不動産投資などの副業で20万円以上の利益が発生した場合、確定申告によって納税しなければいけません。
しかし、利益の全てを所得として申告すると、多額の税金が課せられることもあります。
所得税は発生した利益から経費分を差し引いた所得に対し、課される税金です。
そこで、不動産投資で経費として計上できるものを把握し、法律の範囲内で節税に努めていくようにしたいものです。
ここでは副業として不動産投資を行う人が計上できる、13種類の経費を紹介します。
目次
1.各種の税金
不動産投資の上で不動産の所有によって発生する税金は、経費として計上することができます。
・登録免許税
不動産を購入する時に発生する税金です。
土地と建物それぞれの登記簿の名義変更時に課せられる税金です。
不動産の購入初年度にしか発生しません。
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こちらも不動産を購入した時に発生する税金です。
不動産を購入した翌年の4月に納税書が送られてくることが多いです。
購入した初年度、もしくは2年目にしか発生しない税金です。
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不動産を所有している限り、必ず発生する税金です。
都市計画税は都市計画外地域の場合は発生しませんが、不動産物件の賃貸需要があるエリアはほぼ、都市計画内地域です。
この2つの税金は毎年必ず発生するので、経費として計上しましょう。
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不動産の購入や売却時の、売買契約書に貼り付ける収入印紙の代金です。
売買する不動産の金額によって貼りつける収入印紙の金額は変わります。
・自動車税
不動産事業で自動車を業務上利用している場合、自動車税の一部を不動産経費の一部として計上できます。
ただし、仕事用に限定して使わない限り、全額計上は難しいでしょう。
こういった場合は仕事用とそれ以外の比率で「按分」し、仕事用に当たる分を経費に計上します。
2.保険料
不動産投資では各種保険に加入することが多いはずです。
地震が多い地域でしたら地震保険に入ることもあるでしょうし、住宅ローンの融資を受けていれば火災保険への加入は必須です。
その他にも風災保険や水害保険、家財保険など不動産を守るための保険に入っていれば、その金額を経費にできます。
また、家賃保証会社を利用して自分で保険料を支払っている場合は、その保険料も経費にできます。
3.物件の修繕費
建物の一部の破損に伴う修理やクリーニングなど、物件の機能や外観を元に戻すための原状回復費用は、修繕費として経費に計上できます。
壁紙の交換や床材の交換、外壁や屋根の塗装なども、賃貸用住居として必要な修繕費として計上できます。
ただし、これまで備え付けていなかった設備を新しく取り付けた場合、経費にできないことがあります。
例えば、単なるチャイムをモニター付きインターホンに交換したり、空気清浄機を備え付けたり、階段を設置したなどの場合は、どういった扱いになるのでしょうか。
この場合、工事費や設備費は修繕費ではなく新規設備の追加にかかった出費、いわゆる居住性の改善を目的とした『基本的支出』に相当します。
税務的には基本的支出に当たる10万円以上の設備を設置した場合、修繕費などの経費としてではなく、設備の耐用年数に従う『減価償却』という形を取りながら、一定の割合で経費を毎年計上します。
ただし、30万円未満の設備は、青色申告によって『少額減価償却資産』という制度を利用すれば、一括経費として計上することも可能です。
この制度は合計で年間300万円まで利用できます。
4.減価償却費
不動産物件の運営で非常に重要な経費が『減価償却費』です。
減価償却費は実際の支出を伴わない形で経費として計上できます。
そのため、帳簿上の利益を大幅に圧縮し、手元のキャッシュフローを増やす効果があります。
累進課税である所得税には、『所得が減れば税率が安くなる』という特徴があり、メリットに挙げられます。
例えば、利益が100万円で税率が10%であれば、税金は10万円です。
そこで、50万円を減価償却費として計上できれば、利益は50万円に減ります。
利益が減ることで税率が5%に下がる場合、税額はわずか25,000円と節税に大きな役割を果たすのです。
減価償却費の金額は、建物の取得にかかった費用を法定耐用年数で割った数字になります。
例えば、木造物件の法定耐用年数は22年です。
もし、2,200万円の建物を購入していた場合、毎年100万円ずつ経費にできます。
鉄骨造物件は34年、RC造物件は47年です。
また、法定耐用年数を過ぎていても中古物件では5年程度、減価償却可能です。
減価償却の年数次第で、最終的な税額は毎年大きく変わるでしょう。
5.借入金利息
融資を受けて不動産を購入した場合、ローンの返済金利分に関しては『借入金利息』として経費に計上できます。
例えば、2,000万円の融資を受け、初年度に毎月10万円ずつ返済したとします。
返済を始めた最初の頃は元本ではなく、金利分の支払いが多くなりがちです。
年間120万円の返済金のうち、元本の返済分が半分しか無いときは、金利60万円分を経費として計上できます。
ただし、元本分に関しては経費として計上できません。
少なくとも元本分は帳簿上の経費である減価償却費とは違い、実際に現金の支出を伴います。
従って、実質的には損益計算書上の『経費』の項目ではなく、貸借対照表上の『負債』の項目に該当するものなのです。
それに借金の元本部分を経費として認めてしまうと、利益を必要以上に『圧縮』してしまいます。
6.管理費・広告費
不動産管理会社に物件の管理を委託した場合、管理費全てを経費にできます。
家賃の5%を不動産管理会社に毎月払っていれば、その出費を管理費として経費に計上しましょう。
また、オフシーズンに客付けを行うなど、不動産仲介会社に依頼することもあるかもしれません。
その際の広告費も経費に計上できます。
大家と入居者で半々に負担した場合、もしくは大家が全額負担した場合などの仲介手数料も、経費として計上できます。
7.税理士や司法書士の報酬
不動産登記を司法書士に依頼した場合や、毎年の確定申告を税理士に委託した場合の費用も、経費として計上できます。
先方から領収書を受け取り、きちんと管理しておきましょう。
その他にも、同じ士業である土地家屋調査士などへの作業依頼費も経費にできます。
8.その他の作業依頼費
例えば、物件情報に関する広告を作るためにカメラマンに撮影を依頼した。
自分で物件を宣伝するためにホームページ会社にホームページの作成を依頼した。
他にもイラストを書いてもらった、文章を書いてもらったなどの不動産物件に係る支出は、作業依頼費として経費に計上できます。
ただ、このような作業依頼について、確定申告の際に税務署から詳細を尋ねられることがあります。
依頼先とのメールのやり取りなどを証拠として残しておくと、経費の計上がスムーズになり、妥当な申告が実現するでしょう。
これから先に挙げる部分に関しては、全額を経費として計上できるわけではありません。
きちんと本当にその支出が発生したのか、確認できるような資料を残しておきましょう。
全額を経費に計上するのではなく、『按分』“を行って実際に発生した支出のうちの何割かを経費に計上します。
9.交通費
不動産屋への来店や物件の内覧・視察、不動産投資セミナーなどに参加するときの交通費を経費として計上できます。
電車は領収書が残せません。従って、きちんと「何月何日にいくら使った」をメモして経費に上げましょう。
あまりに高額なタクシー代については、税務署に詳細を確認されることがあります。
やはり、領収書を残しておきましょう。
また、東京に住んでいる人が北海道の不動産を視察に行くついでに、家族旅行も兼ねてしまうことがあるかもしれません。
その際の交通費全額を経費に計上しようと考えてしまいますが、多額の出費は細かく「誰が、どこに行ったのか」税務署に確認されます。
控えめに、自分にかかった交通費だけを経費として計上するようにしましょう。
家族の交通費などは却下されることが多いです。
10.通信費
不動産物件の運営において不動産会社や管理会社、そして入居者とのやり取りで電話代やインターネットなどの通信料が発生します。
専用の電話回線を引いていた場合、通信費全額を経費として計上できるでしょう。
しかし、私物の携帯電話と仕事用の電話を共用している場合は、通信費を全て経費として計上することはできません。
およそ3割程度が認められる範囲と言えるでしょう。
不動産物件のウェブサイトを運営していれば、サーバー代を経費にできます。
11.新聞図書費
不動産投資に関する書籍などを購入した場合や、不動産の雑誌などを定期購読している場合は、経費として計上できます。
ただし、自分が趣味で買った本や、不動産と関係なく購読している新聞代などは経費として認められることはないでしょう。
金額が少なければ詳細を確認されることはないかもしれませんが、毎月5万円など非常に多くの新聞図書費がかかっている場合は、「具体的にどんな本を買ったのか」確認されることがあります。
12.接待交際費
不動産会社の人間と食事をした、不動産投資仲間と打ち合わせをしたなど、不動産投資を行う上で交際費は欠かせないものです。
もちろん、交際に支出が発生したのであれば、不動産投資の経費として計上できます。
ただし、不動産投資の収入が年間100万円程度なのに対して接待交際費が毎月5万円かかったなど、あまりにも金額が釣り合わない場合は全額を交際費として認められないこともあります。
「交際を誰と、どのようにしたのか」を確認されるでしょう。
領収書やメモをキチンと残しておきます。
常識的な範囲で接待交際費を計上するようにしましょう。
13.消耗品費
文具など、事務作業に必要な消耗品費を経費として計上することができます。
来客に対しての茶菓子やお茶代、プリンター用紙など、細かな支出中心ですので大きな金額にはなりにくいです。
まとめ
経費を把握し、節税することは決して悪いことではありません。
確定申告初心者の方はシーズン以外の空いているとき、例えば平日の日中などに税務署に行ってみましょう。
そうすれば、経費にできるものとそうでないものを詳しく教えてもらえるでしょう。
初心者が自分の判断で経費を多額に計上してしまうのは危険です。
細かい調査が入った結果、「実は経費にできないものばかりだった」と判断された場合、税務署から多額の追徴課税が言い渡されることがあります。
経費はしっかりと把握し、正確な節税を行いましょう。