電通で不動産投資のセミナーをしてきましたので、講義の内容を公開します。
不動産投資を含めた資産運用の方針や考え方については前編をご覧ください。
目次
不動産投資の物件探しのコツ
まずは物件を決めるまでの話です。
不動産投資の「戦略」としては大きく5つあります。
これは不動産投資というだけでなく、会社の事業の経営などにもあてはまると思います。
- 安く買う
- 安く仕入れる
- 安く運用する(節税する)
- 高く貸す
- 高く売る
「安く仕入れて、高く売る」というのは商売の基本ですね。
まず、「安く買う」ためには、不動産が安くなりやすい条件を狙うというのがポイントです。
郊外の物件であったり、1部屋の物件であったり、中古の物件であったりです。
あえて、特殊な物件を狙うというのもあります。
たとえば、「借地権」という土地が所有権ではなく「賃貸」のかたちになっている物件は、実際に土地を購入しない分、購入するときの総額が安くなります。
また、「旧耐震」といって、昭和56年6月1日以前に建てられた物件で、耐震の基準が現在のものに満たない物件も、安くなる傾向にあります。
「再建築不可」の物件は建て直しすることができない物件ですが、その分安く売られています。
他にも、借金による差し押さえなどで販売される「任意売却」で売られている物件も、事情があるため相場よりも安いといわれています。
新築マンションでも、「抽選会」というものがあったりします。こちらは広告のような位置づけですが、金額の幅で表示するときに安い金額帯もあるように見せるために、一部の物件を相場よりも安く売っている場合があります。その場合には、たくさんの人から申し込みがあり、抽選会をすることがあります。金額を安く買うためには、その抽選ばかりを狙うというのもあるかなと思います。
安く運用するという面では、業者に依頼せずに、自分でリフォームを行うことも、コストの節約になります。
他にも、銀行の金利をおさえるためにも、借り換えや交渉の方法がありますが、支払いを減らすことができると、大きく状況を左右します。
節税に関しても、不動産は有利といわれています。相続税を減らす、所得税を減らす、法人化するといった方法があります。
高く貸し、高く売るためには、値上がりを見込むことであったり、価値を高めるためのリフォーム、用途を変更して民泊であったり、シェアハウスで活用するなどがあります。
不動産投資の対象となる、不動産の種類
不動産といっても、世の中にはたくさんの種類があります。海外の不動産もあれば国内の不動産もあり、日本の法律による分類では、23種類に分かれています。
初心者がはじめやすい不動産の種類は、マンション、一戸建て、アパートの3つです。
なぜかというと、住居は利用者の人数が多く、賃貸の需要が最も安定しているため、流動性が比較的高く、銀行でもローンを扱いやすいためです。
そのため、順当に不動産投資をはじめる場合には、マンション、一戸建て、アパートがはじめやすいと思います。
また、不動産にはさまざまな種類があります。都心、郊外、1棟、1部屋、新築、中古などです。建て売りは、建ててから売っているもので、注文住宅は土地から自分で建てるものをいいます。他にも、空室の物件なのか、すでに入居済みの物件なのかというものもあります。
それぞれの詳しい特徴については、『超ど素人がはじめる不動産投資』に掲載している表を見ていただければと思います。
こちらの表をもとに、自分の好きなタイプの投資戦略にあった不動産の種類から、検討していくのがいいと思います。
また、最近の傾向としては、国土交通省のデータでは、マンションの値段が急激に上がっています。
マンションは今、買っても高く売れないという状況だということです。一方で、一戸建てはそこまで値段が上がっていないので、売るなら今はマンションが、買うなら今は一戸建てが狙い目かなと思っています。
不動産投資は初心者に有利なこともある
不動産投資は、株や為替などとは異なり、常に相場に張り付いている必要がありません。そのため、初心者でもはじめやすいと思います。
また、不動産投資にもプロはいますが、そんなに数が多くはありません。そして、プロも全部の地域の物件について目利きができるわけではありません。
自分でよく知っている地域では、自分の方がプロよりも有利な可能性があります。
近くに学校ができるらしいであったり、大型のショッピングセンターができるらしい、最近はこの地域にこんな属性の人が増えてきているなどといったことは、地元の方が情報が先に入ることも多いです。そういったところから、目を付けていくといいかなと思っています。
不動産は個人的な理由で売買されることもある
そして、不動産は個人的な理由で売買されることも多いです。
たとえば、弦本が3,500万円で買った戸建てが、翌年に4,500万円で売れたことがありました。
なぜ、そのような値段で売れたのかというと、買ってくださった方に子どもが2人いて、小学生になるのでそろそろ子供部屋がほしいということで、4LDKの物件を探していました。
ただ、この地域では、4LDKがそんなに多くなかったので、高くても買ってもらうことができたのです。
ほかにも、最近は三軒茶屋に区分マンションを買って、自分で住んでいるのですが、その物件を売っていた人は、来年になると親が定年になり、親子のペアでのローンが組めなくなってしまうので、今住んでいる家をすぐに売って、次の家をすぐに買いたいというような事情がありました。
そういった個人的な理由で、相場よりも安くてもいいので、早く売りたいというケースもあるのです。
金額よりも時間の事情がある場合には、安くても売りたい場合や、高くても買いたい場合があるのです。
もちろん、買い叩くことや売り叩くことをすすめているのではなく、そのような事情をくんだうえで、おたがいに納得する条件で、取引ができればと思っています。
不動産会社を見分けるコツ
次は、不動産屋さんを見分けるコツですね。
不動産会社によっては、高額の商品であることから、手の込んだ方法で、あの手この手で騙してくる人もいます。そこで、どういうところに気をつけた方がいいかというところを紹介します。
確認するポイントとしては、まずは資格を持っているかです。
実は、不動産の営業は、宅地建物取引士という資格をまったく持っていなくても、営業ができることになっています。そのため、資格を持っているかどうかというを確認しておくことが非常に有効になってきます。
他にも、不動産会社には免許を掲示する義務があるのですが、その看板に、実は免許の更新番号の数字が入っています。その数字から、その会社が免許をとって何年たっているのかがわかります。
長く継続しているほど信頼があるので、数字が(1)の場合には、まだ年数が少ないから、まだ信頼がない可能性があるということがわかります。
他の方法としては、業界団体への加盟状況を見ることもできます。業者名簿を見たり、ネガティブ情報や企業の信用確認などもできます。そこまで確認しているというのはあまり聞いたことがないですが、一応挙げさせていただきました。
不動産会社の営業担当の方との付き合い方
次は、不動産会社の営業担当の方との付き合い方です。
付き合い方としては「希望する条件をきちんと伝える」ということが大切です。
相手が信頼できるなと思ったら、自分の情報をきちんと伝えると、優先順位を上げて接客をしてもらえます。たとえば、予算は2,000万円ですであったり、年収は500万円ですみたいなことをきちんと伝えると、「この人は本気で、買える人だな」とわかってもらえるので、きちんと動いてくれるのです。
あまり開示しないように、「あまり高くない物件を探していて、今の年収もそれなりです」というようなことを言うと、「この人は、よくわからないから」ということで、優先順位を下げられてしまいかねません。自分は買える人だということを、きちんとアピールすることが大切です。
また、よい提案をしてもらうためには、好感のある連絡の返し方が必要です。
早く返事をするとか、提案に関してきちんとお礼を伝える、提案してもらったことに対しては良い点や悪い点をより具体的に伝えていくことで、よりよい提案をしてもらえるようになると思います。
オイシイ話に注意
とくに注意が必要なのが、オイシイ話をしてくる人です。最近よくあるオイシイ話として、大きく2つ注意していただきたいと思っています。
1つ目が、「新築のワンルームで節税しましょう」というものです。会社の電話などに、営業の電話がかかってきたことはありませんでしょうか。
いい物件は、電話で営業しなくても買いの申し込みが殺到するので、そもそも押し売りしてでも売りたい物件は、利益が出ない物件の可能性が高いです。赤字にして節税できますよというような話をされて、本当に大きな赤字をかぶってしまったりします。
2つ目は、家賃を長年保証しますといった、サブリースといわれるものです。新築のマンションや新築のアパートとセットで提案されることが多いです。新築の物件を建てた瞬間から、その会社が借りて家賃を代わりに払うと言う話です。
長年のサブリースの契約をするような資金計画書を見せてくるものの、実際には、契約書に小さく注意書きが書かれていて、2年に1回契約を見直して解約する場合もありますとか、定期的にリフォームをしてくださいなどといった条件が書かれているケースがあります。
買うときには、たくさんの利益が出ると思って契約したのに、数年後には保証してもらえなくなり困るというものです。
よくよく調べると、実際の家賃の想定が甘かったりだとか、もともと売られている物件自体も相場よりも高く、かかる諸費用いてもあとから判明することがあるのです。
現金がなく、ローンを組んで買っている場合には、ローンの返済金額よりも売れる金額が低いために、物件を売ろうにも売れないといった状況になることもあります。
いずれのケースにしても、十分に注意して、自分できちんと調べることが大切です。
たとえば、家賃の想定がどうかというのはスーモなどで借りる人になったつもりで物件を検索すれば、相場の家賃が出てきます。このように調べるだけでも、明らかに言われている想定の金額がおかしいことがわかったりします。
不動産は、高額の商品ゆえに、トラブルも多いです。トラブルが発生した場合は、『超ど素人がはじめる不動産投資』に掲載している問い合わせ先の一覧を見ていただければと思います。
不動産を買うときの流れ
次が、物件を買うときの話です。
物件を買うときの流れとしては、まず地域を選んで物件を探します。
そのあとに会社に問い合わせをして、お金の試算と図面の確認して、現地を確認して、物件を買う意思を伝えるという流れになります。
物件の売られ方としては、大きく3つの方法があります。販売代理、仲介、競売という売り方です。
販売代理は、売主が建てた物件を、売主の会社や子会社が売っているケース。仲介は売りたい人と買いたい人の間に入って紹介するケース。競売は、破産などで差し押さえられた物件を売るもので、裁判所などから出てくるので、また別のルートのものです。
仲介の場合には「レインズ」と呼ばれる、不動産会社のみが見られる物件情報のデータベースがあって、そこから物件を探したりします。街の小さな不動産会社でも、世の中に出ている物件の情報がわかるので、日本全国の物件を紹介できるのです。
買い手側の仲介会社が、そのデータベースを元に買う人に物件を紹介する流れになっています。データベースがあるっていうのがポイントですね。
物件を探すときは、入居者のいない物件であればスーモなどでもいいのですが、入居者のいる物件は、楽待や健美家といったサイトを見ていただくと投資用として掲載されていたりします。
いい物件に出合うコツ
いい物件に出合うためのコツは、大きく3つです。
1つ目は、できるだけたくさんの物件を見ることです。
たくさんの物件を見ることで、だんだんと自分の目が養われて、買いたいものが明確になってきます。
2つ目は、借りる人の気持ちになることです。実際に入居する人が本当に借りたいと思える物件なのかという視点で探すことです。
それから3つ目が、スピードが命です。
不動産は、同じものが2つとしてないので、いいものはすぐになくなってしまいます。
一度なくなると買えなくなってしまうので、スピード速くやりとりをするということが非常に重要です。
周辺の地域の情報の調べ方
周辺の地域の情報については、家賃の相場以外でも、地盤や地震、災害、事故の履歴、人口動態、あとは学区などがあります。住居の場合には、小学校や中学校の学区も、かなりこだわって探す方がいるので、どこの学校の学区なのかと、その学校の評判を調べたりします。新駅や道路、建物などの都市計画も調べます。
Googleのストリートビューも非常に便利で、日中に実際に見にいかなくても、周辺の環境をある程度見れることができます。こういったツールも非常に便利かなと思います。
物件の金額の試算方法
次に、物件の金額の試算方法ですね。
こちらは国が出している不動産価格の相場をもとに計算します。公示価格や、路線価、固定試算税評価額というのが公開されていて、その数字をもとに算出することができます。
これらは国や市区町村が税金をとる金額を決めるためのもので、相続税や固定資産税を計算するために物件の価値を計算しているのです。税金なので、少し相場よりも割安に価格をつけて、文句を言われにくいように試算されていますので、その係数の分だけ、割り戻すと相場の金額っていうのが計算できるようになります
物件の金額の試算の方法としては、原価法、取引事例比較法、収益還元法という3つの方法で算定することもできます。
原価法では、建物が建ったときに必要であったであろう金額から何年経っているからどれくらい価値が下がっているかというので計算しています。土地も含まれる場合には、土地の評価の金額から計算して、建物と土地の金額をあわせて試算するというような流れになります。
あとは、解体するときの金額も、建物の構造と面積によって大体の相場があるので、買っていずれ建て替える場合には、その数字も使ったりもします。
不動産投資の利回りとは
不動産投資の価格と家賃が出てくると、利回りが計算できるようになります。
利回りは大きく3つあって、表面利回り、想定利回り、実質利回りがあります。
表面利回りは、本当にざっくり出したもので、1年間の家賃収入÷物件の価格で出していています。
想定利回りは、空室があるところも家賃が入ってくるという想定で利回りを出しています。
実質利回りは、実際に買うときの仲介手数料やリフォーム代など、諸経費を入れて一番現実に近い数字で計算します。
不動産会社としては、物件の価値をより高く見せたいので、利回りといっても想定利回りであったり、表面利回りであったりすることが多いです。実際の利回りは自分で計算しないといけません。
また、想定利回りとして不動産会社が想定して計算している家賃が、本来の相場よりも高く書かれている場合もあります。こちらも利回りを高く見せるためのものなので、自分でもきちんと想定しなおした方がよいです。
物件を見極める方法
物件を見極めるときは、販売図面(マイソク)と言われる図面で全体的な情報を見ます。
間取図もありますが、これは借りる人の気持ちに立って探すっていうのが大切ですね。自分が貸しに出したときに借りる人が住みやすいかを見ることが大切です。
道路の制限や建ぺい率、容積率、斜線制限というものもあります。古い物件を建て替える際に、セットバックといって道路から下がらなければいけないという法律の決まりもあります。それによって土地の敷地面積が減ったりもするので、そういうことも注意が必要です。
それから建ぺい率と容積率ですね。建ぺい率は土地の面積に対してどのくらいの面積の物件を建てられるのかとかというのと。容積率はどれぐらいの大きさまで建てられるというのがあります。
これによって、建て直したときにより大きな建物にできる場合もあるので、注意して見るといいでしょう。
アスベストや耐震診断については、不動産会社から告知の義務があるので、診断をしているのかを聞くことが大切です。
既存不適格に関しては、当時の法律では認められていたものの、その後に法律が厳しくなって現在では違反になっているような物件のことです。値段は安く買えることが多いですが、減築や解体を求められる場合もあるので注意する必要があります。
あとは近隣との取り決めですね。
私道負担といって、戸建ての前の道路を共同で使うのでその取り決めがあったりだとか、埋設されているガス、電気、排水の扱いであったりだとか。
集合住宅の場合には、管理費や修繕積立金もあるので、近隣とどういうふうに決まっているのかとかを調べる必要があります。
マンションの場合には、不動産会社にお願いして、管理組合に問い合わせをして資料を入手します。
そのときに、今いくらの修繕積立金がたまっているのか、修繕計画がどうなっているのかというのが書面でわかります。
入居者がいる場合は、入居者のレントロールと言われる表を見ることも大切です。
賃貸で入居するときに、よく申込書を書くと思うんですけど、あれも見せてもらうことができます。
そのため、どういう人が住んでいるのかということも、買う前に確認するといいですね。
年収がいくらくらいの人が、何年くらい住んでいるのか、保証人や保証会社がきちんといるかといったことも確認することができます。
物件を決めたあとは現地に行きますが、 現地見学するときに、すでに人が入居しているときは部屋に入らせてもらえなかったりすることもあるので、その場合は外から本当に住んでいるのかといったことを確認することも大事です。
日にちを変えたりとか時間帯を変えて、土日と平日だったり、朝と夜だったりとか、何度も見に行くことが大事です。
タワーマンションを買うときにもそうだと思いますが、休日はよさそうだったけど、平日の朝は駅に行列ができていて、通勤が大変だったりなど、そういうこともあったりするので時間を変えてみることも大切です。
それから中古物件を買うときには耐震に適合しているかどうかとも大切です。
耐震基準には、新耐震、旧耐震というのがありますが、旧耐震の方が昔の耐震基準なので割安だったりとか、倒壊のリスクがあるって言われたりします。しかし、実は耐震基準よりも地盤の方が大事です。旧耐震であっても、地盤が良ければ地震に強いので、実は地盤の方を気にしたほうがいいというところもポイントです。
20分でかなり詰め込んだので、面倒くさいと思われる方も多かったかもしれませんが、ここまでが物件を決めるまでの流れです。
初めての方にお伝えするのに大切なところかなと思ったので、お話しました。
詳しいことは『超ど素人がはじめる不動産投資』をぜひ読んでいただければと思います。