アフターデジタル(読書ノート)
- テクノロジーの進化により、モバイルペイメント、IoT、センサーが普及し、オフラインはオンラインに包み込まれていく
- しかし、日本人は特にオンラインを中心にオフラインを活用することを考えがちで、デジタルが完全に浸透した世界をイメージしづらい特性がある
- また、これまではメーカーが強く、顧客接点側が弱い立場だったが、今後は顧客接点側が顧客データを多く持ち、エクスペリエンスの良さに還元することでメーカーが下請けになる構造になってしまう
- そのため、アフターデジタルの世界をイメージし、データ×エクスペリエンスを強化していくべき
- 2018年に経済産業省が発表した「DXレポート」によると、DX化が進まなければ2025年までに12兆円の損失があると伝えられた
- エストニアでは、電子居住権「e-Residency」により電子管理されている。それにより個人の不動産や土地の所有資産、納税履歴、免許などの個人情報が見れる。一方で閲覧したデータも本人がみることができる
- 資産状況がスクリーニングできることから、犯罪の抑止にもなっている
- スウェーデンでは、人の手のひらにマイクロチップを埋め込むことで手の甲で駅の改札の通過やお店での会計などができる
- 中国では食事や医療、タクシーの配車などがすべてアプリ上で注文から支払いまでを完結している
- 中国では決済にアリペイ(Alipay)とウィーチャットペイ(Wechat Pay)が使用されている
- キャッシュレスが普及し、路上生活者の物乞いもQRコード、神社のお賽銭もQRコードが使える
- シェアリング自転車では、QRコードにカメラをかざすことで自伝社のロックを自動で解除し、予約や乗り捨てができる。ユーザーの利用データに基づき再配置の仕組みや自転車自体の乗り心地を改善した会社が生き残っている
- 移動データをもとに自治体での交通量の可視化、移動時の最寄りの飲食店や買い物スポットのレコメンドをしている
- もはやオンライン上の顧客獲得単価が上がってしまったため、実店舗や路上でのオフラインの顧客獲得にシフトしてきている
- アリババグループのアントフィナンシャル社のジーマクレジットでは、支払履歴、サービス利用履歴、友人データをもとに、①個人特性、②支払い能力、③返済履歴、④人脈、⑤素行で350点~950点で信用スコアを可視化している
- 信用スコアが高い場合には、賃貸の敷金、ホテルやレンタカー、海外旅行時のWiFiのデポジットが不要になる、傘や充電器を無料で借りられるなどのサービスが充実している。渡航ビザ発行の期間が短くなる、賃貸で借りやすくなる、個人融資を受けやすくなる、婚活でモテるなどのメリットがある
- 一定以上の信頼スコアの人しか入れない保険や、個人間売買での信頼スコアによる検索の仕組みもある
- 管理社会への批判ではなく、むしろデータを提供することで信頼が上がりメリットが増えていくゲームになっている
- もともと与信管理がされていなかった農村出身者が格差を乗り越えられる仕組みになっている
- 企業側は与信審査の負荷やコストを下げることができる
- 善行を積むと評価される信用スコアができたことで、マナーもよくなったと考えられている
- タクシー配車のDiDi(ディディ)では、配車リクエストへの応答時間、顧客を待たせた時間、速度超過や急ブレーキがないか(スマホのGPSと加速度センサーで把握)
- 安心して素早く目的地に到達できれば高い評価により報酬も上がる制度。スコアが上がると融資なども受けやすくなる
- 性悪説に基づき、顧客の評価を買収することなどができない。実利主義であり評価基準が明確なためサービス提供者側がモチベーションが上がりやすい
- 平安保険(ピンアン)では、従来は保険契約と支払いでしかなかった顧客接点を見直し日常生活に接点を持った。ドクターアプリ、移動、ポイントサイト、住宅(家探しアプリ)、金融
- ドクターアプリでは、従来は評判のいい医者に予約が殺到し予約権の転売などが横行していたところから、自宅でアプリで初期診療を受け、医者単位での予約ができるようになっている
- 移動アプリでは、歩数をポイントに変換できるが1日に1度のログインが必要な仕組みとなっている
- 広告費を削減しブランディング化することができた。また、行動データをもとに最適なタイミングで保険や付随サービスの営業ができるようになった
- 日常生活で楽しく便利に使ってもらいながら高頻度で接点を持つこと、獲得したデータを顧客価値に還元することが重要
- 大量集客、大量販売の時代から、寄り添い型
- リアルが常にデジタル化され、デジタルに包み込まれることで、リアルの場は価値のある場になる
- リアルよりもSNSの方が好きな人とつながり自分らしく過ごせるともいわれている
- リアルは体験価値や感情価値の提供の場となっている。店舗もブランドを体験できる旗艦店となっている
- 口頭でフードデリバリーを使うことや、冷蔵庫の中の牛乳が減ったら注文しておいてと依頼することは、オンラインでもなくオフラインでもないそれぞれが融合されたOMO(Online-Merge -Offline)の世界
- 顧客は水を買うのに、オンラインのECサイトで買うかオフラインの自動販売機で買うかはどちらでもよくそのときに最も都合の良いもので買いたい。企業も同様にデータが取れるため、どちらのサービスを利用してもらってもよいため、よりよい顧客接点をつくるためにオンライン企業も実店舗展開をしている
- オンラインかオフラインかに関わらず、高頻度低価格で接点をもち、得たデータを元に顧客に対してUXを高速で磨き込んでいく
- 対面でのコンサルを受けたければ店舗へ、オンラインで気軽に話したければウェブでおこなえる。店舗に来店した際には、すぐに顔認証をおこないオンライン上のデータとひもづけて接客ができる
- アリババグループが運営するフーマー(実店舗)では、店舗の3km圏内であれば30分以内に配達できる
- 出店計画を立てる時点でアリババのオンラインでのデータに基づいているため勝算がある
- スターバックスはスタンド型のこだわりコーヒー店×フードデリバリーに負けつつある
- ラッキンコーヒーは、店舗側はQRコード受け取り可能、デリバリーでも同様のオペレーションで簡易化されている
- 上海の無人コンビニのJian24では、リアル店舗での購買行動を録画して顧客の行動動線や悩むタイミング、ポップの閲覧状況などを解析しPDCAをまわしている
- 企業の論理を顧客に押し付けず、顧客視点で本来あるべきサービスを提供するべき
- 無人レジは、支払いやお釣りなどの不要なコミュニケーションをなくし、人間本来の会話にシフトさせている
- 動画教育のカーン・アカデミーでは、動画はYouTubeで公開し、教材や教え方のレクチャーはサイトで無料で公開している
- 従来の授業はディスカッションや相互学習の時間となる
- より感動価値を提供するために、京東(ジンドン)では、タワーマンションでのフードデリバリーの帰りにゴミ出しをしてあげたりしている
- 日本は遊び情熱を傾ける熱意(オタク)と温かみが強み
- 決済プラットフォーマーが上位、その下に各業界のサービサー、そのさらに下にメーカーという産業構造に変わりつつある
- バリューチェーンで製品から単体で接点を持つのではなく、バリュージャーニーで顧客とのリレーションを長期にわたり持つことが大事
- 事業モデルから考え直すドラスティックな意識変革も大事だが、個人に寄り添い、どのような人がどのようなシチュエーションで困っているかを具体的に把握し小さく改善していくことの積み重ねからはじめられる
- 体験の連続性(既存の事業ドメインからの延長)、行動観察(顧客が言っていることだけでなくその背景や実際の言動を見る)、デザインシンキング(プロトタイプをつかった試行錯誤のPDCA)
- データをとることで単なるクロスセルやアップセルをしたり、レピュテーションリスクを考えたりすることではなく、得たものをいかに顧客のために活用するかが大事
- 直接的な売上ではなく、長期的な顧客価値に還元することが大事
- 中国のNIO(ニオ)は車のメーカーだが、鍵を渡してからがサービスと位置づけている。充電、メンテナンス、ラウンジ、ECを提供している
- NIUは電動バイクのメーカーだが、蓄電池にGPSを付けることで盗難を防止している
- Ziroomズールーは、賃貸仲介のサービスだが、物件探し、生活サービス(管理費を払うことでサービスアパートメント化できる)、旅行(Airbnbのように貸し出せる)、コミュニティを提供している
- 健康アプリで健康食販売、料理動画アプリでミールキット販売など、サービスのEC化が進んでいる
- 衆安保険では、飛行機の遅延や気温の高温さ、ECでの不良品返品発生などで保険が降りるサービス。日々の血糖値で糖尿病の保険料がダイナミックプライシングされるサービスもあるが、保険のOEMとして他社にサービス提供をおこなっている
- ブランドとして顧客に何を提供するか、価値を再定義することが大事
- データは単体ではマネタイズできない。ソリューションに結びつけて換金化できる。どのような価値を提供するかからデータ設計することが大事
- 日本でもこれまでの単発の切り口ではなく、連続的に決済や移動履歴などのデータがリアルタイムで可視化されることで、そのデータを使い、活用された社会システムがアップデートされるはず