不動産を売却する時、売主には瑕疵担保責任が必ずついて回ります。
「瑕疵(かし)」は普段あまり使用することのない言葉のためか、意味を理解していなかったり間違った意味で捉えていたりする売主(時には不動産業者まで!)が少なくありません。
しかし、不動産売買契約を締結するうえで、売主にとって非常に重要な意味を持つのが瑕疵担保責任です。
きちんと責任の意味や範囲、期間などを理解して不動産売買契約を締結する必要があります。
そこで、今回は「不動産売却における瑕疵担保責任」について徹底解説します。
あなたの不動産売却に大きな影響を及ぼしますので、しっかりと理解を深めてください!
目次
瑕疵担保責任とは?
まずは、「瑕疵担保責任とは何か?」というポイントから説明を始めていきます。
不動産売却における瑕疵担保責任とは?
「瑕疵(かし)」とは「キズ・欠陥・不具合」の意味ですが、不動産取引においては、見ただけではわからない、発見することが難しい欠陥や不具合のことを指します。
専門的には「隠れた瑕疵」といい、売買契約を締結した時点で買主がその事実を知らず、かつ通常要求されるような注意を払っても発見できない瑕疵のことをいいます。
例えば、中古一戸建てを購入し、引渡し後に屋根の一部の欠陥から雨漏りが発生した場合にこの欠陥が瑕疵となり、買主が売買契約締結時にこの欠陥があることを知らずに、かつ通常要求される注意を払っても発見できなかった場合は「隠れた瑕疵」に該当します。
そして、瑕疵担保責任とはこの隠れた瑕疵が発生した場合に、売主が買主に対して担保(保証)する責任を負わなければならないことをいい、民法第566条および第570条に規定されています。
【民法の規定】
第五百六十六条(地上権等がある場合等における売主の担保責任)
売買の目的物が地上権、永小作権、地役権、留置権又は質権の目的である場合において、買主がこれを知らず、かつ、そのために契約をした目的を達することができないときは、買主は、契約の解除をすることができる。この場合において、契約の解除をすることができないときは、損害賠償の請求のみをすることができる。
2 前項の規定は、売買の目的である不動産のために存すると称した地役権が存しなかった場合及びその不動産について登記をした賃貸借があった場合について準用する。
3 前二項の場合において、契約の解除又は損害賠償の請求は、買主が事実を知った時から一年以内にしなければならない。
第五百七十条(売主の瑕疵担保責任)
売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは、第五百六十六条の規定を準用する。ただし、強制競売の場合は、この限りでない。
引用元:総務省行政管理局運営 e-Gov 電子政府の総合窓口 より
民法の条文は言い回しが堅苦しくわかりにくいため、少し噛み砕いてわかりやすくポイントを説明すると
・売買の目的物(一戸建てやマンションなど)に隠れた瑕疵がある場合
・買主はその事実を知った時から1年以内であれば損害賠償を請求できる
・契約の目的が達成できない(住めないなど)時は契約を解除することができる
となります。
ここから判断すると、民法の規定においては瑕疵の範囲は定められておらず、また「瑕疵の発生は引渡し後○年まで」といった制限がないため、買主が瑕疵を知った時から1年以内に瑕疵担保責任を請求されれば、売主は5年間でも7年間でも瑕疵担保責任を負わなければならない・・・ということになるのです。
これでは、あまりにも売主が不利であると感じませんか?
そこで実際の不動産取引においては、民法の瑕疵担保責任に関する規定が任意規定であることから、売主・買主双方合意のもと民法第570条の規定と異なった内容で契約を締結することが一般的です。
その内容については、次章以降で詳しく解説します。
瑕疵の4つの種類
瑕疵には「物理的瑕疵」「法律的瑕疵」「環境的瑕疵」「心理的瑕疵」の4種類の瑕疵があります。
ここでは、それぞれについて具体的に説明します。
物理的瑕疵
物理的瑕疵とは、土地や建物の目に見えるような物理的な欠陥のことをいい、具体的には以下のような瑕疵が該当します。
【土地に関する物理的瑕疵】
・地盤が沈下している
・地盤が歪んでいる
・地中障害物や地中埋設物がある
・土壌汚染がある
・境界確定について隣地所有者と紛争が生じている
など
【建物に関する物理的瑕疵】
・雨漏りしている
・シロアリ被害がある
・外壁や基礎部分が大きく破損している
・建物が傾いている
・建材等が腐食している
など
法律的瑕疵
法律的瑕疵とは、法律の制限などによって土地や建物の自由な利用が阻害されたり、建築の制限を受けたり、現状で遵法性が確保できていなかったりすることをいいます。
具体的には以下のケースが該当します。
【法律的瑕疵】
・前面道路が計画道路であるため、建物を建てる場合に建築制限を受ける
・都市計画の変更により、現状で建ぺい率や容積率に違反している
・接道義務を満たしていない
・自由に建物の建築ができない市街化調整区域にある
など
[su_box title=”関連記事” style=”bubbles” box_color=”#0075c2″ title_color=”#ffffff”]・建ぺい率とは?計算方法・緩和条件・容積率との関係について解説![/su_box]心理的瑕疵
心理的瑕疵とは、土地や建物自体には特段の瑕疵はありませんが、過去に嫌悪感を抱くような事象が発生しており、住み心地の良さが損なわれていることをいいます。
心理的瑕疵のある物件は、一般的に「事故物件」とか「いわく付き物件」などと呼ばれます。
具体的には、
【心理的瑕疵】
・物件内で自殺があった
・物件内で殺人事件が発生した
・物件内で事故や事件により死者が出た
・物件内で孤独死があり、遺体が腐敗していた
などのケースが挙げられます。
環境的瑕疵
環境的瑕疵とは、物理的瑕疵・法律的瑕疵・心理的瑕疵と違い、不動産自体には瑕疵はありませんが、周辺に嫌悪施設があるなど不動産を取り巻く環境に瑕疵があることをいいます。
具体的には、
【環境的瑕疵】
・物件周辺に指定暴力団事務所がある
・物件周辺にカルト宗教施設がある
・物件周辺にゴミ処理施設や火葬場などがある
・物件周辺をトラックがよく通り、騒音や振動が頻発する
・物件周辺にゴミ屋敷があり悪臭が発生している
などのケースが挙げられます。
これらの4つの瑕疵のうち、心理的瑕疵および環境的瑕疵は人の受け止め方などにより、許容できる人と許容できない人に分かれることもありますので注意が必要です。
売主には告知義務がある
不動産を売却する場合、売主には瑕疵について告知義務がありますが、告知義務とはどのようなことなのでしょうか?
ここでは売主の告知義務について説明します。
売主の告知義務とは?
4つの瑕疵である物理的瑕疵・法律的瑕疵・心理的瑕疵・環境的瑕疵について、売主は買主に対して告知する義務を負っています。
この場合、口頭での告知だけでなく、必ず書面にて提示します。
それでは、売主として何をどこまで告知すれば義務を果たせるのでしょうか?
その答えとしては、「売主として知っていることすべての情報」を告知すれば、売主の告知義務は果たせる、といえます。
例えば「給湯器の不具合によりたまにお湯が出なくなる」や「強い雨が降るとサッシから雨漏りがする」など、買主が内覧時に注意を払ってもわからないが生活していればわかるような情報まで告知する必要があります。
売主としては、物件の欠点を伝えると「買ってもらえないかもしれない」もしくは「値引きを要求されるかもしれない」といった心理が働き、マイナス部分をあまり正直に伝えたくないという気持ちがあることも理解できます。
しかし、「知っていたにもかかわらず告知しなかった」ということになれば、損害賠償請求や契約の解除など、深刻なトラブルに発展する可能性があります。
そうしたリスクを避け、売主・買主双方が気持ちよく取引できるよう、知り得ているすべての情報を告知することが大切です。
付帯設備表と物件状況等報告書
売主の告知義務を果たすために使用する書面には「付帯設備表」と「物件状況等報告書」の2つがあります。
これらの書式を記入することによって、売主として知っているすべての情報を買主に開示することになります。
<付帯設備表の記入例>
付帯設備表では、各設備の現状での不具合の有無と、不具合が生じていれば具体的にどのような事象が発生しているのかについて、すべて記入します。
不具合があるにもかかわらず未記入であると、引渡し後に故障が発生した場合にトラブルとなることもありますので、知っていることはもれなく記入しましょう。
事例の赤線部分は、生活していなければわからないようなポイントです。
また、買主が内覧時に確認した設備が、引渡し後もすべて残されていると思い込んでいるケースがあり、引渡し後に行き違いが生じることがあります。
特にエアコンやカーテンな照明器具などですが、行き違いが生じないように付帯設備表に残していくのか撤去するのかを明示しておきます。
事例の青線部分は、撤去するものを詳細に明示しています。
<物件状況等報告書の記入例>
物件状況等報告書には、物件に関して売主が知り得ている瑕疵(不具合)のすべてを開示して、買主が納得のうえで売買契約を締結するために作成します。
物件状況等報告書で開示した内容については、売主は告知義務を果たしているため瑕疵担保責任は負いません。
また、過去の修繕履歴や心理的瑕疵・環境的瑕疵なども、もれなく記入しましょう。
瑕疵があることを知り得ていながら記載がない場合、瑕疵を隠していたこととなり、瑕疵が発覚した時には損害賠償請求や契約の解除といった事態が生じる可能性があります。
そのため、可能な限り細かい点まで告知することが売却後のトラブルを未然に防ぎ、売主自身の身を守ることにつながります。
瑕疵担保責任が売主に及ぶ範囲と内容
前述の通り、民法の瑕疵担保責任は任意規定のため、売主・買主双方が合意のうえ売買契約書において民法と異なる規定をすることが一般的です。
瑕疵担保責任の範囲についても売買契約書上で規定しますが、具体的な売買契約書の条項をもとに確認してみましょう。
<売買契約書の瑕疵担保責任に関する条項の事例>
この売買契約書の事例では、売主の瑕疵担保責任の範囲は以下の通りと規定されています。
・土地の瑕疵
・雨漏り
・シロアリの害
・建物構造上主要な部位の木部の腐食
・給排水管の故障
売主はこれらの瑕疵について、引渡し後3ヶ月以内に買主から請求のあったものに限り、修復の義務がある、と定められています。
逆に言うと、これらの瑕疵以外については瑕疵担保責任を負わないということです。
また、瑕疵担保責任の内容は、土地・建物ともに修復に限定され、損害賠償の請求や契約の解除をすることができない、と定められています。
例外として、土地の瑕疵により契約の目的が達せられない時は、引渡し後3ヶ月以内に限って契約の解除をすることができます。
一般的には、瑕疵担保責任の範囲や内容について、このように規定をしますので参考にしてください。
瑕疵担保責任の期間
続いて、売主が瑕疵担保責任を負わなければならない期間について説明します。
民法で定められた売主の瑕疵担保責任の期間
民法の規定では、売主は、瑕疵担保責任について買主が瑕疵を見つけてから1年間の責任を負うとされているため、5年前や7年前に売却したとしても、瑕疵担保責任がついて回ることになってしまいます。
これでは売主が非常に不利な契約となるため、通常の不動産取引では売主が負うべき瑕疵担保責任の期間を定めて契約を締結します。
売主が個人の場合、2~3ヶ月が一般的
売主が個人で中古住宅を売却する場合、瑕疵担保責任の期間は「引渡し後2~3ヶ月」とすることが一般的です。
ただし、重大な瑕疵が発見されたり、売主が知り得ていながら告知しなかった瑕疵が発覚したりした場合は設定した期間に関係なく、売主は瑕疵担保責任を負うこととなります。
<売買契約書の瑕疵担保責任に関する条項の事例>
上記の事例でも「引渡し後3ヶ月以内に発見された瑕疵」についてのみ、瑕疵担保責任を負うと定めています。
ちなみに、期間の計算をする場合、初日は算入しない、と民法で定められています。
【民法の規定】
第百四十条
日、週、月又は年によって期間を定めたときは、期間の初日は、算入しない。ただし、その期間が午前零時から始まるときは、この限りでない。
引用元:総務省行政管理局運営 e-Gov 電子政府の総合窓口 より
買主はこの期間内に瑕疵を発見したうえで、売主対して修復の請求をしなければなりません。
買主が瑕疵担保責任期間内に瑕疵を発見したとしても、売主に請求することがないまま3ヶ月間が経過すれば、瑕疵担保責任を免れることになります。
なお、売主が不動産業者の場合は、宅地建物取引業法の定めにより引渡し後2年以上の瑕疵担保責任を負うこととなります(中古不動産の場合)。
これに反する特約条項などの定めは無効となり、その場合の瑕疵担保責任に関する取り決めは民法の規定によることとなります。
瑕疵担保責任は10年で時効が成立
瑕疵担保による損害賠償請求は、10年間権利を行使しないと時効により消滅することになります。
これは民法で定められている債権時効消滅によるものですが、売主が知り得ていながら告知しなかった瑕疵については適用されません。
民法第566条3項によれば、瑕疵担保責任に対する損害賠償請求は買主が事実を知った時から1年以内にしなければならないと定められ、事実を知ってから1年以内ならいつ事実を知ったのであっても請求できるように解釈できる一方、民法第167条では債権は10年間これを行使しないときは消滅するという定めもあります。
【民法の規定】
第百六十七条(債権等の消滅時効)
債権は、十年間行使しないときは、消滅する。
2 債権又は所有権以外の財産権は、二十年間行使しないときは、消滅する。
引用元:総務省行政管理局運営 e-Gov 電子政府の総合窓口 より
そのため、引渡し後10年を経過してから瑕疵を知った場合、瑕疵を知ってから1年以内なら損害賠償請求などの権利行使ができるのか、あるいは、時効消滅によりできないのかがポイントですが、「瑕疵担保による損害賠償請求権は引渡しから10年間の消滅時効にかかる」という最高裁の判例が出ています(最高裁平成13年11月27日判決)。
(参考:裁判所HP 裁判例情報 より)
瑕疵担保免責とは?
「瑕疵担保免責」とは「瑕疵担保責任を負わない=引渡し後に物件に欠陥や不具合が発見されても、売主は何の保証も責任も負わない」という意味です。
買主も納得のうえ購入し、瑕疵が生じても自己責任で対応する、ということになります。
売主にとっては有利な規定といえそうですが、どういったケースで使われるのでしょうか。
ここでは、瑕疵担保免責について説明します。
瑕疵担保免責とするケース
ケース1:築年数がかなり経過している場合
建物の築年数が30年を超えるような中古戸建の場合、経年劣化により住宅の性能や品質が著しく低下しているため、瑕疵かどうかの判別のできず瑕疵担保責任を負える状態ではないケースが往々にしてあります。
こうしたケースでは、瑕疵担保免責として売却することが多く見られます。
<築年数が古い瑕疵担保免責の販売事例>
上記の事例では、築年数が1971(昭和46)年3月と非常に古いため、販売図面の備考欄に「建物、付帯設備瑕疵担保免責」と記載して、瑕疵担保免責が売買条件であることを明示しています。
ケース2:築年数が古いうえに、売主が中古不動産として購入している場合
築年数が古く、売主自身も中古不動産として購入している場合は、瑕疵担保免責とするケースが多く見られます。
ケース1のように古いだけでなく、中古不動産で購入しているために売主自身が購入する前の瑕疵についてまで保証することは難しい、という判断に基づいています。
ケース3:建物を解体して新築する前提で販売する場合
既存建物を解体して、新しく建物を建てることを前提として売却する場合も瑕疵担保免責とするケースがあります。
この場合、「売地(現況古家あり)」といったカテゴリーで販売されることが多く見られます。
<建物解体前提の瑕疵担保免責の販売事例>
瑕疵担保免責の場合の値下げ交渉
瑕疵担保免責物件は、築年数が古過ぎるために劣化しており、建物の価値が認められないケースがほとんどです。
そのため、購入検討者から値下げの交渉を受けることがよくあります。
購入検討者の立場で考えると、「何か不具合が起きても自己責任で対応しなければならない!」という不安感から、その分値下げしてもらおうという心理が働きます。
瑕疵担保免責物件の売却価格の設定は、あらかじめ建物の価値などが織り込まれていないことが多く、初めから低い売出し価格で売却活動を始めています。
購入検討者へも「相場からすると●●●●万円となりますが、瑕疵担保免責による価値の減少分だけ価格を下げてあります」といった合理的な説明で対応するとよいでしょう。
瑕疵担保免責の注意点
民法第572条では、瑕疵担保免責について次のように定めています。
【民法の規定】
第五百七十二条(担保責任を負わない旨の特約)
売主は、第五百六十条から前条までの規定による担保の責任を負わない旨の特約をしたときであっても、知りながら告げなかった事実及び自ら第三者のために設定し又は第三者に譲り渡した権利については、その責任を免れることができない。
引用元:総務省行政管理局運営 e-Gov 電子政府の総合窓口 より
この民法の規定によると、売主・買主双方合意のもと瑕疵担保免責の条件で売買契約を締結したとしても、売主が知り得ていた瑕疵を買主に告知しなかった場合、瑕疵担保免責は適用されない、ということになります。
そのため、瑕疵担保免責の条件で売買契約を締結する場合も、前述の付帯設備表や物件状況等報告書を活用して告知義務を果たし、後々にトラブルが生じないように注意しましょう。
売主の瑕疵担保責任をカバーする方法
ここでは、瑕疵担保責任のリスクを少しでも軽減するための2つの方法を紹介します。
既存住宅売買瑕疵保険(個人間売買タイプ)
既存住宅売買瑕疵保険とは、住宅の検査と保証がセットになった保険であり、売主が宅建業者のタイプと個人間売買タイプの2種類あります。
加入は任意ですが、既存住宅売買瑕疵保険に加入していれば、売却した不動産に瑕疵が発見された場合に、負担するべき補修費用などが保険でカバーされる仕組みになっています。
ただし、保険に加入できる住宅には、新耐震基準に適合していることなど一定の要件がありますので、注意が必要です。
<既存住宅売買瑕疵保険の仕組み>
不動産業者独自の保証サービス
大手不動産仲介業者を中心として、独自の保証サービスを扱っているケースがあります。
具体的な内容は、引渡し後から一定期間内に発見された建物の一定の瑕疵について、仲介をした不動産業者が補修費用などを保証するというサービスになります。
一定の瑕疵とは、前述の雨漏り・シロアリの害・建物構造上主要な部位の木部の腐食・給排水管の故障の4点のケースが多く、引渡し後2年程度の保証期間を設けています。
売主・買主双方にメリットのあるサービスといえますが、保証を受けられる建物に一定の条件があることと買主も同じ不動産業者の仲介で購入しなければならないなどの条件が付きます。
瑕疵担保責任をめぐるトラブル事例
最後に、瑕疵担保責任をめぐるトラブル事例を確認してみましょう。
瑕疵担保免責で契約したが補修費用の請求が・・・
瑕疵担保免責の条件で売買契約を締結したにもかかわらず、引渡し後に土台の一部に腐食が発見されたため、補修費用を負担してほしいと買主から申し入れがありました。
このケースでは、売主は一般の個人であるため、売主が知り得ていたにもかかわらず告知しなかった瑕疵については瑕疵担保責任が生じますが、それ以外は瑕疵担保免責の特約が有効となります。
そのため、売主は補修費用の負担を免れることとなりました。
あると思っていたいエアコンがないと言われ・・・
中古一戸建てのマイホームを売却した際に、リビングルームと3つの寝室に設置していたエアコンを取り外して新居に設置しました。
しかし、引渡し後に買主より「あると思っていたいエアコンがないので戻してほしい」と申し入れがありました。
このケースでは、付帯設備表を活用して売買契約締結前に売主・買主双方で共有しておくべきです。
売主はエアコンに関する記入が漏れていたため、話し合いの結果、リビングルームに新規のエアコンを設置することで折り合いがつきました。
付帯設備表・物件状況等報告書は、できる限り詳細にもれがないよう記入することが大切です。
まとめ
不動産を売却した場合に、売主が負わなければならない瑕疵担保責任について解説しました。
瑕疵担保責任とは善意無過失(注意していたにもかかわらずわからなかった)の瑕疵に対して生じますので、売買契約締結前に売主としてリスクを買主に伝えていれば善意無過失には該当せず、瑕疵担保責任は生じないこととなります。
「値切られるから内緒にしておこう」などと考えて契約し、後から瑕疵が発覚すればとんでもない額の損害賠償訴訟を起こされるかもしれません。
事前に、正直に買主へ瑕疵を伝えて納得したうえで購入してもらえば、トラブルを未然に防ぐことができ安心です。
なお、2020年4月1日から施行される改正民法においては、「瑕疵担保責任」は「契約不適合責任」に改められますが、基本的な考え方はそれほど変わらないため、まずはこの記事を理解しておくことが大切です。