起業・副業でよくある質問『未来は5マスで考える』(無料公開⑩)

目次

付録1 プロジェクトをはじめるときによくある質問

プロジェクトの立ち上げや副業について、実務的な面でよく寄せられる質問と答えをまとめました。

最近は書籍やYouTubeなどでも初心者向けに詳しく解説しているものがありますので、見てみると参考になるでしょう。

税務に関する回答は宮城会計事務所の宮城 純平さんに監修していただきました。ただし、最新の正確な情報を知りたい場合には、国税庁のホームページを確認するか、税理士や弁護士などの専門家に相談することを忘れないでください。特に税制や法律は時代に合わせて変わるため、最新のものを確認してください。

Q.「起業・副業でお金をもらう場合、開業の手続きや税金の支払いはどうすればいいでしょうか?」

A.「プロジェクトを小さくはじめるときには、まずは個人事業主になるのがおすすめです。

個人事業主になるためには最寄りの税務署に『開業届』を、税事務所に『個人事業開始申告書』をそれぞれ提出します。これらの手続きにより、事業をはじめたことを明示できます。

開業届は、収入が発生していなくても事業を開始したら1か月以内に届出しましょう。インターネットで電子申請することも可能ですが、直接行って用紙に記入しても簡単に手続きができます。10分もあれば手続きができ、お金もかかりません。税務署は納税してくれる人を増やしたいものです。わからないことがあっても親切に教えてもらえることでしょう」

Q.「開業届を出すのを忘れてしまっていました。問題はありますか?」

A.「開業届は届出をしなくても罰則はありません。しかし、本来は提出しておくべきものですので、遅れてでも提出しておきましょう。

開業届を出しておかないと、屋号付きの銀行口座の開設ができなかったり、『青色申告承認申請書』の提出ができずに、青色申告の節税のメリットを受けられなかったりします」

Q.「開業届を出したら税金を払わないといけないのですか?」

A.「開業届を出していても、利益が0円以下の場合は税金は発生しません」

Q.「月に2~3万円ほどの売上が入るようになりました。税金はどうすればいいでしょうか?」

A.「売上が入っても、売上から経費を引いた利益が0円以下の場合は、税金は発生しません。特に、起業や副業をはじめたばかりの頃は経費がかかり利益が出ないことも多いでしょう。

経費としては、自宅家賃、電気代、通信費(電話代、Wi-Fi代)、パソコン代、会議代(カフェ代)、接待交際費(飲み会代)などが該当すると考えられます。

ただし、実態に合わせる必要がありますので、全額を経費にするのは適切ではありません。たとえば自宅家賃の場合は、事業で使用している面積や利用時間から比率を計算し経費にします。

たとえば、月額の家賃が14万円の場合で、週に2日、自宅面積の20%を事務所として使用している場合は、14万円×2/7×20%で計算し、8,000円/月、すなわち年間に9.6万円分を経費にするのが妥当です。

このように経費を差し引き、利益が0円を下回る場合には税金の支払いは不要です。『青色申告承認申請書』を提出していない場合は確定申告も不要です。

なお、確定申告をしない場合でも、手元に領収書を保管し収支や内訳の計算の記録を残しておきましょう」

Q.「月に10万円ほどの売上が入るようになりました。税金はどうすればいいでしょうか?」

A.「売上から経費を引いた利益が0円を超える場合には、原則として確定申告が必要です。利益が20万円以上の場合は税務署に、利益が20万円未満の場合は税事務所に確定申告書を提出します。

『青色申告承認申請書』の提出をした場合には、節税のメリットを受けられますが、複式簿記の形式で帳簿を作る必要があります」

Q.「収入があっても確定申告をしていなかったのですが、問題はありますか?」

A.「問題があります。期限を過ぎた場合でも、早めに申告と納税を行いましょう。

確定申告の期間は、原則として毎年2月16日から3月15日です。期限を過ぎて無申告を指摘された場合には無申告加算税が課されます。延滞税は遅れた日数分だけ増えていきます。遅くなれば遅くなるほど支払う税金の額が大きくなりますので、できるだけ早く申告を行いましょう」

Q.「確定申告や青色申告は大変ですか?」

A.「苦手意識のある方も多いですが、起業や副業をして資金繰りや税金対策をしていくうえで、複式簿記を理解しておくのは重要です。

税務署では記帳指導のセミナーを開催しています。無料で参加でき、税理士さんに丁寧にアドバイスをもらえ、実際に自分で作成した申告書をチェックしてもらえます。他に、納税協会や商工会でも相談に乗ってもらえます。クラウドで提供されている青色申告サービスを利用するのも、使い勝手がよくおすすめです。

個人で税理士さんに頼むこともできますが、一度は自分でやってみて全体像を理解したうえでアウトソースするのがおすすめです。税理士さんに依頼する場合は、その範囲によって20万円~が報酬の支払いのめやすとなります。

なお、青色申告が難しい場合には、白色申告をすることも可能です。白色申告は帳簿の書き方や申告の手続きが簡単ですが、赤字を翌年度以降に繰り越したり、最大65万円の控除を受けたりなど、節税をすることができません。めやすとして数万円~数十万円ほどの税金の支払いが追加で必要になってしまいます」

Q.「税理士さんにお願いするタイミングのめやすは?」

A.「早いタイミングから依頼しておくのが安心ですが、自分で青色申告ができる場合は売上が1,000万円を超えてから依頼するのがおすすめです。取引が複雑になり、税務調査のリスクが高まり、節税のメリットが出てくる規模だと考えられるためです」

Q.「個人事業主から法人に変更するタイミングのめやすは?」

A.「個人の状況や扶養の有無などで人により異なりますが、2022年7月現在、節税の観点では利益が800万円を超えるタイミングが法人化のめやすと言えます。これは、利益にかかる税率が法人よりも個人事業主のほうが上回るラインと考えられるためです。

ただし、法人化することで個人事業主のように自由にお金を引き出せなくなったり、役員報酬や従業員の雇用で社会保険の支払いが増えたり、制限や負担が出てきます。

なお、株式会社の設立にはおよそ25~30万円の費用がかかります。また、法人税等の支払いとして年間で最低7万円はかかります。法人の申告は個人事業主よりも複雑なため、税理士さんに依頼することも多いです」

Q.「副業を会社にバレないようにする方法はありますか?」

A.「確実にバレない方法というものはありません。会社に気づかれるケースのひとつとして、あなたの住民税の通知書が本業の会社に送付されたときに、給与所得に加えて副業の事業所得の金額が記載されていることで判明することが考えられます。

これを避けるために、副業分の通知書は自宅に届くように手続きする方法があるようです。詳しくは専門家に相談してみてください。

なお、利益が0円以下で確定申告をしていない場合には、そもそも副業の事業所得として金額が記載されないため通知書から気づかれることはないでしょう」

Q.「『契約書をください』『請求書を出してください』と言われました。どうしたらいいですか?」

A.「起業や副業では、納品物を制作する『業務委託契約書』や商品やサービスを売買する『売買契約書』など、契約書を結ぶ機会があるでしょう。

契約書や請求書にはなじみのない言葉が並ぶことも多いですが、副業や起業をするうえでは大事なものです。『○○(契約書名)_雛形』や『請求書_テンプレート』と検索し、最新のものをいくつか参考にして作りましょう。

特に、契約書はトラブルを防ぐためにもきちんと締結したほうがよいものです。認識の誤りや見落としがあると不利になることもあります。相手に作成してもらうこともできますが、不利な内容にされてしまうこともあるため、内容を十分に読み合わせし、双方の認識をあわせるようにしましょう」

『未来は5マスで考える』書籍紹介

「一人ひとりの可能性をもっと世の中に!」をコンセプトに、副業で複数の事業を起業し、数万人と出会いキャリアを応援してきた筆者が提唱する「5マス式キャリアマップ」

5マスのキャリアマップと18枚のワークシートで、小さなプロジェクトのアイデアを見つけて、「やりがい」と「お金」を両立する自分らしい人生を実現しよう!

未来は5マスで考える

※印刷用のワークシートは こちら からダウンロードできます

『未来は5マスで考える』目次

はじめに

プロローグ あの人はなぜ「自分らしい働き方」を実現できるのか

会社に人生を捧げるだけの時代は終わった
「自分らしく働いている人」をイメージしてみよう
「やりたいこと」ベースではじめる”小さなプロジェクト”
本業を持ちながら別のことに取り組むメリット

第1章 「5マス式キャリアマップ」で自分らしいキャリアを描こう

「5マス式キャリアマップ」とは
5マス式キャリアマップでキャリアの種をみつける方法
小さなプロジェクトの実現に必要な5つの力
「つながる力」が大事な理由
自分を振り返る時間をつくろう

コラム1 僕の人生は「人に会いにいく」ことで変わった 〜同期100人全員に話を聞いて〜

第2章 過去と現在を振り返って「あなたのキーワード」をみつけよう

キャリアの可能性の扉を開こう
ワーク1 自己紹介シートからのキーワード連想
ワーク2 人生のキーワードのリストアップ
ワーク3 人生のモチベーショングラフ
ワーク4 「自分のため」になった瞬間リスト
ワーク5 「誰かのため」になった瞬間リスト

コラム2 「小さなプロジェクト」をいくつも経験して“やりたいこと”を極めていった 〜イベント開催、沖縄への教育実習生派遣、高専生の就職支援〜

第3章 やりがいとお金を両立する「キャリアの種」をみつけよう

自分の可能性に気づく旅へ
ワーク6 「人生の4つのL」で描く未来のビジョン
ワーク7 キーワードの整理
「自分のため」か「誰かのため」かを見分けるヒント
ワーク8 各マスで共通するキーワード探し
ワーク9 「自分のため」と「誰かのため」の両立
オリジナリティのあるテーマに発想を広げるヒント
ワーク10 新たにはじめることリスト
プロジェクトを小さくはじめるヒント
ワーク11 新たにやめることリスト
ワーク12 「どうしてもやめられないこと」の見直し

コラム3 「想いを共有できる場」をもつと夢はどんどん実現していく 〜ビル1棟でコミュニティづくり〜

第4章 「お金」と「収益化」について考えよう

ワクワクするものにお金を使おう
経験することに価値がある
お金は「ありがとう」を形にしたもの
やりがいとお金を両立する収益化のコツ
知っておくと役立つ「ビジネスモデルの基本形」

コラム4 出会いとつながりを120%活かすための「メモ習慣」 〜なぜアイデアが次から次へとわいてくるのか?〜

第5章 行動しながら自分らしいキャリアを実現しよう

実際に行動しながら形にしよう
「副業禁止」でも、お金をもらわずにはじめてみよう
ワーク13 お手本となる人や商品・サービスのリストアップ
ワーク14 企画提案書の作成
ワーク15 「お客さん」探し
ワーク16 「仕入れ先」探し
ワーク17 タスクの洗い出し
ワーク18 振り返りと改善
小さなプロジェクトがうまくいった先の選択肢
アウトソースするほどプロジェクトは成長する

コラム5 想いを「ビジョンシート」にまとめ、どんどん人に会いに行こう 〜人とつながれば、なんだって実現できる〜

付録1 プロジェクトをはじめるときによくある質問
付録2 プロジェクトの成功に必要な業務と外注先
付録3 ワークに取り組む時間割の例

おわりに

感想やコメントをお聞かせください!

本書の感想は、ぜひAmazonのレビューなどでコメントしていただけたら嬉しいです。積極的に声を取り入れて、よりよいものに改善していきたいと考えています。
また、ブログやSNSなどでの投稿も大歓迎です。「#未来は5マスで考える」とつけてください。ワークシートの内容や、取り組みに対するコメントなどをみつけたら、弦本からも積極的にフォローし、応援をさせていただきます。

もちろん僕に直接ご連絡をいただいても喜んでお手伝いします。

未来は5マスで考える

※印刷用のワークシートは こちら からダウンロードできます

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本書に関連する講義を法政大学キャリアデザイン学部にて行いましたので、あわせて参考にしていただけたら嬉しいです!

弦本 卓也

1987年、埼玉県生まれ。大学卒業後、大手広告会社「リクルート」にて不動産メディア「スーモ」(SUUMO)の運営に従事。新卒で入社して、スーモのメディアづくりを7年、その後にエンジニア組織の組織づくりを4年行う。 また、リクルート社内の部活動制度にて「大家部」を立ち上げ部長を務める。不動産投資に関する情報交換や物件見学のワークショップなどを行う。 入社2年目に新築一戸建ての広告を取り扱う部署に異動したことをきっかけに、「いい企画を作るためには、まずは自分で経験したい」という想いから個人で新築一戸建てを購入。その翌年には売却分野を担当したことをきっかけに売却も経験。マンションの売買なども行い、11年間で11回の引っ越しを経験。 「新しい住まいや暮らしを自ら探究したい」という気持ちで購入した東京都千代田区の神保町の中古ビル「弦本ビル」は、コワーキングスペース、シェアオフィス、シェアハウス、飲食店が入居する複合ビルとなっており、20代を中心とした若手社会人や学生のやりたいことを実現する場所として注目を集めている。3年間で延べ1万人以上の来場者を記録し、家賃年収1,400万円を達成しながら満室経営を続けている。 お金面とビジョン面の両立を大切にしており、モットーは「一人ひとりの可能性をもっと世の中に」。会社員を続ける傍ら、学生時代に起業した会社とあわせて株式会社を3社創業。うち1社は売却し現在は2社を経営している。他にもエンジェル投資家として若手実業家の支援を手がける一面も。 日経新聞や不動産業界紙、書籍や雑誌、テレビなどでも多数の注目を集めておりセミナー講師なども行う。宅地建物取引士を保有。

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