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借地権付き建物は売却できる?売却方法と押さえるべきポイントを解説!

借地権を相続したけれども、どうしてよいのか途方に暮れている人が少なくありません。

「借地権ってどんな権利なんだろう?」
「借地権を相続するけれども何から手を付けたらよいのだろう・・・」
「借地権を売れるのだろうか?」

こうした疑問や悩みを抱えている人の声が聞こえてきそうです。

そこで今回は、借地権について、

・借地権と底地とは
・借地権の5つの種類
・借地権を売却する場合のポイント
・借地権の売却方法
・借地権を高く売るコツ
・借地権を売却する場合の注意点
・実際のトラブル事例と解決策

について、詳しく解説します。

ぜひこの記事を、あなたの借地権売却に役立ててください。

目次

まずは借地権について理解する

ますは借地権を理解するために、基礎知識から確認していきましょう。

借地権とは

借地権とは、建物を所有することを目的に、他人の土地を借りることができる権利のことをいい、第三者へ売却することが可能です。

借地権には地上権と賃借権があり、どちらも借地借家法の適用を受けます。

地上権の特徴

地上権は所有権と同様に物権であり、地上権の登記を行って第三者への対抗力を備えることができ、地主は地上権の登記に応じなければなりません。

地上権を譲渡する場合や建物を建て替える場合には、地主の譲渡承諾や建替え承諾が必要なく、借地人の意志で自由に譲渡や建て替えができることも特徴です。

賃借権の特徴

一方、賃借権はあくまで契約上の債権債務関係であるため、賃貸人にしか権利を主張できません。

また、賃借権も登記することができますが、地主に賃借権の登記に応じる義務はないため、登記されることはまずありません。

そのため、土地所有者が第三者へ土地の所有権を譲渡した場合、借地人は新しい土地所有者に賃借権を主張できないこととなります。

しかし、改正された借地借家法において「借地権は、その登記がなくても、土地の上に借地権者が登記されている建物を有するときは、これをもって第三者に対抗する事ができる」(借地借家法第10条1項)と規定されており、借地上の建物を登記しておけば第三者への対抗力を備えることができます。

借地人が賃借権を譲渡する場合や建物を建て替える場合などは、地主の承諾を得ることが必要であり、無断で譲渡や建替えを行えば賃借権の解除要件となる可能性があります。

地上権と賃借権の違い

地上権と賃借権の一番大きな違いは、地上権は第三者への譲渡や建物の建替について、土地所有者の承諾が不要であり、自由に譲渡や建替をすることができるのに対して、賃借権は土地所有者の承諾を得て譲渡や建替をしなければならず、自由性に欠けることです。

現在、存在している借地権のほとんどが賃借権であると考えて差し支えありません。

底地とは

底地とは、地代収入を得ることを目的に、土地所有者(地主)が他人に土地を貸している土地所有権のことをいいます。

土地所有者(地主)は、その土地を自己使用することはできません。

つまり、土地と建物の権利が分かれている状態ということになります。

<所有権および借地権と底地のイメージ図>

借地権の5つの種類

現在、法的に効力のある借地権には5つの種類があります。

ここでは、それぞれの借地権の種類について説明していきます。

<5種類の借地権のチャート図>

借地権(旧法)

平成4年8月1日以前に借地契約が締結されたものについては、借地法(旧法)による借地権となります。

旧法は建物の構造により、堅固建物と非堅固建物の区別があります。

堅固建物は鉄筋コンクリート造のビルやマンション、非堅固建物は木造住宅などが典型例といえるでしょう。

旧法は、更新を続けることで半永久的に土地を借りることができるなど、借地人の権利が非常に強くなっています。

そのため、一度土地を貸してしまうと、地主が土地を返してもらえないケースが多く、改正された背景があります。

平成4年に借地借家法(新法)が施行されたことにより、旧法は廃止されましたが、平成4年8月1日以前に締結された契約には新法施行後も旧法が適用され、更新後も旧法が適用されます。

現在でも、借地のほとんどが、この旧法による借地権による契約であるといわれています。

普通借地権(新法)

平成4年8月1日の借地借家法(新法)施行後に借地契約が締結されたものについては、借地借家法(新法)による普通借地権となります。

新法では、借地権の契約期間は一律30年に定められ、契約期間満了後も旧法の借地権と同様に、契約の更新をすることができます。

地主が契約の更新を拒絶するためには正当な事由が必要となり、ほとんどの場合、更新が認められることとなります。

定期借地権

定期借地権は新法によって創設された新しい権利形態です。

普通借地権の場合は、従前の契約と同一の条件で契約を更新したとみなされる法定更新があります。

一方、定期借地権の場合は法定更新がなく、原則、契約期間満了後に更地として原状回復を行い、地主に返還しなければなりません。

土地の返還時期がわからない、または半永久的に返ってこない旧法での借地権に対して、地主の不満が多かったためにこの制度が設けられ、現在では非常に多くの事例で導入されています。

定期借地権には、「一般定期借地権」「建物譲渡特約付借地権」「事業用定期借地権」の3種類があります。

一般定期借地権

契約期間の満了に伴って借地契約を終了し、契約の更新はありません。

原則、借地人の負担と責任で建物を取り壊し、更地として地主へ土地を返還しなければなりません。

一般定期借地権の契約期間は50年以上となっており、借地権付き分譲マンションで主に採用されています。

建物譲渡特約付借地権

定期借地権は、借地人の責任と負担で建物を取り壊し、更地で土地を地主へ返還することが原則です。

しかし、建物譲渡特約付借地権の場合は、契約後30年以上経過した時点で、地主が建物を買い取ることにより借地権が終了します。

ただし、建物譲渡特約付借地権が消滅した後も、借地人が建物の使用を継続して希望する場合は、建物賃貸借契約を締結することができます(法定借家権)。

事業用定期借地権

事業用の建物所有に限定した定期借地権です。

契約期間は10年以上50年未満の期間となっており、契約終了後は、借地人の責任と負担で建物を取り壊し、更地として地主へ土地を返還します。

コンビニエンスストアや家電量販店などの出店に際して、採用される契約方式です。

<5種類の借地権の分類と特徴>

借地権を売却するためには?

借地権を売却することは可能ですが、そのためには押さえるべきポイントがあります。

ここでは、そのポイントについて説明します。

まずは地主の承諾が必要

借地権を売却する場合、まずは地主の承諾を得ることが必要です。

そして、地主が与える承諾の対価として、「譲渡承諾料」を支払わなければなりません。

「譲渡承諾料」は、「名義書換料」や「名義変更料」とも呼ばれます。

譲渡承諾料の相場は、借地権価格×10%が目安となります。

借地権価格の算定方法は、一般的にその土地が更地価格に路線価図に記載されている借地権割合を乗じて算定する、ともいわれますが、売却方法によっても価格が大きく変わるため注意が必要です。

譲渡承諾料以外の費用

借地権を売却する場合、借地上に建っている建物は築年数がかなり経過しているケースが多く、借地権の購入者は新しく建物を建て替えたいと考える人がほとんどです。

しかし、建物を建て替える場合も地主の承諾が必要となり、承諾の対価として建替承諾料を地主に支払う必要があります。

建替え承諾料の目安は、更地価格×3%~5%程度です。

また、更新料を支払う特約があれば、更新までの残存期間によっては借地権の売り手が更新料を支払わなければならない場合があります。

更新料の目安は、借地権価格×5%~10%程度です。

借地権を第三者へ売却する場合、こうした費用を地主に支払うことで交渉をスムーズに進めることができますので、あらかじめ覚えておきましょう。

借地権・底地を単独で売却すること難しい

借地権の売却について地主の承諾が得られた場合に、売り手にとって最も気になるのは、借地権がいくらで売却できるのか・・・ということでしょう。

借地権価格はその土地の更地価格×借地権割合で計算しがちですが、仮に更地価格が5,000万円の土地で、借地権割合が60%の場合、5,000万円×60%=3,000万円となりますが、実際には3,000万円で売ることは難しいのが現実です。

借地権だけを単独で第三者に売却する場合、売却価格は下がる傾向があります。

また、底地だけを単独で売却する場合も、底地だけを買おうとする買い手はまずいないため、売却価格は大幅に下がります。

イチゴのクリームケーキを考えてみましょう。

イチゴとクリームとスポンジケーキが一体となっている状態で、おいしいイチゴのクリームケーキとなります。

これを分離して、イチゴとクリームだけ売るとなったらどうでしょうか?

あるいはスポンジケーキだけ売るとなったら・・・

<イチゴのクリームケーキの事例>

そう、まとまって一体となっていいなければケーキの価値は大きく下がってしまいます。

イチゴとクリームだけ買う人も中に入るかもしれませんが、価格は大きく下がることでしょう。

ましてや、スポンジケーキだけを買う人がいるとは思えません。

借地権もイチゴのクリームケーキと同様です。

借地権(イチゴとクリーム)と底地(スポンジケーキ)は両方を合わせることで、価値が最大化します。

一方だけを単独で売却する場合は、希望する価格で売却することは難しいと覚えておきましょう。

借地権の第三者への単独売却が安い理由

借地権だけを売却する場合に、売却価格が安くなってしまう理由は、譲渡承諾料・建替承諾料・更新料などの費用を負担しなければならない、という点が挙げられます。

買い手からすれば、譲渡・建替・更新時に、いちいち地主の承諾や費用が必要なことは大きな負担と感じられるためです。

また、買い手が住宅ローンを利用して借地権を購入する場合は、地主に「融資承諾書」に同意してもらうことが一般的ですが、地主としては承諾書に同意することは義務ではありません。

そのため、地主の同意が得られなければ住宅ローンを利用できないこともあり、買い手としては大きなリスクとなります。

たとえ融資承諾書を取得できたとしても、借地権の物件は担保評価が低いために多額の住宅ローンを組むことが難しく、多くの自己資金を用意しなければならない傾向があります。

このように、買い手としては住宅ローンが組みにくいことがネックとなります。

こうした背景や状況から、借地権を単独で第三者に売却する場合は価格が安くなってしまうのです。

借地権の売却方法

次に、借地権を売却する場合の売却方法について見ていきましょう。

借地権を地主に売却する

まずは、借地権を地主に売却する、つまり地主に借地権を買い戻してもらうという一番オーソドックスな方法です。

<借地権を地主に売却する場合>

通常、地主が借地権を取り戻すことは法的に非常に難しく、借地人からの買い戻しの請求があった場合を除いてまず取り戻せません。

すなわち、地主には自分の土地を完全な所有権として取り戻せるという、大きなメリットであるといえるため、価格的にも好条件で売却できる可能性があります。

その他、譲渡承諾料や建替承諾料などの費用がかからないというメリットも挙げられます。

借地権を第三者に売却する

次に、地主が借地権の買い取りを放棄した場合に、地主の承諾を得て第三者へ借地権を単独で売却する方法です。

この場合の第三者とは、マイホームを探している個人はもちろん、不動産会社や投資家などのプロも含みます。

<借地権を単独で第三者へ売却する場合>

借地人は、借地権譲渡の承諾、必要に応じて建物建替の承諾、建物への抵当権設定の承諾に関して地主と交渉する必要があります。

第三者への借地権売却の地主の承諾が取れた場合は、承諾料を地主へ支払います。

また、その費用の負担に関して、購入者と相談しなければなりません。

なお、実務的には借地人と買い手の間で締結する売買契約は「借地権付建物売買契約」という建物の売買となります。

等価交換をして売却する

借地権と底地を交換し、土地を完全な所有権として地主と分けたうえで売却する方法であり、ケースにもよりますが借地人にも地主にも大きなメリットがある方法です。

<借地権と底地の等価交換のスキーム図>

上の事例において、等価交換前は1つの土地に借地権と底地が混在しており、借地人名義の建物が1棟建っています。

この土地の借地権割合(60%)を基準に、借地権と底地の等価交換を行ったところ、元の土地の60%を借地人が所有権として保有、残りの40%を地主が所有権として保有することとができます。

※これはあくまで事例であり、実際の交換比率は地主・借地人がよく話し合って決定します。

このように、借地権と底地の交換を行えば、土地面積は小さくなるものの借地人、地主それぞれが完全な所有権の形で土地を所有することができ、借地人は所有権に権利変換した土地・建物を売却することができるのです。

地主も残りの土地に建物を建てるなどして、土地を利活用することができるようになります。

また、一定の条件を満たす場合に「固定資産の交換の特例」の適用を受けることができ、節税効果を図ることもできます。

借地権と底地を同時に売却する(底借同時売却)

借地権と底地を合わせれば、完全な所有権に権利変換することができます。

そこで、地主と借地人が協力して借地権と底地を同時に売る(底借同時売却といいます)方法があります。

買い手にとっては、借地権と底地の両方を取得できるため土地・建物の所有権を取得することと同じ結果となります。

<底借同時売却のスキーム図>

しかし、実務上は売却代金の按分比率、地主・借地人・買い手の三者それぞれの条件や希望の調整などが必要となり、ハードルが高い面もありますので注意が必要です。

底地を買い取り所有権として売却する

最後に、借地人が底地を買い取り、土地・建物を完全な所有権として売却する方法です。

「借地権の地主に売却する」という方法の逆のパターンといえますが、現実的には底地を売ってくれる地主はほとんどいません。

地主の側に相続税納付のために現金が必要な事情があるなど、特別な事情がある場合に限定される、と考えておきましょう。

借地権を高く売却するコツとは

借地権に関する知識や売却方法について説明してきましたが、ここでは借地権を高く売却するコツについて説明します。

地主との関係が良好であれば地主に買い戻してもらいましょう

なんといっても、借地権を地主に買い戻してもらうことが一番高く売却できる可能性があり、大きなメリットのある売却方法といえます。

第三者へ売却する場合には、地主からもろもろの承諾の取得や各種承諾料などの費用負担の他に、立地条件(駅までの距離)や建物の築年数、住環境などの不動産的要素も考慮しなければなりません。

しかし、地主に買い戻してもらう場合には、承諾の取得も承諾料の負担もさまざまな不動産的要素もすべて気にする必要がなく、借地人にとって手間やコスト面で大きなメリットがあるといえるでしょう。

地主が買い戻すことに同意してくれれば、売却価格が少し安いと感じたとしても、結果的にその方がベターな場合が多く見られます。

ただし、この方法は地主の協力が必要不可欠ですので、地主と借地人の関係が良好でコミュニケーションが取れている場合は問題ありませんが、そうでない場合は注意が必要です。

専門家などの第三者に間に入ってもらう方がスムーズに話が進む可能性があります。

地主も底地を手放したい場合は共同で売却しましょう

何らかの事情で、地主も底地を手放したい場合には、借地人と地主が共同で底借同時売却を行いましょう。

借地権も底地も単独では価格が安くなりますので、底借同時売却は非常に経済的効果の高い売却方法です。

特に、底地だけを購入する人はまずいませんので、地主にも大きなメリットがあるといえるでしょう。

借地権と底地をまとめて売却できれば、所有権と同等の市場価格に近い価格で売却することが可能となります。

ただし、前述の通り、専門知識やノウハウなどハードルの高い面もありますので、底借同時売却に実績のある不動産会社の協力が必要です。

大切なのは地主とのコミュニケーションです

借地権を高く売却するために、最も大切なことは地主とのコミュニケーションや人間関係です。

もともと、地主と借地人は「土地を貸す・借りる」というだけの関係ではなく、相互に強い信頼関係のうえに成り立っている・・・ということを改めて思い出してみましょう。

例えば、朝晩など「おはようございます」「こんばんは」と顔を合わせたら笑顔で挨拶をする・・・といったコミュニケーションを取り続けることで、良好な人間関係を築くことができます。

大抵の人が社会生活の中で行っていることを行えばよいだけで、特別難しいことをする必要はありません。

借地権を売却する場合の6つの注意点

借地権の売却方法や高く売るコツについて理解できたと思いますが、ここでは売却する際の注意点について確認しましょう。

借地権を相続したとき

借地権も所有権の不動産と同様に財産ですので、相続することができます。

借地権を相続した場合、譲渡にはあたらないため地主の承諾は必要なく、譲渡承諾料も不要です。

相続人は、借地権付建物の所有権移転登記を行う必要があります。

地主には、「借地権を相続した」という通知を出しておくか、可能であれば報告と挨拶を兼ねて訪問するとよいでしょう。

借地権を相続した場合は、相続税の課税対象となります。

相続税を計算するためには、借地権の相続税評価額を算定しなければなりません。

計算式は下記の通りです。

具体的な事例で確認してみましょう。

<普通借地権の相続税評価額の算定事例>

上の事例では、路線価図による前面道路の路線価が30万円/平方メートル、借地権割合は70%、土地面積は200平方メートルですので、上記の計算式の通り、借地権の相続税評価額は4,200万円(ただし補正なしとする)となります。

借地権割合は国税庁の「財産評価基準書(路線価図・評価倍率表)」で確認することができます。

地主の承諾を必ず取る

地主の承諾なしに借地人の都合だけで借地権を売却した場合は、無断譲渡となります。

無断譲渡は土地賃貸借契約解除の正当な事由となるため、契約が解除されるリスクがあります。

その他に、駐車場として土地を転貸することなども地主の承諾が必要となります。

これまでに何度も説明してきましたが、借地権を売却する場合は必ず地主の承諾を取りましょう。

高く売るためにもスムーズに売却を進めるためにも、まず初めに、地主に売却の相談をすることが鉄則です。

歩み寄りを大切にWin-Winの関係を

借地人と地主の双方が自分の利益だけを優先して考えてしまうと、まとまる話もまとまらなくなる可能性があります。

例えば、借地権を地主に買い戻してもらう場合に、借地人が一方的に自分の希望売却価格だけを主張しても、地主が応じてくれる保証はなく、最悪の場合は交渉が決裂してしまいせっかくのチャンスを逃すことも考えられます。

お互いが歩み寄る気持ちを持つことで、Win-Winの関係が築けますので注意しましょう。

借地権の売却価格の査定

借地権価格や借地権の売却価格の査定は、地主の意向や売却方法、不動産的要素などにより大きく変わってきます。

具体的には、借地権売却についての地主との交渉状況、譲渡承諾料・建替承諾料などの費用、ローン承諾に関して、土地面積・地代・借地権の残存期間・エリア・建物の状態・立地条件・周辺相場などの不動産的要素など、査定価格を決定する要素は多岐にわたります。

相続税評価額の算定に利用される借地権割合も、売却価格を決定する場合にそのまま機械的に利用されることはあまりありません。

例えば、借地権60%底地40%の更地の場合、借地権が60%の価値を持っていると考えて売りに出しても、高いために売れないことがよくあります。

借地権割合は、借地権と底地を同じ権利者が所有している場合の割合です。

現実に借地権だけしか所有していない場合は、更地価格の40%程度の査定になることも珍しくありません。

ちなみに、底地だけの場合は更地価格の10%の査定となることもあります。

土地の完全な所有権(借地権+底地)を備えることにより、初めて借地権割合が目安となってくるといえるのです。

頼れるパートナーを選ぶ

借地権の売却に関しては、地域ごとに異なる取引慣習、多岐にわたる各種承諾業務、複雑な法律知識、重要な地主との交渉など、専門知識やスキル・ノウハウがないと、承諾の内容が不十分であったり、無駄な不利益や費用が生じたりといった事態を招きかねません。

そのため、必ず借地権売却に実績とノウハウのある不動産会社をパートナーとすることが大切です。

そうした不動産会社を探すためには、不動産一括査定サイトを利用するか、「借地権 売却」などのワードをインターネット上で検索してみましょう。

借地権に精通している不動産会社か否かは、ホームページを確認すれば判断することができます。

借地非訟手続きとは

借地権を売却したいが地主に承諾してもらえない場合、裁判所が相当と認めれば、地主の承諾に代わる許可の裁判を受けることができます。

これを「借地非訟手続き」といいます。

ただし、この場合、地主は第三者に優先して借地権を裁判所が決めた価格で買い取ることができます(これを「介入権」といいます)。

このように借地権を売却するために、借地借家法・借地非訟事件手続きに規定された法的手段である借地非訟手続きを選択することもできます。

しかし、借地非訟手続きは膨大な時間と労力を要するにもかかわらず、借地人・地主どちらにとってもあまりメリットのある手段ではありません。

できる限り、借地人・地主双方で話し合って問題を解決し、借地非訟手続きは本当に最終的な手段と考えておくべきでしょう。

実際の借地権売却のトラブル事例と解決策

最後に、借地権の売却にまつわるトラブル事例とその解決策を紹介しますので、参考にしてください。

地主さんに買い戻してもらうはずが・・・

【トラブルの内容】
Aさんは借地権を売却するにあたり、真っ先に地主のBさんに相談をしました。
Bさんは借地権を買い戻したいと考えていたため、双方が協議の結果、金額的にも折り合いが付きスムーズに借地権売買が成立するかと思われました。
しかし、Aさんが長男にこのことを報告したところ、長男から「二世帯住宅に建て替えて一緒に暮らしてはどうか」という提案がありました。
Aさんは悩んだ挙句、長男の提案を受け入れて、二世帯住宅への建替を決心したのです。
それを聞いて収まらないのがBさんです。
借地権を買い戻すための資金調達や買戻し後の土地の活用方法などの準備をしており、「突然話が違うじゃないか!」と、かなり感情的になってしまいました。
このような状態で、もちろん建替の承諾をするわけもありません。
お互いが自分の主張を続け、話は平行線のままとなってしまったのです。

【解決策】
交渉が長期化したために、Aさんは借地権を専門とする不動産会社に間に入ってもらいました。
不動産会社は、AさんとBさん双方の希望や言い分をよく聞き、話し合いを重ねた結果、土地面積は半分程度になりますが、借地権と底地を交換して、それぞれが所有権として土地を持つことはどうか、と等価交換のスキームを提案しました。
AさんもBさんもこれ以上トラブル状態でいることは避けたかったので、その提案を受け入れました。
その結果、Aさんは二世帯住宅を建てて長男と同居し、Bさんは自分の土地にアパートを建てて有効活用することができたのです。

道路に接していない借地だった

【トラブルの内容】
借地が道路に接していないために売却できない・・・という事例です。
建築基準法では、建物を建てるためには敷地が2メートル以上建築基準法上の道路に接していなければならないと定められています。
Cさんは借地権を売却しようと考え、不動産会社に相談に行きました。
Cさんの敷地(借地)はいわゆる旗竿地の形状をしており、通路部分が2メートルあったため問題ないかと思われましたが、借地の契約書をよく調べてみると通路部分を借地として契約していなかったのです。
この場合、奥の借地部分は道路に接していないため、建物が新しく建てられないこととなります。
Cさんは不動産会社から、「建物が建てられない借地では、売却することはできません」と言われ、途方に暮れてしまいました。

<Cさんの借地の状態>

【解決策】
解決策として、不動産会社は「通路部分を改めて借地契約する」ことを提案しました。
その分地代が増えますが、建物が建てられないのでは売却できません。
Cさんは了承し、不動産会社に地主のDさんと交渉してもらうよう依頼しました。
結果的には、Dさんが借地権を買い戻すこととなったのですが、Bさんも不動産会社も第三者への売却価格より高く買い戻してもらったため、嬉しい結果となりました。

借地の契約書が見当たらない!

【トラブルの内容】
Eさんは相続した借地権を売却しようと思い、まずは借地の契約書(土地賃貸借契約書)を確認しようと考えました。
しかし、家中探しても契約書を見つけることができません。
Eさんは「このままでは書類不備で借地権を売却できないのでは・・・」と焦ってしまいました。

【解決策】
借地権の保全には、下記の2つのポイントがあります。
・借地上の建物が登記されていること
・地代をきちんと支払っていること
建物の登記の有無を確認するためには、法務局に行って「登記事項要約書」や「登記事項証明書」を確認する、もしくは、毎年4月頃に送られてくる「固定資産税納税通知書」に家屋番号が記載されているかを確認する、という方法があります。
また、地代の支払いは領収書や銀行の振込み履歴などで確認できるでしょう。
借地の契約書は、もちろん重要な書類ですが、見当たらない場合は慌てずにこうしたポイントを確認しましょう。
Eさんの場合は、父親名義で建物が登記されており、地代の振込み履歴も振込通知書で確認することができました。
その結果、遺産分割協議や地主との交渉を経て、無事に借地権を第三者へ売却することができたのです。

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地主との良好な関係が大きなポイント!

借地権を売却するにあたっては、何はともあれ地主に相談することが最も大切です。

第三者へ売却する場合も、地主に買い戻してもらう場合も、いずれにしても地主の承諾が必要だからです。

そのため地主との良好な関係が大きなポイントとなりますので、日頃からの地主との付き合いや人間関係に注意しましょう。

また、借地権を売却する場合は、借地権に精通した解決能力のある不動産業者に相談することが大きなカギを握ります。

そうしたパートナーを見つけて、あなたの借地権売却を成功させてください。

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ABOUT US
弦本 卓也
1987年、埼玉県生まれ。大学卒業後、大手広告会社「リクルート」にて不動産メディア「スーモ」(SUUMO)の運営に従事。新卒で入社して、スーモのメディアづくりを7年、その後にエンジニア組織の組織づくりを4年行う。 また、リクルート社内の部活動制度にて「大家部」を立ち上げ部長を務める。不動産投資に関する情報交換や物件見学のワークショップなどを行う。 入社2年目に新築一戸建ての広告を取り扱う部署に異動したことをきっかけに、「いい企画を作るためには、まずは自分で経験したい」という想いから個人で新築一戸建てを購入。その翌年には売却分野を担当したことをきっかけに売却も経験。マンションの売買なども行い、11年間で11回の引っ越しを経験。 「新しい住まいや暮らしを自ら探究したい」という気持ちで購入した東京都千代田区の神保町の中古ビル「弦本ビル」は、コワーキングスペース、シェアオフィス、シェアハウス、飲食店が入居する複合ビルとなっており、20代を中心とした若手社会人や学生のやりたいことを実現する場所として注目を集めている。3年間で延べ1万人以上の来場者を記録し、家賃年収1,400万円を達成しながら満室経営を続けている。 お金面とビジョン面の両立を大切にしており、モットーは「一人ひとりの可能性をもっと世の中に」。会社員を続ける傍ら、学生時代に起業した会社とあわせて株式会社を3社創業。うち1社は売却し現在は2社を経営している。他にもエンジェル投資家として若手実業家の支援を手がける一面も。 日経新聞や不動産業界紙、書籍や雑誌、テレビなどでも多数の注目を集めておりセミナー講師なども行う。宅地建物取引士を保有。