※この記事は、書籍『プロハ夢手帳』の記事の抜粋です。ご購入は こちら からお願いします。
目次
派遣型のスキャン代行サービスを展開
都内を拠点に、派遣型のスキャン代行サービスを提供しています。お客様のオフィスまでスキャナーや必要な器具を持って行き、お客様のオフィスで書類や名刺などをスキャンしてデータ化するサービスです。スキャンマンのスタッフが出張して、スキャンするという非常にシンプルで分かりやすい方式です。
サービスにおいては、派遣出張という点が最大の差別化ポイントです。出張で行くにもかかわらず、3000円からという非常に安い価格でサービスを提供しています。
会計や法務など他社のサービスと連携しているのも、もう1つ大きなポイントです。この2つが他のスキャニング業者とは違うところです。
単にスキャンで終わらず連携サービスをおつけしているのは、僕たちはスキャンを一つの「手段」だと考えているためです。単なるスキャンが目的なのではなく、スキャン後のデータの保管や活用など、ご利用いただいた後のフォローなどのサービスも合わせて、包括的に提供させていただいています。デジタルとアナログのつなぎ目になるという戦略ですから、クラウドサービスは一切おこないません。とにかくデジタルとアナログの間にいるのを企業戦略としています。
起業を志した学生時代
僕が高校3年生で浪人をしたとき、初めて人生を本気で考え始めたことが起業のきっかけです。高校生までは、人生について何も考えていませんでした。小・中・高までは作られたレールがあるのに、大学生になるとき選択肢は1度に自由に広がります。受験で受かっていた大学もありましたが、一度に広がった選択肢に戸惑いもあり、いったん人生を考え直したいということで浪人することにしました。
自宅で過ごしながら、人生について考えました。結論としてわかったのは、人生に客観的な意味を見出すことは不可能、という諦めでした。ところが、人間は人生に生きる意味を見いださなければ生きていけないのだということも同時にわかりました。10代で生きる意味が見つからなければ、ネガティブな方向にいったとしても不自然ではありません。しかし、結果的に僕がネガティブな方向に行かずに済んだのは、ある言葉がきっかけでした。それが、バスケットボール選手のマイケル・ジョーダンの「失敗することは耐えられるが、挑戦しないでいることは耐えられない」という言葉です。この言葉はまさに僕の心理を表しており、「生きる意味は見つからないけれども、何かやってみよう」と考えるようになりました。
浪人生活が終わり、結果的に別の大学に進学しました。大学生になっても、バイトをしながら何をしようか考える日々を送りました。4年間の大学生活とはいっても、地元の愛知県で引きこもりに近い生活でした。大学生になった僕は、良い企業に就職して結婚をしてから子供をつくり、定年まで働き退職金をもらって、一生を終えるという普通の人生には耐えられませんでした。平凡な人生には我慢できない。それならせめて何かに挑戦して生きていきたいと思いました。
当時の日本では金融工学などのテクノロジーが進歩していて、特に金融の分野は面白そうだなと思いました。ただ僕は学が足りず、その分野に進むには躊躇しました。次に目をつけたのがIT分野です。当時から勢いがあって面白い分野でしたし、ITならば自分でもできそうだと感じました。
資本主義の本質を学んだ学生時代
引きこもっている間、お金持ちになるにはどうしたらいいのかをじっと考えていました。当時、大金持ちだったバフェットや、ビル・ゲイツ、孫正義などは皆、株で儲かっていました。社長が自分の会社の株を持って、会社の価値を一度にあげれば一気に大金持ちになれます。自分の作った会社の価値を上げれば、持っているシェアのぶん、資産になります。たとえばビル・ゲイツのマイクロソフトは時価総額50兆円ほどの会社ですが、そのうちの20パーセントの株を持っていますから、それだけで資産は10兆円ということになります。
では、どんな企業の時価総額が高いのだろうと考え、時価総額ランキングをさかのぼって調べてみました。1920年代以降からの時価総額ランキングを見てみると、変化があることがわかりました。たとえば1920年代は鉄道や鉄鋼、インフラが好調でした。それが1980年代にジャパン・アズ・ナバーワンと言われた頃はエレクトロニクスも順位が上がってきています。自動車などの会社もランキングの上位に入っていました。そして現在はITが上位に入っています。アップル、アルファベット(グーグル)、アマゾン、フェイスブックなど、今をときめくIT企業が上位に入っています。
そのなかで、変遷が多い中でも変わらない業種が2つありました。それが、エネルギーと金融です。エクソンモービルや石油などのエネルギー系の会社は、1920年代からずっとランクインしています。インフラ系は恒常的な需要がありますが、参入するには多大な資本が必要ですから、新規参入は難しいです。もうひとつの金融も、経済のエンジンですから、ランク外になることはありません。ゴールドマンサックスや中国銀行なども必ず入っていました。
株の勉強をしているなかで、ひとつわかってきたことがありました。それは、会社経営とは資本主義のゲームに参加することだ、ということでした。経営をする以上、ゲームのルールを知っておかなくてはいけません。
資本主義の本質は、人を「幸せ」にする競争です。一番顧客を満足させた人、幸せにした人が対価としてお金をもらいます。フェアなルールの中で一番人を幸せにしたということになるわけです。資本主義はシンプルに分解していくと本当に素晴らしいものです。
たとえば1万円とA君とB君のいる世界があるとします。A君が1万円を持っています。B君はもっていません。でもB君は1万円が欲しいとします。それでA君のために家を作るわけです。作ってもらった家にA君が住み、対価として1万円を払うわけです。そうするとこの取引は1万円がB君のもとに渡っただけではないことがわかります。1万円プラス交換、取引をしたあとの世界というのは1万円と家があるわけです。A君はまたお金が欲しいので、またB君のために家を作ります。この交換をすると1万円と家が2社で3万年の世界になるわけです。
こうして、交換をすればするほど、経済は回ります。より経済が回ることで富を持つ人のバイも増えていき、豊かになります。資本主義のゲームに参加して人を幸せにすることは、世の中全体をよくすることに繋がります。こうして資本主義の仕組みを考えたのちに、いよいよ起業家として活動するようになりました。
失敗から再起し、きっかけをつかむ
スキャンマンのサービスを始める前にも、すでに事業を興していました。大学を卒業して最初に事業を始めたのは、23歳のときです。当時はiPadが販売された直後でした。iPadと同時に注目されていたのが、電子書籍。この流れに乗ろうと最初に思いついたのが、電子書籍だけのインターネットカフェでした。通常、ネットカフェを開店するには本を置く広大なスペースが必要ですが、本のデータを全部iPadの中に入れて本棚をなくせば経営効率が高まる、と考えたのです。当時はiPadそのものも珍しい時代。iPadが使えるカフェとして宣伝すれば呼び水になるだろうなと思いました。ところが、いざ本のデータを提供してもらおうと出版社に営業に行くと、思いもよらない反応が返ってきました。どこに行っても、「そもそも、あなたにビジネスの実績はありますか」と聞かれたのです。いきなりポッと出の何も経験がない、何の人脈もない者が事業をやっているわけですから、実績などありません。結局、本のデータを提供してもらえず、実績も生まれないという悪循環から抜け出せず、この事業は失敗に終わりました。
事業をたたみ、転職活動をしました。転職活動をしていた27歳のときに、ある方から「手伝って欲しい」という連絡がきて、スキャンを手伝うことになりました。これがきっかけで始めたのが、スキャン事業です。そして二千十二年、試行錯誤しながらスキャンマンを立ち上げて、2013年8月に法人化しました。
まず、従業員を大事にする
今後は起業家や事業を作る人は間違いなく需要が増えていきます。昔は起業するのは就活に失敗した人が行なうことでしたが、現在だと価値が高くなってきています。これは、人間の仕事がAIとロボットに奪われて次第になくなっていくかもしれないという状況の中、仕事を創り出す能力には高い価値があるためです。僕自身、人間の最大の社会貢献は雇用を生み出すことだと考えています。仕事を創り出す能力は重要で価値があることですから、ぜひ皆さんにも挑戦して欲しいと思います。
スキャンマンのサービスを立ち上げてからは、実際に雇用する環境を作れたのですが、経営してみて感じるのは、人が本当に大事だなということです。一度自分の組織が崩壊して分かったことですが、スキャンマンのサービスは「人」です。人が商品なので、役目や経営人がやるべきことは、従業員が顧客に対して最大限のパフォーマンスをとれる環境を整えることだと思います。
人生の起きている3分の2以上は仕事の時間です。この仕事がつまらなかったら、人生の3分の2は損をしています。起業した最大のメリットは、好きなことに自由に時間をかけられることですが、それに加えて、一緒に働ける人が選べることも大きいです。仕事の楽しい・楽しくないを決めるのは何でしょうか。仕事の内容ももちろん重要ですが、もっと重要なのは一緒に働くメンバーだと思います。仕事がつらかったりつまらなかったとしても、一緒に働いているメンバーが素晴らしければ、仕事は楽しいものです。
スキャンマンでは、人を大事にというルールのもと、お客さんよりも従業員への働きかけを大きくしています。従業員が最大限のパフォーマンスを発揮できることが、ひいては顧客の満足度につながるためです。顧客への対応がいい従業員に対しては、社外からお褒めの言葉をいただくこともあります。「社員さんに本当に丁寧に対応してもらいました。本当にありがとうございます」と褒められると、社長の僕も嬉しいものです。
人選びにこだわる
人が大切だと分かった現在、周囲に対して社員がポジティブな言葉を投げかけるような雰囲気・カルチャー作りを徹底しています。社員やスタッフを合わせると五十人ほどの組織になりましたが、みんな本当にポジティブなことを言ってくれていて、スキャンマンに嫌な人は一人もいません。オフィスに居てもすごく居心地がいいです。この雰囲気作りの取り組みは成功したなと思いました。
人事面でも、ポジティブさを重視しています。ひとつの組織として、従業員同士で悪口を言ったり、ネガティブな雰囲気を作ったりしない雰囲気づくりを重視しています。この空気・カルチャーづくりは僕のルールの中ではもっともケアしているところです。先ほど言ったように、同じ価値観を持った人と働くことは、仕事の楽しさを決める条件のひとうです。
さて、同じ価値観の人を集めるにはどうしたらいいでしょうか。答えは単純で、社長である自分が、誰よりも情熱を持って仕事に取り組むことです。社員は、情熱を持ってやっていない人についていこうとは思えないものです。ただ友達で仲がいいから一緒に仕事をやるのではなく、リーダーに情熱があるか、その情熱が正しく社員に伝わっているかが重要です。
そのため、最初に一緒にやるメンバーは絶対に妥協してはいけません。仕事の面でもしっかりと価値観が本当に合う人を妥協せず、選んでください。起業の初期段階には、どんあ会社の雰囲気にしたいかというイメージがあるはずです。その雰囲気をつくるのは、最初に集まったコアメンバーです。コアのメンバーを決める部分は妥協せず慎重に選んで欲しいです。
また、社長みずからが社外に情報を発信することも大切です。「なんかこういう人いない?」や「こういう仕事をやっている」のような情報を自分から発信していると、共感してくれる人が集まってくれると思います。自分の中だけで溜めないで、なにか行動に出し、発信してみる。それだけで勝手に純度の高い人が集まってきます。
起業することは、怖くない
起業を怖いと思う人は多いです。原始時代であれば、リスクの高い行動は避けるほうがよかったかもしれません。人間には理性があり、死やリスクを避けるために、リスクがある行動を止めるわけです。起業はいまいる環境から飛び出して新たに小さな社会をつくるようなものですから、失敗すれば独りぼっちで死ぬだけです。僕も、23歳のときに電子書籍事業で失敗したときは、雪山のはずれで凍えるような心境でしたから。しかし、現代の日本は原始時代ではありません。多少のミスでは死なないのです。23歳の僕もこうやって再起できたのですから。どうせ死なないのなら、リスクは取ったもの勝ち。マイケル・ジョーダンの「失敗することは耐えられるけど、挑戦しないことには耐えられない」精神で物事に積極的に取り組んでいただけたらなと思います。
結局何をやったとしても何をやらなかったとしても最後、もう骨になって終わるわけですから。だったら思い切り好きなことをやっていただきたいです。
安定志向に移るのではなくて、悩んでいるのだったら、思いっきり好きなことやしたいことにチャレンジしていきましょう。
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