を目的とした、融資審査時の資料改ざんが問題になっています。
どのような改ざんが行われたのでしょうか。
預金額や年収の数字を変え、金融機関の担当者と共謀して本来は受けられない人間の審査を通過させようとしていたのです。
また、融資を受ける際の条件も金利3.8%~4.5%など、一般的なアパートローンよりも高い数字であり、投資家にとって返済負担が非常に大きかったことがわかります。
アパートローンなど、投資用にローンの融資を受ける際には、
・家賃収入が低下しても、きちんと返済できるのか
・経営がうまく行かず、物件を手放した時でもローンを完済できるか
・毎月キャッシュフローが手元にきちんと残るのか
を念頭に置き、希望する融資額を伝えます。
そのためには、初心者であれば物件価格の2割程度の自己資金を用意してから、投資に望むようにしましょう。