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不動産投資における法人化のメリット9選・デメリット4選を解説!

不動産投資を行ってまとまった利益が上がると、法人化を検討した方が良いと言われることも多いです。

そこで具体的に、不動産を中心とした資産管理のための法人を設立するメリットにはどのような点があるのか、また、デメリットはないのかについてお伝えします。

目次

不動産投資で法人化を行うメリット

不動産投資を行う上での法人化最大のメリットは、節税が可能になる点です。

そこで、どんな節税ができるのか、また、節税以外のメリットには何があるのかを見ていきましょう。

一定のラインを超えると、個人より税金が安くなる

個人事業主で不動産投資を行う場合、所得に対して所得税と住民税が発生します。

所得税は累進課税制度が導入されており、900万円を超えると33%もの税率になります。

所得が1,800万円を超えると所得税は40%、4,000万円以上の所得がある人間に対して最大で45%が課税されます。

さらに、住民税が10%課税され、所得次第では半分近くも税金で持っていかれるのです。

それに対し、法人税率の最高は所得税率よりも低くなっており、約30%程度です。

控除を考慮しない大まかな計算になりますが、1,000万円の所得があった場合、個人事業主の場合は330万円の税金が発生します。

それに対し、法人税は30%ですので税金は300万円。所得の多い人は、法人を作っておいた方が税率は安くなります。

役員報酬を自分や配偶者に与えれば、所得を分散できる

個人で不動産事業を運営する場合、収入は全て自分のものです。

例えば1,000万円の所得が発生した場合、その全てが自分の所得である以上、課税対象も自分です。

しかし、法人を作ることができれば、所得は法人のものになります。

そして、自分や配偶者、親類などにそれぞれ、役員報酬や給与などの形で所得の分散が可能です。

累進課税制度では、所得の低い人ほど税率が安くなるというメリットがあります。

仮に1,000万円の所得がある場合、個人に課される所得税率は40%です。

法人を作り、自分を含めた3人で300万円ずつを給与や報酬で分配。

そして、残りの100万円を法人の利益とした場合、所得300万の人間への所得税率は10%です。

1,000×30%=300万
300×10%×3=90万

あくまで概算ですが、上記のように大きく税金の金額は変わります。

世帯としての収入にするのであれば、全て自分の収入にするよりも親類や妻などに所得を分散した方が、所得税額を大幅に減らせるのです。

損失を繰り越しできる

不動産投資をしていると、損失が発生する可能性があります。

高額な不動産を購入した場合、各種税金や減価償却費、空室の発生などによる単年での損失発生は珍しくありません。

個人青色申告事業主で損失が発生したときは3年間、損失を繰り越すことができます。

しかし、法人であれば、損失の繰り越しは最大9年まで可能です。

仮に500万円の損失が生じたとすれば、黒字が発生した年に500万円を振り分けることで利益を削減し、節税が可能になります。

節税面で有利な退職金を自分や家族に与えられる

法人を設立すれば、従業員に対して退職金を与えることができます。

実は、退職金にかかる税率は給与所得よりもはるかに低く、数千万円単位の金額であっても税金は100万円程度と、ほとんど発生しないのです。

そして、会社の会計上で損金扱いになるため、経費として計上できるメリットがあります。

不動産投資のための法人を設立し、自分の役員収入はそれほど多くないことにして節税し、会社に現金を貯めておきます。

そして、10年や20年など一定のタイミングで退社し、プールした数千万円を退職金として引き出せば、大幅な節税効果をもたらします。

そのタイミングで法人を畳んでもよいですし、新しい法人を設立してもよいでしょう。

一旦、法人所得に置き換えた上で退職金にすれば、大半が課税されずに自分の手中に収まるのです。

短期譲渡所得税の税率が低い

不動産投資ではインカムゲインではなく、売買益を狙うキャピタルゲイン目的で行われることがあります。

物件を購入し、短期間で売却して利益が出た場合は、譲渡所得税を支払わなければいけません。

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この譲渡所得税の税率は非常に高く、不動産を購入してから5年以内に売却した場合は39%もの税率になってしまいます。

そのため、個人事業主やサラリーマンとして働いている人が物件を売買しても、なかなか大きな利益を稼ぎ出すのは難しいのです。

しかし、法人であれば不動産の売買は事業扱いになりますので、短期譲渡所得税は特に制限が設けられません。

あくまで法人として物件を購入して売却したことになりますので、法人税率の影響を受けます。

短期的にどんどん不動産を売却していきたいときは、法人を作った方が税金面で有利なのです。

任意で減価償却ができる

不動産物件の運営で、実際に支出が発生していないにもかかわらず、経費として計上できるものが減価償却費です。

減価償却費を計上することで、キャッシュフローが大幅に改善されることも多いのです。

個人事業主の場合、減価償却費は購入した年度から均等割で毎年、計上しなければいけません。

例えば木造物件の場合、法的な的耐用年数は22年ですが、1,100万円の木造物件を購入した場合、1,100÷22=毎年50万円の減価償却費を計上します。

その年が赤字であった時でも、自動的に経費として必ず計上されるものです。

しかし、法人であれば減価償却も任意で行うことが可能です。

利益が発生しなかった年は減価償却を行わず、利益が大幅に発生した年に減価償却費を計上することで、帳簿上の利益を圧縮して節税ができます。

相続税対策に有効

法人設立は相続税対策にも有効です。

現行の相続税率は非常に高くなっており、最大税率は50%です。

控除額は3,000万円と被相続人一人あたり600万円ですから、二人に相続させる場合は3,000+(600×2)=4,200万円しか控除が受けられません。

そこで法人を設立し、不動産物件を法人のものにしてしまうのです。

そうすれば、代表者の座を子供に譲るだけで、実質的に無課税で子供に不動産物件を相続させられるのです。

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様々な経費を計上できる

法人化することで、様々な経費を計上できます。

交通費や物品購入費、消耗品費や交際費などは個人事業主でも計上できますが、法人であればさらに出張費や社員のための福利厚生費、社宅として借り入れた自宅分の費用を経費にすることもできます。

また、法人は保険料も経費にできます。

個人事業主は生命保険料などを経費にできませんし、全額自己負担です。

しかし、法人の場合は自分の生命保険分を経費にできますので、節税に活用できます。

加えて小規模企業共済や中小企業倒産防止共済などの費用も経費にできます。

これらは実質的には貯金と同じ効果をもたらします。

融資が受けやすくなる

法人を設立すれば、金融機関から融資が受けやすくなるメリットもあります。

金融機関としても法人を設立し、まとまった所得を一定期間上げている事業者であれば、信頼が置けて融資のハードルは低くなります。

不動産投資を積極的に行いたいのであれば、個人事業主よりも法人設立の方が有利に融資が受けられますので、スムーズに投資規模が拡大します。

不動産投資で法人化をすることによるデメリット

不動産投資で法人化を実現しますと、節税面で非常に大きなメリットがあります。

しかし、メリットばかりではなく、経費面でデメリットが発生することも多いのです。

設立の手間や費用がかかる

まず、法人を設立するための手間や費用を考える必要があります。

法人を設立するための費用としては、登録免許税で15万円。

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定款認証代が約5万円。

収入印紙代などを含めて合計25万円ほどが必要です。

また、司法書士に設立の登記手続きを任せるのであれば、その報酬として10万円ほど必要でしょう。

その他にも会社用の印鑑も必要ですから、総額で40万円ほど費用がかかることを覚えておかなければいけません。

また、社印を用意するだけではなく、登記用の数々の書類を用意するなど、かなりの手間がかかります。

一方で資本金についてですが、現在では1円からでも法人設立が可能ですので、こちらはあまり考慮する必要はないでしょう。

毎年赤字でも納税の義務がある

個人事業主で赤字が発生した場合は、税金を納める必要がありません。

しかし、法人の場合はたとえ赤字だったとしても必ず、法人住民税を均等割にする形で7万円発生します。

赤字でも税金が発生するというのは、地味に厳しいダメージです。

個人事業主よりも厳正な帳簿付けが求められる

法人である以上、法人税を申告します。

法人税申告書は個人事業主の青色申告よりもより厳正なものが求められます。

個人で片手間に法人税の申請書類などを用意するのはかなり手間がかかります。

時間がなければ、税理士に委託することになるでしょう。

税理士による納税関係書類の作成報酬も、個人事業主では20万円から30万円程度ですが、法人はそれよりも高いのが一般的です。

決算書の作成や仕入れ関係、給与などの書類作成が煩雑になるため、支払わなくてはいけない報酬額も増えてきます。

夫婦で法人を経営しているのであれば、配偶者にこれらの業務を専門的に行ってもらうことができますが、個人で法人を運営している場合は、会計関係の人間を雇わなければいけないこともあるでしょう。

税務署に目をつけられやすい

法人は税務署から目を付けられやすくなります。

もちろん、「目立たないから個人事業主は脱税しても良い」というわけではありませんが、法人になれば税務署も行動を監視しやすくなります。

より行動面での配慮が求められます。

個人事業主のままでいたほうが良い場合もある

具体的に個人事業主は、どの収入のラインで法人化を検討した方が良いのでしょうか。

3-1個人事業主として夫婦で所得を分散できれば、消費税は納めなくても良い

確かに、法人の場合は年間売上が1,000万円未満であれば、2年間は消費税を納めなくても良いことになっています。

一方で、収入が1000万円以下の個人事業主にも、同様の例外があります。

そのため、もし、夫婦それぞれの名義で不動産物件を購入しているのであれば、互いの収入を年間1,000万円以下に抑えれば節税できます。

その範囲で収入をコントロールできるのでしたら、個人事業主のままでいた方がよいのです。

居住用の賃貸物件には家賃に消費税が課税されませんので、消費税を住人から受け取る機会はありません。

しかし、商業ビルなどを運営して会社にオフィスを貸したり、駐車場を貸し出したりする場合は、事業用不動産となるので消費税が発生します。

個人事業主であればここで上乗せされた消費税の納付義務がないため、消費税が収入になる大きなメリットがあります。

夫が800万円、妻に700万円の不動産収入があり、それぞれ消費税で10%上乗せされていれば880万円と770万円。

つまり、世帯で1,650万円の収入です。

この程度の規模であれば、法人を作って消費税を納めるよりも、個人事業主のままでいた方が自分の手元に残る現金は多くなります。

不動産中心の所得が2,000万円を超えたところで、法人化を考えよう

では、具体的に法人化を考えるラインとしては、夫婦二人で運営している場合は収入額で2,000万円が一つの区切りです。

夫婦それぞれの売上が1,000万円を超えると、消費税の納付義務を負うことになりますので、個人事業主でいる旨味があまりなくなります。

また、一人で物件を運営しているのであれば、税率を考えてもやはり、1,000万円が法人化設立を検討した方が良いラインです。

ただし、法人化で一番大変なのはやはり、納税部分です。

手間や経費を抑えられるのであれば、法人化のメリットは大きいです。

しかし、この手続きや処理に時間や経費がかかってしまうのでしたら、納税が簡単で人を雇う必要もない個人事業主のままでいた方がよいときもあります。

青色申告であれば業務用総合ソフトを使うことで、個人でも簡単に確定申告ができます。

まとめ

1人で不動産物件を運営していれば1,000万円、夫婦で合計2,000万円までは個人事業主のままの方が税金面で有利ですが、収入が超過した段階で法人化を検討するようにしましょう。

基本的には個人事業主と比べた時の法人のメリットは税制面です。

副業大家ではなく、専業大家を目指すのであれば、まずは法人化が一つの目標となってくるでしょう。

どんなポイントで節税ができるのかを知るため、税理士に相談しながら税に関する知識を身につけておきましょう。

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ABOUT US
弦本 卓也
1987年、埼玉県生まれ。大学卒業後、大手広告会社「リクルート」にて不動産メディア「スーモ」(SUUMO)の運営に従事。新卒で入社して、スーモのメディアづくりを7年、その後にエンジニア組織の組織づくりを4年行う。 また、リクルート社内の部活動制度にて「大家部」を立ち上げ部長を務める。不動産投資に関する情報交換や物件見学のワークショップなどを行う。 入社2年目に新築一戸建ての広告を取り扱う部署に異動したことをきっかけに、「いい企画を作るためには、まずは自分で経験したい」という想いから個人で新築一戸建てを購入。その翌年には売却分野を担当したことをきっかけに売却も経験。マンションの売買なども行い、11年間で11回の引っ越しを経験。 「新しい住まいや暮らしを自ら探究したい」という気持ちで購入した東京都千代田区の神保町の中古ビル「弦本ビル」は、コワーキングスペース、シェアオフィス、シェアハウス、飲食店が入居する複合ビルとなっており、20代を中心とした若手社会人や学生のやりたいことを実現する場所として注目を集めている。3年間で延べ1万人以上の来場者を記録し、家賃年収1,400万円を達成しながら満室経営を続けている。 お金面とビジョン面の両立を大切にしており、モットーは「一人ひとりの可能性をもっと世の中に」。会社員を続ける傍ら、学生時代に起業した会社とあわせて株式会社を3社創業。うち1社は売却し現在は2社を経営している。他にもエンジェル投資家として若手実業家の支援を手がける一面も。 日経新聞や不動産業界紙、書籍や雑誌、テレビなどでも多数の注目を集めておりセミナー講師なども行う。宅地建物取引士を保有。