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【第三章】生きる意味を考える

目次

生きる意味を考える

ここまでは、よりよい人生を送るための準備として、自分の時間やパワー、お金を貯める方法を紹介しました。

ここからは、自分のやりたいことをするために、生きる意味を考えることをテーマにお伝えします。

具体的には、これまでの世の中の「流れ」を知って、「生き物」のルールを知り、人類の「進化」の流れを理解して、自分はどのように生きるべきかを考えます。

世の中の流れを知る

世の中の流れから、いまの自分を見つめる

世の中の流れを知ることで、いまの自分が見えてきます。世の中は、人々が知らないうちに、人々の行動や考え方をしばりつけているのです。たとえば原始時代、戦国時代、資本主義の時代などでは、それぞれの時代ごとに、そこで生きる個人は必ず、その時代の影響を受けています。

コンサルティングの世界には「3C(さんしー)」という考え方があります。「市場」「競合」「自社」に分けて分析する方法です。

まずは「市場」である「世の中の流れ」を知って、つぎに「競合」である「先人や同世代の仲間」を知り、さいごに「自社」である「自分」について考えます。

生き物のルールを知る

自分のことを考える前に、自分は人間であり、人間は生き物であるという大前提に立ち返ります。そして、生き物のルールから、いまの自分を見てみます。生き物には、地球上で生きるうえで、ルールや生きる目的があるのです。

死や老化という機能

生き物にそなえられた特徴的な機能に「死」や「老化」があります。

「死」という機能は、生き物が種として繁栄していくために必要な機能です。地球上の自然環境や、生態系は常に変化していますので、環境にあわせて対応していくことが、種が長く繁栄していくために求められています。

環境の変化にあわせて種も変化していかないと、種そのものが絶滅してしまいます。そのため、種は、全体が一度に滅んでしまわないように「死」という機能を生み出し、個体ごとに「死」と「生」を繰り返していくことで、少しずつ個体を滅ばせ進化させて、生き残っているのです。

そのため、いつの時代でも、どの生き物でも、古い世代は残り続けず、新しい世代が受け継いでいくのです。

人類がとらえる種の繁栄

人類も生き物である以上、生きる目的は「種の繁栄」です。そのため、自分という個体を繁栄させることを目的に生きています。そして、それと同時に、自分の同世代や、後生に対しても、より豊かに生きてもらうことを目的にしています。

その理由は、人類は、他の種よりも脳が発達して、「想像力」をふくらませることができるようになったためです。

人類は、死の意味や老化の意味を理解して、寿命を意識して生きています。また、人類の繁栄が見込めることがわかると、他の種の繁栄までもを想像することができるようになりました。

そのため、人類は「今の自分」だけではなく、「より先のこと」、「よりまわりのこと」、そして、人類だけではなく「地球全体のこと」を考えて、種を繁栄させることができるようになりました。

仲間との役割分担

生き物は、種として発展していくために、たがいに役割分担をして協力をしています。植物や動物でも、オスとメスとでそれぞれの役割があります。若い世代と年をとった世代とでも、役割が分担されているのです。

たとえば、サルやチンパンジーなどの動物では、オスとメスとで体つきが異なり、多くのオスは狩りに行き、多くのメスは子育てをします。

ほかにも、同じ年齢や性別であっても、アリの例では、1匹のアリがエサを見つけると、仲間に伝えてみんなで行列をつくり、少しずつ運んで、巣のなかに貯め込み、みんなで食べています。

人類も、これまでは性別や年齢を中心に、役割を分担していましたが、現在は資本主義やお金という発明もあり、より高度な役割分担をするようになりました。

人類の発明を知る

人類は、さまざまな発明をすることで、大きな繁栄を繰り返してきました。

人類の特徴として、学ぶことと、それを仲間に伝えることができるためです。そのため、新たに生まれてくるもののほうが、より詳しい知識や経験を持つことができるようになりました。

そのおかげで、時間がたち、人類が進化するにつれて、より高次の活動や、より個人的で人間らしい活動ができるようになります。

概念という発明

人類の1つめの発明は「概念」です。存在しないものや抽象的なことに対する想像力を身につけることで、これまで以上に深い思考をし、柔軟に物事を解決できるようになりました。

言語という発明

人類の2つめの発明は「言語」です。言語によって、おたがいに思い描いた概念を、おたがいに意思疎通することができるようになりました。その結果、多数の見知らぬ者どうしでも、おたがいに協力できるようになりました。これにより、人類は、これまで個体では勝つことのできなかった他の種に対しても、恐れることがなくなり、チームワークを活かして、ときにはその種を退治し、ときにはその種を支配するようになりました。

さらには、文字そのものや、印刷の技術ができることで、時間や場所の制約を超えて、広く情報を流通させることができるようになりました。

お金という発明

3つめに紹介する発明は「お金」です。お金は物や、人々が生産する価値を流通させやすくしました。お金には、

  1. 価値の保存機能
  2. 価値の交換機能
  3. 価値の尺度機能

の、大きく3つの機能があります。

お金は、あるときは貝であり、あるときは金や銀であり、あるときは紙であり、それ自体が必ずしも価値のあるものではありませんでした。しかし、取引をする人間がそのもの以上の「お金」の価値を認識することで、お金はもっとも普遍的で、もっとも効率的な相互信頼の仕組みとなりました。

機械という発明

4つめは「機械」という発明です。科学が発展し、機械ができることにより、生産や流通の効率があがり、革命が起こりました。機械化により、これまで人の手でつくるには限界のあった製品でも、効率的に大量に、価格を安く生産することができるようになりました。

また、みんなで歩く時代から、車に乗って移動する時代になり、電車や船、飛行機で、より簡単に人や物を運べるようになりました。

ITという発明

5つめの発明は「IT」です。ITは、インフォメーションテクノロジーの略です。電子上の空間を利用することで、情報の流通がほぼ無料でできるようになりました。

現在は、技術がさらに進化して、通信速度が上がり、情報の流通量が増えることで、これまでに人がいなくてはできなかったことの、「無人化」や「自動化」、「自律化」が実現しつつあります。

これからの進化を想像する

一度豊かさを知ると、後戻りすることができないのが人間の性質です。便利なスマートフォンを手に入れると、もはやそれのない生活はもはや想像できません。世の中の進化は不可逆的だといえます。

そこで、これから起こる進化について考えることで、いまの自分がとるべき立場をあらためて考えます。自分が身につけるべき技術や、投資するべき分野を考えます。

ここでは、今後の進化のトレンドを、キーワードでお伝えします。

さらなるテクノロジーの進化

RPA(Robotic Process Automation / ロボティック・プロセス・オートメーション)は、定型的な操作をロボットに覚えさせることで、主にホワイトカラーの業務を効率化、自動化する技術です。仮想知的労働者(デジタルレイバー)と呼ばれることもあります。

5G(5th Generation / ファイブ・ジー)は、第5世代移動通信システムの略で、現行の4Gよりも、通信速度が100倍規模、通信容量が1,000倍規模となる通信技術のことです。

VR(Virtual Reality)と呼ばれる仮想現実や、AR(Augmented Reality)と呼ばれる拡張現実の技術は、通信速度と通信容量の増大により実現すると考えられています。従来の動画のみでなく、より情報量の多い、よりリアルに近い技術です。

センサー技術やIoT(Internet of Things)と呼ばれる「モノのインターネット化」の技術も発展します。これにより、これまでオフラインにあった情報が、これまで以上にオンラインに「可視化」され、「流通」するようになります。

たとえば、家主が最寄り駅に着いたときに、部屋の温度をコントロールするスマートハウスのような技術から、コンビニなどでの無人の販売や、センサー情報をもとにした日常生活を便利にする技術も役に立ちます。

他にも、音声の技術や翻訳の技術、バーチャルアシスタントの技術、ロボットやドローン、AI、自動運転などのテクノロジーも進化していきます。

また、長寿のための技術や、DNAの解析や加工の技術も発展します。人類のフィールドも、地球上にとどまらず、地球の内部や海中、宇宙などへも、活躍の場を広げると考えられています。

これらのテクノロジーの進化は、必ずしも人を支配することや、人の仕事を奪うことにつながるものではありません。これまで自動車やコンピューターなどが発達してきたときと同様に、人の方もテクノロジーの進化にあわせて、進化をしていくと考えられます。

つぎの新しい仕事や、より人間らしい活動に時間を割くことができると信じています。

シンギュラリティの到来

テクノロジーの進化のなかで、ひとつの分岐点に「シンギュラリティ」といわれる瞬間があります。今の人間よりも、コンピューターのほうが頭がよくなる瞬間です。

これまで、テクノロジーの進化はより身近なものから起こっていて、歴史の浅いものからひっくり返してきました。たとえば、お金は人類の長い歴史のなかでは最近になって出てきた概念で、そもそも信用を代替したものなのですが、今度はお金を通さなくても、信用自体をブロックチェーンという技術で可視化し、運用することができるようになってきています。

その前から、人類は言葉を使ってきていましたが、ことばも現在、テクノロジーでひっくり返そうとされています。

知覚や五感も、センサー技術が取って代わろうとしてきています。

テクノロジーは、哲学の世界や人間らしい世界にまで、進んでいきます。

さらなるグローバル化

テクノロジーの進化にあわせて、グローバル化も進んできています。海外の考え方や文化が国内にも浸透し、国境がどんどんなくなり、従来の文化の壁もなくなってきました。現在では多くの海外旅行客だけでなく、従業員として活躍する外国人も増えました。

また、人だけでなく、物や情報の流通に関しても、グローバル化は進んでいます。たとえば、GAFA(Google、Apple、Facebook、Amazonの頭文字をとったもの)と呼ばれる米国のインターネット企業が、世界の市場を独占しつつあります。他にも、世界中のさまざまな投資マネーも、これまで以上に国境を超えてきています。

これまでの社会課題の解決

テクノロジーの進化は、これまでの社会問題を解決していくでしょう。

例えば医療の発展です。医療も貧困も、これから解決していくことでしょう。食糧問題も、テクノロジーで解決できるかもしれません。それから戦争もなくなり、どんどん平和になっていくと思います。
少子高齢化や人口減少も、ロボットやAIで解決するかもしれません。

新たに生まれる社会課題

一方で、新たに生まれる社会課題も増えてくることでしょう。

さらなる格差の拡大

一度格差が生まれると、差が広がっていき、なかなか取り返せないという問題があります。豊かな人はより豊かになりたいからです。

所得の格差が教育の格差となり、世代を超えて格差に苦しむこともあります。また、格差の拡大は、晩婚化や未婚化を助長します。

ロボットやAIなどの発達で、資本の効率化が進み、人の仕事が減ることで、資本家は資本効率が上がり、労働者は労働効率が下がり、格差がさらに大きくなるかもしれません。

さらなる少子高齢化と長寿化

テクノロジーの進化や、医療技術の発達により、健康と長寿が実現してきています。人生100年といわれる時代です。長寿化が進むにつれて、従来の年金制度の破綻や、介護や医療の負担の問題が顕在化してくることでしょう。

さらなる個人化と多様化

産業革命以降、私たちはこれまで、均一な商品を大量に生産して、大量に消費する時代を過ごしてきました。とくに、戦後のなにもない頃には、たくさんのものを作って、たくさんの人に売って、自分が持っていないものを手に入れて、どんどん豊かになっていく時代でした。

そのような時代には、学校教育のなかでも、均一な教育を受けて、言われたことを正しく実行できる人が求められてきました。そして、いい学校からいい会社と呼ばれる大企業に入ることを望まれました。

また、企業は、新卒として大量に一括採用をおこない、一律の教育と仕事を用意して、年功序列で給料をあげていました。従業員は、退職や転職をほとんどせずに、同じ会社で働き、定年で退職し、まとまった退職金をもらい、退職後は年金で生活を送るとされてきました。

しかし現在は、物は飽和してきており、全員が同じものを望む時代は終わりをむかえました。すでに大体ものは手に入れて満たされているため、より好みが分かれるようになり、価値観が多様化してきました。

また、企業も従来の雇用形態を維持することが難しくなり、従業員も転職が増え、非正規雇用などの働き方も身近になりました。

企業も大量の生産をおこなうと大量の在庫を抱えてしまうため、少量で顧客の細かいニーズを満たす製品を開発するなかで、コストが圧迫する構造となってきています。

そこで、さらなる個人化と多様化が進んでいくのです。

働き方の変化

テクノロジーの進化とグローバル化により、国境や会社の境目がなくなってきています。今後、会社は複数のコミュニティになっていくことでしょう。人々は、1つの会社に所属するのではなく、複数のコミュニティに参画して、コミュニティのなかで労働や貢献をしていくでしょう。そこでは信用が可視化され、お互いに与える価値が循環していきます。

いままでは、長い時間働けば、時間に比例して高い成果をあげられ、それによって高い評価をされて、年功序列でお金がもらえたり、時間によって時間給でお金がもらえた時代でした。しかし、これからは短時間でも成果を出せば、それに応じてお金がもらえる時代になるでしょう。

評価の指標についても、これまでは時間とお金が計りやすい指標でした。しかし、成果を表すそれぞれの数字も、徐々にテクノロジーの力で測定できるようになっていきます。ブロックチェーンの技術を使えば、自動的にある条件に達したらお金を分配するなどといった、成果報酬の仕組みも容易に実現できるでしょう。

そのような世界では、今月はこのプロジェクトをやる、来月はこのプロジェクトをやる、というように、プロジェクトごとに人が移動して働く働き方になります。以前から、シリコンバレーのエンジニアなどは、そういった働き方をするケースが多かったです。プロジェクト単位でスキルのある人が募集され、雇用される働き方が、標準的になっていくでしょう。

そして、テクノロジーのおかげで、すべての人がすべての世界の仕事にエントリーして、遠い世界からリモートで働いて、場所にしばられず自分の仕事ができるようになると思います。これまでは会社があって、そこに人がしばられていましたが、これからは仕事を自由に選ぶ時代です。

これまでは、新卒で一括採用されて育てられていたという時代でしたが、これからは即戦力が求められます。働き手は、つねに学びつづけることが求められ、自律して働きながら、スキルアップしていくことが求められます。

一方で、テクノロジーが進化を続けると、生活はどんどん便利になります。テクノロジーはコストを下げるので、徐々にお金をかけなくても生活ができるようになっていくでしょう。

遊びと仕事の境界もなくなります。いままで辛い仕事をしてきたものが、今後はロボットやAIなどが活躍します。従来の仕事や家事をしない、生活のしやすい世の中になると考えています。

暮らし方の変化

テクノロジーの進化や働き方の変化によって、オンラインで働き、オンラインで学校に行くなかで、住む場所も固定されなくなるでしょう。

会社や学校がオンライン化され、いつでもどこでも通えるようになることから、世界中のさまざまなところで、住みながら、移動をしながら、暮らす生き方が普及するかもしれません。

いよいよ「自分と向きあう」時代に

これまでは、均一的な集団で、均一な生活をしてきました。これからは、多様な組織で、多様な個人が、高い流動性で動く「個人」の時代がやってきます。

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ABOUT US
弦本 卓也
1987年、埼玉県生まれ。大学卒業後、大手広告会社「リクルート」にて不動産メディア「スーモ」(SUUMO)の運営に従事。新卒で入社して、スーモのメディアづくりを7年、その後にエンジニア組織の組織づくりを4年行う。 また、リクルート社内の部活動制度にて「大家部」を立ち上げ部長を務める。不動産投資に関する情報交換や物件見学のワークショップなどを行う。 入社2年目に新築一戸建ての広告を取り扱う部署に異動したことをきっかけに、「いい企画を作るためには、まずは自分で経験したい」という想いから個人で新築一戸建てを購入。その翌年には売却分野を担当したことをきっかけに売却も経験。マンションの売買なども行い、11年間で11回の引っ越しを経験。 「新しい住まいや暮らしを自ら探究したい」という気持ちで購入した東京都千代田区の神保町の中古ビル「弦本ビル」は、コワーキングスペース、シェアオフィス、シェアハウス、飲食店が入居する複合ビルとなっており、20代を中心とした若手社会人や学生のやりたいことを実現する場所として注目を集めている。3年間で延べ1万人以上の来場者を記録し、家賃年収1,400万円を達成しながら満室経営を続けている。 お金面とビジョン面の両立を大切にしており、モットーは「一人ひとりの可能性をもっと世の中に」。会社員を続ける傍ら、学生時代に起業した会社とあわせて株式会社を3社創業。うち1社は売却し現在は2社を経営している。他にもエンジェル投資家として若手実業家の支援を手がける一面も。 日経新聞や不動産業界紙、書籍や雑誌、テレビなどでも多数の注目を集めておりセミナー講師なども行う。宅地建物取引士を保有。