※この記事は、書籍『プロハ夢手帳』の記事の抜粋です。ご購入は こちら からお願いします。
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不動産領域で多くの人の暮らしを作っています。主には部屋の仲介業、新築・リフォームなど暮らしを作る企画開発。シェアハウス・ゲストハウスを作り、管理運営をしています。都内の管理物件は370室。「住居・暮らし」がメインなので、住居で旅館業を取って民泊を運営しています。
リブモ(Livmo)という会社名は、「LIVE IS MORE」からきています。「Live is more than perfect」というミッションがあり、完璧よりもさらに暮らしを豊かにするために何があればいいのかを考え、まだ世にない暮らしを次々と作っています。ホテルも1日から家を貸すというコンセプト。37日間の浅草暮らしや、14日間の高円寺暮らしを楽しむこともできます。いわば、「暮らしの小売り」です。利用者の割合は日本人2割、外国人8割で、それぞれに管理者を置いて運営管理をしています。
高3のとき、宅建の免許に当時史上最年少で合格しました。母子家庭で、母が男二人分を養ってくれましたが、いい暮らしはできていなかったため、僕が稼いで家族に生活費を充てようと思っていました。起業して社長になろうと思った直接のきっかけは、家庭の経済状況だったのだと思います。継ぐために社長になりたいから、いちばん稼げそうな不動産業で起業しよう、と考えたわけです。就職情報誌で調べると、給料が高かったのは不動産営業の仕事でした。そこで、もし大学に受からなくても不動産の資格を持てば不動産営業で独立できるだろう、と考えるようになりました。
当時から興味があったのが、地域活性。もともと祖父が函館の農家で、農地を持っていたことがきっかけです。基本的に北海道の農家は、夏場は農業、冬場は漁師。函館なので農村も漁村もあり、その地域活性をしたいと思っていました。祖父も知り合いも、農業と漁業で生計を立てていたので、活性化させればみんなが楽しめると考え、大学でも地域資源系の一次産業について学ぼう、と考えていました。この頃から、世界が驚くようなサービスをつくるなどではなく、まずは身の回りをよくしていきたいという発想が強かったですね。
宅建の資格を活かせたのは、19歳の時。祖父の体調が悪くなり、農業ができなくなったのです。将来的に農地を使ってまちに貢献していきたいという思いが高校時代からあったので、農地を宅地という不動産に替え、開発を母と行ないました。
母は元銀行員で不動産や金融系に強かったこともあり、家族と一緒にペーパーカンパニーをつくりました。僕の不動産の資格を使った初めての起業が、これになります。僕が社長兼宅建士となり、不動産の業務は母から手ほどきしてもらいながらやりました。一方で仲介業のアルバイトもしていました。
今もまだ続いていますが、現在でも祖父の土地も農地もあり、一軒家やアパート、駐車場や倉庫を作って貸しています。まちのテーマパークを作っているようでとても面白いです。公園やバスケットゴール、小学校のプールも作りました。奉仕活動の一環で、お互いに負担しあってる進めるまちづくりにエクスタシーを感じました。ここで儲けるというのではなく、みんなで面白いことがしたい。大学でユニークな学生寮に入った影響もあり、自分がこのまちのためにできることを考えました。若い人が集まって、やりたいことがどんどん生まれる場ができたらいいな、とイメージしていました。函館で商店街の空き店舗を借りあげてシェアカフェやシェアバーを運営したり、アパート1棟借り上げて学生寮を作ったりしました。
次第に、地域活性とは何かを考えるようになりました。まず周りの人たちが笑顔になることが地域活性の1つになる、と考えていました。地元の農家が大根を作り、その大根を地元の運送会社が運送し、地元の人が買い、料理をして地元の飲食店で販売、それをユーザーが食べる。地元に全部お金が落ちる仕組みです。形が見えてくるにしたがって、最初に考えていた農業や漁業の地域経済を回す発想に近づいている感触がありました。
次に、地元にお金が循環し、誰もが豊かになるモデルを考案し、地産地消の八百屋をはじめました。地元の農家が地元のひ人に販売するスタイルです。というのも、当時スーパーには県外産の野菜しか売っていなかったのです。直売所を用意して区分けして売り場を提供し、売れたら売れた分だけお金を入れていく無人販売のスタイルをとりました。売れたぶんだけ、場所代として価格の20%をいただく。駅前5万円ほどの場所を借り、毎日1〜2万円入ってくるようなモデルです。この八百屋も不動産に近いのですが、不動産の仕組みを使い、地域経済を豊かにしていくことができると思ってやっていました。これが21、22歳のころです。こうして、地元で売り上げが連鎖していく仕組みこそが、経済の本質だと思いました。
売り上げがあがるので、拠点も数多く用意しました。買いたくても買いにいけないというニーズがあれば、移動販売もやりました。
売り上げは上がり続けていきましたが、ある変化が起こりました。地域の商店街の八百屋が売り上げ不振で閉店してしまったのです。自分のせいで、商店街の八百屋がつぶれた。つぶれた八百屋と一緒に何かできたはず、共にいいサービスができたはず、と考えました。潰れた八百屋にしかできなかったことがあったし、僕たちにしかできないことがあったはずです。なぜ八百屋を経済の連鎖の中に入れられなかったのだろうと、激しく後悔しました。
「僕がしたかったことは、本当にこういうことだったのか」と考えました。僕は経済に無知だから、罪なことをしてしまっている可能性がある。この大きな後悔を元に、経済を学ばなければいけないという強い義務感を感じました。そのまま大学を辞めて、八百屋を副代表に譲り、23歳での上京を決意しました。間違った方向にいかないよう、一度自分を方向転換し、東京に学びを求めたわけです。
東京ではビジネススクールに通い、社会起業とは何かを一から学びました。東京に来て驚いたのは、僕が函館でやっていた事業モデルが、コワーキングスペースやシェアハウスという名前ですでに数多く存在していたことです。
しかしよく見てみると、表面は同じに見えても、僕が函館でやってきたコミュニティ型のモデルとは異なることがわかりました。隣に誰が住んでいるかわからないようなシェアハウスや、隣のデスクが誰かわからないコワーキングスペースなど、人のつながりのない、単なる場所貸しに近かったのです。これは、僕がやりたいことではありませんでした。
ビジネススクール似通いながら、平成24年に起業しました。会社名は「妄想作戦会議室」。いろんな人たちがいろんなことを語れる会議室のような会社であってほしいという思いで名付けてやりはじめました。
不動産で、人のつながりがあるものを作っていきたいと思い直し、起業家が集まるシェアハウスや、その人たちが使えるコワーキングスペースをやり始めることになりました。
3回起業をしましたが、大きなつまずきは2回ありました。
1つはお金がなくなったときです。お金がなくなる瞬間というのは「あれ?今月払うお金がないぞ、どうする?」という怖さや不安、そしてその瞬間に起こる社内の雰囲気の悪さや人が辞めていく悪循環がトラウマになります。お金がないと、物の見え方までネガティブになってしまうのです。
お金がなるなることは結果であり、なくなるまでの原因が必ずあります。
傲慢な経営をしていたり、本当のお客さんに対して満足のいくサービスをしていなかったり、よくわからない過剰な自信で散財していたりなど、様々な要因があっての「お金がなくなった」なのです。
僕が人生で最初にお金がなくなった経験をしたのは、学生寮を作っていた21歳のときです。札幌にキャンパスがある大学で、毎年移動してくる200人の学生の部屋探しやそのメンバーを寮に入れていくというビジネスで、毎月家賃が入ってくるストック型の事業でした。入りが確定しているので、来年はまた200人来るから売り上げが上がるぞ、メンバー五人を連れ出し繁華街で飲み歩いたり、1日なん十万円も使うようなことをしていました。ところが、入るはずのお金が入らない、予想より多めに支払うものがある、などちょっと予定がずれると一気にお金がなくなります。使うとなくなるものですが、その計算をしていなかったのです。お金がなくなったときに、仲間もみんな消えてしまいました。自分の仲間はお金だけで集まっていたことに気づいたとき、本当の仲間・同志だったのかというショックが大きかったです。
もう一つの失敗は、売り上げを上げることが正しいと思って進めているうちに、自分が意図いていない、目的から外れてしまったときです。経営、経済の無知ですね。事業構造のミスマッチのように、いつのまにかやりたかったことと違うことをいていたことに気づいたときのショックは大きいものがあります。売り上げが上がり、地域経済は回ったけれど、商店街の八百屋がつぶれた。この事実は取り戻せないし、僕がやりたかったことの反対をやっていた。これは氷山の一角で、他にもっと大きなことが僕の無知のせいでおきていたかもしれないと考えると、無知であることは怖いです。当時の僕はお金の稼ぎ方はある程度わかっていたけど「働く」ということを知らなかったのかもしれません。「人のために動くことが働くということだ」と恩師に教えられたことを思い出します。確かに僕は売り上げを稼ぐことはできるけれど、人のために動いていなかったかもしれません。まだまだ努力が必要な部分がある、と思いました。
僕たちが考えていることは、暮らしをより豊かにすることです。お客様の暮らしや人生が豊かになってほしいと考えます。
しかしながら、今時そんなふうに考える不動産会社は皆無に等しいかもしれません。お部屋を探しているお客様が来たら、条件を置き、お部屋を紹介して終わりです。いっぽう、僕たちはお客様に対して、2年後どうなっていますか、今後なにしていきますか、と人生にかなり踏み込んで聞きます。
たとえば半年後に海外へ行きたいとあれば、マンスリーでまず一回暮らしてみることを提案します。シェアハウスに住みながら、浮いたお金で居酒屋やイベントなど、たくさん外に出て行ったらどうか、と提案することもあります。物件を紹介することがゴールではなく、お客様に暮らしや人生を豊かにしてもらうことがゴールです。ここまで提案する不動産業は、日本中探しても他にないのではないでしょうか。
お客様の人生にかなり踏み込んでいるため、オーナーさんや不動産会社からのリピートも多くなります。暮らし方から考えている会社は他にないため、頼っていただけることはありがたいことです。
会社には、いろいろな難案件が飛んできます。この不動産も何とかできないか、この物件をもっとより多くの人に価値のあるものにできないか、という問い合わせも多いです。半年後に取り壊される物件があったとして、ふつうこのような物件を探している人はいません。一般相場・一般賃貸だと借り手が決まらず、取り壊しを待つだけの物件が世の中にはあります。実際にそういう物件が南青山にあったのですが、「半年間だけしか住めない家なんて、借りる人は絶対いない」といわれ、ずっと空いていました。しかし僕は、絶対はないという考えから入り、募集を開始。無事に満室になりました。「来年海外や地方に行くから、半年間だけ東京に住みたい」という人は、うまく探せばいるのです。不動産の常識を疑うこと、住むことの本質をとらえることを大切にしています。
不動産業界にいると実感しますが、ユーザーファーストを意識的に徹底することがとにかく大事です。不動産業界は、業者の利益になりやすいように作られています。不動産会社は「うちを通さないと難しいですね」と言い続けたら儲かりますが、それはユーザーファーストではないですし、自分のことしか考えない業者はいずれ淘汰されます。リブモは、不動産業界の利己的な仕組みが嫌いで集まった人でできている会社です。従来のやり方で儲かるとわかっていても、そこに誘惑されず、やらない。不動産業者としてではなく、ユーザーファーストのサービスを提供する会社としてとらえなおすことを大切にしています。
若い人から、起業したいです、起業した方がいいですか、とよく質問を受けます。そのとき僕は、「すでにあなたは、起業家である」、と伝えます。あなたは、自分という会社の代表であり、財務部長、営業部長、人事部長でもある。例えば、今日の飲み会はこんなネットワークがあるので参加したほうがいい、と人事部長がいうわけです。営業部長も次の案件を2、3件今月中に撮りたいのでお願いしてきます。財務部長は、会計が足りないので予算をもっとくださいと言います。すると代表が営業部長に、今夜の飲み会で単価が高い案件をとってきてよ、というのです。こんなふうに、一人の中で会社はすでに成り立っていて、それを多くの人たちと役割分担して、より大きいミッションをクリアしていくことが実際の会社だ、と思っています。
別に法人でなくても、個人事業でも、サークルやバンドでもいいのです。形式や名前はどうでもよくて、ミッションや大切にしたい思いを大切にしてほしいと思います。それをあきらめないでやってほしいです。
みんなすでに起業していて、経営しているのです。すでにみんな起業していると考えれば、起業自体は特別なスキルが必要なものではありません。ミッションのために、法人格を持ったほうがいいかもしれないし、個人事業として登録した方がいいかもしれません。会社に所属しながら、不動産投資や、お金をためて副業して会社を持ってもいいのかもしれません。みなさんすでに起業しているということだけ覚えていて欲しいと思います。
起業は不安だと思いますが、みんな完璧な状態から起業したわけではありません。不安のなかで起業し、現在に至っています。失敗することも予定。恐れずにやってほしいと思います。
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