事例 弱冠27歳でビルオーナーに!
若手サラリーマンの不動産投資
彼を動かしているのは「ワクワク」感
個人で現物不動産に投資をするというのは難しいものだ。何よりその投資に失敗をしたときの不安感を考えれば、簡単には投資しがたい。しかしいわゆるプロの投資家ではない、ふつうの投資家もこのようなハードルを乗り越え、その現物不動産から新たな価値創造を行おうともしている。そのような「ワクワク」感がある投資とはどのようなものなのか。画期的な視点を持つある若手サラリーマンに話を聞いた。
Jリートなどの不動産ファンドや新しいところではクラウドファンディングなどを駆使した不動産投資など、近年では必ずしも大きなリスクを背負わない投資方法も拡充してきた。しかしながら、現物に比べたときに、それらはある程度の資産運用にはなるものの、リターンは少なく、また不動産を所有することによる投資プラスアルファの側面ではもの足りなさを感じえない。「『不動産投資』という言葉で語られると、他人に資本を丸投げし、あとはお任せするような無機質な印象を受けます」と語るのは弦本 卓也氏。相続でもなく、資産家の後継者でもないにも関わらず、27歳でビルオーナーとなった現役サラリーマン。同氏が不動産投資を始めたきっかけは「仕事を覚えるためにも役立つ」という、投資家の目線ではなく仕事人としての目線であった。
「インターネット上での不動産メディアの商品企画を行っていましたが、入社2年目に戸建てを扱う部署に異動しました。オンラインのネット上でいい企画を作るためには、オフラインで実際に不動産を購入するユーザーの購入プロセスを経験したほうがいいと思いまして、配属後2カ月で新宿区の建売住宅を購入しました」(弦本氏)不動産に関わる仕事をしているのだから、自らも不動産の購入を経験することでより良い仕事ができるのではないか。そのような考えは言うことは易いが、実際に行うには様々な障害もある。弦本氏は最初の戸建購入の際の資金運用について「頭金として火災保険などを込みで約200万円の頭金を用意して、それ以外は全額住宅ローンを活用しました」と話す。無論、ここでも家族などに頼っていないため、全てのリスクを背負っていた。今では著名な投家になった者でも、初期における高値掴みなどの失敗談は事欠かない。しかし、それは成功した後だからこそ話せるもの。多くのサラリーマンが投資に失敗すれば市場からの退場を余儀なくされる。「やはり大きなお金を動かすので、最初は失敗して一生ついてまわったらどうしようと緊張しました」と述懐する弦本氏の言葉は本音であり、全ての投資家にとって通ずる話ではないだろうか。
「そのような失敗をしないためにも、事前の調査は徹底し、事業計画を立てて周囲の専門家などに相談をしながら進めました。そのようにしてある程度の道筋がついた段階で決断をしています(」弦本氏)
今日、資産形成は自ら行うものという考えが出てきて以後、「何も行動しないことがリスク」という言葉が流行しているが、一方で、計画性もなく投資を始めてしまうことも同じくらい大きなリスクといえる。相続でもなく、資産家の子息でもなく、一サラリーマンから投資を始めたからこそ、このようなバランス感覚は非常に重要なものである。
ただ前述したように弦本氏の投資に対する考えは、利回りやキャピタルゲインなどにだけ力点を置いたものではない。「自分の原動力は好奇心とワクワク感」と同氏自身が分析するように、あくまでも不動産投資は過程であって、その不動産を活用して何か面白いことができないか、というところが同氏の投資スタンス。それが、昨年3月に購入した「弦本ビル」についてもいえる。
弦本氏が戸建て住宅に続いてビルを購入したきっかけは投資家としてのキャリアアップというよりは、その建物に魅力を感じたからだ。既に築30年以上が経過した5階建のビルで上層の4階と5階は住居部分。今は懐かしき畳敷きとなっていて、フローリングが当然となっている時代において、「これは使い方次第で面白いことができるのではないか」と考えたという。その一環として現在、2階フロアの入居者である「Tokyo Producers House」に弦本氏も積極的に携わっており、先日には利用者が中心となって2階フロアのDIYでリニューアルを完成させた。
このようにテナントとも積極的に交流を重ねながら、投資を楽しんでいる弦本氏。その軌跡は投資家として模範的な道程を歩んでいるが、では今後の目標はどうか。
「常に好奇心とワクワク感をもって面白いものを求めているので、次はビルではないかもしれません。年末には代々木八幡のワインバーにも出資をしました。現在は大企業で働きながら2つの株式会社を持ち、ビルのテナントのお手伝いなどをしていますが、長期的な目標は特に決めておらず、その時々に自分がワクワクして行動したことが、目の前の人のためになり、
ひいては世の中のためになっていればいいと思います。3年前の自分が現在の自分を想像できなかったように、3年後の自分も今の自分が想像できないようなものに『投資』をしていたら面白いと思います」(弦本氏)
弱冠28歳のビルオーナーにして、投資家である弦本卓也氏。その視線の先には面白さの追求であり、自ら楽しみつつ、人を、そして街を楽しませることがある。一喜一憂するのではなく、自らワクワクできる投資を行うことも成功の秘訣ではないだろうか。特に実物を保有する不動産投資であるなら、なおさらだ。