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週刊ビル経営に掲載していただきました!(その14)

※2019年9月16日に発行の週刊ビル経営第1117号にて、「これからの投資と経営を見据える不動産オーナー座談会」と題して、弦本が参加した座談会の様子が記事になりました。今回は、弦本がコメントした部分のみ、抜粋して共有します。

司会 まずは自己紹介もかねてお願いします。

弦本 普段は住宅情報メディアで働いていまして、新卒で入社して8年半になります。6年半ほど商品の企画を行っていまして、ここ2年間は人事として組織づくりをしています。不動産系のメディアに入ったことによって、社会人2年目のときに自分も経験をしたくなって戸建てを買うことになりました。その翌年に今度は売却を担当することになりましたので、自分でも売ることを体験しました。そのときの仲介会社さんから、そのまた翌年に「ビルを買いませんか」という誘いがありました。神保町にあったビルを購入しまして、「弦本ビル」として現在5年目を迎えています。このビルは5階建てで1階が飲食店、2~3階がオフィスとなっています。2階でコワーキングスペースを行っています。購入した当時、私は27歳でビルを「20代のたまり場」みたいな場所にできないかなと考えていました。友人を集めて、正社員をやりながら、その場所で副業を行えるという空間です。3階は個室オフィスとなっていまして、4、5階がシェアハウスとなっています。1棟のビルのなかで働いて、住んで、食事するという職住食の機能を整えています。「食べる・住む・働く」をコンセプトに、20代の学生や社会人が集まる場所となっています。この物件が主なものとなります。

司会 弦本さんは「市況を流されず」という考え方とも聞いていますが。

弦本 個人で売る場合には結構個別の事情が絡んできます。「早く売りたい」などの要望があると、バーゲンになるので、そこは狙い目かなと思います。

司会 ビルを買われたのは2015年3月、今のバブルが始まる前で時期としては非常に良い時期でした。

弦本 それでも売れ残りのビルでした。仲介会社さんの話ではレインズに小さい画像が貼ってあったのみだったようです。ビル経営という点から考えても1階に飲食テナントが入るのみでしたので、厳しいだろうなということは想像がつきました。ただ仕事として不動産に関わるなかで、不動産売買を自分でも体験してよりよい企画作りに生かそうと考えていました。実は戸建てを買ったときも、全国から就活生を集めて「就活シェアハウス」を行っていました。そこで月40万円の売上をあげて、運用した上で売りました。ビルはもともと前オーナーがご高齢になって、娘さんと一緒に地方で住みたいという話になって、売りに出していたとのことでした。どうやら1年ほど売りに出していたようです。オーナー、娘さん、お孫さんの3世代がそこに住んでいて、昔はオーナー自ら飲食店を1階でやっていたらしいのですが、別の方に貸されました。2階から5階までは親族の方4人で暮らしていて、売却すれば退去されるというのが買う前の状況でした。

司会 もともと2階以上は住居だったのですか。

弦本 4、5階が住居で、2、3階は本来は住居ではないのですが住居として使用されていたということですね。

司会 実際現地を見られたときの印象はいかがでしたか。

弦本 一言で「わくわく」しました。老朽化が進んでいるビルでしたが、色々な使い方ができるし、仲間を集めて住むこともできると直感的に思いました。「この物件は活用したら面白いな」と思ったのが当時の率直な印象です。ただ実際に購入してからローンや支払いの地代を払うと、早晩資金繰りに行き詰まることは目に見えていました。そこで友達に声をかけて、その友達のつてを辿っていくことで1カ月ほどで満室にすることができました。

司会 ちなみに1年前ほどに水道橋でビルを買われようとして、実際にはやめています。このへんの経緯について教えてください。

弦本 1棟目が東京とローカルをつなぐような場所になっているので、2棟目は東京とグローバルをつなぐ場所にしたいなと考えていました。2棟は歩いて15分ほどの距離でしたので、ローカルとグローバルを繋げられたら面白いなと思いました。結論としては買おうと検討していたビルで法律的にグレーな形で民泊を行っていたようで、それがネックとなり買いませんでした。

司会 先ほどシェアハウス問題や金融機関側の問題が話として出ましたが、これらの問題は皆さんの投資に影響をもたらしましたでしょうか。

弦本 周りの方の話を聞いていますと、今は買わないでキャッシュを貯めるという方が多いように思います。株式投資の方も相場が下落するのを待っている方が多いようです。私はビルを購入した際に全額ローンをつけましたが、これが今月で完済となります。約4年半の期間でした。2%台の金利でお借りしましたが、毎回繰越返済を行ってきたことが早期の返済につながりました。直近で居住用に物件を買いましたが、そちらも業者が買おうとしたが買うことができずに回ってきた物件だったと聞いています。確かにこの市況のなかで「掘り出し物」が出始めているな、という印象があります。ビルの話では、これは「売却」の話になりますが、2~3年前に「弦本ビル」を購入したいという話が持ちかけられました。そのときの価格が1億2500万円でしたので、その時に売る選択肢もありだったかなとも思う時があります。(笑)

司会 次に弦本さんにお聞きします。「弦本ビル」が買った当初、空室が多いなかで再生のひとつのきっかけとなったのは2階のコワーキングスペース「TOKYO PRODUCERS HOUSE」だと思いますが、これを含めて再生のところについて詳しくお話をお聞かせください。

弦本 私はもともと今の会社に入ったときに、同期が100人いました。私自身人が好きだったので、内定者の時に同期に会っていったら、そのなかの30人が起業しているというような状況でした。数人は初任給よりも稼いでいるのですが、「大企業の組織マネジメントのあり方を学びたいから入社する」というような人もいるほどでした。そのような人には1年でそれを学んで、社内で新人賞をとって既に退職した人もいます。そういう人たちと会って衝撃を受けました。それをきっかけに私も学生時代に起業をしましたが、何をしていいかわかりませんでした。それで起業している30人に会いに行って「何をしたらいいか」と相談したら「イベントをやってみるといいのでは」というアドバイスを多くもらいました。なので最初イベントをやることにしました。私自身が教育的な考え方をする傾向がありまして、頑張っている人たちを応援するようなものを作りたいという思いがありました。そこでダンサーの卵たちを集めてダンスのイベントを開催したり、音大生を集めて発表会を行ったりしました。そういう活動をしているなかで、能力の高い地方の学生さんがなかなか東京で仕事を見つけられないという課題があることを知る機会がありました。選択肢がないことは問題かなと思いまして、彼らに対するお手伝いを行うようになりました。その一環として購入した戸建をシェアハウスとして、就活生には無料で貸し出して企業からの広告で運営費を賄うといった仕組みをつくりました。こういうプロデューサー的なことをしていたのですが、ビルを購入した際に考えたのは「今度はプロデューサーになりたい人たちを育てたい」ということでした。結果的に、初期のメンバーに恵まれ、「TOKYO PRODUCERS HOUSE」ができました。現在は「転職を支援したい」、「無人島旅行を企画したい」、「酒蔵を開発したい」というような人たちが集まり、プロデューサーがたくさん輩出できるような場所になりました。

司会 その集め方はどういう方法だったのですか。

弦本 SNSが中心でした。様々に発信していると「興味がある」という方は非常に多くいました。ビルを買って1~2カ月で売却を検討しなければならないような状況でしたので、実際に会いに行って100くらいの人と話をしました。アイデア自体には興味を持っていただけるのですが、借りるとなると躊躇されてしまうこともしばしばでした。それで「借りてくれそうな人いませんか」と紹介をしてもらって、また会いに行ってを繰り返していきました。紹介の紹介の紹介と、つてを辿って、5人目の人にやっと「借ります」と言ってもらえました。入居者の多くは当時社会人3年目くらいで、業務内容などもある程度わかってしまいルーティーンな日常に飽きが芽生えていた頃の人たちです。昔学生団体を行っていて楽しかったことや、社会人経験を積んで「自分でも何かできるんじゃないか」と思い始めたことなどが重なったようです。その人たちのつてもビル経営を成り立たせる上で大きく貢献しました。このような経緯がありますので、ビルのDIYもみんなでやったり、退去するとしても友達を呼んですぐに入居するということも起きています。世代なのかはわかりませんが、周りには仕事をしながら地元にも貢献したいという方が多くいます。ビル内にも同じ出身者同士で地元を盛り上げるイベントを開いている人もいます。

司会 弦本さんが「不動産投資家」かというと、恐らくそうではない。では「コミュニティをつくる人」なのかと思うと、いやちゃんと不動産で収益をしっかりと出されています。ここで私は迷っているのですが、弦本さんは自身をどのように規定されていますか。

弦本 確かに「不動産投資家」とは思っていません。拠点をつくるための手段のひとつとして、不動産があったということだと思います。実は去年、北海道の夕張に行って廃校となった小学校を買おうとしたことがありました。1500万円で売られていて、最終的に500万円で売るという話になりました。その物件は実際には売り止めになってしまいましたが、このように物件はあくまできっかけですね。不動産という点では、みんなで楽しむことのできる面白い場所があれば積極的に買っていきたいなと考えています。ただ建物自体は私の責任で、と考えています。みんなでお金を出し合ってというのはそれぞれリスクを負うことになると考えています。ゆくゆくは大きめのビルを買って、個人や地域のいろんな悩みを持ってくると解決できるような場所にしていきたいなという夢もあります。今のビルでは入居者の事業が成長すると、広さが足りずに巣立っていってしまいます。そういう場合でも一緒に発展していける場所があればいいなと考えています。

司会 最後にこの座談会の感想、あるいは何か一言あればお願いします。

弦本 今回の話とも関連したところで、1月に翔泳社さんから『超ど素人がはじめる不動産投資』という書籍を刊行いたしました。不動産投資の教科書のような本ですが、シェアハウスや民泊、コンセプトビルなどの不動産活用についても書いていますので、ぜひこちらでご紹介できればと思います。

司会 本日はありがとうございました。

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ABOUT US
弦本 卓也
1987年、埼玉県生まれ。大学卒業後、大手広告会社「リクルート」にて不動産メディア「スーモ」(SUUMO)の運営に従事。新卒で入社して、スーモのメディアづくりを7年、その後にエンジニア組織の組織づくりを4年行う。 また、リクルート社内の部活動制度にて「大家部」を立ち上げ部長を務める。不動産投資に関する情報交換や物件見学のワークショップなどを行う。 入社2年目に新築一戸建ての広告を取り扱う部署に異動したことをきっかけに、「いい企画を作るためには、まずは自分で経験したい」という想いから個人で新築一戸建てを購入。その翌年には売却分野を担当したことをきっかけに売却も経験。マンションの売買なども行い、11年間で11回の引っ越しを経験。 「新しい住まいや暮らしを自ら探究したい」という気持ちで購入した東京都千代田区の神保町の中古ビル「弦本ビル」は、コワーキングスペース、シェアオフィス、シェアハウス、飲食店が入居する複合ビルとなっており、20代を中心とした若手社会人や学生のやりたいことを実現する場所として注目を集めている。3年間で延べ1万人以上の来場者を記録し、家賃年収1,400万円を達成しながら満室経営を続けている。 お金面とビジョン面の両立を大切にしており、モットーは「一人ひとりの可能性をもっと世の中に」。会社員を続ける傍ら、学生時代に起業した会社とあわせて株式会社を3社創業。うち1社は売却し現在は2社を経営している。他にもエンジェル投資家として若手実業家の支援を手がける一面も。 日経新聞や不動産業界紙、書籍や雑誌、テレビなどでも多数の注目を集めておりセミナー講師なども行う。宅地建物取引士を保有。