あなたは「不動産の買取」と聞いてどのようなイメージを持ちますでしょうか。
なんとなく胡散臭いイメージを持つ人、安く買いたたかれそうイメージを持つ人、仕組みが分からず判断がつかない人・・・さまざまなイメージを持つ人がいるでしょう。
不動産仲介のコマーシャルはテレビでもよく流れていますが、不動産買取は一般的に認知度が低いと考えられます。
そこで今回は
・買取と仲介の違い
・買取のメリット・デメリット
・買取の仕組み
・買取価格の出し方
・買取についての注意点
・買取と仲介の選び方
など、不動産の買取について、詳しく具体的に解説しています。
仲介での査定価格であるエンド価格と買取による業者価格とでは、大幅に違ってきます。
その差が何百万円にもなることもあります。
そのため、あなたが不動産を売却する時に、買取の仕組みやメリット・デメリットなどを把握したうえで買取を選択することが大切です。
ぜひこの記事を参考にして、失敗のない不動産買取を行ってください。
目次
1.不動産売却における「買取」と「仲介」の違い
不動産の売却方法は大きく「仲介」と「買取」の2種類があります。
まずは、それぞれの方法について説明します。
(1)仲介で売却する方法
仲介とは、あなたの不動産の売却を仲介業者へ依頼し、その仲介業者が不動産を購入したい買主を探します。
価格は仲介業者が査定したエンド価格(相場価格)で売却することとなります。
買主が見つかって取引が終了すれば、仲介業者へ仲介手数料を支払います。
買主は主にエンドユーザー(個人客)であり、あなたが依頼した売主側仲介業者が買主を探してくれば両手仲介、レインズなどから情報を取得して他の不動産仲介業者が買主を探してくれば片手仲介となります。
[su_box title=”関連記事” style=”bubbles” box_color=”#0075c2″ title_color=”#ffffff”]・レインズ(REINS)とは?用途やログイン・閲覧方法を解説![/su_box]通常は、売主側仲介業者は多くの仲介業者へ物件情報を広く発信し、早期に買主が見つかるように活動しますので、片手仲介となります。
<仲介での売却イメージ>
次に、仲介で売却するときの流れについて説明します。
<仲介の流れ>
・物件の査定
まず、不動産査定一括サイトなどを利用して、複数の仲介業者から査定を受けます。
この段階では、物件所在地や面積などの簡易情報とあなたの個人情報により机上査定を受けます。
複数の仲介業者の中からよいと思われる仲介業者をピックアップし、実際に現地査定をしてもらったうえで、査定価格や売却戦略を提案してもらいます。
・媒介契約締結
提案内容に満足できれば、媒介契約を締結します。
媒介契約は、一般媒介・専任媒介・専属専任媒介の3種類から選びます。
・売却活動開始
媒介契約を締結した売主側仲介業者は、レインズへの物件情報登録、各種不動産ポータルサイトでの情報発信、他の仲介業者へ物件紹介、既存顧客への物件紹介、個人客へのポスティング活動、新聞チラシやDMの配布などを行い、広く物件情報の周知を図ることによって買主を探します。
・内覧
仲介業者立会いのもと、購入希望者が現地に来て内覧を行い、家の内部や周辺環境などをチェックします。
・購入申込書受領
購入申込書を受領し、売買価格や契約条件などについて不動産仲介業者を通して交渉します。
・売買契約締結
契約条件が整えば、売買契約を締結します。
・決済・引渡し
最終的に売買代金の決済をし、物件の引渡しが終了します。
仲介業者は、このような不動産売却に関する一連の流れをコントロールし、取引が安全・確実に進むようサポートしてくれます。
(2)買取で売却する方法
買取には「即時買取」と「買取保証」の2種類がありますが、ここでは「即時買取」に限定して説明します。
不動産の買取とは、買取を専門としている買取業者が、あなたの不動産を直接買うことをいいます。
仲介の時のような物件情報を広く発信する売却活動は不要となり、相対取引での早期売却が可能となります。
価格は、買取業者が査定した業者価格となり、エンド価格の60~80%程度になります。
また、仲介業者が介在していないため、仲介手数料を支払う必要はありません。
<買取での売却イメージ>
買取の流れはシンプルで、買取業者の査定を受け、買取価格に納得がいけば売買契約し、決済・引渡しとなります。
<買取の流れ>
・物件の査定
ここでも不動産査定一括サイトなどを利用して、複数の買取業者から買取価格の査定を受けましょう。
複数の買取業者から査定を受けることにより、価格の妥当性が検証できます。
・買取価格の提案
契約条件や引渡し条件を含めて、買取価格の提案を受けます。
・売買契約締結
最も契約条件のよい買取業者と売買契約を締結します。
・決済・引渡し
最終的な売却代金を受け取り、物件を引渡します。
買取業者とあなたの2者での意思決定で取引が進むため、早期売却が可能です。
2. 不動産買取の8つのメリット
仲介と買取の違いがわかったところで、続いて買取の8つのメリットについて確認しましょう。
(1)即金決済も多く早期に現金化できる
仲介の場合と大きく違うのは、短い期間で売却できることです。
買い手を探すための売却活動の期間がないため、売主の事情が許せば最短で1週間、遅くとも1ヶ月以内に決済・引渡しが可能です。
また、買取業者の場合は現金決済も多く、ローン不可による契約キャンセルもありません。
このように、買取は仲介に比べて現金化できるスピードが圧倒的に早いことが特徴です。
(2)売主の瑕疵担保責任が免責される
仲介の場合は、買主に対して瑕疵担保責任を負う義務があります。
瑕疵担保責任とは、物件の隠れたる瑕疵(=キズ、不具合、欠陥の意味)が発覚した場合に、修復などの責任がある、ということです。
[su_box title=”関連記事” style=”bubbles” box_color=”#0075c2″ title_color=”#ffffff”]・瑕疵担保責任とは?期間・時効・免責について詳しく解説![/su_box]具体的には、雨漏りやシロアリ被害、給排水管の故障などについて、通常引渡し後2~3ヶ月間、買主に対して修復などの義務を負います。
しかし、買主が買取業者の場合は、不動産取引のプロということで保護の必要がないため、瑕疵担保責任が免責(責任を負わない)となることが一般的です。
(3)リフォーム費用が一切かからない
仲介で売却する場合も、リフォーム工事を行わずに現況有姿で売却することもありますが、買主からの要望で簡単なクロス張替や専門業者によるハウスクリーニングを行う場合も多く見られます。
買取の場合は、決済後にすべて買取業者が対応するため、このようなリフォーム費用は一切かかりません。
(4)他人に知られずに売却できる
仲介の場合は、買い手を探すために物件情報を広く発信し、インターネットでの掲載や新聞チラシなどの広告活動、現地でのオープンルーム開催などの販売活動を行います。
そのため、近隣住民やそのエリアの物件に興味を持っている人には、あなたの家が売りに出ていることは知られてしまいます。
しかし、買取の場合はこのような売却活動が必要ないため、他人に知られることなく売却することが可能です。
(5)仲介手数料を支払わなくてよい
買取の場合は、買取業者との相対取引のため、仲介手数料を支払う必要がありません。
仲介手数料は、売買価格×3%+6万円で算定されます(この金額は上限額ですが、ほとんどの場合、上限額を請求されます)。
3,000万円で売却した場合、仲介手数料は(3,000万円×3%+6万円)+消費税=103万6,800円となります。
しかし、買取の場合はこの金額が節約できますので、その効果は大きいと言えます。
(6)明確な資金計画が立てられる
仲介の場合は、買い手より指値(買いたい価格を指定してくること)が入ったり、状況によっては値下げをしたり、最終的な売却価格は査定価格と異なることがあります。
しかし、買取の場合は、査定価格=最終的な売却価格、ということになりますので、資金計画が明確です。
(7)内覧対応の必要がない
仲介の場合は、買い手が部屋の中を見学に来るという内覧に対応しなければなりません。
内覧を成功させるためには、室内の清掃や水回り設備の重点的な清掃、整理整頓、内覧日当日の対応など、売主としてさまざまな対策を行う必要があります。
内覧者がエンドユーザーのため、そういった対応を行わないと、物件の価値やイメージがつかめないからです。
しかし、買取の場合、買主はプロである買取業者ですので、特に内覧対応は必要ありません。
そのため、その分の手間や労力を省くことができ、気楽です。
(8)難あり・訳あり物件でも売却可能
再建築できない、既存不適格になっている、違反建築である、ボロボロの建物が建っている、土壌汚染の可能性がある、事故物件である・・・などの難あり・訳あり物件の場合、エンドユーザーであれば敬遠されて売れませんが、買取業者による買取であれば売却することが可能です。
3.不動産買取の2つのデメリット
次に、不動産買取の2つのデメリットについて説明します。
(1)相場価格であるエンド価格より安くなる
買取の場合の最大のデメリットは、売却価格が安くなることです。
一般的に、相場価格であるエンド価格の60~80%程度になります。
駅から遠く需要が厳しいなどの弱点を抱えた物件では、エンド価格の50%以下になる場合もありますし、難あり・訳あり物件ではもっと安くなる可能性もあります。
(2)物件によっては買い取ってもらえないこともある
難あり・訳あり物件でも買い取ってもらえる可能性があると説明しましたが、中にはどうしても買い取ってもらえない物件もあります。
買取業者は、再販するために物件を買い取ります。
買取業者の企業努力やノウハウによって付加価値をつけたり、課題を解決したりして再販できる物件は買い取りますが、例えばまったく需要のないエリアにある物件などは、企業努力やノウハウではどうにもなりません。
そのため、再販の見込みの立たない立地や買換え需要のほとんどない地域にある物件などは、たとえ価格を極端に安くしても買取が難しいでしょう。
4.買取価格の算定方法
買取業者は、買取した物件にリフォームやリノベーションといった付加価値をつけて、再販するか、あるいは賃貸で運用することもあります。
そのため、再販できる価格や期待利回りに見合う価格をまず査定します。
再販価格の査定方法は、下記の3種類があります。
・取引事例法
対象物件と条件が近い取引事例をピックアップし、それらを基準として対象物件の周辺環境や向き、階数、面積などの地域要因や個別要因を反映させて価格を査定する方法です。
必要に応じて、マーケットの変化などを時点修正という形で査定価格に反映させます。
・積算法
主に建物の査定価格を算定する方法で、対象物件の構造やグレード、延床面積などから同じ建物を新築した場合の価格を算定し、減価償却などを考慮して現在の価格を算定する方法です。
・収益還元法
期待利回りから価格を算定するという不動産投資における算定方法です。
一般的にエンドユーザー向けの土地や中古マンションは取引事例法で、中古一戸建などの建物は積算法で算定することが多いです。
次に、再販するためのコストを算定します。
主なコストは以下の通りです。
・購入時の不動産取得税
・購入時の登録免許税などの登記費用
・リフォームまたはリノベーション費用
・再販時の広告宣伝費
・再販時の仲介手数料
・保有期間中の諸費用(管理費など)
・保有期間中の固定資産税
・人件費
など
これらのコストに粗利益(10%目安)や売れ残りリスクを加え、再販価格から差し引いて買取価格を算定します。
例えば、3,000万円で再販できる物件で、コストが300万円、粗利益が300万円、売れ残りリスクは考えない場合、買取価格は2,400万円となります。
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5.「仲介」と「買取」どちらを選べばいいの?
ここでは、不動産を売却する時に仲介と買取のどちらを選べばよいのか、その判断基準について具体的に説明していきます。
(1)仲介を選ぶべきケース
・売却時期はいつでもよく、時間的余裕がある
売却時期に制約がなく、時間的余裕がある場合は、仲介で売却しましょう。
このようなケースは、査定価格より高めの売出し価格を設定し、じっくり売却活動を送っていくと高値で売れる可能性があります。
・物件が人気物件である
物件が出ればすぐに売れてしまうような人気物件(特に人気マンションや高級住宅街の一戸建)の場合、強気の価格設定でもすぐに買い手が現れる可能性があるため、仲介で売却するべきです。
・築浅物件である
築年数が5年以内のような築浅物件の場合は、住宅ローンの元金部分がほとんど残っていると考えられます。
そのため、買取価格ではローン残債を支払いきれず、不足分を自己資金で補填することとなるケースが多く見られます。
そのため、時間的猶予がある時は、少しでも高く売却できる仲介を選んだ方がよいでしょう。
(2)買取を選ぶべきケース
・転勤などで予定期日までに確実に売却したい
転勤など引越しのスケジュールが確定おり、その時期までに売却したいというようなケースは、買取で進めるとよいでしょう。
期限内に確実に現金化できるため、安心です。
・買換えにより資金が必要な時期が決まっている
買換えのために、新しい物件の購入代金を支払う時期までにどうしても資金が欲しい・・・というようなケースは買取がよいでしょう。
決まった期日までに確実に現金化でき、早期の対応も可能だからです。
・近所の人や会社の人に売却することを知られたくない
近所に知られることなく売却するためには、売却の事実や物件情報をクローズにする必要があります。
買取であれば、買取業者と売主だけの話し合いで売却が完了するため、売却することを近所の人や会社の人に知られずにすみます。
・築30年以上の築古物件や心理的瑕疵のある物件などのケース
旧耐震基準の物件や事件・事故があった物件など、エンドユーザーがおよそ購入しないと考えられる物件については、買取を選んだ方がよいでしょう。
以上のポイントに当てはめて、あなたの不動産をどちらの方法で売却するべきか判断しましょう。
6.不動産買取における注意点
買取を選んだ場合に、注意するべき点があります。
これらの注意点もよく確認したうえで、買取業者との話し合いを進めてください。
(1)仲介で依頼したが売れずに安く買い取られた
不動産業者に仲介で売却を依頼したが、なかなか売れずに時間が過ぎていき、結局はその不動産業者に安く買い取られた・・・といったケースがよくあります。
その不動産業者の思惑は
最初から買い取るつもりで高い査定価格を提示 → 売主をその気にさせて媒介契約を締結 → 売却活動をほとんどしない → 売主が困るタイミングを見計らって買取を提案
というものであり、悪徳業者である可能性があります。
そういった悪徳業者につけ込まれないよう、十分に注意が必要です。
(2)「押買い」に注意する
貴金属やブランド品の買取では、「押売り」ならぬ「押買い」という迷惑業者がいますが、不動産の買取でも「押買い」が出没しています。
郵便ポストに入っていた「不動産を高値買取します」といったチラシをもとに連絡すると、「すぐ査定します。現金一括で高値買取します」といった提案をされますが、実際には不当な価格での買取を執拗に勧誘されることがあります。
このような「押買い」業者も存在するので、チラシなどへの連絡には注意が必要です。
(3)物件の引渡し条件をよく確認する
買取提案を受けたら、買取価格だけでなく契約条件や引渡し条件もよく確認しましょう。
残置物や不要な設備などの撤去費用の負担でトラブルになることがあります。
契約前に契約条件や引渡し条件などをよく確認し、不明な点があれば必ず確認しましょう。
7.まとめ
不動産の買取について、仲介との違いやメリット・デメリット、注意点などについて解説しました。
不動産買取は、現金化までの時間を大幅に短くすることができます。
その分、価格面でのデメリットが生まれますが、その両方を天秤にかけて判断しなければなりません。
この記事を参考にして、後悔のない不動産売却ができるようにしましょう。
また、仲介でも買取でも一番大切なことは、優良な不動産業者と取引することです。
自社の利益のみならず、売主の立場に立った視点を持っている担当者、そういった企業風土を持つ会社を選ぶことによって、あなたの不動産売却は成功することでしょう。
決して査定価格だけで選ぶことなく、複数の不動産業者からホンモノを選ぶことが最良の方法です。