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プロとして、相手に成果を約束する。

※この記事は、書籍『プロハ夢手帳』の記事の抜粋です。ご購入は こちら からお願いします。

目次

ウェブと紙媒体のコンテンツをつくる

出版社として、企業出版サービス「コンテ」を提供しています。自分のサービスや経営理念、ノウハウを本にしたいという肩に向けて、オンデマンド出版形式での出版提案をしています。オンデマンド出版とは近年注目されはじめた出版方式で、一般の店頭に並べず、Amazon中心のネット限定販売にするものです。在庫や流通コストがかからず、費用を安くできる出版方式です。オンデマンド出版は人文書が多いなか、ベンチャー社長専門でやろうと差別化しているところがポイントです。そのため、出版社のなかでもかなり特殊な立ち位置といえるかもしれません。

本を出すためには、コンテンツをしっかり作ることが何より大切です。深く取材して内容をまとめるため、ウェブサイトや採用広報、自社ウェブサイトなど、二次利用も含めた総合的なコンテンツの制作を提案し、制作をします。ウェブを小さいコンテンツとするなら、本は「フル・コンテンツ」。単に本を出す以上に付加価値を付けたフル・コンテンツを一般的なウェブサイト制作の同程度の価格で提供しています。ウェブと紙媒体の組み合わせで、今求められるコンテンツのやり方を提供していくサービスです。本作り以外でも、フリーランス編集者として撮影のアートディレクションやウェブの記事制作、ディレクションをしています。コンテンツづくりは誰でもできるように見えますが、深く筋の通ったものを作るには、ノウハウと経験と実行力が必要で、そこには必ず編集者という存在が必要になります。一般に編集者というと、出版業界かウェブ業界かどちらかをメインにするものであるため、両方横断しているフリー編集者はなかなか珍しいといえます。問い合わせを受けて、一般企業にコンテンツの作り方のアドバイスもしています。

深く関係を作ってずっと残るものを

創業して丸2年でこのコンテを本格化させましたが、もともとは出版社をつくる予定はなく、単なる制作会社として2年間受託業務だけをやっていました。そもそも起業したのも、制作会社になろうと思ったわけではなく、単に会社を辞めたかったという理由でした。自分の編集の技術もどのくらい求められているかわからない状態からできることを始めたのが最初です。いただける仕事をみながら、自分が必要とされる能力を発見できた、という感じですね。起業当初、ウェブでコンテンツを作る「コンテンツマーケティング」や「オウンドメディア」が盛り上がっていたこともあり、求められることはなんでもやっていました。

最初は費用をいただけるだけで満足していましたが、次第に制作の仕事は時間と労力がかかり、おまけに限界があり、実績も残りにくいということがわかりました。単なる制作下請けだと名前が載らないですし、がんばって作ったサイトがクライアントの都合で一夜にして消えるという経験もしました。「確かに対価はいただけるけれど、時間はかけてつくったものがすぐ消えてしまうのは、自分の時間をかける価値があるのだろうか」という疑念が浮かびました。そこから舵を切り、自社で何かクリエイティブのブランドをつくれないかと考えました。自社で作るなら、形に残る本が良いということで、本づくりの道に戻りました。フリーとして活動してみて体感しますが、本(書籍)のフリー編集者はできる人が数えるほどしかおらず、高い単価でお仕事をいただける仕事です。年間10冊に関わることができれば十分ですから、1年に10人の方とだけ仕事をしようと思いました。自分のコンテンツ作りは、相手と深く関係を構築し、じっくり作っていくスタイルを取っているので、この方が向いているだろうと思いました。

自分には本しかない編集者への道を選ぶ

小さいころから絵や漫画を描くことが好きで自分の漫画や小説をよく友達に見てもらっていました。それが周りから褒められrて、美術の成績も伸びていました。高校は熊本県の進学校。そこで、自分よりはるかに絵が上手な人や面白いことがかける才能がある人たちと出会いました。自分に才能があるか不安になっていたところ、才能がある人はプレイヤーになることができるけど、そうではない人は編集者という仕事があると知り、編集の仕事に惹かれました。

大きなきっかけは、高校2年生のときのクラス文集。企画を立て、自分より面白いと思ったクラスメイトたちの手書き原稿をもらって文集を作りました。高校二年生の2ヶ月間、授業そっちのけで作ったほど楽しかったのです。その経験が強烈で「将来は編集を仕事としてやっていきたい」と思うようになりました。調べてみると、編集の仕事は東京にしかありませんでした。東京に行くためには東京の大学に行かなくてはいけませんでした。自宅の財政事情を考えても、国公立大学にしか行けないため、頑張って受験勉強をしました。

受験においても、再び本の素晴らしさを実感しました。当時は現在ほどウェブサイトや無料動画が発達しておらず、情報を得るためには本だけしかありませんでした。受験勉強では熊本市街の書店に行き、参考書や勉強法の本を読み漁っていました。結果的に浪人はしましたが、志望の大学に合格。そのとき、熊本の片田舎のあまり裕福ではない家庭で育った人間でも目標を叶えることができた、本というツールのすごさを感じました。漫画を好きになって絵を描きはじめるのも本、勉強も本でした。僕には本しかなく、それが体に染み付いていました。本の仕事をするべく、大学に進学しました。

大学時代には東京という環境でたくさんの本に触れたあと、大学3年から就職活動が始まりました。どうにか学習参考書を作っている中堅出版社に内定でき、そこの書籍編集部に配属されることになりました。

内定後から、ヒット作を多数企画している敏腕編集者の上司につきっきりで、編集のノウハウを教えてもらいました。1年目ということで、いくらでも自由に本が経費で買えましたし、仕事中に何をしても許されました。ずっと本を読んで、本の作り方を勉強し、先輩方からたくさんのことを学ばせていただけたと思います。

自分のやるべきこと、ありたい姿を模索して

僕の最初に企画から編集まで一貫して手がけた本が、力のある著者に執筆を依頼できたこともあり、初版3万部という大ヒットを出すことができました。普通は初版5戦部ですから、新人編集者の最初の本としては異例です。発売直後は、住んでいた池袋の書店の壁一面に、自分の作った本が並んでいる光景も見ることができました。本は話題になり、講演会で全国を回ったり、PRイベントを開いたりと充実はしていました。幸せな社会人1年目だったと思います。

しかし、いい時間はいつまでも続きませんでした。本のPRもしながら、次の本も作らなくてはいけません。そのとき、僕自身の気持ちが追いついてきていないことに気づきました。会社員として本を作るには、自分の企画をひたすら出し続けなくてはいけません。そしてそれは、新人が6冊なら、2年目は10冊、3年目には12冊と、入社年次が経つほど増えていくわけです。当然、会社員として仕事はしなくてはいけないので企画は出すのですが、気持ちが追いついていないので2年目はほとんどいい本が作れず終わってしまいました。企画の作り方もわからないままで、仕事からいったん逃れ、大学時代からやっていたイベントの方にエネルギーを注ぐようになりました。出版社同期の飲み会や、あるパーティーで知り合った友人と一緒に社会人サークルを作って、そればかりやっていました。次に同世代で集まろうと同世代の会を開き、毎週毎日カフェに集まり、仕事について喋っていました。ほぼ仕事とイベントが半々くらいの割合でやっていましたから、仕事のほうは成果が出ません。

3年目に会社が合併吸収され、新卒で入った会社がなくなり、オフィスも大きいビルに移りました。そこで自分の思っていた会社像が崩れました。新卒の会社は60人ほどの顔の見えるいい出版社で先輩たちは優しく、自分を守ってくれていました。仕事になかなか向き合えない自分でさえも、見守ってくれている。それがなくなり、次々と先輩たちも辞めていき、上司も消えていくなか、自分のやるべき姿がわからなくなりました。そして4年目の春、僕は会社にいることができなくなり、とりあえず起業しよう、会社を辞めようと思い、退職しました。やめることが目的なので何も決まっていませんでしたし、イベントスペースの準備に使ってしまったので貯金もなく、仕事も中途半端。自分の持っているものは、イベントで知り合った仲間だけでした。

自分の持っているものやスタイルを形にしていく

創業してすぐは意外にウェブの問い合わせが多く、仕事をたくさんいただいて毎日やっていました。最初は制作の経験が積めてお金がもらえるだけでよかったのですが、経験が積み上がってくると、次第に作っても意味がないことが世の中にはあることに気づきました。きちんと設計されていないウェブメディアや、誰がみているかわからないクリエイティブ。そこに時間をかけても、名前が出ないので実績にもなりません。時間をお金に変えているだけだ、ということに気づきました。人生の時間を削って作るのなら、意味があるものを作って蓄積しないといけません。そのときに初めて自分の5年間の経験と、持っているノウハウを形にしなければ、と強く思いました。出版人としても、ウェブ業者としても半人前でしたが、自分なりに持っているものをまとめてみたら、何か次が埋まるのではないかと思い、ひたすら自分の持っている自分のノウハウや方法論をまとめ始めました。集めてみたら意外とどんどん形になり、このノウハウを実際の制作に行かそうと思うようになりました。人から頼まれたものをただ作っているだけでは、そこで足踏みしているだけ。最初のうちは実績と呼べるものが作れるだけでよいでしょうが、ある程度実績をつくったら、作ることと並行して、考え方やノウハウを目に見える形で表さないと、いつまでたっても次に進めません。クリエイティブの世界では、制作した成果物だけではなく、考え方やスタイルも合わせて表明しないと認められないのです。蓄積して、形にして見せないといけないと思いました。うまくいっている人は必ずこれを実践しています。世の中で認知されているクリエイターや出版人は、自分の一番得意なことを目に見えるかたちで、きちんと蓄積しているのです。

何があっても実現させるのがプロ

ものを作るということは、自分の技術が、時間とお金を使って形になるわけですよね。それを仕事にするためには、安定させることが必須だと痛感しました。プロとしてものづくりをしていくためには、継続的できる環境をつくらなければいけません。プロとは何か、を考えてみると、すごいものをつくるのではなく、安定的かつ確実に作れることだ、と思いました。すごいものをつくることは、お金をかければできますが、それだと事業は成り立ちませんので、一定以上のクオリティを保ちつつ、収益をあげないといけません。本作りの現場は、著者と編集者とふたりで作りますが、そこには様々なトラブルが起こります。トラブル以外にも、スケジュールの遅れ、関係者との調整等、本を出すために起こる問題はすべて乗り越えなくてはいけません。「何があっても本を出す」ことがプロだと思います。いい本を作ることは大切ですが、それ以上に起こりうる問題を乗り越え、確実に形にすることがプロの仕事だと思います。クライアントワークにおいては、自分のクライアントに対して成果を約束しないといけません。そのためには予想できるトラブルは、コミュニケーションやお金、時間と、それぞれに解決できるやり方を使ってすべて乗り越えなくてはいけません。それがプロ。僕はカメラマンもやっているので、いい写真を操ること以上に必ず写真を撮らなければいけません。相手があることなので、決められた日にたとえ天気が悪くても、機械が壊れていても、停電していても、この日に一定のクオリティの写真を撮らなければいけません。最高に美しい写真が撮れなかったとしても、一定以上のものが必ず提供できることが、プロだと思います。もちろん品質はこだわるほうがいいですが、それ以上に一定の基準を満たしたものを確実に出さなくてはいけません。技術を安売りしないことも大事ですが、まずは成果を約束しないと行けないと思っています。必ず相手があることなので、トラブルも起こり得ます。一定のクオリティを出すためにトラブルを予見して乗り越える。これが職業としてクリエイティブをやる絶対条件だと思います。2年間、出版以外のウェブや写真をやってきて共通しているとわかったことですね。

継続できるクリエイティブを

おそらく自分で何かを作ってみたいという人は必ずいると思います。特にウェブメディアは作りやすいですよね。誰でもワードプレスで立派なブログが作れる時代です。ただ、作るのは簡単でも、続けるのは難しいのを忘れてはいけません。続けられてはじめて、その道のプロになれます。しかも、お金、時間、エネルギー、ストレスと、どこも無理することなく、すべてクリアしてメディアを続けることが大切です。最初で満足せず、継続までしてほしいと思います。継続できるようなるまでは時間がかかります。

ライフワークとしてやるためには、上がっていくべきステージがあります。最初は作るだけで面白いですし、最初は自分が作ったものでお金が得られるだけでも満足してしまう。千円でもいいから、もらえたら嬉しい。そこがだんだん慣れてくると、ある時点で自分の求める金額がいただけない瞬間が必ずきます。その時に安売りするのか、もう一度プロとして修業しなおすのか、決断しなくてはいけません。そのときが一番つらいと思います。

僕の経験から、クリエイティブの仕事は、時間をお金に変えがちです。しかし、安売りしだすと、永久に儲かりません。プロとしてやる以上、アルバイト以上には儲けないといけません。仕事は、自分がたくさん持っているものを売ること。時間はたくさん持っていないので売ってはダメです。自分がたくさん持っているものは何かというと、例えば農家ならお米やりんご、工業製品なら工場で量産しているもの、人材系は登録者のリストを多く持っているし、不動産も場所を持っているから売ることができる。その原則をどんな仕事でも忘れてはいけません。技術・経験・人脈。自分がたくさん持っているものはなんだろうと振り返ることが大切ですね。技術には投資する甲斐があるといわれるのは、技術は磨けば磨くほどさらに高まるし、なくならないからです。特定のソフトウェアとか、特定の会社でしか使えないような「なくなる技術」はダメで、それは技術とはいいません。あとは、経験ですね。形に見えないトラブルを予見して乗り越え、確実に形にする課題解決能力ともいえるかもしれません。これも自分の知見をたくさん持っていますし、なくならないです。

まずは、自分のたくさん持っているものと技術と経験を書き出してみること。それが第一歩となるでしょう。

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若い世代に読んでほしい、アクションのためのヒントが満載。

この『プロハ夢手帳』は、「やりたいことがわからない」、「自分にあった仕事がわからない」といった悩みを抱える人に対して、やりたいことを見つけ、実際のアクションへの最初の一歩を踏み出すためのきっかけになる「夢のワークブック」です。

これから何かをやってみたい若手社会人や、エネルギーはあるけれど何から始めたらいいかがわからない学生の方に向けて、いま読むべき内容だけを収録しました。

12人のインタビューから学ぶ、行動のヒント。

本書に登場するのは、プロハに関わりのある12人の起業家たち。それぞれの起業体験から生き方のこだわりをわかりやすく語っています。

本書では、それぞれのページに、手書きで文章を書き込めるノート部分を設けました。

文章を読んで、思いついたことを自由に書き込み、「自分だったら何ができるか?」、「自分だったらどう考えるか?」をまとめながら読み進めることができます。

特製ワークシートで自分と向き合う。

本書の章末には、学んだことを整理し、自分の次のアクションを生み出すために、オリジナルのスペシャルワークシートを設けました。本書のワークシートを書き上げて人と対話することで、さらに大きな成長のチャンスを得ることができます。

自分と向き合い、気づきを得るために、ぜひワークシートにチャレンジしてみてください。

誰かが何かを始める/形にする「プロハ」に行こう!

本を読み終わったら、単に読むだけではなく、自分だけのメモが書かれた本を持ってぜひ

神保町のプロハ(TOKYO PRODUCERS HOUSE)に足を運んでみてください。そして、プロハの

メンバーたちと対話してみてください。きっと、かけがえのない時間が過ごせるはずです。

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この本を通じて、あなたの「やりたい」が明確になり、

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『プロハ夢手帳』の出版の経緯

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ABOUT US
弦本 卓也
1987年、埼玉県生まれ。大学卒業後、大手広告会社「リクルート」にて不動産メディア「スーモ」(SUUMO)の運営に従事。新卒で入社して、スーモのメディアづくりを7年、その後にエンジニア組織の組織づくりを4年行う。 また、リクルート社内の部活動制度にて「大家部」を立ち上げ部長を務める。不動産投資に関する情報交換や物件見学のワークショップなどを行う。 入社2年目に新築一戸建ての広告を取り扱う部署に異動したことをきっかけに、「いい企画を作るためには、まずは自分で経験したい」という想いから個人で新築一戸建てを購入。その翌年には売却分野を担当したことをきっかけに売却も経験。マンションの売買なども行い、11年間で11回の引っ越しを経験。 「新しい住まいや暮らしを自ら探究したい」という気持ちで購入した東京都千代田区の神保町の中古ビル「弦本ビル」は、コワーキングスペース、シェアオフィス、シェアハウス、飲食店が入居する複合ビルとなっており、20代を中心とした若手社会人や学生のやりたいことを実現する場所として注目を集めている。3年間で延べ1万人以上の来場者を記録し、家賃年収1,400万円を達成しながら満室経営を続けている。 お金面とビジョン面の両立を大切にしており、モットーは「一人ひとりの可能性をもっと世の中に」。会社員を続ける傍ら、学生時代に起業した会社とあわせて株式会社を3社創業。うち1社は売却し現在は2社を経営している。他にもエンジェル投資家として若手実業家の支援を手がける一面も。 日経新聞や不動産業界紙、書籍や雑誌、テレビなどでも多数の注目を集めておりセミナー講師なども行う。宅地建物取引士を保有。