新築戸建には建て替えという手段もありますが、新たな土地に新築物件を求める場合
- 土地を購入して、その土地に見合う住宅を建築する
- 建売分譲を買い求める
- 建築条件付き土地で新築住宅を建てる
という3つの方法があります。
今回は3つの新築戸建を取得する手段のなかの、「建築条件付き土地」についてみていきましょう。
目次
建築条件付き土地とは
建築条件付き土地とは、3ヶ月など一定期間内に建築請負契約が成立することを条件として売買する土地取引です。
[su_box title=”関連記事” style=”bubbles” box_color=”#0075c2″ title_color=”#ffffff”]・請負契約とは?必要な印紙代や委託・委任契約との違いについて解説![/su_box]建築条件付き土地の比率は、10年以上もむかしのほうが感覚的にやや多かったのではないかと思いますが、条件付き土地は現在でも新築戸建住宅を求める場合の一方法として、多くの住宅取得者に利用されています。
建築条件付き土地は独占禁止法の抱き合わせ販売にあたる?
ただ建築条件付き土地は、独占禁止法の抱き合わせ販売にあたるとの指摘もあり、2003年に不動産公正取引協議会は新たな方針を「業界ルールの3原則」で表明しています。
「業界ルールの3原則」は以下の内容です。
1)建築請負契約が成立する期間は「3ヶ月程度」ではなく、期限は設けない
2)建築請負契約が成立しなかった場合の白紙解除は、停止条件でも解除条件でもどちらでもよい(3原則では、もとは「停止条件」であったのを「解除条件」でも良いとしている。つまり解約手数料等を請求もあり得るとしている)
3)建築を請け負う業者に制限は設けない
しかし建築条件付き土地が、独占禁止法の抱き合わせ販売にあたると、ユーザーから最終的に指摘されないのは、条件付き土地が消費者側にも一定のメリットが確実にあるからと考えられます(そもそも独禁法の指摘自体をはじめて耳にする人もいるでしょう)。
建築条件付き土地の白紙解除について
ただ「一定期間内に建築請負契約が成立しなかった場合」の土地の白紙解除については、売主が買主から受領した土地代金等を全額買主に返還しなければなりません(不動産の表示に関する公正競争規約第6条1号ウ)。
これが建築条件付き土地の原則であることに変わりありません。
ただ、買主が建物を建てる意思があったのかということが問題になるような事案では、全てがこの原則に当てはまるわけではありません。
詰まるところ売主・買主とともに、建築請負契約が成立することを目指し、土地の売買後は誠実に住宅の打ち合わせを進めなければなりません。
仲介業者の建築条件付き土地の注意点
建築条件付き土地は、一般的に自社物件がほとんどですが、なかには仲介業者が紹介する建築条件付き土地もあります。
ここでは取引形態が仲介で建築条件を付けている土地の場合の注意点を解説してみます。
条件付き土地は自社物件と仲介物件で違う
住宅を建てる土地はいろんな区分けができますが、建築条件付き土地をよく見てみると自社物件と仲介物件に分けられることがわかります。
そしてすべての条件付き土地の仲介物件に当てはまるわけではありませんが、概していうと、更地のままでは売れないから条件付き土地として売り出していると思われるケースがやや目立ちます。
いっぽう自社物件として売られている建築条件付き土地は、大規模な分譲地でよく見かけることが多く、こちらの場合は比較的優良な土地が多く見られます。
仮にあなたが見つけた土地が、先の前者にあたる仲介物件且つ建築条件付き土地だった場合、購入を決めるのはよく考えてからにした方がいいでしょう。
理由はすでに説明した通り、条件付き土地として売られているのは、更地のままでは売れないという何らかの理由が隠れている可能性が高いからです。
できればそのような土地は専門家に見てもらってから、「買う・買わないの」判断を下すほうが良いでしょう。
また新しい分譲地などで見かける建築条件付き土地は、自社が販売している土地ということもあり、販売当初から一定期間内に建物の建築を条件にしています。
もちろん条件付き土地というのは売る側のリスクが少ない販売方法ですから、逆に買う側は注意を要します。
ただ、先の前者のような仲介物件よりリスクは少ないでしょう。
ともかく取引形態が仲介で、建築条件を付けている土地には十分注意してください。
建物価格分には仲介手数料がかからない
おなじく取引形態が仲介で建築条件を付けている土地の注意点を、もうひとつ追加しておきます。
それは、仲介会社から建築条件付き土地を購入した場合、建物価格分には仲介手数料がかからないということです。
仲介会社から紹介されたのは建築条件の付いた土地であり、建物についてはまだ建ってまいせん。
従って仲介手数料は、あくまで土地の価格分だけしか支払う必要はありません。
ここのところを間違わないようにしてください(もしこれをやる業者がいれば、それは違法行為に該当します)。
建築条件付き土地と建売住宅との違い
新築住宅を取得する場合、建築条件付き土地と建売住宅との違いを理解しておくことはとても重要です。
両者の違いはどういうところにあるでしょう。
[su_box title=”関連記事” style=”bubbles” box_color=”#0075c2″ title_color=”#ffffff”]・新築一戸建てを購入するときの諸費用や注意点を解説!【建売・注文住宅】[/su_box]建売住宅とは?
建築条件付き土地と建売住宅との違いの前に、建売住宅とは何かについて正確に掴んでおきましょう。
建売住宅とは、不動産会社が「土地+上モノ(分譲住宅)」をセットで販売している物件で、物件によっては工事中から売り出しているものありますが、上モノ(分譲住宅)のプランはすでに決まっている建売住宅は、ユーザーが完成品を見てから購入を決められます。
[su_box title=”関連記事” style=”bubbles” box_color=”#0075c2″ title_color=”#ffffff”]・建売とは?注文住宅との違いやメリット・デメリットを比較![/su_box]また建売住宅の価格は相対的に安く設定されています。
そのため優良な建売住宅なら、はじめての住宅取得者にもおすすめです。
しかしセット販売タイプの建売に対し、“売り建て”住宅といわれる注文系の建築条件付き土地が、よく比較されるでしょう。
それは「建築条件付き土地+上モノ」が純然たる注文住宅ではないところに原因があります。
もはや条件付き土地は建売住宅と同種
建築条件付き土地は「自由設計・フリープラン」を売りに販売を広げてきました。
しかし実際に出来た上モノは、一般的的な大工さんが建てる普通の住宅と変わりありません。
そのため次第にユーザーも、名前の通ったハウスメーカーや地域で有名なビルダーの条件付き土地には一応注目しますが、それ以外の条件付き土地にはあまり響かなくなりました。
分譲地を見てもハウスメーカーの建売住宅はある程度消化も良いようですが、それ以外のものは余程価格がこなれていなければ、物件の動きは極端に鈍くなっています。
もちろん条件付き土地も同じ傾向が見られます。
そのためユーザーの見方も、建売住宅であろうと建築条件付き物件であろうと、両者を同じように捉えています。
説明でも分かる通り、元々建築条件付き土地は建売住宅とは全く違うものです。
しかしユーザー目線で見ると、条件付き土地は実質的に建売住宅の一種と考えられます。
本来なら建築条件付き土地の上モノは、思い通りの家を設計できる注文住宅なのです。
しかし、少なくとも現在の条件付き土地に建てる住宅は、ゼロから思い通りに設計できる注文住宅ではなくなっています。
建築条件付き土地のメリット・デメリット
それでは最後に、建築条件付き土地のメリット・デメリットあげてみます。
建築条件付き土地のメリット
ユーザーにとってメリットが少ないと思われがちな建築条件付き土地ですが、端からフルオーダープランを望んでいない特定のユーザー層には、かえってメリットと思える部分も多いようです。
建築条件付き土地のメリットには、どのようなものがあるでしょう。
建築条件付き土地は概して割安物件が多い
建築条件付き土地はほかの土地より割安物件が多くなります。
従って希望を満たす土地になれば結構なお買い得な物件といえます。
また違った視点ですが、価格や諸費用が早く掴める建築条件付き土地は、資金計画が立てやすいというメリットもあります。
注文住宅を建てるよりも、打ち合わせに時間をとられない(建築の初心者向き)
建築条件付き土地は、建築プランが建売化する傾向が高くなります。
ただ、普段忙しく建築の打ち合わせに参加するのが困難な方にとって、打ち合わせにそれほど時間をとられない建築条件付き土地は、スムーズにものが決まり打ち合わせにそれほど時間をとられません。
そのため建築の初心者にはかえって条件付き土地のほうが向く場合もあります。
売主が施工会社となることが多いため建築予定が把握しやすい
土地の売主が建物の施工会社となることが多い建築条件付き土地は、建築予定が掴みやすくなります。
制限を受けたとしても自由な間取りで建物を計画できる
建築条件付き土地はモデルプランを流用した間取りが使われるとよくいわれます。
しかし、たとえプランに制限を受けたとしても、原則的には自由な間取りで建物を計画できます。
デザインエッセンスを残しながら安価な注文住宅を建てられる
施工会社にデザイン力がある場合、その会社の建築条件付き土地は、会社のデザインエッセンスを残しながら、しかも安価な注文住宅を戦略的に提案してくれる場合があります。
顧客がその会社の間取りの傾向が好みのファンなら、かなり“おいしい”条件となるでしょう。
建築条件付き土地のデメリット
土地を販売する業者にとって、建築条件付き土地はリスクが少ない商売ですので、土地を求めるユーザーにとっては幾つかのデメリットがあります。
注文住宅の新築一戸建てのように、自由に家を建てられるわけではない
建築条件付き土地の上モノは原則的に注文住宅の新築一戸建てです。
ただ業界の慣習からか、建築条件付き土地の上モノは全くの注文住宅と同じように自由に家を建てられるわけではありません。
そのため建主があくまで自由設計を望む場合は、建築条件付き土地物件はあまりすすめられません。
土地+注文住宅の総額が高くなる
建築条件付き土地は、競合する他社がはじめからないため相見積りがありません。
そのため施工業者はある程度自社の価格を通せます。
建築条件付き土地+上モノはある意味で建売に似ていますが、土地+注文住宅の総額は建売より高くなりますし、価格も下がりにくい傾向があります。
多くの場合、土地の契約から3ヶ月以内に設計を決めて工事請負契約する
建築条件付き土地は、土地の契約から3ヶ月以内(または6ヶ月以内など)に設計を決めて工事請負契約しなければなりません。
もし所定の期間に決められない場合は、土地の契約は白紙の状態に戻るため、顧客にとっては時間と労力のロスでしょう。
まとめ
こうして建築条件付き土地をみていくと、思ったほど自由に建てられない理由が見えてきます。
結局、建築条件付き土地には、自由設計についての過度な期待を持たないほうが良いのかもしれません。
逆に土地そのものには将来の売却も考慮しながら、より良い物件を探されると良いでしょう。