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不動産売却における25の必要書類とは?取得方法や紛失時の対応も解説!

不動産を売却するにあたり、「売却するためにどのような書類を準備しておけばよいのだろう?」と考えている方も多いはずです。

売却する不動産が区分所有マンション、一戸建て、土地、賃貸アパートや賃貸マンションなどの収益用物件によって、それぞれ用意する書類が異なります。

また、物件の種類のみならず、売主であるあなたの状況によっても必要書類は変わってくるのです。

いずれにしても、不動産売却においては契約締結前や決済・引渡し前までに、数多くの書類が必要になるため、事前に確認して準備しておくことが大切です。

中には、紛失しているものがあるかもしれませんが、そうした場合でも慌てることがないように対応を紹介しますので、ぜひこの記事を参考にしてください!

目次

不動産売却における必要書類一覧表

不動産売却における必要書類は上の方の通りですが、各書類についての概要と取得方法、紛失した場合の対応などについて解説していきます。

登記済証または登記識別情報

登記済証・登記識別情報について

「登記済証」や「登記識別情報」とは俗にいう権利証のことを指し、登記が完了した時に登記所より登記名義人に対して発行される書面です。

盗難・紛失・破損などの事態が生じても、再発行を受けることはできません。

登記済証や登記識別情報は、融資を受けて抵当権を設定する場合や、売却して所有権が移転する場合に必要となります。

<登記済証の事例>

登記済証は、平成17年の不動産登記法改正により、登記識別情報に切り替わりました。

平成17年から平成21年までは移行期であったため、登記済証と登記識別情報が混在していますが、平成21年7月からは登記識別情報に一本化されています。

<登記識別情報の事例>

引用元:法務省HP 登記識別情報通知書の様式の変更等について より

登記済証と登記識別情報は、いずれも登記名義人が所持する書面であり、それを所持している人が登記名義人であることを公的に証明する書面となります。

登記済証と登記識別情報の違い

登記済証と登記識別情報の違いは、前者が発行された書面である紙自体が権利証であるのに対し、後者は紙で発行されますがアルファベットと数字で表された12桁のパスワード(QRコードもあり)が権利証となります(上記事例の赤枠部分)。

どちらも、売買契約時や決済・引渡し時に必ず必要な書類となりますので、あらかじめ所在を確認して準備しておきましょう。

登記済証・登記識別情報を紛失した場合

万一、登記済証や登記識別情報を紛失した場合には、司法書士などの有資格者が所有者の本人確認をすることによって、手続きすることができます。

その場合、司法書士などが「本人確認情報」を作成して登記申請書類とともに法務局へ提出しますが、作成費用として5~10万程度の費用がかかることが一般的です。

余計なコストをかけないためにも、登記済証や登記識別情報はきちんと保管しておきましょう。

実印及び印鑑証明書

実印・印鑑証明書とは?

自分だけの印鑑を印鑑登録した場合、その登録された印鑑が本物であることを自治体が証明するのが「印鑑証明書」です。

登録した印鑑が「実印」ということになります。

不動産を売却する場合、決済・引渡し時に所有権移転登記を行いますが、その不動産の所有者本人であることを確認するために実印と印鑑証明書が必要となります。

共有者がいる場合には、共有者全員の実印と印鑑証明書が必要ですので注意しましょう。

印鑑証明書の有効期限

相続による不動産売却の場合など、共有者が遠方に住んでおり印鑑証明書を揃えるために時間を要するケースもあります。

決済・引渡しに支障がないように早めに準備することが大切です。

ただし、印鑑証明書の有効期限は発行から3ヶ月ですので注意が必要です。

印鑑証明書の取得方法

印鑑証明書は、印鑑登録カードを利用して住民登録をしている市区町村役場や出張所などで取得することができますが、自治体によってはコンビニエンスストアなどでも取得できますので確認してみましょう。

本人確認書類

本人確認書類は顔写真付きの証明書が原則

「本人確認書類」は、不動産の所有者(売主)本人であることを証明するために必要となります。

共有者がいる場合には、共有者全員の本人確認書類(コピー可)が必要ですので注意しましょう。

本人確認書類として有効なものは以下の通りです。

・運転免許証
・パスポート
・住民基本台帳カード(住基カード)

原則、上記のような公的機関が発行した顔写真付きの証明書が必要となります。

顔写真付きの証明書がない場合

顔写真付きの本人確認書類を所持していない場合は、健康保険証+年金手帳など2号書類と呼ばれるものを2点提示することが必要です。

主な2号書類は以下の通りです。

・国民健康保険の被保険者証
・健康保険の被保険者証
・後期高齢者医療の被保険者証
・(国家・地方)公務員共済組合の組合証
・年金手帳
・母子健康手帳 など

住民票または戸籍の附票

住民票と戸籍の附票が必要なケース

現住所と登記上の住所が相違している場合、住所変更登記をしなければならないため、「住民票」が必要となります。

万一、何ヶ所か住所を変更していて、住民票だけでは住所履歴が確認できない場合は、「戸籍の附票」が必要となります。

住民票・戸籍の附票の取得方法

それぞれの取得方法ですが、住民票は住民登録している市区町村役場や出張所などで取得しますが、戸籍の附票は本籍地の市区町村役場で取得しますので注意しましょう。

また、住民票の有効期限は発行から3ヶ月ですが、戸籍の附票は特に有効期限はありません。

確定測量図及び境界確認書

「確定測量図」及び「境界確認書」は、売却する不動産が土地や一戸建て、収益用の賃貸アパート・賃貸マンションなどの場合に必要となる書類です。

確定測量図について

「確定測量図」とは、隣接するすべての土地(国や自治体などが所有する官有地及び民間が所有する民有地)について、各土地所有者立会いのもと境界を確認して境界標を設置し、それに基づいて土地の寸法や面積を確定させた図面のことをいいます。

<確定測量図の事例>

手元に確定測量図がない場合や境界が曖昧な場合には、確定測量を行って境界を確定したうえで、買主へ引渡すことが必要です。

境界確認書について

隣地土地所有者と境界を確認した時に、両者の境界に関する合意の証明として「境界確認書」を取り交わします。

<境界確認書の事例>

確定測量図及び境界確認書を取得する際の注意点

確定測量図及び境界確認書を取得する際の注意点は、境界を確定させるためには隣地土地所有者が現地で立会う必要があるため、隣地土地所有者の協力が得られなければ境界を確定させることができないことです。

そのために、日頃から隣人関係を構築しておきましょう。

また、隣接する土地が道路などの官有地などの場合、役所の担当部署の協力が必要となるため、数ヶ月単位の時間を要することがありますので注意しましょう。

確定測量図及び境界確認書を取得すれば、買主が購入後に隣地土地所有者とトラブルになることがないため、必ず取得しておきましょう。

確定測量図及び境界確認書を取得方法

確定測量には測量機器が必要であり、自分では対応することは難しいため、土地家屋調査士に依頼することが一般的です。

気になる費用ですが、一般的な住宅(隣地土地所有者が3~4名・土地面積150平方メートル程度)の場合、30~40万円程度が目安です。

ただし、土地面積の大きさ、境界の数、隣地土地所有者の数、隣地所有者の所在が遠方などに要素によっては、費用が変動することがありますので注意しましょう。

越境に関する覚書

確定測量図及び境界確認書を作成する際には、同時に「越境に関する覚書」も取得しておきます。

越境に関する覚書について

「越境に関する覚書」とは、境界線から建物の軒や庇、雨樋などが越境している場合に、隣地所有者と建物の一部が越境していることについての覚書を締結します。

隣地から自分の土地に越境している場合もありますが、逆に自分の土地から隣地に越境していることもあります。

いずれの場合も、

・越境部分を取り壊すなどして、越境状態を解消する
・越境部分を認めて、将来再建築する場合には越境しないこととする

のいずれかの内容で覚書を締結します。

<越境の覚書の事例>

上の事例では、ブロック塀の基礎部分が地中で越境しており、ブロック塀等の建替をする際には越境しないようにする、という内容となっています。

確認済証

建築確認申請と確認済証について

建物を建築する際には、建物の設計等の建築計画が建築基準法の規定に適合しているかどうか、建築主事(指定確認検査機関を含む)によって確認を受けなければなりません。

この申請を「建築確認申請」といいます。

建築確認申請を行い、建築主事(指定確認検査機関を含む)により建築計画が適法であると確認された場合に「確認済証」が交付されます。

確認済証は、「建築確認済証」や「建築確認通知書」ともいわれます。

この確認済証が交付されないと、建築工事の着工はできません。

売却する不動産が一戸建てや収益用の賃貸アパート・賃貸マンションなど、売主名義の一棟建物がある場合には、建築確認申請が適法である証明として確認済証を買主に引渡します。

<確認済証の事例>

上の事例の赤枠部分に、確認済証番号と交付日が記載されています。

確認済証を紛失した場合

万一、確認済証を紛失した場合は、確認済証の交付を受けたことを証明する「台帳記載事項証明書」(自治体によって呼び名は異なる)を市区町村役場で取得しましょう。

台帳記載事項証明書には、確認済証の交付記録が記載されています。

検査済証

検査済証について

確認済証が交付されて建築を行い、建築工事が完了した時点で、建築主は建築確認申請された図面通りに建築されているかどうかのチェックを受けなければなりません。

このチェックを「完了検査」といい、完了検査に合格した場合に「検査済証」が交付されます。

検査済証の交付を受けるまでは、その建物を使用することはできません。

売却する不動産が一戸建てや収益用の賃貸アパート・賃貸マンションなど、売主名義の一棟建物がある場合には、その建物が適法に建てられていることの証明として検査済証を買主に引渡します。

<検査済証の事例>

上の事例の赤枠部分に、検査済証番号と交付日が記載されています。

検査済証を紛失した場合

万一、検査済証を紛失した場合は、確認済証と同様に「台帳記載事項証明書」(自治体によって呼び名は異なる)を市区町村役場で取得すれば、検査済証の交付記録が記載されています。

建築設計図書や工事記録書等

建築設計図書や工事記録書等について

「建築設計図書」や「工事記録書」は、どのように設計や工事が行われたのかという貴重な情報であり、物件の維持管理やメンテナンス、将来的なリフォームや建替において、非常に有効な資料となります。

特に、売却する不動産が賃貸アパートや賃貸マンションなどの収益用物件の場合、これらの資料を提出すれば買主の信頼度がアップすることでしょう。

建築設計図書や工事記録書等を紛失した場合

手元になければ、建物の施工会社や設計事務所でコピーをもらえる可能性もありますので、確認してみましょう。

付帯設備取扱説明書及び保証書

システムキッチンやトイレ、ユニットバスなどの住宅設備の「取扱説明書」や「保証書」を、買主へ引渡しましょう。

万一、紛失している場合は、メーカーと型番を確認のうえ各メーカーのホームページに情報がないか確認してみるか、各メーカーのサポートセンターへ相談してみましょう。

固定資産税納税通知書

固定資産税納税通知書について

不動産を売却する場合、決済・引渡し日を以って固定資産税や都市計画税を日割りで清算します。

固定資産税はその年の1月1日現在の所有者に課税されるため、日割り精算の負担割合は、決済・引渡し日の前日までが売主負担、決済・引渡し日以降は買主負担となることが一般的です。

その日割り精算を行うために、固定資産税納税通知書が必要となります。

<固定資産税納税通知書の事例>

固定資産税納税通知書の取得方法

固定資産税納税通知書は、自動振替で納税している場合でも支払義務者のもとに毎年5月頃郵送されていますので、確認してみましょう。

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固定資産評価証明書

固定資産評価証明書について

「固定資産評価証明書」は、所有権移転登記にかかる登録免許税を算定するために必要となります。

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土地・建物のそれぞれを取得し、複数の土地や建物があればそれらすべての土地や建物の評価証明書を取得しなければなりません。

<固定資産評価証明書の事例>

固定資産評価証明書の取得方法

固定資産評価証明書は物件所在地を管轄する市区町村役場や東京都の場合は各都税事務所で取得することができます。

原則、所有者本人が取得する必要がありますが、委任状により代理人が取得することも可能です。

実務的には、委任状を発行して売却を依頼した不動産会社が取得することが多いです。

管理規約・使用細則等

売却する不動産が、区分所有マンションの場合に必要な書類です。

管理規約・使用細則について

マンションが維持管理されていくためのルールについては「管理規約」にて、ペット飼育や楽器演奏などの実際に住んだ場合のルールについては「使用細則」にて確認することができます。

いずれも、買主にとってはその物件に入居するにあたり、守るべきルールが記載された重要な情報ですので、売買契約締結前に開示できるよう準備しておきましょう。

管理規約・使用細則を紛失した場合

万一、これらが手元になければ、管理会社に連絡すれば発行してもらえますが、費用が発生する場合がありますので注意しましょう。

管理組合総会議事録・長期修繕計画書

管理規約・使用細則等と一緒に、直近の「管理組合総会議事録」と「長期修繕計画書」を用意しておきましょう。

総会議事録について

管理組合の運営上、総会は管理組合の最高意思決定機関という位置づけであり、定期総会は年に1度開催され、議決事項はすべての組合員や関係者(賃借人や同居人など)に効力が及びます。

「総会議事録」には、総会議事の経過やその結果が記録されているため、非常に重要な記録といえます。

注意したいのは、総会前に区分所有者に配布される議案書に記載されている内容は、議事録には記載されないことが多いため、議案書とセットで開示すればよりよいでしょう。

長期修繕計画書について

また、「長期修繕計画書」とは、建物の価値や機能を維持するために行うべき維持管理及び修繕工事について、長期的かつ計画的に作成されたものです。

マンションは長期修繕計画に沿って適切な維持管理・修繕が行われていくため、買主にとっても長期修繕計画書は非常に重要な書類といえます。

総会議事録・長期修繕計画書を紛失した場合

万一、総会議事録や長期修繕計画書を紛失した場合には、管理会社にコピーがもらえるか確認してみましょう。

維持費等関連書類

維持費等関連書類について

区分所有マンションの維持管理費用には、管理費・修繕積立金、組合費、町内会費、インターネット接続料などのランニングコストがあります。

買主にとっても、入居後に負担するべき費用となり重要な情報であるため、これらの「維持管理等関連書類」を売買契約締結前に開示できるよう準備しておきましょう。

また、決済・引渡し時に管理費・修繕積立金を日割り精算する場合の計算根拠ともなります。

売却する不動産が、賃貸アパートや賃貸マンションなどの収益用物件の場合も、共用部分の電気代や水道代、インターネット接続費などのランニングコストが発生しているはずですので、そうした維持費関連書類を開示しましょう。

維持費等関連書類を紛失した場合

万一、紛失した場合には、管理会社に確認して管理費・修繕積立金等の金額を証明できる代わりの書類を発行してもらうか、銀行口座の引き落とし履歴などを開示できるように準備しておく必要があります。

購入時の売買契約書

購入時の売買契約書の必要性について

売却する不動産を購入した時に締結した「購入時の売買契約書」を用意しておきましょう。

物件の状況や特約事項など、今回の売却にあたって確認するべき情報が得られる場合があります。

また、売却する不動産の購入価格は譲渡所得を計算する際の取得費に当たるため、購入時の売買契約書は取得費の証明となります。

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購入時の購入価格が証明できないと、取得費は売却価格の5%という非常に低い金額しか費用として認められないため、税額が上がってしまうリスクがあります。

そのためにも、購入時の売買契約書は必ず準備しておくべき必要書類といえます。

購入時の売買契約書を紛失した場合

万一、購入時の売買契約書を紛失した場合は、購入時に売主であった不動産会社、もうしくは売買仲介した不動産会社に確認しましょう。

いずれの場合も、原本もしくはコピーを保管している可能性が高いです。

購入時の重要事項説明書

購入時の重要事項説明書について

「購入時の重要事項説明書」は、購入時点での物件の権利関係・物件にかかる法令上の制限・物件の状態・契約の条件などの重要事項が記載されています。

特に、物件の瑕疵や修繕履歴などの最重要事項を確認することができる場合があります。

売却を依頼した不動産会社が、売却時の重要事項説明書を作成する際の参考とするために提示を求められるケースが多いです。

購入時の重要事項説明書を紛失した場合

万一、紛失した場合でも特に大きな問題とはなりません。

売却を依頼した不動産会社に相談のうえ、白紙の状態で十分な物件調査をしてもらい、新たに重要事項説明書を作成してもらいましょう。

売却時の売買契約書・重要事項説明書・付帯設備表・物件状況等報告書

売却時の売買契約書・重要事項説明書について

「売却時の売買契約書」には、売主と買主の間で取り決めた売買価格や支払期日、支払条件などの約束事がすべて網羅されています。

事前にお互い合意した売買条件がきちんと反映されているか、売買契約締結前に必ず確認しましょう。

売買契約書の案文は、不動産会社が作成してくれます。

「売却時の重要事項説明書」は売却を依頼した不動産会社が作成しますので、売主としてするべきことはありません。

しかし、重要事項説明書に添付する「付帯設備表」や「物件状況等報告書」は、書式を不動産会社が用意しますので、売主自身が記入して作成します。

付帯設備表について

「付帯設備表」とは、物件の設備の状況や故障・不具合がある場合の具体的な内容などを事前に買主に開示し、引渡し後のトラブルを避けるために作成する資料です。

例えば、「主要設備」のうち、項目の「故障・不具合」の欄に「無」と記載した「主要設備」については、使用可能な状態で引渡さなければなりません。

この場合、引渡し完了日から7日以内に買主から請求を受けた故障・不具合に限り、修復義務を負うこととなります。

ただし、「主要設備」のうち、項目の「故障・不具合」の欄に「有」と記載した「主要設備」及び「その他の設備」については、故障や不具合があったとしても修復義務を負いません。

<付帯設備表の記入例>

物件状況等報告書について

一方、「物件状況等報告書」とは、物件の過去の履歴や隠れた瑕疵など、物件所有者や売主しかわからない事項について、事前に買主に開示して引渡し後のトラブルを避けるために作成する資料です。

そのため、物件に瑕疵(欠陥や故障・不具合)があれば、売主は知っているすべての事項について物件状況等報告書に記載して、買主に開示します。

万一、売主が知っていたにもかかわらず買主に隠していた瑕疵が判明すれば、損害賠償請求などのトラブルになる可能性がありますので注意しましょう。

逆に、売主が物件状況等報告書に記載して買主に開示していた瑕疵については、瑕疵担保責任を負う義務はありません。

<物件状況等報告書の記入例>

付帯設備表・物件状況等報告書の重要性

前述の通り、売主が付帯設備表・物件状況報告書に記載して、あらかじめ買主に開示している欠陥や故障・不具合については瑕疵担保責任が生じません。

そのため、売主として知りうるすべてのことを、可能な限り正確に買主に開示しておくことが非常に重要といえます。

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抵当権抹消書類等

抵当権抹消について

住宅ローンなどを利用して売却する不動産を購入している場合は、金融機関の抵当権が登記されています。

売主は、買主への決済・引渡しまでに「抵当権を抹消登記」して引渡さなければなりませんが、実務的には売却代金から住宅ローンを一括返済し、抵当権を抹消登記することとなります。

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抵当権抹消に必要な書類について

抵当権抹消登記に必要な書類は以下の通りです。

・登記申請書
・登記済証または登記識別情報
・登記原因証明情報
・抵当権者の委任状

このうち、登記原因証明情報(抵当権解除証書や弁済証書、抵当権放棄証書など)及び抵当権者の委任状は、金融機関が発行する書類です。

そのため、売却する不動産の売買契約を締結し、決済・引渡しの日程が確定したら、速やかに金融機関にその旨を連絡しましょう。

借入金融機関預金通帳・通帳印

決済・引渡し時の残代金の支払い方法は、銀行振込となります。

自分の口座に着金すると同時に、住宅ローンの残高が引き落とされます。

こうした手続きをするために、「預金通帳と通帳印」を持参します。

ローン残高証明書

「ローン残高証明書」は、住宅ローンなどの残高(残債務)を証明する書面です。

通常、毎年10月頃に「住宅ローンの年末残高証明書」が金融機関から郵送されてきますが、金融機関に申し出ればその時点での最新のものを発行してくれますし、金融機関が作成した返済予定表でも差し支えありません。

売却代金で住宅ローンの一括返済ができるかどうかを確認するために使用します。

住宅性能評価書

「住宅性能評価書」は、住宅の設計や性能を等級で評価して格付け表示しているものです。

「住宅の品質確保の促進等に関する法律」(品確法)に基づいて、平成12年4月1日より導入されています。

平成12年12月からは、新築・中古を問わずすべての住宅を対象に、任意で実施されています。

売却する住宅の信頼性を高めることにつながる客観的データであり、長期優良住宅に該当する築年数の浅い物件であれば、買主が住宅ローン金利や税金の優遇を受けられるため、取得している場合は必ず引渡しましょう。

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構造計算書・耐震診断報告書・アスベスト使用調査報告書等

これらはいずれも物件の安全性を示す書類です。

構造計算書について

「構造計算書」は、住宅などの木造3階建て以上の建物や、木造以外の構造で2階建て以上の建物などの場合に必要となる書類です。

自重・地震・強風などによる加重によって発生するリスクに対して、建物の安全性等を証明する書類ですので、手元にあれば開示しましょう。

耐震診断報告書

「耐震診断報告書」とは、建物の確認済証の交付年月日が昭和56年5月31日以前である場合に、現行の新耐震基準と照らし合わせ、どの程度の耐震性能を持つかを評価したものです。

ただし、あくまでも任意のものですので、行っていなくても差し支えありませんが、手元にあれば必ず開示しましょう。

アスベスト使用調査報告書

「アスベスト使用調査報告書」は、人体に健康被害をもたらすアスベストを含む建材等が使用されていないかを調査した書面です。

こちらも任意の調査であり、行っていなくても差し支えはありませんが、手元にあれば必ず開示しましょう。

購入時の販売パンフレットや販売図面

売却する不動産を購入した時(特に新築分譲マンションや新築一戸建て)に、入手した「販売パンフレット」や「販売図面」があれば用意しましょう。

売却を依頼した不動産会社が売却用の販売図面を作成する際に、大変参考となります。

また、買主にとっても有効な情報となります。

その他の書類(土壌汚染調査報告書・地盤調査報告書等)

その他、土壌汚染に関する調査結果である「土壌汚染調査報告書」や地盤の強弱を調べた「地盤調査報告書」などがあれば、積極的に買主に開示しましょう。

物件の付加価値を高め、買主に安心感を与える効果が期待できます。

買主の目線で書類を確認しよう

「備えあれば憂い無し」という格言がありますが、不動産の売却においても正にあてはまります。

事前に必要書類を準備しておけば、取引や交渉もスムーズに進めることができ、買主サイドからの信頼を得ることができるでしょう。

また、大事なことは「買主の目線で考える」ことです。

あなた自身が買主の立場に立って、「この書類があったら役に立つな」「この書類を見ればよい情報が得られるな」といった書類があれば、事前に準備して積極的に買主に活用してもらいましょう。

そうした目線で準備した書類は、売却活動にも大いに活用できるものが多いので、やはり事前の準備が大切といえるでしょう。

書類の判断に迷ったら、不動産会社に相談しましょう。

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ABOUT US
弦本 卓也
1987年、埼玉県生まれ。大学卒業後、大手広告会社「リクルート」にて不動産メディア「スーモ」(SUUMO)の運営に従事。新卒で入社して、スーモのメディアづくりを7年、その後にエンジニア組織の組織づくりを4年行う。 また、リクルート社内の部活動制度にて「大家部」を立ち上げ部長を務める。不動産投資に関する情報交換や物件見学のワークショップなどを行う。 入社2年目に新築一戸建ての広告を取り扱う部署に異動したことをきっかけに、「いい企画を作るためには、まずは自分で経験したい」という想いから個人で新築一戸建てを購入。その翌年には売却分野を担当したことをきっかけに売却も経験。マンションの売買なども行い、11年間で11回の引っ越しを経験。 「新しい住まいや暮らしを自ら探究したい」という気持ちで購入した東京都千代田区の神保町の中古ビル「弦本ビル」は、コワーキングスペース、シェアオフィス、シェアハウス、飲食店が入居する複合ビルとなっており、20代を中心とした若手社会人や学生のやりたいことを実現する場所として注目を集めている。3年間で延べ1万人以上の来場者を記録し、家賃年収1,400万円を達成しながら満室経営を続けている。 お金面とビジョン面の両立を大切にしており、モットーは「一人ひとりの可能性をもっと世の中に」。会社員を続ける傍ら、学生時代に起業した会社とあわせて株式会社を3社創業。うち1社は売却し現在は2社を経営している。他にもエンジェル投資家として若手実業家の支援を手がける一面も。 日経新聞や不動産業界紙、書籍や雑誌、テレビなどでも多数の注目を集めておりセミナー講師なども行う。宅地建物取引士を保有。