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不動産屋は独立は簡単だが継続するのが難しいと考えられる理由

不動産仲介業の独立は、他業界での独立よりも比較的簡単と言われています。それは、不動産仲介業は物件の仲介によって手数料をもらうビジネスモデルであり、在庫などを仕入れずに開業できるため、少資本で起業できることが理由だといえます。一方で、不動産仲介業は毎月安定した売上が保証されているビジネスモデルではありませんので、その分継続するのが難しい業界です。

今回は、不動産屋を独立して継続するために、難しいと考えられやすい部分について紹介をします。

目次

不動産仲介業は毎月の売上が保証されていないため資金繰りが難しい

不動産仲介業は毎月の売上が保証されていない

不動産仲介業は、物件の仲介による手数料が売上となるため、物件の契約が成立しないと売上にはなりません。不動産は単価の高い商品である分、小売業やサービス業などと比べて簡単に利用されるわけではありませんので、毎月必ず売上が入るとはかぎりません。また、一人あたりの接客の時間も長く、手間がかかる割に、契約に至らない場合には売上がまったく入らないということも往々にしてありえます。

不動産仲介業の資金繰りで気をつけるべきは、運転資金となる固定費の削減

不動産仲介業の資金繰りで気をつけるべきは、売上が必ずしも入ってくるかが分からないなかで、必ず支出として出ていくことが決まっている固定費のコントロールです。とくに事務所の家賃と人件費は、一度固定費として発生をすると、退去や解雇をすぐにすることができない事情から、増減が難しい支出となってしまいます。

さらに、契約が完了しないと入金されないため、入金までに時間がかかることにも注意が必要です。実際に、次の月には売上が入っていることが決まっていても、その月の家賃や人件費が払えないことで、黒字倒産になってしまうリスクもあります。

不動産仲介業の失敗の原因の多くが資金繰りの問題です。とくに独立直後には売上がすぐに入らない可能性が高いため、あらかじめ毎月の固定費の支出を減らしておくことが重要です。

毎月の売上が安定して入る自信がついてくるまでは、できるかぎり小さくはじめることがおすすめです。ひとつは、事務所の家賃を減らすために、自宅を事務所にする方法です。

他にも、人件費に関しては、まずは自分一人で起業をして、どうしても人手が必要なときだけ、一時的にパートで手伝いに入ってもらうか、社外にアウトソーシングして外注をおこなうかで、できるかぎり固定費としない工夫ができるとよいでしょう。

不動産仲介業の売上が安定して入るように集客や管理を仕組み化する

不動産仲介業の売上が安定しないのは、集客が安定しないことが要因のひとつです。そのため、安定して集客ができるように、仕組み化できないかを検討しましょう。たとえば、インターネット広告への掲載もひとつです。物件を掲載してみると、おおよその1物件あたりの問い合わせの数がわかるようになってきます。

問い合わせの数が安定して入るように、掲載する物件や広告費をコントロールすることで、営業の稼働が止まらないように調整をしていきましょう。また、インターネットでの広告以外でも、人づてで紹介をしてもらう仕組みを整えましょう。周辺事業をやっている業者などと提携をおこない、相互に紹介をするなどで安定して紹介してもらえるように、提携先を増やしていくのもよいでしょう。

仲介が成立した際に、契約後に他のお客さんになりそうな人を知り合いを紹介してもらうというのもよいでしょう。

不動産仲介業の売上には波があるため、収入はきちんと確保しておく

不動産仲介業は契約が一度決まると得られる報酬は大きいもの

不動産仲介業は、1回の契約で、賃貸の場合には家賃の0.5ヵ月分から1ヵ月分、売買の場合には物件の価格の3%+6万円が売上の目安です。不動産という価格の高い商品を扱うなかで、在庫を持たずに高い仲介手数料をもらうため、一度の売上は大きく、売買仲介の場合は年に数件の契約をするだけでも、1年間生活できるほどの売上が得られることもあります。

一方で、安定して新規に顧客を開拓し続けることが必要

しかし、不動産仲介業は新規顧客の開拓が重要です。人生でそう何度も引っ越しするものではないため、あまりリピートしないためです。そのため、売上が入る際には、仲介手数料以外の売上も上げられるように準備しておくとよいでしょう。たとえば、引っ越し業者の紹介やインターネット回線の業者の紹介などでも、紹介先の業者から紹介料をもらえる場合があります。人数は増えなくても、一人あたりの単価が上がればそれだけ売上につながるのです。

売り上げた資金は大切に残しておく

また、売上が入った際に、財布の紐がゆるみ、支出を増やしてしまうのも問題です。派手にお金を使ってしまうケースも多く耳にします。売上はいつ途絶えるかがわからないものです。資金は大切に残しておくようにしましょう。

このように、不動産仲介業は収入が安定しないリスクがあることから、難しいと考えられることもありますが、安定した収入につなげるために工夫することも可能です。運転資金さえ支払えれば、倒産するリスクはおさえられます。

失敗するリスクを踏まえて、入念に準備をして独立しよう

不動産仲介業の独立で失敗しないためには、事前の準備が重要です。小さくはじめるためには、事前に不動産仲介業の業界に触れておき、小さく開業することがおすすめです。

独立する前から不動産業界に関わっておく

不動産仲介業で成功するためには、不動産業界での経験がある方が有利です。独立する前に会社などで働きながら宅地建物取引士(宅建士)の資格をとっておくのが理想です。

もし、これから不動産会社に転職し、実務経験を積みたいというのであれば、独立を前提に働きたいと伝えて採用してもらえる会社に入るのがいいでしょう。また、大企業ではなく中小企業の方が、会社の看板に頼らずに自分の力で営業をする能力が鍛えられますし、営業以外の会社経営にも携われる可能性が高く、おすすめです。修業をする場合には最低でも3ヵ月、可能なかぎり数年は在籍して、さまざまな契約やクレーム対応などの経験をしましょう。

どうしても時間がかぎられる場合には、副業などで不動産エージェントとして活動したり、趣味として知り合いの家探しに付き合ったりするのもおすすめです。他にも、自分でも実際に借りる物件や買う物件を探したり、不動産仲介に関わる当事者を経験しておくとよいでしょう。物件についての勉強だけでなく、不動産仲介の営業についても勉強できることでしょう。

他にも、不動産の勉強会やイベントに参加してつながりをつくっておくのもおすすめです。潜在顧客を探すのもいいですし、同業になる不動産会社の営業などとのつながりをつくっておくのもよいでしょう。また不動産業界は、独立する人の多い業界です。先輩経営者を見つけたら、経験者の話を聴いておくと、独立後のイメージがしやすくなるでしょう。

売上げアップに向けて、銀行、インターネット回線、火災保険、鍵交換、引っ越し、室内消毒、エアコン洗浄、24時間サポート会社、ウォーターサーバーなどを紹介できるように、関連業者を探すのもよいでしょう。

初期費用をできるだけおさえて開業するのがおすすめ

不動産仲介業の開業は、他の業界での起業よりは比較的少資本ではじめられます。相場は500万円ほどですが、最低200万円から開業することもできます。

まずは1人で開業し、できれば事務所の家賃をおさえるために自宅で起業するのがおすすめです。物件の見学などでの待ち合わせでは、現地集合にすれば事務所を利用する頻度を減らせますし、あまり豪華にする必要もありません。自動車も、開業時はカーシェアリングでも十分だと考えています。

それよりも、開業後に売上が入らない際のために、開業資金を残しておきましょう。最初の1年間は無収入でもいいという覚悟があるぐらいがよいでしょう。開業の手続きも面倒なものが多いですので、事前にどのようなことをする必要があるかを把握して段取りしておきましょう。事前に周囲の家族などに理解を得ておくのも大事です。

不動産屋の開業の相談も、お気軽に

不動産屋の開業をご検討の方は、ぜひお気軽にご相談ください。

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ABOUT US
弦本 卓也
1987年、埼玉県生まれ。大学卒業後、大手広告会社「リクルート」にて不動産メディア「スーモ」(SUUMO)の運営に従事。新卒で入社して、スーモのメディアづくりを7年、その後にエンジニア組織の組織づくりを4年行う。 また、リクルート社内の部活動制度にて「大家部」を立ち上げ部長を務める。不動産投資に関する情報交換や物件見学のワークショップなどを行う。 入社2年目に新築一戸建ての広告を取り扱う部署に異動したことをきっかけに、「いい企画を作るためには、まずは自分で経験したい」という想いから個人で新築一戸建てを購入。その翌年には売却分野を担当したことをきっかけに売却も経験。マンションの売買なども行い、11年間で11回の引っ越しを経験。 「新しい住まいや暮らしを自ら探究したい」という気持ちで購入した東京都千代田区の神保町の中古ビル「弦本ビル」は、コワーキングスペース、シェアオフィス、シェアハウス、飲食店が入居する複合ビルとなっており、20代を中心とした若手社会人や学生のやりたいことを実現する場所として注目を集めている。3年間で延べ1万人以上の来場者を記録し、家賃年収1,400万円を達成しながら満室経営を続けている。 お金面とビジョン面の両立を大切にしており、モットーは「一人ひとりの可能性をもっと世の中に」。会社員を続ける傍ら、学生時代に起業した会社とあわせて株式会社を3社創業。うち1社は売却し現在は2社を経営している。他にもエンジェル投資家として若手実業家の支援を手がける一面も。 日経新聞や不動産業界紙、書籍や雑誌、テレビなどでも多数の注目を集めておりセミナー講師なども行う。宅地建物取引士を保有。